NVIDIAは「Tesla以外の自動運転」を支えるのか:台湾メディアの報道を中島聡が読み解く

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概要

台湾の経済メディア「経済日報」に、NVIDIAが自動運転タクシー(ロボタクシー)向けのプロジェクトを進めているという記事が載った。この記事を「NVIDIAがロボタクシー事業に進出する」と紹介する人もいる。中島聡は、自作のAIアシスタント「MulmoChat」に中国語の記事を要約させたうえで、そうではなく、NVIDIAはチップとソフトウェアスタックをセットで他社に提供しようとしているのだと読む。動画は、この解釈と、Teslaとの競争の構図についての対話で構成されている。

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記事の内容:NVIDIAの「ロボタクシー」プロジェクト

中島は中国語の記事を貼り付け、アシスタントに日本語で説明させた。アシスタントの要約によると、NVIDIAのCEOジェンスン・フアンは、ロボットと自動運転車がAIの二大用途になると語っている。そのうえでNVIDIAは自動運転タクシーの「隠しプロジェクト」を進めており、近く社内の全員集会で発表する予定だと伝えられている。

プロジェクトはNVIDIAの幹部が率い、NVIDIAの最新プラットフォーム「NVIDIA DRIVE AGX Thor」を基盤に、単一のエンドツーエンドのニューラルネットワークを使う技術をとるとされる。アシスタントは、これをTeslaのFSD(Full Self-Driving)に似たアプローチだと説明した。

記事が特に強調しているのはセンサーとカメラだ。世界第2位のCMOSイメージセンサー(CIS)メーカーである豪威(OmniVision)がNVIDIAのエコシステムに加わったと報じられ、それによって台湾の同欣電や亞光といった関連企業が恩恵を受けると見られている。同欣電については、自動車市場の需要回復、自動運転の進展、800万画素の高画質品の普及、光通信分野、IC単価、窒化ガリウムといった要素から、来年の業績成長が期待されているという。亞光も車載カメラ分野で長い実績があり、NVIDIAの自動運転タクシーで重要なパートナーになる可能性があるとされる。

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「ロボタクシー事業への進出」ではなく、ソフトウェアスタックの話

中島は記事を読んで「やっと分かった」と話す。この記事を引用したあるアメリカ人が「NVIDIAがロボタクシービジネスに進出」と紹介していたが、それは少し違うというのが中島の見方だ。

中島の解釈では、これはソフトウェアスタックの話である。NVIDIAの顧客のうち、NVIDIAのチップを搭載したロボタクシーを作る会社、つまりハードウェアだけでなくタクシーサービスまで手がける会社に対して、ソフトウェアスタックを提供しようとしている。Teslaは自前でロボタクシーを作れるが、ほかの会社はなかなかそこまでできない。そこでNVIDIA自身が、フルニューラルネットで作ったソフトウェア、つまりTeslaのFSDに相当するものを作り、チップとセットでロボタクシー会社や自動車会社に提供する、という話だと中島は考える。

アシスタントもこの解釈に同意し、NVIDIAがハードウェアを作るのではなく、強力なチップとその上で動くフルニューラルネットワークのソフトウェアスタックを提供して、それを使うロボタクシー会社や自動車メーカーを支援するのだと説明した。そうすれば市場全体がNVIDIAのプラットフォームで動きやすくなり、センサーやカメラのメーカーも一緒に成長する、というのがアシスタントの整理である。

パソコン市場になぞらえた構図

中島はこの構図を「面白くなってきた」と言う。Teslaはハードからソフト、サービスまで全部自分でやりたがる。一方NVIDIAは他社にチップを売りたいが、チップだけ提供してもTeslaに対抗できるソフトを作れる会社がない。だからソフトウェアスタックも作る。どこかの会社と組む方法もありえたが、そうではなくNVIDIA自身がソフトを提供する道を選んだ、と中島は読む。

