『機動戦士ガンダム』第23話「マチルダ救出作戦」をどう読むか:Gファイター登場回に見るスポンサーの要求と富野演出

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概要

岡田斗司夫の「機動戦士ガンダム完全講座」の第23話「マチルダ救出作戦」の回である。岡田はこの回を、新商品Gファイターを売り込むために作られたエピソードとして読む。そのうえで、スポンサーの要求を受け入れながらも作品のリアリティを守ろうとした富野由悠季監督の工夫と、それでも隠しきれずにこぼれた本音を拾い出していく。講座は前半と後半に分かれている。前半ではブライトの作画崩れ、レビル将軍の初登場、ドダイYSの三点を、後半ではコアファイター・ガンペリー・ガンキャノンの連携、Gファイターの作画、おもちゃ販売の事情の三点を扱う。

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崩れていくブライトの作画

冒頭、ホワイトベースは葉などでカムフラージュされ、大穴の開いたエンジンを修理している。しかし部品が足りない。そこへブライトから呼び出しがあり、ミライが部屋に行くと艦長代理に任命される。寝込んだままのブライトが手書きで書いた「艦長の心得」を渡される場面である。

岡田が注目するのは、上半身を起こすブライトの作画だ。顔は崩れていないが、身体には「尻や腰がない」と岡田は指摘する。尻の位置から見て、この姿勢で起き上がれるはずがない。起き上がるなら後ろに手をついて支える必要があるが、その手も異様に長い。腰があるべき位置と描かれた位置がずれているので、ベッドのシーツで下半身を隠してデッサンの狂いをごまかしている、というのが岡田の見立てである。

岡田によれば、『ガンダム』はもともとデッサンの崩れが多い作品で、「ガンダムの盾は作画崩れを隠すためにある」と言われるほどだった。このあたりからメインキャラクターのプロポーションや重心の崩れが徐々に増えていき、せめて顔だけは崩さないよう努めている様子がうかがえるという。岡田はこれを『未来少年コナン』と比べ、あちらではこうした崩れは本当にない、とも述べている。

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レビル将軍の初登場と「描かない」連邦軍

続いて地上戦艦ビッグ・トレーが現れ、レビル将軍が初めて画面に登場する。名前自体は第9話で補給に来たマチルダの口から初めて語られ、第14話と第16話でも名前だけが出ていた。第23話でようやく姿を見せたことになる。

岡田は、このテレビシリーズで連邦軍の最高位として描かれるのがレビルだという点を強調する。ジオン側はデギン公王やギレン総帥といったトップが次々と登場するのに、連邦側には大統領にあたる人物が出てこない。そのため連邦軍がどういう組織なのかは見通しにくい。岡田はこれを、戦争ものとして敵側を細かく描き、味方側をあまり描かない手法だと評価する。表現のバランスをあえて崩していることは気づかれにくいが、『ガンダム』がうまく見える理由のひとつは、描かない部分を思い切って削っている点にある、と岡田は考えている。

レビルの顔立ちについては、帽子を取れば『宇宙戦艦ヤマト』の沖田艦長に、さらに元をたどれば『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじに似ていると岡田は言う。登場順はおんじ、沖田、レビルの順だ。軍の偉い人はなぜかこういう顔になってしまう、と岡田は笑う。コメント欄から日露戦争の乃木将軍ではないかという声が上がると、それもあり得ると応じている。

5:50

マチルダ、エルラン、ジュダックを同じフレームに入れる

レビルが命令を与える場面には、マチルダ、エルラン中将、ジュダックの3人が並ぶ。マチルダが直接命令を受け、エルランは「ホワイトベースにそこまで肩入れする必要はない」と口を挟む。エルランは前回登場した連邦内部の裏切り者である。前回の「エルラン中将に伝えておけ」というセリフを受けて、視聴者が抱いた「エルランとは誰なのか」という疑問に答える場面だと岡田は説明する。後にホワイトベースのために命を落とすマチルダと、その原因を作るエルランとジュダックを、同じフレームに収めているわけである。

岡田はここで、連邦軍の階級章が分かりにくいとも指摘している。マチルダとエルランが同じ記章をつけているように見えるので同じ階級かと思ったが、連邦軍は肩の記章が全員同じに描かれており、少尉か中尉か大尉かが判別できない。将官以上になると服装が変わるので分かる、という。

