「物の祟り」を恐れて盛り塩をする妻と、10年間段ボールで埋まったひと部屋 古堅純子が4LDKの住まいを下見する

YouTubeで開く ↗
概要

整理収納の専門家・古堅純子が、3人家族の住まいを訪ねる回である。入居から10年の4LDKで、どの部屋にも物があふれ、リビングに最も近いひと部屋は引っ越しの段ボールで足の踏み場もない。家族は明るく協力的で、散らかっていても大して気にしない。それでも奥さんは片付けを頼んだ。古堅はこの家をどう見たのか。今回は作業当日ではなく、全部屋の下見と家族との作戦会議を扱う前編である。

12分で読めます

抽選で当たった家、それでも「だいぶ綺麗になった」状態

訪問先は、奥さん・ご主人・息子さんの3人家族だ。玄関で出迎えた家族は古堅が驚くほど賑やかで、奥さん自身も「元気だけあります」と言う。ところが廊下の収納の前には物が置かれ、古堅は早速「どんだけ大事なものがこの中に入ってんだよ」と突っ込んでいる。

途中で古堅は、この奥さんがLINE登録の抽選に当たった人だと思い出す。以前のオンライン面談では、20分のうち18分ほど雑談をして、残りの2分で後ろのリビングを映してもらった。そこは古堅いわく「えぐいぐらい」散らかっていて、奥さんは泣き出したという。視聴者からも「思ったよりひどかった」というコメントが寄せられた。奥さんによれば、今日見せている状態は「これでもだいぶ綺麗になった」あとだ。リビングに散らかっていた洋服を畳んで寝室に運ぶなど、面談の後に自分で手を入れている。

リビングには古堅の著書があり、古堅プロデュースの「リライブ」Tシャツまで飾られていた。奥さんは片付けのときに着るつもりで買ったが、もったいなくて袖を通せずにいるという。古堅は、自分のYouTubeで書いた「形から入る」という物の持ち方の特徴そのものだと笑っている。

家族は横浜DeNAベイスターズのファンで、家のあちこちにグッズがある。横浜出身の古堅も、子どもの頃は家族でスタジアムへ行くのが当たり前で、夫との初デートもスタジアムだったと語り、しばらく野球の話で盛り上がった。

リビング:積み上がった物と「ギリ枯れない」植物

間取りは4LDKだ。古堅は、ほかに4部屋あってもリビングにこれだけ物が寄せられているのなら、ほかの部屋にも空きがあるはずがないと見立てた。奥さんも、どの部屋も埋まっていると認める。テーブルの上は物溜まりになっていて、奥さんは「収まるところがない」「綺麗に並べるだけで精一杯」と説明した。

人を招けているかと古堅が尋ねると、10年以上前は呼んでいたが、だんだん呼べない状態になり、今は親も呼べないという。家族は協力的で、ご主人はひどく汚いときも文句を言わずに耐え、少し片付くと「綺麗になったね」と褒めてくれるそうだ。

古堅は、家族みんながアクティブなので散らかっていても大して気にしないのだろうと見る。そのうえで、つい最近50歳になった奥さんに対して、年齢とともに体力は落ちていくと話した。家がうまく回っていないと人はだんだん疲れていき、自分の体力と家の状態は比例するという。部屋の植物を指して、片付けに手が回っていなかった当時の状況を物語っていると言いつつ、「ギリ枯れない」ので、本当に片付けばもっと元気になるはずだと続けた。

廊下と寝室:隠れた飾り棚、ぬいぐるみ、タンスの前の服

廊下の突き当たりには、結婚のときに友人から贈られたカップが飾ってある。その前をこの夏に買ったスーツケースがふさいでいた。置き場所がないのは分かっていたが、どうしても必要で買ったという。古堅は部屋の中に入れればいいと指摘した。

夫婦の寝室は、入った瞬間にどこが寝室か分からないほど物が多い。とくに目立つのが大量のぬいぐるみで、多くは息子さんが小さい頃に持っていたものだ。息子さんの部屋にいらなくなり、こちらに流れてきた。奥さんは新幹線のぬいぐるみやキャラクターものを捨てられず、「ぬいぐるみを捨てるのはちょっと抵抗が」と言う。古堅は、捨てなくてもいいが、今のように横たわって意識不明のような置き方ではなく、もう少し可愛く飾ってあげたいと話した。

タンスの前には、リビングに散乱していた洋服を畳んで移した山がある。クローゼットの中身はほぼ奥さんの服で、ぴっちり詰めないと入らない状態だった。普段は奥に積んでいる布団を横に下ろし、ご主人の転落防止代わりにしているという話も出た。奥さんは服を減らすつもりだと言う。ただ、なかなか捨てられないので古堅の力を借りたい、というのが本人の説明だ。

