会社を売って5年でプライム企業の社長に。正田英之氏がMacbee Planet3代目トップとして描く次の成長

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概要

自ら創業した会社を上場企業に売却し、その買い手の執行役員として働いていた人物が、5年後にその上場企業の社長に就いた。M&A専門のインタビューチャンネル「M&A BANK」で、MCの島袋直樹氏が株式会社Macbee Planet(証券コード7095)の代表取締役社長・正田英之氏に話を聞いた。なぜ正田氏が選ばれたのか、社長交代で会社はどう変わるのか、売却後のキャリアを考える経営者に何を勧めるのか。正田氏は、急成長の後に「踊り場」を迎えた会社を作り直すために、サラリーマン型ではなく起業家型のトップが求められたと説明する。

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売却から社長就任までの経緯

正田氏は2021年に自社Alphaを東証プライム上場のMacbee Planetに売却し、同社に入った。本人によると、最初は執行役員としていくつかの事業を担当した。その後ホールディングス化のタイミングで子会社の執行役員となり、新規事業の立ち上げや人事管掌を務めた。直近では別の子会社を新設し、CVCのようなスタートアップ投資会社の代表を務めていた。

島袋氏は、売却後に子会社の社長になるのはよくあるパターンで、それに憧れる若手経営者も多いと話す。そのうえで、親会社であるプライム企業の社長になった例は珍しいと驚きを示した。正田氏自身も「僕もびっくり」と応じている。

急成長と「踊り場」

社長交代の話し合いは1年ほど前から始まっていたという。正田氏の調べでは、創業から10年以内に営業利益50億円以上を達成した会社は日本にまだ5社ほどしかない。Macbee Planetは6番目くらいの速さで成長してきたと正田氏は見ている。同社はインターネット広告領域、主に成果報酬型のメニューを多く揃える会社で、売上は約500億円。営業利益は前々期が50億円、前期は36億円に下がった。創業9〜10年目に営業利益50億円を達成したと正田氏は説明する。

一方で正田氏は、さすがに成長の踊り場を迎えていると認める。社外や株主からの声もあり、このままの経営体制では難しいとの判断から、1年かけて体制変更を話し合ってきた。その紆余曲折の末に自分が選ばれた、と正田氏は語る。創業者、公認会計士の千葉氏に続き、正田氏は3代目の社長となる。

上場企業の中で自分は通用するのか

入社前、正田氏は上場企業の中で自分がどう位置づけられるのか、まったく分からなかったという。元エンジニアで、組織に就職して働いた経験はほとんどない。上場企業という組織の中でどこまでやれるのかは見当がつかなかった。それでも最初から執行役員として経営メンバーの一角を任され、入社半年から1年ほどで「社長として」ではないにせよ、経営陣の一人として価値を出せる部分はかなりあるという感触を得た。

島袋氏は、成果報酬型の広告代理店は大手クライアントへの依存が起きやすい業態で、正田氏はそれをテクノロジー寄りに変える役割だったのではないかと尋ねた。正田氏はそれ自体は認め、テクノロジー面の取り組みがはまった部分もあるとした。ただし評価された理由はそこではないと考えている。テクノロジーにはある程度明るいものの、戦略作り、組織作り、M&Aや投資など幅広い経験を積んできた。その総合力が評価されたのだろう、というのが本人の見方だ。

社内の順当な候補ではなく起業家が選ばれた理由

社内に異論はなかったのか、という問いに正田氏は率直には答えにくいとしつつ、状況を説明した。当時の正田氏は本体の経営ラインから完全に外れ、子会社社長だけを務めていた。順当にいけば既存の取締役や執行役員がそのまま昇格するのが既定路線で、それを期待する人もいた。

しかし会社は踊り場にあり、ゼロから作り直すような大きな変化が必要な局面だった。そうなると、サラリーマンとして昇進してきた人よりも起業家タイプが向いている。正田氏は、その判断で自分が選ばれたのだろうと推測している。島袋氏は終盤で、前任の千葉氏は大手監査法人出身のファイナンス寄りの経営者で、会社を大企業にするフェーズを担ったと整理した。次は事業家の正田氏がサービスを作りに行くフェーズだという島袋氏のまとめに、正田氏は「とことん事業に向き合いたい」と応じた。

