「トー横キッズ」はどこへ行ったのか 2026年の歌舞伎町をゆきにゃんと歩く

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概要

街録chの取材班は、年に一度ほど歌舞伎町に詳しいゆきにゃんに案内を頼み、トー横の現状とそこに集まる若者を紹介してもらっている。2026年の今回、取材はトー横に人がほとんどいないという確認から始まった。そこから、若者たちがどこへ移ったのか、残った子たちは何を抱えているのか、空いた場所に誰が入ってきたのかを、街を歩きながら聞いていく。ゆきにゃん自身は「トー横キッズ」という言葉が死語になりつつあると感じており、映像の終盤では、ここはもうトー横ではなく「歌舞伎町界隈」だという認識に行き着く。

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人が消えたトー横

ゆきにゃんによれば、トー横キッズの数はどんどん減っている。本人も最近は関わっている子が少ないが、インスタグラムを見る限り、週末には今も歌舞伎町に来ている子がいるという。完全にいなくなったわけではないが、集まる場所は一度大きく変わった。かつての広場周辺が「ガチでダメ」になり、一時は大久保病院のあるビルの前に大勢が集まっていたと語る。

実際に歩くと、以前は通りにずらりと並んでいたコンカフェの客引きの姿もない。取材者は「完全に浄化されちゃった」と表現し、ゆきにゃんは周りに「アダルティ」、つまり大人しかいないと驚く。後に声をかけた若者も、金曜日なのにこの人数だと話し、来ている人の年齢層は上がっていると答えた。

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咳止めで「パキる」 ライブ配信で知り合った3人

そんな中でゆきにゃんが声をかけたのが、17歳のリア、19歳のこにゃ、14歳のみゆの3人だ。年齢の離れた3人がなぜ友達なのかと聞くと、返ってきたのは「パキ友達」という答えだった。「パキる」とは、咳止め薬のメジコンなど市販薬を大量に飲んで酩酊状態になることを指す。こにゃとみゆはTikTokのライブ配信で知り合った。こにゃの配信にみゆが入ってきたとき、2人とも薬を飲んでいたという。

どんなときにパキりたくなるのかという問いには「辛い時」「しのぐために」という答えが返ってきた。落ち込むきっかけとしては、ネット、友達、恋愛、そして親が挙がった。3人は口々に「去年がやばかった」と言い、今はやめたと話す。そのうちの1人は、大量に服用して記憶が飛び、家から外に出て道端で30分放置されたことがあった。その経験から自分でやめようと決めたという。補導などをきっかけにするのではなく、自分の判断でやめたという点に、ゆきにゃんは驚いていた。

家にいられなかった理由

こにゃが初めてパキったのは13歳、コロナ禍の2020年だった。外に出られない時期に、家にずっといたくなかったという。片親で、門限や友達と遊ぶことについて親から反対されていた。学校に行きづらくなっても「学校は絶対行け、卒業しろ」と言われ、うつ状態になったと振り返る。不登校を望んだが認められなかった、という状況だ。それでも高卒の資格は取った。

一方、リアは全日制の高校2年生で、アルバイトもしている。トー横に来始めたのは前年の6月後半で、有名な子や友達が多かったので来るようになり、その友達が来なくなってからも居続けているという。高校に通いながら友達に会いに来るタイプは珍しく、全体の2割くらいだとゆきにゃんは見ている。ゆきにゃんのイメージでは、トー横は家出の子が中心の場所だった。リアは卒業後に美容の専門学校へ進む予定で、学校見学にも行っている。

14歳のみゆは都内在住で、トー横歴は去年の冬からの9か月ほど。会いたい人がいて来たという。相手は大阪・グリ下界隈で知られた男性で、グリ下とトー横の両方に出入りしていた。ノリでDMを送ったらすぐ電話がかかってきて会うことになったが、気が合わず、今は縁が切れている。ゆきにゃんは、トー横で少し有名な男の子に会いに来てそこから恋愛に発展する話はよく聞くと話す。みゆは毎日家に帰っており、家出しているわけではない。服装はいわゆる地雷系で、黒いマスクは顔が小さく見えるから着けていると笑っていた。

