人口4万人の館山で会員1700人:ビークイック館山店が示す地方ジムの勝ち筋

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概要

千葉県館山市は人口約4万人の町だ。M&A BANKの島袋直樹氏は、この町で24時間フィットネスジム「BeeQuick(ビークイック)」が流行っているという話を半信半疑で聞き、確かめるために現地を訪れた。案内したのは株式会社ビークイック代表の竹之内俊輝氏である。動画では店舗見学と会員への事前打ち合わせなしのインタビューを通じて、大手が出店を見送った町でなぜ会員が集まったのか、何がまだ足りないのかが語られる。

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大手が見送ったイオン内の物件

館山店はイオンの商業施設内にある直営店で、広さは約250坪。坪単価は3,200円ほどで、家賃は月80万円程度だと竹之内氏は説明する。物件が空いたのはコロナ禍の時期だった。人口が約4万人しかないため「普通に考えたら絶対出そうと思わない」立地で、大手企業も一時は検討したものの出店は見送られたという。

到着前、島袋氏は海岸沿いの立地を懸念していた。商圏の半分が海になるため、店舗としては条件が悪いのではないかという見立てだ。一方で土地が広いため建物が大きく、平屋が基本で、駐車場も大きい。この点は後の立地論につながる。

会員1700人、オープン前に1000人

見学したのは平日月曜の昼過ぎだったが、館内には利用者が多かった。店長の関口氏によると、会員は学生から60代まで幅広く、この時間帯は男性が多く、昼過ぎには女性も増える。男女比はほぼ半々だという。

会員数は現在約1,700人で、オープンから4年が経ち5年目に入った。オープン前の時点ですでに1,000人を超えていたという。近隣に競合ジムはほとんどなく、あるのは市街地の方だけだ。

料金は月会費3,300円が基本で、オプションや年会費を合わせると1人あたり平均4,500円ほどになる。年間の売上は1億円近くに達すると竹之内氏は話す。どれくらい利益が残るのかという問いに、島袋氏が「家賃80万円なら4,000万円ぐらい残る計算だ」と見積もり、竹之内氏もこれを肯定した。

女性専用ルームと手作りの使い方ガイド

館内には女性専用のレディースルームがある。広さは都内のチョコザップ1店舗分ほどで、ピラティスの設備や鏡を使ったトレーニング機器も置かれている。竹之内氏は、女性専用だからといって中途半端にせず、一通りのトレーニングができるようにしていると説明する。

マシンには使い方の説明が貼られている。店長が自分で作成し、女性スタッフをモデルにして分かりやすさを意識したものだ。島袋氏は、使い方が分からない利用者にとって親切な工夫だと評価した。

会員インタビュー1:医師の勧めで始めた55歳

1人目に話を聞いたのは、車で1分の距離に住む55歳の会員だ。通い始めて丸3年で、それまでジムに通った経験はなかった。

きっかけは医師から運動習慣をつけるよう言われたことだった。いろいろ試したがうまくいかず、海の近くで育って泳ぐのが好きだったためプールに通った。しかしYouTubeで「有酸素運動は筋肉も落とす」と知り、ウェイトトレーニングが必要だと考えた。市営・県営のジムを探し、車で20〜30分かかる山の中の施設に行ったが、利用者が少ない。理由を尋ねると「イオンのジムに持っていかれた」と言われた。普段イオンのスーパー側の入り口しか使わないため、この店の存在を知らなかったという。すぐ電話で体験を申し込み、予約なしで来てよいと言われて通い始めた。

3年でかなり体つきが変わり、ベンチプレスやスクワットにも取り組んでいる。気に入っているのはマルチスクワットマシンで、肩の筋肉を鍛えるシュラッグに使っている。

改善してほしい点を尋ねると、具体的な要望が出た。パワーラックはJフック(バーを掛ける黄色い爪)の幅が大きく、ラックアップから構えるまでに距離が生じるため、ベンチプレス専用台が欲しい。インクラインのマシンも欲しい。女性にはアシスト付きのチンニングマシンが喜ばれるのではないか、という提案もあった。さらに旅行先でも使えるよう、京都や大阪に店舗を増やしてほしいという。

竹之内氏によると、他店舗の相互利用は可能で、天橋立の近くには出店予定がある。京都市内は物件が高く難しいとも話した。マシンについては「館山店にはないが他店には結構入っているもの」だと認め、リニューアルが必要だと述べた。

会員インタビュー2:週5日通う17歳

2人目は通信制高校2年の17歳の会員だ。柔道部で体を大きくしたいと思い、約2年前から週5日通っている。他のジムは利用したことがない。以前の写真と比べると別人のような体つきで、「弱くて105」(kg)を挙げるという。

要望は、パワーラックをパワーリフティング仕様にしてほしいこと、デッドリフト用のプラットフォームが欲しいこと、ハックスクワットのマシンが欲しいことだった。竹之内氏はまたも「他店では標準で入っている」と答え、島袋氏から「言い訳が多い」「この人はここにしか来ていない」と突っ込まれる場面もあった。竹之内氏は要望のマシンを導入し、最初に使う権利をこの会員に与えると約束した。

