子どもが独立した家で母の部屋と夫婦の寝室をつくる:家具の大移動と物の渋滞の6時間

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概要

片付けの専門家・古堅純子さんが、子どもたちが独立して夫婦二人暮らしになった一軒家を片付ける「抜け殻になった家」シリーズの後編である。前編で見えた課題は、暮らしが変わったのに部屋の使い方が昔のままになっていることだった。後編では、娘の部屋だった場所を母の部屋に、子ども部屋として使われていた2階の部屋を夫婦の寝室に作り替える。作業の大半は、家具の配置決めと、子どもたちが残していった大量の物の置き場所探しに費やされた。

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部屋の区切り方を考え直す:6畳+6畳から「4畳+8畳」へ

作業は、どこで寝て、どこに何を置くかの相談から始まる。古堅さんは、父親の酒のコレクションを置くなら空間が必要だと指摘する。寝る場所については、壁が多い側のほうが向いていると考えた。

洗濯物を干す場所も論点になった。日当たりが良いのは片側だが、住人の家はほぼ室内干しである。古堅さんは家具を仕切りにして片側に干し場を作る案を出したが、それでは部屋が暗くなるという意見が出て取りやめになった。洗濯物は娘の部屋だった側の窓際で干すことになり、この部屋に洗濯の仕組みは置かないと決まった。

古堅さんは、この部屋は12畳ほどあり、今は6畳と6畳に分けて使っている印象だが、4畳と8畳に分ける考え方もできると話す。ただし物の量が多く、どこまで減るかは読めない。高い場所に物を積み上げるのは良くないとし、「あと捨てていくしかない」とも述べた。そのうえで、今日のうちに捨てられない物については、一時的に寄せておける場所があるとよいと考えた。

クローゼットの扉を外し、動く物と動かない物を分ける

娘の部屋のクローゼットは吊り下げ式の扉で、住人は自分では外せなかった。建て付けも悪く、ほとんど使えない状態になっていた。作業の中で扉は外せることがわかり、外す方針になる。扉がなくなれば、プラスチックの引き出しケース(フィッツ)を中にまとめて並べられる。

クローゼットの下の方は、独立した娘の「残骸」で埋まっていた。息子(お兄ちゃん)の物も多く、グッズや机の周りの物が大量に出てくる。古堅さんは、息子の物はもう使われない物だと判断して上の段に積み、日常的に出し入れするのは母親の物、という前提で配置を組んだ。クローゼットの半分はすでに娘の物で塞がっており、扉も傷んでいたため、その扉は「諦めましょう」となった。

古堅さんがこだわったのは見た目である。茶色の家具が視界に入るより扉の中にあるほうがよいとして、見栄えの悪い物はなるべく収納の中に入れ、脇に包んで寄せる。多少はみ出しても、そこはバックヤードだから構わないという判断だった。

大型家具の搬入で苦戦:「傾けながら押す」

冒頭にも使われた場面が、大きなタンスを部屋に入れる作業である。入口の寸法にぎりぎりで、スタッフは何度も失敗した。「待って、待って」と叫び、手を挟みかけ、どう動かせばいいのかとしばらく迷った。最終的には、片側に傾けながら反対側から押すという手順で、ようやく部屋に収まった。

入れた後にも問題が出た。背の高い家具を入口近くに置くとエアコンの風が届きにくく、部屋に入った瞬間の圧迫感も強い。そこで高さの違う家具の順番を入れ替え、大きい物と中くらいの物を並べ直した。細かい配置はスタッフに任せつつ、古堅さんは、高さのある収納を置いたほうがその場所を有効に使えるという考えも示した。

似たデザインのドレッサーが2台あり、違いは鏡の枠がピンクかどうかだけだった。ピンクは和室には合わないという話になり、2台とも同じ場所には置かず、1台だけ残すことになった。

物の渋滞で時間が延びる

作業の途中で、母親の部屋が物で「渋滞中」になった。夫婦の寝室を作るために2階から物を出すと、すべてが母親の部屋に流れ込んでくる。とくに息子の物が多く、部屋はいっぱいになった。相棒のマナミさんが様子を見て「この広さいる?」と驚くほどだったと、古堅さんは後で説明している。この渋滞で作業にはかなり時間がかかった。

