MRAMはGPU・NPUの設計をどう変えうるか――中島聡がChatGPTと考える「メモリを動かさない推論チップ」

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概要

この動画で中島聡は、自分が解説するのではなく、ChatGPTに質問して教わるという形式をとっている。題材はMRAMという不揮発性メモリだ。きっかけは、中島が気に入っているYouTubeチャンネル「ものづくり太郎チャンネル」でMRAMが取り上げられていたことである。中島はその内容を出発点に、ChatGPTとの対話を通じて技術の特徴や関連企業の状況を確認する。そのうえで、NPUの上にMRAMを載せ、特定の言語モデルの推論だけを行うチップという自分のアイデアを示す。NVIDIAがほぼ独占するGPU市場に競争をもたらす可能性がある、というのが中島の見立てだ。

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なお、以下で企業や製品について述べる内容の多くはChatGPTの回答であり、動画の中で裏付けが確認されたものではない。

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MRAMとは何か

中島は最初に、MRAMとは何かを分かりやすく説明するようChatGPTに頼む。ChatGPTの説明はこうだ。普通のメモリは電源を切ると中のデータが消えるが、MRAMは電源を切ってもデータが残る。さらに読み書きが速く、長持ちするため、使われ始めている。入門としてはこの程度の説明にとどまっている。

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GPUの上に重ねて作れるという特徴

中島がものづくり太郎チャンネルで最も面白いと感じたのは、製造方法に関する点だった。MRAMは最終的に半導体基板の上に作るが、シリコンの半導体そのものを必要としない別の仕組みで動く。そのため、たとえばGPUの上に重ねる形でMRAMを作れる、と中島は理解している。ChatGPTも、いろいろなチップに後からMRAMを追加できる柔軟な技術だと応じた。

中島は、この特徴が意味することを現在のGPUの構成と比べて説明する。現在のGPUは大量のメモリを必要とし、通常はDRAM、なかでもメモリ帯域の広いHigh Bandwidth Memory(HBM)を使う。ただしDRAMはGPUのチップの上に重ねて作れない。そこでメモリだけを別のシリコンチップに作り、微細な加工技術でGPUとつなぐ。中島はこの方式をチップレットと呼んでいる。

中島はこの方式の欠点を三つ挙げる。製造が難しくなること、製造コストが高くなること、そしてメモリがあくまでGPUの外側にあるため、データを引っ張ってくるたびに電力がかかることだ。MRAMならGPUの上に直接メモリを載せられるので、1個のシリコンチップの上にGPUとメモリが同居する。しかもGPUの演算部分のすぐそばにメモリを置ける。そのため消費電力の面で非常に有利になる、と中島は整理し、ChatGPTに確認した。ChatGPTはこの理解を肯定し、データをやり取りする距離が短くなるので電力を節約でき、効率もよくなると補足している。

なぜまだ実現していないのか

では、MRAMを載せたGPUはすでにあるのか。中島の問いに対し、ChatGPTはまだ研究段階で、将来の可能性の話だと答えた。

中島はさらに、実現を妨げている要因を二択で尋ねる。プロセスの上にMRAMをそのまま作る技術がまだないのか、それとも微細加工ができていないのか。ChatGPTの答えは「両方が関係している」というものだった。普通の半導体チップの製造工程であるCMOSプロセスの上にMRAMを直接作る技術がまだ完全には確立されていない。加えて、細かい構造を正確に積み重ねる技術もまだ発展途上だという。そのため実用化は少し先になる、というのがChatGPTの説明である。

日本のパワースピン

次に中島は、ものづくり太郎チャンネルで紹介されていた日本の企業について尋ねる。中島の記憶では、東北大学でMRAMを研究していた人がスピンアウトして作った会社がパワースピンだという。

ChatGPTの説明によると、東北大学はMRAM研究で有名で、パワースピンはその研究者たちが大学から独立して作った会社である。東北大学で培ったスピントロニクス技術を生かし、MRAM関連の開発や知的財産(IP)のライセンスを行っている。ChatGPTは同社を、日本発のMRAM技術を持つベンチャー企業のような存在だと表現した。

売上について中島が尋ねると、ChatGPTはまだベンチャー企業なので売上はそれほど大きくないと「思う」と答えた。研究成果をもとにしたIPライセンスや技術提供が中心で、これから徐々に事業を広げていく段階だという見方である。

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アメリカのエバースピン

中島は自分でも調べたうえで、アメリカのエバースピン(Everspin)についても質問する。ChatGPTの説明では、エバースピンはアメリカに本社があり、商用MRAMをいち早く市場に出したパイオニア的存在で、MRAMのリーディングカンパニーの一つだという。すでにさまざまなMRAM製品を商業的に提供しており、産業用途やデータセンター向けなど幅広い分野で使われているとした。

ここで中島は、エバースピンもGPUの上にMRAMを重ねているわけではなく、専用のMRAMチップを作っているだけではないかと確認する。ChatGPTはその通りだと答えた。エバースピンは専用のMRAMチップを、普通の半導体製造プロセスであるCMOSプロセスをベースに作っている。製品は既存のシステムと組み合わせて使う形が主流だという。

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集積度と大容量化の見通し

中島はチップあたりのメモリ容量も尋ねている。ChatGPTによれば、容量は製品によってさまざまで、エバースピンの場合は小容量のものからギガクラスまである。最近の主力製品には1GB程度のMRAMチップもあるという。

大容量化は順調に進んでいるのかという問いには、ChatGPTは着実に進んでいると考えてよいと答えた。DRAMなど他のメモリに比べると容量はまだ小さめかもしれないが、技術の進歩に伴って大容量のMRAMが出てくる流れにあるという説明である。