ジオン側のマ・クベについても触れている。マ・クベはエルランからの情報を使いすぎたために、かえって連邦側に疑われることになる、と岡田は説明する。頭の切れる人物なので自分の行動が読まれるとは考えず、情報をそのまま使ってすぐ手を打った。その結果、動きが筒抜けすぎて「内通者がいるに違いない」と思われ、この先のオデッサの戦いで裏切りが露見していく、という流れだ。

マチルダが受けた命令は、ガンダムのパワーアップパーツを届けることだった。その情報をジュダック経由で得たマ・クベは、新兵器ドダイYSの出撃を命じる。前回ホワイトベースを破壊せずに置いたのはこれが目的だった、と岡田は読む。レビルからの補給をこまめに出させ、その補給を叩くことで連邦の戦力を少しずつ削いでいく。岡田はこれを「ベトコンと同じ考え方」だと表現している。

8:13

ドダイYSはGファイターの「かませ犬」

ドダイYSは、グフを乗せたまま地上から垂直上昇し、戦闘機を護衛につけて編隊飛行する赤い円盤状の機体である。岡田はこれをスポンサーの要請で出てきた兵器だと断言する。ただし、ドダイ自体のおもちゃが売れると期待されたわけではない。後に登場するGファイターの「かませ犬」として用意されたのだという。

その背景として岡田が挙げるのが、おもちゃ業界の伝統である。1973年の『マジンガーZ』では、超音速で空を飛ぶ機械獣が登場し、「マジンガーは空を飛べない」という苦戦回が2、3回続いた。その後にジェットスクランダーが出てきて合体し、マジンガーが空を飛べるようになった。合体の瞬間は翼が真横に広がり、加速すると後退翼に変わるという見せ方もあって、子どもたちは熱狂した。岡田自身、当時中学生だったのに欲しくなったという。これで落ちていたおもちゃの売上が大きく伸びた、と岡田は語る。

岡田はここから一つの原則を引き出す。主人公ロボットが空を飛ぶのはかっこいい。しかしその前に敵が空を飛び、自分は飛べずにどうしようもない、という流れを作らなければ、そのかっこよさは伝わらない。富野監督も同じ流れを期待され、まず「空を飛ぶ敵」を出さざるを得なかった。とはいえ、いきなり空を飛ぶモビルスーツを出せば『ガンダム』の世界は崩れすぎる。それまでガンダム自身も飛んではおらず、ジャンプを繰り返して空中戦をこなす程度が限度だった。そこで出てきたのが、モビルスーツを乗せて飛ぶ台としてのドダイYSだった、というのが岡田の解釈である。

11:42

「今週のビックリドッキリメカ」としてのドダイ

岡田はドダイYSを『ヤッターマン』の「今週のビックリドッキリメカ」になぞらえる。デザインは同じ大河原邦男だ。前面にミサイル発射口がずらりと並び、非常に短いミサイルがポンポンと出てくる。長いミサイルを出さないのは「せめてものリアリティ」だと岡田は言う。『マジンガーZ』では腹に収まるはずのないサイズのミサイルが出てきたが、ドダイはそこを守っているというわけだ。

それでも、グフを乗せたままおそらくマッハ1程度で飛ぶという設定には無理がある。これまで積み上げてきた『ガンダム』のリアリティを一瞬で台無しにしかねない代物で、しかも上に乗ったグフは空中でヒートロッド(岡田は「鞭」と呼ぶ)をガンダムに打ちつける。岡田はこれを「かなりでたらめな戦闘シーン」と評し、富野監督は悲しかっただろうと推し量っている。

13:10

ミデア輸送機の編隊と出撃

場面はブリッジに戻る。レビルからの暗号通信が入り、補給物資とガンダムのパワーアップパーツを送ったと知らされたミライは驚く。続いて大平原を飛ぶミデア輸送機5機の編隊が映る。現地にたどり着いたのは結局4機だけだった。岡田は、全機が到着していたらさらにすごいパワーアップパーツが入っていたのではないか、と妄想してしまうと話す。