奥さんは、古堅の本にあった「汚い寝室で寝ている旦那さんは、寝ているのではなく気絶している」というフレーズが頭に残っていたそうだ。ご主人は「すぐ寝ちゃう人なんで」と笑い、寝室の状態は気にしていないと答えている。古堅は、酔って寝室に向かうときにぶつかる危険もあると指摘した。奥さんは、もう少しすっきり眠れる部屋にしたいと答えた。

ご主人の部屋と息子さんの部屋:優先度は低い

ご主人は、自分の部屋は「手が回らなければいい」、優先すべきは奥さんの部屋だと言う。ご主人の部屋には洋服を含めて本人の物がすべて入っていて、ベイスターズのほか大谷翔平選手や山本由伸選手のグッズも並んでいた。古堅は、物は多いが楽しそうで「出来上がっちゃってる」部屋だと評した。収納はほとんど動いておらず、開けるのは夏と冬の年1〜2回程度。ご主人は細かいことを気にせず、自分の物がどこにあるか分かればいいという考え方だ。家で仕事もしていて、この日も仕事中だった。

ご主人によれば、奥さんは片付けは苦手だが飾り付けは上手だという。息子さんの部屋の扉まわりの装飾も、先ほどのベイスターズの飾り付けも奥さんがやった。古堅は、受け入れてくれるいい家族だと話している。

息子さんの部屋は、古堅が「青春してる」と言うような部屋だった。ここでも収納の前にベッドが迫り、扉が開きにくくなっている。古堅は、収納の前に物を置くのは「家系なのか」と笑った。息子さん自身も困っていることはあまりなく、優先順位は低いという。そのうえで息子さんは、「やばい部屋」があることをずっと前から知っていたと明かした。母親が何度か自分の力で片付けようとしていたのを見ていたが、厳しい状況なのでぜひ助けてほしいと頼んだ。

問題の部屋:10年分の「とりあえず」と盛り塩

最後の部屋はリビングに最も近く、本来は奥さんの部屋になる予定だった。10年前に引っ越してきたとき、処分するか迷って手放せなかった物を「とりあえず」持ってきて、どこにも収まらなかった分をこの部屋に入れた。その時点で部屋の半分が引っ越しの箱で埋まっていた。いずれ片付けて自分の部屋にするはずだったが、リビングなどにも収納がないため、物をここに寄せ続けた。その結果、10年でこの状態になったという。

扉を開けると、古堅は「1歩も歩けない」と声を上げた。部屋には盛り塩が置いてあり、古堅はそれを踏んでしまう。奥さんの説明では、この部屋を掘り始めると具合が悪くなり、掘っては埋まり、掘っては埋まりを繰り返してきた。そこで作業してもらうにあたって塩を置いておこうと考えたのだという。古堅は、空気がひどく悪いとも指摘した。奥さんはこの部屋を「物置であると同時にパンダの飼育小屋」と表現した。奥にパンダのぬいぐるみが8〜10頭いるそうだが、「1mmも見えない」。

古堅は、一度掘り起こさないと駄目だと言う。自分で何度か掘っても志半ばで終わるので、結局ぎちぎちになっていくのだろうと見た。さらに、この部屋は閉めておいても生活できてしまう、それこそが問題だと指摘した。ご主人は「それはちょっと我々の問題もありますね」と応じ、一緒に手伝えなかったことを認めた。

古堅は、お母さんを責めるのではなく、部屋の使い方が間違っているのかもしれないという捉え方をすべきだと話す。ママはずっと一人で「どうにかしなきゃ」と悩んでいて、どうにもならずに自分に声をかけてきたのだろうから、いいきっかけになるはずだという。このままでも困らないし、なかったことにもできる。しかし、それなら何のために4LDKを買ったのか。余分な部屋があるから溜まるのだとすれば、単に物を減らせば済む問題ではない。家族3人がこの家でどう暮らしたいかを一度はっきりさせるべきだ、というのが古堅の見立てである。

作戦会議:病気をきっかけに考えたこと

リビングに戻り、古堅はどんな家にしたいかを奥さんに尋ねた。奥さんは言葉に詰まりながら、昨年病気が見つかったと打ち明けた。病気はもう治ったという。ただ、分かったときに初めて、自分に何かあったらこの家がこのまま2人に残ってしまうと気づき、それまで先送りにしてきた現実が身に染みた。本当になんとかしなければと思ったそうだ。

リビングが汚かったため、息子さんがそこにいる時間は短くなり、ご主人も自分の部屋でテレビを見るしかなかった。奥さんはそれを「不自由な思いをさせていた」と振り返る。これからはリビングを広く綺麗にして、家族でテレビを見たりゲームをしたりし、息子さんの友達も呼べる空間にしたい。寝室はしっかり休める部屋にしたい。そして問題の部屋については、見るたびに「自分の心の中なんだな」と思うと語った。心の中がぐちゃぐちゃで、体調も悪く、気持ちも沈みがちになっている。自分の部屋にならなくてもいいから、せめてバックヤードとして機能させて快適に暮らしたい、というのが奥さんの希望だ。