社長交代で何が変わるのか:二つの軸

正田氏は、会社は大きく変わると言う。Macbee Planetはマーケティング支援の会社として成果報酬に強くこだわってきた。近年は成果報酬とPRの組み合わせや、成果報酬に限らない予算型の運用広告にも広げ、総合型に近い形になってきた。今後はマーケティング支援を超えて踏み込むと正田氏は語り、二つの軸を挙げた。

一つ目は、マーケティング支援で培ったクライアントとの信頼関係やネットワークを生かし、クライアントのマーケティング以外の課題解決まで手がけること。二つ目は、11年間磨いてきたマーケティング力を生かし、マーケティングで伸ばせる領域で新規事業やM&Aを進めることだ。

二つ目について正田氏は、同社の成果報酬型ビジネスのクライアントはB2Cサービスが多く、自分たちがやってきたのは基本的にB2Cのマーケティング支援だと説明する。今度は自らがクライアント側に立ち、自社でB2Cのマーケティングを行い、その能力を強みに事業を伸ばすという。すでに2つほど進んでいる案件があるが、まだ開示できず、「そんなに遠くないうち」に発表する見込みだと述べた。

島袋氏がその領域を当てにいく場面もあった。ゲームやクリプトではないと絞り込み、トレンドからポケモンカード系のガチャのようなものではないかと推測すると、正田氏は「いい線行ってる」とだけ答えた。一つ目の軸については、島袋氏が人材・フリーランス領域を挙げた。正田氏は検討はしていたが、そこではないと答えている。

自前で作るのかM&Aで補うのかについては「両方」だという。既存の広告事業は元手をあまり必要とせず、営業利益が出続けているためキャッシュが溜まってきている。そのお金を使うことで利益を生み出せる事業をこれから作っていく、と正田氏は説明した。オーガニックな成長も続けるとしている。

「やりたい」と「やりたくない」のせめぎ合い

社長就任は自分から手を挙げたのか、頼まれたのかという問いには、どちらでもないと答えた。経営体制をどうするか日々話し合う中で、正田氏は、必要なら社長をやるし、社長でなくてもいいと伝えていた。会長や社長と話し合い、皆が最適だと思う布陣を一緒に考え、与えられた役割をこなすというスタンスだったという。

それでも、実際に社長に決まったときの心境は複雑だった。やりたい気持ちとやりたくない気持ちがかなりせめぎ合い、だいぶ悩んだと明かす。最終的には、他の皆が会社にとってベストだと考えるなら、やるしかないと決めた。

報酬は持株会に全額投入、手取りゼロも検討

プライム企業の社長は責任も重圧も大きく、名誉だけでは報われないのではないか。島袋氏は経済的なインセンティブについて尋ねた。正田氏は、就任が決まるまでお金の話は一切していなかったと答える。社長就任は約2か月前に社内で決まり、直近で役員報酬だけは固めたが、それ以外のインセンティブはこれからだという。

そのうえで正田氏は、役員持株会制度を作って役員報酬をすべてそこに入れ、自分の手取りをゼロにすることも考えていると話した。成果報酬を掲げている会社なので、社長自身も成果報酬でいきたいという考えだ。

就任後も席は一般社員と同じテーブル

収録時点で、株主総会での正式決定から約1週間、社内での内定から約2か月だった。社内での扱いは多少変わり、手厚くフォローされていると感じるが、正田氏は基本的なスタンスを変えるつもりはないという。席は一般社員が座るテーブルのままで、狭い場所で働いている。そういうところで格好をつけるのは自分のキャラクターにも合わないと話し、周囲にも今まで通り接してほしいと述べた。

売却後のキャリアを伸ばしたいなら「グロース企業に売れ」

島袋氏によると、最近は小さな事業を作って上場企業に売却し、ロックアップ期間を経てもそのまま上場企業の中で活躍したいという若手経営者のニーズがある。正田氏の例は自分が知る中で一番の成功事例だとして、同じキャリアを目指す人へのアドバイスを求めた。

