話しかけるだけで図やスライドを作るボイスチャット「MulmoChat」の実演 ― 中島聡が試す自然言語UI

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概要

中島聡は、ほぼバイブコーディングで開発中のボイスチャット「MulmoChat」を実演した。音声で話しかけると、AIが音声で答えるだけでなく、図を描き、複数ページのプレゼン資料を作り、ウェブページを読み込んで要約する。中島がこのアプリで確かめようとしているのは、自然言語を理解する言語モデルが登場した今、ユーザーインターフェースがどう変わりうるかという点である。本人の言葉では、まだ誰も正しい使い方が分かっていない段階であり、MulmoChatはそれを探るためのプロトタイプだ。

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なぜMulmoChatを作っているのか

冒頭で中島は開発の動機を説明する。以前メールマガジンにも書いたように、自然言語を理解するAIが現れたことで、ユーザーインターフェースのあり方を大きく変えられるようになった。中島はコンピューター業界での経験が長く、Windows 95に至るグラフィカルユーザーインターフェースの大きな変化を当事者として経験してきた。今起ころうとしているのはそこに自然言語が加わった変化であり、中島はこれを「ナチュラルランゲージ・ユーザーインターフェース(NLUI)」の時代と呼ぶ。

ただし、この新しいインターフェースをどう使うのがよいのかは、まだ誰にも分かっていない。そこで中島は、議論するよりもプロトタイプを作って試すのが一番よいと考えた。

音声で入力して音声で返ってくる仕組み自体は、すでに多くのボイスチャットが実現している。中島が狙うのはその先で、入力は音声でも、AIの側は画像や映像も使って応答するという、本当の意味でマルチモーダルなインターフェースである。画面には「Start Voice」というボタンが一応あるものの、UIはほとんどない。シンプルな見た目のまま、声だけでいろいろなことができるアプリを作れる時代になった、というのが中島の見立てだ。

説明しながら絵を描く:ジェットエンジンの仕組み

最初のデモで、中島は「絵を描きながら物を説明する」機能を試した。ジェットエンジンがどう動くのか説明してほしいと頼むと、AIはまず全体の流れを描くと宣言し、画像を生成した。そのうえで図を参照しながら、前方から空気を取り込み、圧縮し、燃料と混ぜて燃焼させ、高温高圧のガスでタービンを回し、最後にノズルから噴き出して推力を生むという流れを説明した。説明の後には、圧縮や燃焼室、タービンの回り方など、どこを深掘りしたいかも尋ねてきた。

中島は、燃焼ガスでタービンが回り、その回転でコンプレッサーも回る点が面白いと応じた。するとAIは、タービンの羽が燃焼ガスで回転し、その回転がシャフトを通じて前方のコンプレッサーに伝わる様子を示す詳しい図を新たに描き、タービンとコンプレッサーが連動することでエンジン全体が効率よく回る仕組みを説明した。中島はこのやり取りについて、絵を描きながら説明してくれると分かりやすいと評価している。

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複数ページのプレゼン資料を作る

次に中島は、単発の画像ではなく、何ページにもわたるプレゼン資料を作る機能を見せた。MulmoChatでは、資料の各ページを「ビート」と呼んでいる。ジェットエンジンの仕組みを題材に頼むと、AIはシンプルな全体の流れから始めて、だんだん詳しく、コンプレッサーの動きまで説明する構成を提案し、そのまま資料を作り上げた。

続いて話題を変え、イーロン・マスクが手を広げているSpaceX、テスラ、Neuralinkなどの事業を一覧にしたスライドを依頼した。このとき中島は、写真は写真らしいフォトリアリスティックな画像がよいと画像のスタイルも指定している。AIは各事業をイメージしやすいフォトリアリスティックなスライドで資料を作り、中島は「いい感じ」と応じた。

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ウェブページを読み込んで要約する

MulmoChatには、ウェブサイトをブラウズする機能もある。中島がURLを渡すと、AIはページを取得し、タイトルが「イグノーベル賞、研究テーマは縞牛…白黒に効果は」という記事だと答えた。

内容の説明を求めると、AIは記事を次のように要約した。記事は2025年のイグノーベル賞に関するもので、日本の農研機構の研究グループが生物学賞を受賞したことを取り上げている。研究は、牛に白黒の縞模様を描くと血を吸うハエやアブを減らせるかを調べたものだった。縞模様を描いた牛は、何も描かなかった牛に比べて付着する虫の数が半分以下になり、虫を追い払う動作も減った。これは牛のストレス軽減や殺虫剤の削減につながる可能性を示す一方、塗料が数日で落ちてしまうため、持続的な技術の開発が課題とされている。ほかにもユニークな研究がいくつも受賞し、日本人の受賞が19年連続であることにも触れている、という内容である。