島根から飛行機で通う19歳

こにゃは今、家出中だ。泊まる場所は友達の家やホテルで、以前コンカフェで働いて貯めたお金を使い、足りなくなると友達を頼っているという。地元は島根県で、前年は飛行機で東京に通っていた。取材者も両親が島根出身だと話し、地元で働いてお金を貯めていたことに感心していた。

島根には帰りたくないという。地雷系の服で歩くと目立ち、自転車に乗っているだけで悪口を言われることもある。トー横を知る前から、メイクや服装について「キモい」「こんなのやるならトー横行けよ」と言われていた。将来の夢を聞かれて、配信者という冗談を挟んだあとに、こにゃは「ちゃんと暮らしていける」ことを挙げた。

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友人の死と、児童相談所との往復

島根にもパキる人はいるのかという質問から、話は重い方向へ進んだ。こにゃの地元の親友が亡くなっていた。一緒にリストカットをしていた相手で、家庭環境が悪かったこと、地雷系の格好を反対されたことが重なって「キャパオーバー」になり、気づいたらいなくなっていたとこにゃは語る。ゆきにゃんは「歌舞伎と島根ってそんな変わらない」「日本共通なのかな」と受け止めた。友達の自殺は10代にとってよくあることなのかと聞かれると、「ここに来てからあるあるかも」「ここに来なかったらマジでなかった」という答えだった。

みゆは、地元の友人が自宅で命を絶とうとしたのを引き止めた経験を話した。その友人は今も生きているが、その後児童相談所に保護された。親との関係も悪く、親が望めば入所させられてしまうという。

児相をめぐっては、ある種の循環が語られた。保護されても戻ってきて、半年以内にまた入る子が多い。施設を無理に抜け出してくる子もいて、友人が脱走を繰り返したために「児相出禁」のようになったという話まで出た。不満はスマホに触れないこと、外に出られないことといった自由のなさだ。一方で、家にいたくないあまり、自分から児相に入れてほしいと申し出た子もいたという。家が嫌だという点はみんなに共通しているのではないかと取材者が聞くと、家は大好きだと答える子もいた。3人のうちの1人は、ルールがあるから楽しめるという点で「鬼ごっこと一緒」であり、ルールがなければかえって別のところで制限がついてしまう、という趣旨のことを話していた。

散らばる集まり場 大久保の公園、河川敷、渋谷

トー横に人が集まらなくなった経緯も、3人とゆきにゃんの話からたどれる。かつてのたまり場は工事で入れなくなり、広場に戻ったものの補導がうるさくて人が来なくなった。一部はグリ下へ流れたという。

最近は「大久保界隈」と呼ばれる動きもあり、トー横の子たちが暇な人を集めて大久保の公園で花火をしていたという。横浜に移る子もいると聞くが、あちらもたまり場になっていた建物がなくなるため、河川敷に集まり、7人ほどが泊まることもあるという。以前あった大宮界隈は、警察が多く通報されやすいため下火になった。ゆきにゃんは、新宿に来れば誰かがいた時代が終わり、楽しくないからそれぞれ新しい場所に移っているのだろうと見ている。

最近ゆきにゃんが渋谷へ行くと、界隈の子に会うことが多い。話を聞くと、普通にマーラータンを食べに来たと言い、「界隈つまんないから」と言っていたそうだ。

新しく入ってきた「配信者界隈」

トー横キッズに代わって歌舞伎町で目立つようになったのが、配信者たちだ。ゆきにゃんの知り合いで、前年の取材でも一緒に映っていたあゆピカは45歳。性風俗店デッドボールに在籍しているが、最近は収入が思わしくなく休止中だという。本人の説明では、この店はかつて罰ゲーム的に使われる店というイメージだったが、今は安くても安心して遊べる女性が多い店として人気があり、コンセプトは今も地雷系だという。

