AppleはPerplexity買収で何を得るべきか――中島聡が語る「AIネイティブなiPhone」への転換

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概要

AppleがAIスタートアップのPerplexityを買収するかもしれないという噂がある。正式な発表はまだない。中島聡氏はこの話題について、ChatGPTを聞き手にした対話形式で自身の考えを語った。中島氏の立場ははっきりしている。報道が本当なら「とてもいい買収」であり、AI時代の作法を分かっている人材を外から連れてくることが今のAppleには必要だという。

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なお、聞き手のAIは冒頭で中島氏の名前を「そう」と読み、中島氏が「サトシ」と訂正した。締めの挨拶でも再び「中島そう」と呼んでしまい、中島氏はプロンプトを直すと苦笑している。

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ティム・クック体制の功績と限界

中島氏は、まずティム・クックの手腕を高く評価する。スティーブ・ジョブズが明確なビジョンで立ち上げた会社を、ジョブズの片腕としてオペレーション、つまりビジネスの運営を担ってきたCOOがCEOとして上手に引き継いだ。Apple WatchやAirPodsを成功させており、新しいものを作れない人でもないという。

それでも中島氏は、今は変化の時だと見る。AIは産業革命級の大きな波であり、これまでのやり方をある意味で否定し、「このままではiPhoneはダメだ、だからこう進化させる」という明確な方向付けをトップが示さなければならない。ところがそのビジョンが出ていない、というのが中島氏の評価である。巨大企業を作った人を批判しても「お前がやれ」という話になると断りつつ、誰かにバトンタッチする時期に来ているのではないかと述べた。

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iPhoneの進化は飽和している

中島氏によれば、ジョブズが始めたiPhoneの進化はそろそろ飽和しており、これ以上できないところまで来ている。次の世代に進むには、AIを前提にした「AIネイティブなスマートフォン」へ変える必要がある。

Siriのチームは存在するが、成果物が出てこないことを中島氏は「不甲斐ない」と表現する。理由として、Siriのチーム自体がAIがここまで進化する前に買収した会社であり古いこと、優秀なAIエンジニアはなかなか採用できず、採用してもすぐ引き抜かれる状況にあることを挙げた。さらに社内には本当の意味でのAIネイティブな世代がいない。世代だけの問題ではないとしながらも、人間の言葉が分かるAIを前提に、スマートフォンのユーザー体験の根本設計をやり直せる人とリーダーシップが欠けていると見ている。

中島氏はマイクロソフトを辞めて以来Appleの大ファンで、MacBook、iPad、iPhoneとApple製品に囲まれており、株主でもある。だからこそ頑張ってほしいが、現状は不甲斐ないので、Perplexityの買収はとてもいいのではないかと語った。

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アイコンを選ぶUIはもう破綻しつつある

では、具体的にどんなビジョンを打ち出すべきか。ユーザー体験の話が昔から好きだという中島氏は、iPhoneの基本設計は第1世代でできあがったと指摘する。アプリアイコンが並び、それを選んでアプリを使う。この形が2007年か2008年から約18年間続き、最新のiPhoneでも基本は変わっていない。

しかしアプリの数が増え、その設計は破綻しつつあるという。中島氏自身、日常的に使うアプリが20個ほどあり、1画面に収まらない。グループ分けを試してもうまくいかず、結局は検索してアプリを起動している。この部分が全く改善されておらず、Siriは「本当に役に立たない」と中島氏は言う。

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ローカルLLMとMCPで設計し直す

中島氏が提案するのは、人間の言葉が分かるAIを、特にデバイス上のローカルで常に動かし、それを前提にユーザー体験を作り直すことだ。例として挙げたのは、OpenAIが公開したgpt-ossである。200億パラメーター規模で、16GB程度のメモリーがあれば十分動く、とてもいい小型言語モデル(SLM)だと評価している。

想定する体験は次のようなものだ。何かしたいときにアプリを起動するのではなく、やりたいことを言えば、AIが適切なアプリを見つけて処理してくれる。中島氏は自身の不便を例に挙げた。テスラのアプリにはiPhoneを車の鍵として使う「フォンキー」機能があるが、おそらくテスラ側のバグで、iPhoneをスリープモードにするたびに接続が切れる。そのたびにテスラアプリを開いて再接続しなければならない。新しい体験なら「車の鍵を開けて」と言うだけで、AIがアプリを起動し、接続し、解錠までしてくれる。