そのうえで中島は、パソコン市場にたとえれば、Appleに相当するのがTeslaで、MicrosoftとIntelの役割をNVIDIAが担おうとしている、と解釈してもよいかもしれないと述べた。NVIDIAはソフトウェアのライセンスで稼ぐ会社ではないので、チップさえ買ってもらえればソフトは無料でついてくるかもしれないし、開発環境くらいは提供するかもしれない、とも推測している。

なぜNVIDIAがそこまでするのか。中島によれば、NVIDIAは学習側ではほぼ完璧なシェアを持っているが、推論側では必ずしも独占体制ではない。推論がサーバー側からエッジ側に降りてきたときに、ロボタクシーとロボットの市場をしっかり押さえたい。そう考えると今回の話は理にかなっており、中島は「腑に落ちる記事」だったと述べている。

情報源とサプライチェーン

中島が媒体の信頼性を尋ねると、アシスタントは、掲載元の経済日報は台湾の有力な経済メディアで、信頼性は比較的高いとされると答えた。

世界第2位のCMOSセンサー企業は台湾の会社かという質問に対して、アシスタントは、豪威はもともとアメリカで創業され、現在は中国資本の傘下にある中国系企業だと説明した。そのうえで、豪威の製造を担っているのが台湾の同欣電であり、豪威がNVIDIAのプロジェクトに加わることで製造を請け負う台湾企業が恩恵を受ける構図だ、とアシスタントは述べた。アメリカ、中国、台湾の企業が関わる国際的なサプライチェーンだという整理である。

中島が「当然1位はソニーで、ソニーは入っていないということか」と確認すると、アシスタントは、CMOSセンサーのシェア1位はソニーで、2位が豪威だと答えた。

LiDARは使わないのか

中島は、記事にLiDARの話が出てこないことを確認した。アシスタントは、今回の記事にLiDARは登場しないと答え、NVIDIAのソフトウェアスタックはLiDARに頼らずカメラやセンサーを中心にしており、TeslaのFSDと同様にカメラベースのニューラルネットワークでエンドツーエンドの制御を行うアプローチだと説明した。LiDARを使わない分コストを抑えられ、量産しやすいという利点があるという。なお、アシスタントが「リダー」と読んだのに対し、中島は「ライダー」と読むのだと訂正している。

中島自身は、NVIDIAは基本的にビジョンオンリー、カメラオンリーで、フルニューラルネットで行くという、Teslaと同じアプローチをとるのではないかと見ている。ただし、これは中島の推測として語られている。

Teslaとの競合、トヨタ、AI5チップ

中島は、トヨタも自動運転で苦労しており、少し前にNVIDIAのチップを使うと発表していたはずだと振り返る。また、TeslaはFSDを他社にライセンスしてもよいと言っていたので、その部分ではNVIDIAと競合することになる。

ただ中島は、ライセンスはTeslaの本業とは言えないので、どうなるかは分からないとも言う。Teslaは推論用の自社チップ「AI5」にFSDを作り込んでくるので、それをNVIDIAのチップに載せるのが簡単かどうか分からない。チップまで外部にライセンスするところまで手を出すかどうかも分からない、と中島は留保をつけている。

中島個人の希望としては、Teslaにはライセンス事業には手を出さず、大量生産で車を安くしてばらまき、FSDやロボタクシーで稼ぐ事業に集中してほしいという。ライセンスで稼ぐ会社になって本業への集中度が落ちるのはもったいない、というのがその理由だ。一方で、中島はNVIDIAの株主でもあり、NVIDIAにはNVIDIAでこの方向で頑張ってほしいと語る。

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結論:TeslaとNVIDIAは良いライバルになるか

動画は、Teslaが自前の垂直統合を進め、NVIDIAがチップとソフトウェアを他社に提供するという二つの陣営が、良いライバル関係になっていくのではないかという中島の期待で締めくくられた。アシスタントの最終まとめも、NVIDIAがカメラベースのフルニューラルネットワークのソフトウェアスタックをチップとセットで提供しようとしていること、それが他の自動車メーカーやロボタクシー会社にとって大きな力になるかもしれないことを確認する内容だった。TeslaがFSDのライセンスに踏み出すのか、NVIDIAが実際にどのような形で発表するのかは、動画の時点ではまだ分かっていない。