あゆピカは、ある男性配信者経由で性的な内容の配信がバズり、本格的に配信を始めたという。さらに、女性を次々と口説く配信をしているあるナンパ系配信者への「当てつけ」として、彼より背が高くイケメンの男性に声をかけ、ホテル代を出してもらう「逆ナン配信」もしている。自身もかつてその配信者に本気で好意を持ったが、今は諦めた。同じような立場の21歳の女性もいるという。あゆピカが許せないと語るのは、その配信者が発達障害のある女性や引っ込み思案な女性、泥酔して判断能力のない女性を連れ込んでいる点だ。配信者としては応援したい気持ちもあり、潰すつもりはないとも付け加えていた。

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生活保護が決まった日のリボンちゃん

もう1人、配信者界隈で知られた人物としてリボンちゃんが紹介された。50代で、トランスジェンダーであることを示唆し、貯金400万円の中から手術費用を出したと語った。最近は配信をすると多くのアンチが来るという。

元は警備員として働いていた。仕事中の姿を見せようと、立哨中に自分をカメラで映して配信したところ通報され、解雇された。去年10月から家賃を払えず、滞納額は50万円余りになった。取材当日にちょうど生活保護の申請が通ったといい、住まいが決まるまではネットカフェで寝泊まりしているという。

もともとは「渋谷リボンちゃん」という名前で渋谷を拠点にしていた。歌舞伎町にいる理由は、配信者が多く知り合いも多いからだ。ゆきにゃんはこの状況を、自分たちにとってのトー横界隈と同じように、リボンちゃんにとっては配信界隈が新宿にあるのだと整理した。

住む家を失った24歳

リボンちゃんの隣にいた24歳のしき取りも配信者で、配信の視聴者数は400人ほどだった。以前は中野のシェアハウスに住んでいたが、中国人のオーナーに一方的に追い出されたという。家のない生活は2か月ほどになり、ネットカフェや新宿の路上で寝泊まりしている。

生活保護を受けたいとは考えているが、早く抜け出したいとも話していた。住む場所が決まらないと就職も難しい、という問題を抱えている。ゆきにゃんたちは、若者がいた場所に配信者の中高年が増えたという見立てを話していたが、路上にいる大人たちの中にはこうした配信者だけでなく別の層もいる。

Uber配達員と私服警察

では、通りにたむろする大人たちは誰なのか。ゆきにゃんが挙げたのは、Uberの配達員だった。夜の歌舞伎町ではホスト、キャバクラ、風俗で働く人たちが出前を頼むため、配達員はかなり稼げているようだとゆきにゃんは見ている。

取り締まりも強まっている。取材者によれば、以前はカメラの前で売春をしていると公言する若者もいたが、最近はリテラシーが上がってそうした子は減った。ゆきにゃんは、前年の撮影時にはほとんど見かけなかった私服警察官が今はかなり多く、現行犯で取り締まっていると話す。以前は通りにずらりと並んでいた立ちんぼも、ほとんどいなくなった。数人は必ずいるが、立っているというよりしゃがんでいる感じだという。取材者も、2〜3年前とはまったく変わったと繰り返していた。

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ホテル街の路地に集まる若者たち

取材班がホテル街の方へ歩くと、若者の一団がいた。18歳のいちは、ゆきにゃんと3〜4年の付き合いがあるTikTokのインフルエンサーで、フォロワーは1.7万人。「ゆきにゃん越え」を目指していると笑う。トー横歴は6年目で、13歳のときに暇つぶしの観光気分で新宿に来て、そのまま家に帰れず朝まで過ごしたのが始まりだった。トー横、大宮、グリ下を行き来してきたといい、翌日も新幹線で大阪へ行く予定だと話した。