アーキテクチャーとしては、Anthropicが提案するMCPでよいのではないかと中島氏は考える。MCPは、AIからさまざまなアプリやWebサービスをツールのように呼び出せる仕組みである。iOS自体がこれをサポートし、開発者にはアプリをMCPサーバーとして登録してもらう。そうすれば、Siriの次世代にあたるローカル言語モデルがユーザーの指示を聞き、どのアプリのどの機能を呼ぶべきかを判断できる。これで第1世代以来のレガシーなユーザー体験から一歩抜け出せるという。

ただし中島氏は、音声で話すのが本当に使いやすいかはよく考える必要があると留保している。言葉を使いたくない場面については、よく使う操作を履歴として表示し、そこから選ぶだけでもかなり使えるのではないかと述べた。根本にあるのは、「あの時代にデバイス上で人間の言葉が分かるAIが動いていたら、ジョブズやジョナサン・アイブはどう設計したか」という発想で、体験を思い切って設計し直すべきだという考えである。

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古い端末のサポートを一度捨てる覚悟

中島氏は、Appleにとってつらい点も挙げた。Appleは新しいOSを3〜4世代前のデバイスでも動かすことを続けてきた。16GBのメモリーを要する言語モデルを前提にすれば、この約束は守れなくなる。

それでも、たとえば「iOS 20からは、ローカルでニューラルネットを動かせる16GBクラスのデバイスでなければ新しい体験は使えない」というような思い切った線引きを一度してもよいと中島氏は言う。離れるユーザーもいるかもしれないが、買い替え需要も増える。それくらいの冒険をしてよい時期だというのが中島氏の見方である。

ユーザーをどう納得させるかと聞かれると、中島氏は「どうだろうね」と前置きしたうえで、iPhoneという名前を変えるのも一案だと答えた。15、16、17と1つずつ数字を上げるのではなく、階段を1段上るのとは違うと示すくらい思い切ったことをした方がいいという。

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次の勝負はスマートグラスとAirPods

中島氏はもう一つの方向として、Metaが出しているようなスマートグラスの時代が来てもおかしくないと話す。Appleもどんな形がよいか悩んでいるはずだが、中島氏は「もうVision Proじゃない」と考えている。Metaのグラスに近く、ディスプレイすら不要かもしれない。基本は音声でやり取りし、ユーザーが見たり聞いたりしているものを24時間把握してアシストするAIアシスタントの世界が、Appleがやるかどうかに関係なく来るので、そこは取りに行くしかないという。

ここでAppleが有利だと中島氏が考える理由は、iPhoneを持っていることだ。スマホを持たないMetaは、グラス単体ですべてを処理する必要があり、チップ性能や消費電力で苦労する。Appleならカメラ、スピーカー、マイクだけを載せた軽量で小型、低消費電力のメガネ型デバイスを出し、AIの実行はiPhone側で行える。そうすれば多くの処理をローカルで動かせる。

さらに中島氏は、カメラがなくてもなんとかなる気もすると述べ、すでに広く売れているAirPodsを通じて、iPhone上のローカル言語モデルにいつでも話しかけられるようにすることは「やらなきゃいけないこと」だとした。

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1〜2年の猶予で「既成事実」を作れるか

中島氏は、この領域でAppleは一番いい位置にいるが、Appleがやらなければ、MetaもGoogleも来ると見る。まだ1〜2年は余裕があると見積もり、その間に一気に勝負をかけて市場を取りに行くべきだという。24時間AIアシスタントがそばにいる生活を当たり前にしたのはAppleだ、という既成事実を作ることが、Appleにとってとても大事だと中島氏は締めくくった。

聞き手のAIは、単なるiPhoneの延長ではない新しい体験だと示し、主導権を握って未来を提示すればユーザーも納得しやすい、と中島氏の話をまとめた。Perplexity買収の噂は、中島氏にとって、Appleがこの転換を外部の力で始められるかどうかを示す材料になっている。