そこへドダイとグフの攻撃が始まり、救難信号を受けたホワイトベースから、アムロはコアファイター、カイはガンキャノン、ハヤトはガンダムのパーツを積んだガンペリーで出撃する。アムロが戦場に到着したところでAパートが終わる。

14:43

コアファイター・ガンペリー・ガンキャノンの時間差作戦

後半で岡田が最も力を入れて解説するのが、三機の連携である。手元のおもちゃを並べながら説明している。

まずコアファイターについて、岡田は宇宙空間でも飛べる機体だと説明する。インテークが閉じる仕組みで、ジェットとロケットの両方を使えるため非常に速い超音速機だという。以前カタパルトを使って第一宇宙速度、マッハ26程度を出したことがあるから、単独でもおそらくマッハ10ぐらいは出せるだろう、と岡田は推測する。おそらく空気の薄い層を大回りして真っ先に戦場へ着くが、敵からは丸見えである。ただ、1機しか来ないので敵は油断する。

コアファイターは弾薬に限りがあるなかで数分間落とされないように粘り、敵がそれを囲んで落とそうとしている間に、ミデアは少しずつホワイトベースへ近づいていく。その後ろから、ガンダムをパーツに分けて隠したガンペリーが、森の上すれすれを低速で飛んでくる。レーダーに映らないようにするためだ。さらにその後ろを、ガンキャノンがジャンプせずに森の中を延々と走ってくる。

ガンペリーが近づいて初めて敵は気づく。モビルスーツが出てくるかもしれないと考え、全機がガンペリーに攻撃を集中させる。その頃にガンキャノンが追いつき、攻撃を始める。敵が「モビルスーツまで来たのか」と戦闘に入っている間に、ガンペリーのハッチが開いてガンダムのパーツが出てくる。アムロは戦闘中に空中でコアファイターを合体させ、ガンダムに乗り換える。

岡田はこれを戦略的にかなり良くできていると評価する。前回紹介したマ・クベの戦略は、詰将棋のように自分に有利な状況を作って敵を誘い込むものだった。アムロたちはそれと同じことをやり返している。まずミデアから敵の攻撃をそらすために1機で行き、敵を引きつけ、ガンキャノンの援護が届く位置まで誘い出してから戦闘を有利に進める。前回やられた作戦をそのまま返している、というのが岡田の読みである。ただし、空中での乗り換えは「なかなか無茶」だとも付け加えている。

22:12

グフの鞭に敗れるガンダムと、マチルダの作画

戦闘が進むと、パワーアップメカを積んだ4番機が不時着する。それを助けようとして油断したアムロは、背後からグフのヒートロッドを受け、ガンダムは大きく壊される。カイも不時着したミデアを援護しきれない。マチルダは「ガンダムのパーツだけでも助けるのよ」と叫ぶ。

岡田によれば、このマチルダの作画にはやたらと気合いが入っている。キャラもメカも作画崩壊しかけているこの回で一番かっこいい場面であり、上下のまつ毛まで全部描き込まれているという。

23:00

サンダーバードをなぞる構成

炎上しかけたミデアから、Gファイターがキャタピラを鳴らして出てくる。岡田はこれを「完全にサンダーバード」だと言う。中央にコンテナがあり、中からメカが出てくる構造は『サンダーバード』2号そのもので、富野監督が『ガンダム』でやりたかったことの一つがサンダーバードだったことが分かる、と岡田は述べる。

岡田はさらに『サンダーバード』第1話を振り返る。ロンドン空港からSOSが出ると、1号が太平洋の島から発進してあっという間に到着する。途中で「時速2万5000キロで飛行中」と伝え、空港側が驚く。岡田によればこれはマッハ25に相当し、第一宇宙速度に近い。つまり1号は水平飛行しているように見えて、実際は空気の薄い高度まで上昇し、地球を回り込むように弾道飛行して、ほぼミサイルの着弾のような角度で降りてきている。そのあとに輸送機の2号が音速前後の速度で機材を運んでくる。岡田は、これが第1話の大きな流れだと今になって分かると言う。そして、コアファイターが超高速で先行し、続いてガンペリーがガンダムを運び、キャタピラでGファイターが出てくるという第23話の構成は、サンダーバードを丁寧になぞっている、と指摘する。