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英語の論文を読ませ、アニメ風の資料にする

中島は「ちょっと難しいけど」と前置きして、英語の論文のページを読み込ませた。AIは、これが「Small Language Models are the Future of Agentic AI」という論文のプロジェクトページだと認識し、要点を日本語で説明した。

AIによると、論文は大規模言語モデル(LLM)だけでなく、小規模言語モデル(SLM)のほうがエージェント型AIシステムにとって十分に強力で、より適しており、経済的でもあるという立場を示している。特定の反復的なタスクではSLMのほうが効果的で、コスト削減、低遅延、低消費電力といった利点があるという。また、エージェントシステムを複数のモデルで構成し、ルーチン的なタスクにはSLM、複雑な推論にはLLMを使うモジュール型の設計を推奨している。SLMは特定のタスクに素早く特化させられるため、迅速なイテレーションがしやすいことも述べられている。さらに論文は、AIリソースの有効活用とコスト削減に向けた議論を呼びかけ、読者からのフィードバックを歓迎し、それをウェブサイト上で公開するとしている。

中島はこの論文をもとに、アニメ風の画像でプレゼン資料を作るよう頼んだ。AIは、SLMがエージェント型AIでなぜ重要なのか、その特徴や効率性、経済性をアニメ風のビジュアルで伝える資料を作成し、中島は「結構いい感じ」と評した。

13:13

サイドバーで過去の成果物を行き来する

ここで中島は画面のサイドバーを紹介した。サイドバーからは、前に作った資料やジェットエンジンの絵など、それまでの成果物に戻ることができる。AIもこれを受けて、イメージに戻ったり、さっきのプレゼン資料に移ったりと、柔軟に行き来しながら進められると説明した。会話の流れの中で生成された図や資料が積み重なり、後から参照できる作りになっている。

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AI自身に追加機能を考えさせる

中島は、ほかにどんな機能があったらよいかをAIに考えさせた。AIが挙げたのは次の4つである。

  • 対話の履歴で気になる箇所にタグを付け、後から戻りやすくするブックマーク機能
  • ユーザーと一緒に画面上で図を描き足したりメモを書き込んだりする、リアルタイムの共同編集モード
  • 同じ内容をシンプルな説明図、フォトリアル、アニメ風など、用途に応じてすぐ切り替えるビジュアルスタイルの切り替え機能
  • 論文やニュースの続報を自動で追いかけ、関連する最新情報を更新する機能

これらはAIの提案であり、中島がこれを採用するかどうかはこの場では語られていない。

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英語のスライドをコミック風に作り直す

AIの提案を聞いて、中島はひとつ思いついたとして、先ほどのSLMの論文のスライドをすべて英語にしたうえで、画像をコミックストリップ風にするよう依頼した。AIは資料を作成したが、完了報告まで英語で話してしまった。

中島は、資料を英語で作れとは言ったが英語で話してくれとは言っていない、と指摘しつつも、資料自体はできていると評価した。AIは謝り、英語はスライド用に使っただけで、自分が話す言語は日本語のまま続けると答えている。指示の範囲を取り違えるという小さな失敗も、デモの中でそのまま見せた形だ。

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オープンソースでの公開と、APIキーの制約

最後に中島は、AIに視聴者への締めの言葉を言わせてから、開発しているものはすべてオープンソースだと説明した。GitHubリポジトリへのリンクは動画の説明欄に貼られている。

試す際の制約として、OpenAIとGoogle Geminiの両方のAPIキーが必要になる。画像の生成にはGoogleのNano Bananaを使っているためだ。中島によれば、すべてをOpenAIでまかなうことも不可能ではない。ただ、OpenAIの画像生成は速度が遅い。今回のデモはすべてリアルタイムで動いており、リアルタイムで見せるにはOpenAIでは厳しいので、画像生成にはNano Bananaを使っているという。

中島は動画の冒頭で、NLUIをどう使うのがよいかはまだ誰にも分かっていないと述べていた。MulmoChatはその答えを探すための試作であり、中島は視聴者にもぜひ試してみてほしいと呼びかけている。