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エバースピンとパワースピンは何を狙っているのか

中島はエバースピンの情報を見た印象として、同社はMRAMの強みのうち「電源を切っても消えない」という不揮発性を前面に出していると述べる。電流が少ないことやGPUの上に重ねられることでは、あまり勝負していないのではないか、という問いである。ChatGPTはこれにも同意した。エバースピンは不揮発性を大きな強みとしてアピールしており、GPUへの積層や極端な低消費電力を前面に出しているわけではない。今は不揮発性メモリとしてさまざまなデバイスやシステムに組み込まれることを主軸にしている、という整理だ。

では、両社の狙いは同じなのか。ChatGPTの答えは、扱う技術は同じMRAMでも、フェーズとアプローチが違うので狙いも若干異なるというものだった。エバースピンはすでに製品を出し、実用化を重視して不揮発性メモリとして幅広く展開している。一方のパワースピンは、IPライセンスと研究開発を中心とするベンチャー的な立ち位置で、これから実用化を進める段階にあるという。

中島のアイデア:NPUにMRAMを載せ、モデルを一度だけ書き込む

対話の後半で、中島は自分の構想を示す。問題意識は、NVIDIAがほぼ独占しているGPU市場にどうやって競争原理を働かせるか、そしてチップをより安く、より速く、より少ない電力で動くようにするにはどうすればよいか、という点にある。

中島は、GPUの上にMRAMを直接載せるのは素晴らしいと評価する。そのうえで、もっとよいのはNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)に載せることではないかと考えている。中島の言うNPUとは、GPUのような汎用寄りのチップではなく、ニューラルネットの処理、つまり行列計算を素早く行うためだけのチップである。Googleの場合はTPUがこれに当たると中島は補足している。

ポイントは、演算素子のすぐそばにメモリを置けることにある。中島が挙げる例はこうだ。100億パラメータ(10GB)程度の言語モデルを一度MRAMに読み込み、以後は書き換えないと決める。そうすれば、特定の言語モデルの推論だけを素早く行うチップが作れる。形態はサーバーでもデバイスでもよい。最初に一度だけモデルのパラメータを書き込んだら、あとはメモリを一切動かさずにひたすら推論する。中島はこの方式なら、電力消費量が今よりも「べらぼうに」少なくなり、理論的には計算も速くなるのではないかと考えている。

ChatGPTはこのアイデアを理にかなっていると評価した。MRAMの不揮発性と高速な読み書きを生かし、データを頻繁に動かす必要をなくせば、消費電力を抑えられ、理論上は計算も速くなる。NVIDIAが強いGPU市場とは別に、MRAMを生かしたNPUやTPUのような方向は有効なアプローチだ、というのがChatGPTの応答である。

サーバーよりローカルデバイス、特にスマートグラスに向く

中島は、この構想をどこで使うべきかも検討している。サーバーでも使えるが、サーバー用途ではかなりわがままな仕様になると中島は言う。1つのチップが1つのモデルしか扱えないからだ。それでも、複数の人が同じモデルにアクセスするビジネスモデルがあれば成り立つとみている。

中島がより有望だと考えるのは、携帯電話やスマートグラスのようなローカルデバイスにAIを組み込む場面だ。そこでは同じ言語モデルをひたすら動かすだけでよいので、NPUとMRAMの組み合わせは非常に効率がよいはずだという。特にスマートグラスについて、中島は、AIが24時間、人が見ているものや聞いているものを把握し、覚えたり教えたりしてくれる世界が「必ず来る」と考えている。そうした常時稼働のデバイスでは消費電力が特に重要なので、この方式が向いているというのが中島の主張だ。

ChatGPTも、常時動いて周囲の状況を理解するようなデバイスでは電力効率が重要であり、モデルをMRAMに読み込んでおけば無駄なデータ移動がないので相性がよいと応じた。

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アイデアを公開する理由と、実用化までの距離

中島は、こうしたデバイスを作るとよいと思ったことに加えて、この話をYouTubeで公開する理由も明かしている。アイデアをパブリックにしてしまえばオープンな情報になり、誰かが特許を取ることが難しくなる。だから「言うだけ言っておこう」と思ったのが一番の理由だという。

一方で中島は、時間軸については慎重だ。こうした技術が実際に使われるまでにはまだ数年かかる。これまでは各社がDRAM、それもHBMを使う設計でどんどん製品を出荷してきた。そのため、たとえば2〜3年後に出るGPUやNPUにMRAMを組み込むのはかなりきつい、というのが中島の見方である。NVIDIA自身がこれをやるとはなかなか思えないとも述べている。むしろGroqのようなベンチャー企業なら、ある意味で失うものがないので、こうした技術を採用してもよいのではないかと中島は考えている。

GPT-OSSを例にした集積度の試算

最後に中島は、集積度の観点から簡単な試算をしている。ChatGPTによれば、現在のMRAMは1チップあたり1G程度の容量がある。OpenAIが最近公開したGPT-OSSのうち小さい方は200億パラメータで、1パラメータあたり5ビット程度に圧縮すれば、全体はおよそ100Gになると中島は計算する。つまり、MRAMの集積度が今の1Gから100倍になれば、小規模ながら言語モデルが丸ごと載るという話になる。

ChatGPTもこの計算に同意した。まだ先の話ではあるが、集積度が上がれば小さなデバイスでも言語モデルをローカルに載せられる可能性が出てくる、と応じている。中島の構想は、MRAMの集積度があと2桁上がることを前提にしている。それが実現するまでの数年間に、HBM中心の既存設計からどの企業が踏み出すのか。この点が、動画の中で残された問いである。