新幹線代について聞くと、いちはバーで時給1800円で朝から夜まで働き、月30万円ほど稼いでいると答えた。配信のファンからの支援もある。さらに精神障害者保健福祉手帳3級を持っているため新幹線を割引で使えるといい、夜行バスと大差ない料金で乗れるから新幹線しか使わないと話していた。

一緒にいたダイヤは、2年ほど前から時々来ていて、最近は毎週末来ている。最近は喧嘩などの揉め事が増えたと感じており、ダイヤ自身も女性に殴られたという。相手は自分の友達を傷つけられたと思って殴ってきたらしい。ダイヤは相手が未成年で自分は成人しているため、1回目は殴り返さなかったが、2回目で殴り返したと話した。同じグループの別の若者は、受験を理由に元恋人に振られて落ち込み、家にも学校にもいたくなくて居場所を求めて来たと語った。ゆきにゃんは、居場所を求めて来る人が多いと応じている。

彼らがいたのは、かつて大久保公園周辺の立ちんぼで知られた一帯だった。周囲には若者より中年男性の方が多い。取材者は、トー横の子たちが居場所を失ってここに移っていることに衝撃を受けていた。

若者に「奢るおじ」

その場にいた40代の男性にも話を聞いた。職業は経営者で、年齢は明かさない。ゆきにゃんとは前年ごろにトー横で知り合った。本人は「時々歌舞伎町でブラブラ散歩してるぐらい」と言うが、周りからは毎回かわいい子を連れていると冷やかされていた。

若者に奢ることがあるのかと聞かれ、男性ははっきり答えなかった。それでもゆきにゃんは、お金のない女の子にとっては飲み物を奢ってくれるだけでもありがたく、そういう人がいてトー横が成り立っているイメージがあると話す。男性も、飲み物や食事くらいで喜んでくれるならいい、という受け止め方だった。

この男性は3年ほど前からトー横を見てきたという。かつて広場に子どもたちがたくさんいたが、今は柵ができて店が並び、まったく変わってしまった。一斉補導がニュースになった影響も大きく、親に「トー横に行くな、新宿に行くな」と止められている子が多いのではないか、と男性は推測していた。

取材者とゆきにゃんは、若者の居場所がもうあのホテル街の一角しかないことに驚いていた。何もない場所で、ホテルから苦情が来ないのかという疑問も出たが、見逃してもらえるのがあそこくらいなのだろうという話になった。トー横どころか東宝ビルの横ですらないのだから、もうトー横キッズではなく「歌舞伎町界隈」だ、という結論に2人は落ち着いた。

ゆきにゃんの近況 複数の支援者から1人の家へ

最後に、ゆきにゃん自身の近況が語られた。前年は、金銭的に支えてくれる男性が何人かいて、4軒ほどの家を渡り歩いていた。今はその全員と縁を切り、1人の男性の家で暮らしている。相手は30代後半で、恋人ではない。配信で最も多くお金を使ってくれた人だという。ゆきにゃんは配信を通じてパパ活の相手を募るやり方をとっていたが、何人もと連絡を取り合うのが面倒になり、1人に落ち着いた。新しい相手を探すのにも疲れたという。

恋愛感情はないが、ストレスがなければ最終的にはそれでいいと思うかもしれない、とも話す。一方で、今も新しい相手は募集していると冗談めかして言った。ただ、連絡してくる人はあまりお金のない人が多い。ゆきにゃんが求めているのは、投げ銭をぽんと送ったり、PayPayで1万円を送ったりしてくれるような余裕のある人だ。

ゆきにゃんは、すぐには会わず、時間をかけてやり取りして相手を見極めるという。その間に離れていく男性も多く、「釣りをしていたら魚がいなくなる」ようなものだと表現した。配信で知り合った人と結婚した例も多いという話に対し、取材者は「今の人を大切にした方がいい」と言う。ゆきにゃんは、お金があって余裕のある人がいいと答えて、取材は終わった。