25:10

同トレスで「揺らいで」見えるはずだったGファイター

ボロボロになったガンダムは盾も腹部も削られ、歩けず、武器も尽きかけている。そこへ「アムロ!」という声がして、Gファイターが現れる。

岡田はこの場面の作画を「同トレス」だと説明する。1枚の原画を動画担当が何度もトレスし直し、交互に見せる手法である。おそらく絵コンテの意図は、望遠圧縮で陽炎が立ち、メカが揺らいで見えるなかを正面から走ってくる、という非常にかっこいいカットだった。こうした陽炎の表現は『ルパン三世 カリオストロの城』や『未来少年コナン』でもよく使われている。しかしここではうまくいかず、メカがぐにゃぐにゃして見えるだけになってしまった。狙いとしては、『エヴァンゲリオン』のジェットアローンのように陽炎の向こうから機体が歩いてくる、フォトジェニックな場面だったはずで、岡田は見ていて惜しいと感じるという。岡田はここに、やる気のあるスタッフ、やる気のある作品ほど作画崩壊するという、『SHIROBAKO』の教訓が見えると話している。

27:36

かっこ悪いもの同士の空中戦

ハヤトが操縦するGファイターの上にガンダムが乗り、ドダイYSに乗ったグフと空中戦をする。岡田はCDケースなどを使いながら、「これ対これ」で双方とも無茶だと笑う。

これまでのロボットアニメであれば、すれ違い、「回り込め」と急旋回し、「ぶつけろ」と体当たりしてドダイを破壊し、落ちていくグフを追うという展開は非常にかっこいいはずだった。しかし、かっこ悪いもの同士が戦っているのでどうしようもない、と岡田は言う。演出の力にも限度があり、富野監督は悔しかっただろう。それでも岡田は、無理やりパワーアップパーツを出させたスポンサーもすごいし、それに合わせて敵も飛ばさなければならないなかで、ぎりぎりリアリティの範囲内でモビルスーツを飛ばそうとした富野監督の工夫もすごい、と評する。「素直に脱帽」だと言いながら悪口が止まらない、と自分でも笑っている。

本編では、Gファイターの翼にやや下反角をつけて機首を下げ、ファントムのようなジェット機らしく描こうとしている。ドダイもできる限りかっこよく描こうとしている。岡田はそこに作画スタッフの苦労を見ている。

30:13

3回のパンと無線封鎖を破るレビル

戦闘に勝ったあと、見上げるアムロの上をGファイターが超音速で飛び、「あれがGファイター」と言う。岡田はここに3回の横パンがあると指摘する。1回目はGファイターの横姿、2回目は戦場の端にいるマチルダの上を飛ぶGファイター、3回目はミデアの横でマチルダたちが見上げる上空を飛ぶ姿である。演出で懸命にGファイターのかっこよさを見せている、という。

さらにブリッジには再びレビルから通信が入る。戦時中で無線封鎖のはずなのに、この回のレビルはやたらと通信をしてくる。目的は、ミライを褒めることと、「送ったパワーアップパーツはすごいぞ」と伝えることだ。岡田はこれを、スポンサーへの言い訳のようなものだと見る。アムロが見上げ、マチルダも誇らしげに見上げ、3回パンをし、レビルがわざわざ無線で念を押す。岡田はこの回全体を、「Gファイターをクリスマス商戦でぜひ買ってください」というプレゼンテーションだとまとめる。ただし、このGファイター登場のあたりから打ち切りが決まりつつあったという、悲しい回でもあると付け加えている。

富野監督はGファイターについて各所でぼやいており、岡田は『ガンダムを創った男たち』の記述を紹介する。Gファイターはガンダムを格納でき、出した後は合体して戦闘機にもなるという設定だが、ガンダムを出した後の中身は「お察しの通りすっからかんのがらんどう」だとされている。岡田はその通りで、何も入るスペースがなく、こんなものが武器であるはずがないと笑い、富野監督はこの件をいつまでも悔しがっていたと語る。