生の声から見えたリニューアルの必要性

インタビューを終えて竹之内氏は、館山店のマシンは2020年頃に発注したもので、5年目に入った今、流行も変わり、同じベンチでも細部が違ってきていると振り返った。「儲かっているからいい」と続けるのは良くないと気づいたという。

島袋氏は、ビークイックが海外ブランドではなく国内発のフランチャイズであるため、こうした要望に柔軟に対応しやすいと指摘した。自身が手がけるクラブピラティスは海外フランチャイズで、やりたくてもルール上できないことがあるという対比だ。

自社製マシンで設備コストを抑える

館内のマシンは8〜9割が自社製で、輸入によって価格を抑えているという。有名メーカーの方が良いという声はないのかと問われ、竹之内氏は自身もトレーニングしているが使用感はほとんど変わらないと答えた。壊れやすいのではという評判についても、オープン以来大きな故障や買い替えはなく、ワイヤーの経年劣化はあっても自分で直せる範囲だと説明した。

HYROXへの需要

館山店には今年からHYROX(ハイロックス)用の設備も導入された。地方にはまだ早いのではという問いに、竹之内氏は否定する。大会に出る会員がいて、本格的な会員は先日の韓国の大会まで出場した。近くのビーチで屋外イベントを開いた際には30名近くが参加したといい、需要は十分あるという見方だ。

超アナログな集客:スーパー前でチラシ配り

オープン前に1,000人を集めた方法について、竹之内氏は「超アナログ」だったと明かす。この地域ではGoogle広告はあまり意味がなかった。商業施設内という立地を生かし、スーパーの前に机と椅子を置いてチラシを配り、入会を受け付けた。そこから口コミで広がっていったという。

店長の関口氏は、うまくいっている要因を「価格に見合わない規模感」だと答えた。体験や見学に来た人の第一声は「この広さとこの設備でこの値段は安すぎる」だという。島袋氏は「シンプル」と受け止めた。館内には初心者向け、細マッチョ、女性のダイエット、バルクアップなど目的別のメニューも掲示されており、飽きたときにも取り組み方が分かるようになっている。

オプション販売と客単価の上げ方

館内にはシミュレーションゴルフもある。お試しは1回500円、継続利用は平日のみで月3,300円、土日を含む終日で月5,500円をジム会費に追加する。

最も多く契約している会員は、ゴルフ、タンニング、エステ、ロッカー、水素水などのウェルネスサーバーまでほぼすべてを付け、月2万円近くの請求になる。ただしフルセットは一握りで、多くは会費に何かを1つ2つ足す形だという。

販売力の高いスタッフがいて、入会と同時にエステやサーバーを契約してもらうこともある。ただし竹之内氏は、それでは人に頼ることになると考え、現在は入会時のキャンペーンでオプションをあらかじめ付けている。水素水やロッカーが2か月付いた状態で入会し、不要なら申し出てもらい、何も言わなければオプション付きのまま続く。島袋氏が「携帯電話と一緒だ」と言うと、竹之内氏はそうだと認め、この方法で客単価を上げていると説明した。

1700人前後で推移する会員数

会員数は伸び続けているのか、頭打ちなのかという問いに、竹之内氏は1,700人前後を行き来しており、1,750人になったり1,800人近くになったりする状態だと答えた。島袋氏が「十分では」と言うと、竹之内氏も笑って認めた。

なぜ館山に出したのか:通常の商圏調査ではNG

出店の経緯について、竹之内氏は、館山に遊びに来て良い町だと思っていたところ、物件が安く空いたという情報が入ったと話す。通常の商圏調査では「絶対NG」の場所だが、自分なりに調べて出店ありと判断し、実際に反応も良かった。

近隣には最近開業した施設もあるが、昔からのブランドが多く、それが逆に穴場になったと両氏は見る。竹之内氏は、こうした場所はまだ全国にたくさんあると考えている。狙い目は地方で、中心地から少し離れ、駅前よりも駐車場があり車で来られる立地だという。島袋氏は競合も入りにくいと付け加えた。愛知県で撮影した前回の動画をきっかけに茨城県で物件探しが進んでおり、翌週に一緒に物件を見に行く予定だという話も出た。

セルフエステ:サロンより安い選択肢

最後に案内されたエステエリアは、ジムとは別の施設のような雰囲気だ。竹之内氏はもともとエステ機器を手がけてきた経緯がある。トレーニングをする人の目的も、最終的には痩せる、きれいになることが多いため、エステの利用者は多いという。

エステの利用者は約100名で、そのうち約6割が女性だ。脱毛機があるため男性の利用者もいる。セルフエステはボタンを押して肌に当てていくだけの仕組みで、本番ではジェルを使う。利用は最大1時間で、オプション料金は月1,100円。サロンに通えば1回1万円ほどかかるが、ここなら月1,000円程度だと気づいて契約する人が多いという。

安全面について竹之内氏は、出力レベルの設定を抑え、安全なものだけを導入し、しっかりしたメーカーの機器を使うよう心がけていると説明した。

見学を終えた島袋氏は、人口4万人で会員1,700人、しかも月曜の昼にこれだけ人がいることに驚いたと述べた。竹之内氏は「全店こんな感じ」だと応じ、同じような条件の場所はまだあるという見方を示した。一方で、2人の会員の要望が示したように、5年目に入った館山店では設備の更新という課題も残っている。