奥さんは自分の傾向も分析している。調子のいいときと悪いときで、自己啓発のような物をそれぞれ買い、使いこなせないまま増えていった。今では何を持っているのかも把握しきれず、自分が扱える物量を超えた。物が多すぎて掃除まで手が回らないので、掃除ができるスペースにしたい。キッチンも物が多いという。

古堅は、目標が明確でいいと評価した。物の量からして自分の部屋にするのは難しく、バックヤード的な部屋を1つ作るほうが家は回りやすいと見る。奥さんについては、慎重で丁寧なぶん人より作業が遅く、1つ1つに丁寧すぎてやり切れない部分が多い、とも指摘した。古堅たちの作業は1日の約束なので、それまでに奥さん自身が「もういいかな」と思う物を判断しておくと、当日の変化がかなり大きくなると助言している。

家族の役割:「みんな忙しい、でも一人で抱え込まない」

ご主人は、奥さんの思いは以前から聞いていたと言う。慎重で一人だと時間がかかるところを、どう手助けできるかを考えたいと話した。まずは人を呼べるリビングにできれば十分だという考えだ。古堅は、ご主人の物も「まあまあ多い」と釘を刺した。少ないのは息子さんの部屋くらいで、このままでは将来困ることになるので、今回を機に同じ方向を向いてほしいと求めた。

古堅はさらに、奥さんが以前「主人はとても忙しいので迷惑をかけたくない」と言っていたことを思い出した。これに対して古堅は、みんな忙しいのだと返す。ママも忙しいし、息子さんも勉強で忙しい。それでも大事なことを忘れてはいけないし、ここは家族みんなの家なのだから、「私がダメだから」と一人で抱え込んではいけない。訪問の冒頭、ご主人と息子さんは奥さんに言われて出かけようとしていたが、古堅はそれを引き止めていた。話を聞いてもらえてよかったと古堅は言い、作業日までの数日で無理のない範囲で見直しを進めてほしいと伝えた。最後は家族全員で拳を握り、「えい、えい、おー」と気合を入れている。

どこに寄せるか、そして「祟り」より清潔

その後、古堅は作業の進め方を具体的に説明した。古堅たちのやり方は、物を埋めたり寄せたりして「景色」を作ってから帰るものだ。そのため、寄せる先を問題の部屋にするか、最も広い奥の寝室にするかを決める必要がある。奥さんも、寝室を入れ替えることも含めて全体で考え直す余地があると考えていた。ただ、どちらにしてもママの物量は圧倒的に多く、寝室のぬいぐるみたちもどこかへ移すことになる。少しでもスペースを作るには、見直せる物は見直したほうがいい。それには期限が必要だと古堅は言う。プロなら上手に寄せたり埋めたりできるが、一人では難しいので、ご主人と息子さんに寄り添ってもらい、何年も開けていない場所の「なんでこれが入ってたの」というような、こだわりのない物から手をつけるよう勧めた。

盛り塩については、古堅は奥さんを「塩まく女」と呼んで笑わせた。人形は可愛いし、捨てると祟りがあるのではと思ってしまう。それでも、清潔な環境でいることのほうが価値があると思えるようになればいい、と古堅は話す。奥さんは「清潔ということは本当に染みました」と応じた。

古堅はご主人に、当日は部屋を全部「更地」にして掃除し、残す物を戻すやり方をとると説明した。普通は物を減らしてから片付けるが、この家は多少減らしたところで変わらない。それならこの家の暮らし方自体を一気に変えるほうが、このお母さんには向いているのではないか、というのが古堅の考えだ。物量がかなり多く、スタッフは女性で来るので、男手があると助かるとも伝えている。

「物より家族の命」という結び

奥さんは、ここ何年もやりたいことがなかったと漏らした。古堅は、大好きな古堅本人がここにいる時点で夢が1つかなっている、と返している。一方で古堅は、自分が手伝えることはたかが知れていて、もっと家族を信頼して頼るべきだ、それが足りないと言い切った。奥さんは、ほとんどが自分の物で、要る・要らないは結局自分で判断するのだから、自分でやるべきだと思っていたと答えた。

古堅は、野球を見る時間があるのだから大丈夫、物が1つ減るくらい大したことではないと励ました。そして、ママは真面目で優しいから物にも愛情を込めてしまうかもしれないが、家族の命に代えられるものなどないと語りかけた。奥さんは「本当にそう」とうなずき、「頑張って処分します」と答えた。

広さは十分あるのに、どの部屋も物であふれていた。次回はこの家族を巻き込み、実際に家の大改造に取りかかる。