完成した母の部屋:55歳で初めての自分の部屋

完成した母親の部屋では、3つのタンスが同じメーカーの製品だったことが決め手になった。古堅さんは、当初はいろいろな物をこの部屋に持ち込むことに悩んだが、家具がそろったことで景色が統一され、すっきりしたと説明する。母親は「すっきり広い」と喜んだ。これまでは服を取りに和室へ行き、2階に来て、と家の中を行き来していたという。

古堅さんによると、この家で個室を持っていたのは娘だけだった。母親は介護などもあり、自分の部屋がないまま人のために生きてきた。その母親がようやく落ち着ける部屋を手に入れた。母親は、55歳にして初めての誕生日のようだと話した。

ただし、この部屋は洗濯物を干す場所も兼ねる。父親がアイロンがけをよくするため、タンスの上には何も飾らず、アイロン台として使えるよう空けてある。ここが空いていれば洗濯物も畳みやすい。母親はまだ現役で働いているので、家事がしやすくなるほうが嬉しいだろうと古堅さんは考えた。

未解決の部分もある。タンスの中は基本的に母親の物だが、娘と息子の物も入っている。服と寝具は和室に移したものの、子ども部屋の学習机の中身がかなりの量あり、ひとまずここに入れたからだ。上の段は天井近くまで子どもの物で埋まっている。古堅さんは今回初めてその状態を見たと言い、今後少しずつ整理し、子どもたちにも持っていってもらえればと話した。

夫婦の寝室:合宿所から静かな空間へ

最後に見せたのが夫婦の寝室である。以前は合宿所のように寝具を並べ、物に囲まれた中で寝ていた。古堅さんは、それぞれ個室はあっても、寝る時には二人でゆっくりできる寝室を目指したと説明する。

完成した部屋を見た母親は「こんなに広かったんだ」と驚いた。古堅さんは、踊れるほどすっきりした部屋になったと表現する。不要な物をなくして静かな空間にし、寝る前にテレビも見られるようにした。

目玉は、玄関脇にあった父親の酒の棚、古堅さんの言う「居酒屋」を寝室に移したことだ。古堅さんは瓶の一本一本までサニーシールドで拭き上げ、冷蔵庫の中も掃除して並べ直した。バーカウンターとまではいかないが、飲み物を用意する場所も作った。夜は夫婦でゆっくりお酒を飲んでほしいと話している。

この部屋は二人の子どもの部屋として使える広さがあった。しかし男の子と女の子だったため使い方が難しかったのだろう、と古堅さんは振り返る。デスクは処分する予定で1階に下ろしたので、ワークスペースを作るかどうかは母親が今後考えることになった。捨てるか迷っていたクッションは、インテリアとして使っている。

クローゼットは、2年前にマナミさんが整えたものを少し変えた。入ってすぐにハンガーラックがあり、反対側からは引き出しを出しやすくした。この2分割のクローゼットを夫に使ってもらう想定である。

2度の片付けを終えて

今回の依頼は、2年の間に暮らしを変えたいという母親の希望から来たものだった。2回の作業を振り返って、母親は、自分一人ではできなかった、2年前の感動がまだ残っている中でさらに感動した、と話した。古堅さんは、今日はほとんど掃除をしていただけだと言う。そのうえで、この数年、掃除がしにくいことが母親のストレスになっていたはずなので、空間をすっきりさせ、すべて拭き上げたと説明した。これからはやりたいことをして過ごしてほしいという。

手が回らなかったキッチンと、片付いた玄関

撮影後、キッチンに手が回らなかったことが話題になった。古堅さんは、やってあげたかったが2階が思った以上に大変だったと謝っている。一方で、見習いスタッフがガラスを磨いたことで、家具が新品のように見えるようになった。

玄関はスタッフのようこさんが担当した。酒の棚がなくなったことで広くなり、米の置き場も移した。古堅さんは、いつでも物を隠せる「バッファゾーン」を作っておけば玄関周りもすっきり保てると話す。玄関には物を置かず扉の中に隠し、片付けに煩わされない暮らしを送ってほしいという。見通しが良くなり、何がどこにあるか一目でわかるようになった。その結果、折りたたみ傘が多すぎることにも気づくことになった。

子どもの物の整理と、手をつけられなかったキッチンは課題として残った。それでも、夫婦二人の今の暮らしに合わせて、母の部屋と寝室を作り直すところまでで今回の作業は終わっている。