Metaの「パーソナル・スーパーインテリジェンス」をどう見るか:中島聡が語るスマートグラスへの期待とプライバシーの扱い

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概要

The Informationに掲載されたマーク・ザッカーバーグのインタビュー記事をきっかけに、元Microsoftのソフトウェアエンジニアで起業家の中島聡氏が、ChatGPTを聞き手役にして対話した。ザッカーバーグが掲げる「パーソナル・スーパーインテリジェンス」という構想について、中島氏はMetaが自社の強みを生かせる勝ち筋だと評価する。そのうえで、スマートグラスが生活をどう変えうるか、プライバシーの問題とどう折り合いをつけるかを語った。

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GoogleやMicrosoftとは逆の「パーソナル」を選んだMeta

中島氏がまず注目したのは、構想に「パーソナル」という言葉が使われている点だ。GoogleやMicrosoftは現在エンタープライズ向けのビジネスに力を入れている。その中でMetaは個人向けを打ち出した、と中島氏は整理する。

この方向性は、かつてGoogleがGoogle Glassで目指したものに近いと中島氏は言う。ただし同氏の見方では、Googleは個人向け、特にエンターテインメントに近いサービスの提供が得意ではない。マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社の中でMetaの強みがどこにあるかといえば、FacebookやInstagramに代表されるコンシューマ向け、エンターテインメント向けの領域だ。今回の構想は、その強みを踏まえてザッカーバーグが「どこで勝負するか」を考えた末に出てきた道筋だと中島氏は受け止めている。

中島氏はMetaの過去の方針にも触れた。一時期掲げていたメタバースについては「ちょっとしょうもないこと」と評し、最近になってようやく「ちゃんとAIと言ってくれるようになった」と述べた。そのうえで、最も期待しているのはMetaが作ったスマートグラスだという。中島氏は収録中に実際にそのグラスをかけてみせた。以前の動画で見せた際の視聴者コメントにも触れつつ、スマートグラス戦略に大きく期待していると語った。

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一番欲しい機能は「人の名前を覚えてくれること」

スマートグラスが普及したら生活はどう変わるか。ChatGPTにそう問われた中島氏は、自分が最も期待しているのは「人の名前を覚えてくれること」だと答えた。

一度しか会っていない人や久しぶりに会った人の名前を思い出せないのは、相手に対してとても失礼だと中島氏は言う。グラスがそれを覚えておいてくれるだけでも、ものすごい価値があるというのが同氏の考えだ。

中島氏が描く将来像では、グラスという形かどうかは分からないものの、日々の会話や状況をすべて見ているAIが存在する。そのAIが必要に応じて情報を圧縮して記憶し、人間の「二次記憶」のように働く。たとえば3年前に一度だけ会った人の名前を覚えていて、どんな状況でどんな話をしたかも記録している。再会したときにはきちんと名前で呼べる。その人の会社が何をしているかを当時は興味深く聞いたのにすっかり忘れていた、という場合でも、AIが思い出すきっかけをくれる。中島氏によれば、人間はきっかけさえあれば意外と覚えているものなので、それで会話がまた膨らむ。

そうしたことをしてくれるなら「とてつもない価値がある」と中島氏は言う。月々20ドルでも200ドルでも払っていいくらいのサービスだという。車の鍵をどこに置いたかを覚えておくような些細な用途も便利だと認めつつ、鍵になるのはやはり人とのコミュニケーションだろう、というのが中島氏の見立てだ。

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プライバシーは「やるしかない」前提で、仕組みで守る

ChatGPTは次に、プライバシーや倫理的な問題とのバランスをどう取るべきかを尋ねた。中島氏は、難しくて簡単には言えないと前置きしたうえで、こうしたデバイスやサービスが提供する価値を考えれば「やるしかない」と述べた。あとは社会がそれをどう許容していくかの問題でしかない、という立場だ。

AIがすべてを記憶し、それがどこかのサーバーに残っている状況が人を不安にさせることは、中島氏も認めている。その対策として同氏が挙げたのは、記憶を持ち主から外に出さない仕組みだ。自分が見た情報は自分に属するAIが覚えておくが、決して外部には出ていかない。本人が意図的に外に出した場合は、本人が出したことが分かるようにしておく。情報はその情報が属する個人のものとしてしっかり保存され、悪意を持って持ち出そうとした人を明らかにする仕組みも用意する、という考え方である。

中島氏は、機能の設計そのものでリスクを下げる方法にも触れた。人の名前を覚える用途であれば、記憶はAIがすべて行うが、記録した映像を取り出すのは難しくしておく。一度会った人の顔写真を見たいとなればプライバシーの問題が生じうるが、顔を覚えておいて照合だけをしてくれ、画像そのものは引き出せないという形もありうる、というのが同氏の例だ。

ただし中島氏は、それでも別の問題は出てくるし「言い始めたらきりがない」とも付け加えている。結局はサービスが社会にもたらす有用性と、プライバシー侵害の問題とのバランスでしかない。やり方次第でどうにでもできる、というのが同氏の見方だ。

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ウォーターマークによる追跡と、いたちごっこ

この話題の補足として、中島氏は撮影データへのウォーターマークにも言及した。誰のグラスが撮影したのかという情報をウォーターマークとして刻んでおけば、本来出すべきでない情報を誰かが漏らしたときに、誰が出したかを特定できる。そうした対策はしっかりやっておく必要があると中島氏は言う。

一方で、こうした対策はいたちごっこになり、ウォーターマークを除去するソフトが必ず出てくることも中島氏は認めている。それでも「やるしかないんじゃないかな」というのが同氏の結論だった。

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普及を前提に、設計・法律・社会の仕組みを整える

最後にChatGPTは、こうした技術が浸透していく中で一人ひとりが意識すべきことは何かを尋ねた。中島氏は「大切にすべきこと」という問いの立て方には距離を置きつつ、次のように答えた。

今でもパソコンやスマートフォンがあれば何でも検索できる。中島氏の見通しでは、それが道を歩きながらAIに質問できる状態、さらには見たものや聞いたものをAIがその場で同時通訳のように説明してくれる状態になっても不思議ではない。そうした時代が来つつあることを認識し、技術を理解したうえで、人とのコミュニケーションを円滑にしたり自分の生産性を上げたりすることに、オープンな気持ちで向き合うべきだというのが中島氏の考えだ。

プライバシーを理由にこうした技術に反対する人がいることについて、中島氏は、どちらにしてもこの種の技術は進化して社会に浸透していくと述べた。だからこそ、浸透させることを前提に、どう対処するかを考えて製品を設計し、法律を整備し、社会の構造を作っていくことが大事だ。中島氏はそう語って対話を締めくくった。