正田氏は、社長になるのは創業者が残り続ける会社では難しく、タイミングと運次第だとする。ただ、大株主がいても経営に関与しない、あるいは会長職に退いているといった場合は十分ありうるという。役員として活躍したいのであれば、比較的小さめの会社、たとえばグロース市場に上場して間もなく、組織がまだ固まっておらず、これから伸ばしていこうという会社の方がチャンスにあふれており、そういう会社に売却した方が自分自身も楽しめるのではないかと語った。

売却先の規模については、他の規模の会社はあまり分からないと前置きしつつ、自分の場合は小さくて良かったと振り返る。人手が多くないからこそチャンスが次々にあり、手を挙げれば何でも任せてもらえる環境があったという。売却当時の時価総額についての正田氏の記憶はあいまいで、はっきりした数字は示されなかったが、一時期は800〜900弱に達していたと述べている。

買いたい業態:ライブコマース、TikTok、SNSメディア、B2C

社長就任でM&Aも加速すると見られる中、買収対象について正田氏は、主軸はデジタルマーケティング業界だとしたうえで、ライブコマース系やTikTok関連などに可能性があると話した。また、成果報酬に強いメディア系企業で最近伸びている会社も多いとして、探し続けているという。ここでいうメディアとは、TikTokやInstagramで自社アカウントを多数運営し、フォロワーを増やして企業の送客を行うようなものだと説明した。

それ以外では、先の二つの軸に沿って、マーケティング以外のソリューションを提供できる企業や、自社が買収してマーケティングをてこ入れすることで伸びるB2C企業を探している。島袋氏が「インフルエンサーもありですよね」と振ると、正田氏は「ありよりのあり」と応じた。島袋氏が自分自身もありかと冗談めかして尋ねると、正田氏は島袋氏はB2Bだと返し、M&A担当として「持ち帰ります」と笑いを交えて答えた。

「上場企業で一番のAIネイティブカンパニー」とカンパニーブレイン構想

AIについては、AI企業を買いたいというニーズも多少はあるが、どちらかといえばアクハイヤー(人材獲得目的の買収)の目線だという。社内では「上場企業の中で一番のAIネイティブカンパニーになる」という目標を掲げている。社員は全体で約200人と少なく、規模が小さいほどAIネイティブ化はやりやすいため、自分たちが率先して取り組むと正田氏は話す。

島袋氏は、AIは売上を上げるより、コスト削減や既存業務の置き換えに使われることが多いのではないかと問うた。正田氏は一般的な会社ではその通りだと認めつつ、自社ではきちんと売上や利益に跳ね返らせたいと答えた。具体例として、クライアントへの提案の質や広告運用の質を上げることを挙げ、工数削減ではなく自分の能力にさらにレバレッジをかける使い方を目指すという。

社員のAI利用量を管理する会社もあるという島袋氏の話に対し、正田氏は管理まではしないとしたうえで、「カンパニーブレイン」を作ろうとしていると明かした。Yコンビネーターが投資テーマとして注力している領域だという。正田氏はAI活用に4段階があると考えている。

  1. AIに聞いて何かを教えてもらう
  2. AIに作業を任せる
  3. AIを育てていく
  4. AIを組織の機能として活用する

正田氏は3段階目が非常に重要だと強調する。AIは「できる・できない」の二択ではなく、育てれば大抵のことはできる。ただし個人がAIを育てても、新しい社員が入ればまたゼロから作り直さなければならない。そこで、育てた成果を組織の資産にし、誰かがAIに何かを教えれば他の人のAIも同じことができる状態を作りたいという。4段階目は今のAIの性能でも可能なはずだが、まだどこもやっていないと正田氏は考えており、そこに取り組もうとしている。

起業家へのメッセージ

最後に正田氏は、M&Aにかなり積極的に動くと述べた。これまでマーケティング領域に絞って事業展開してきたが、今後は幅を広げていくため、Macbee Planetへのジョインに関心がある起業家がいればぜひ声をかけてほしいという。プライム上場企業とはいえ従業員は200人程度で、これから成長させなければならない会社だと正田氏は話す。執行役員や取締役として経営に携わる機会もあり、イグジット後に上場企業の中でステップアップしたい人、新しいことに挑戦したい人にとって最適な環境だと呼びかけた。