33:58

「パワーアップメカ」という言葉

講座の最後の追加パートで、岡田はセリフの面からGメカの売り込みを検証する。レビルの「ガンダムのパワーアップのメカのテストをホワイトベースの連中にやらせる」というセリフについて、岡田は、ミリタリー的なリアリティを積み上げてきたこのシリーズなら、本来は「追加兵装」や「支援兵器」と言うはずだと指摘する。「パワーアップメカ」という具体性のない言葉は、「エネルギーの99%がなくなりました」式のいい加減な言い方で、『ガンダム』は普段そういう言い方をしない。あえてそう言わせているのは、主なターゲットである小学生に直接伝えるためだ、と岡田は考える。時期はクリスマスから正月にかけて、子どもが一番お金を持っている時期であり、ここで売らなければ『ガンダム』は終わってしまう。この言葉はレビルだけでなく、マ・クベ、ハヤト、マチルダらのセリフにも繰り返し出てくる、と岡田は画面で示している。

36:13

空を飛ぶことへの言い訳の積み重ね

岡田が面白いと言うのは、この回がジェットスクランダー型の展開に見えながら、巧みにそれをずらしている点である。ガンダムはもともと、飛んでいるように見えても背中のロケットでジャンプしているだけで、そうしてリアリティを守ってきた。監督側は「新メカで空を飛べるようになった」とはできるだけしたくない。一方のおもちゃ会社は、ガンダムを飛ばしたい、なんなら新メカの上に立って飛んでほしいと要求する。この二つがぶつかった結果が第23話だという。

流れだけを見れば、空飛ぶ敵に苦戦したガンダムが自分も空を飛んで対抗した話に見える。しかし岡田は、よく見ればそう単純ではないと言い、配信で確認してほしいと呼びかける。アムロはマチルダに気を取られ、背後から地上を歩く普通のグフにやられた。空飛ぶグフが強かったから負けたわけではない。ヒートロッドの電撃による誘爆を恐れてビームライフルを捨て、地上のグフは倒したものの脚の回路をやられて動けず、残る武器はサーベルだけになった。ドダイに乗ったグフを倒すには、Gファイターに乗って無理やりサーベルを当てるしかない。これまでの空中合体と同じく、それしかないから仕方なく、無理を承知で乗った、アムロが天才だからできた、という流れになっている、と岡田は説明する。

岡田自身は当時大学生で、この場面を素直にかっこいいと思ってしまったという。ドラマの流れにやられたのだろうと振り返りつつ、番組の合間に流れるおもちゃのCMはかっこ悪く、かなり葛藤したとも語る。

39:06

カイのセリフに漏れた本音

岡田が「極めつけ」と呼ぶのが、カイの「もっとも、俺が撃ち落とせばいいんだろうが」というセリフである。空を飛ぶ敵が出てきたなら、ガンキャノンの大砲のような強力な武器で撃ち落とせばいい。ロボットを上に立たせたドダイは、ドップ戦闘機より遅いはずで、的も大きく、撃ちやすい。ガンキャノンはそもそもそういうものを撃ち落とすための機体だと岡田は言う。実際この回でもカイは地上からガンキャノンで空飛ぶグフを1機落としている。だから空飛ぶ敵に対して自分も空を飛ぶことで対抗する意味はない。岡田はこのセリフを、カイの口を借りてあふれた富野監督の「血の出るような本音」だと読む。

綱引きから生まれた作品として

岡田のまとめによれば、富野監督はスポンサーの要求は完全に守ると宣言し、実際に守ろうとした。そのうえで、自分たちの作りたいものも守りたいと工夫を凝らした。それでも、Gメカやガンダムハンマー、ビームジャベリンのように、どうしようもなく残ってしまうものはある。そして、それについても誰かのセリフを借りて、つい本音を言ってしまう。岡田はこの大人の本音の出し方を素敵だと評価する。やりたいこととやらなければならないことが引っ張り合う関係から優れた作品が生まれており、テレビシリーズの『機動戦士ガンダム』にはそうした綱引きが多い。作り手からすれば「本当はあんなものやりたくなかった」と思っているかもしれないが、自分はそういうところが大好きで面白く見ている、と岡田は語って講座を締めくくった。次回は第24話「迫撃!トリプル・ドム」で、ジオンの新型モビルスーツが登場する。