岡田斗司夫が語る『タイタニック』:キャメロンが海底で知ったことと、船が沈んだ理由
岡田斗司夫金曜ロードショーが『タイタニック』を2週連続で放送したのに合わせ、岡田斗司夫ゼミ第394回(2021年5月9日配信)では、前週に続いてこの映画を解説している。この回の問いは2つある。ジェームズ・キャメロン監督はなぜタイタニック号の沈没事故を映画にしようと思ったのか。そして、タイタニック号はなぜ氷山に衝突し、なぜあれほど短時間で沈んだのか。岡田は、キャメロンの動機を解き明かすと映画のテーマが見えてくると述べ、後半では船の構造と当時の事情から沈没の経緯を説明していく。
トラック運転手から映画の世界へ
岡田はまず、キャメロンの経歴から話を始める。キャメロンは1954年8月生まれのカナダ出身で、岡田より4歳上だという。4回離婚し、現在は5人目の妻がいる。親友は『パシフィック・リム』『シェイプ・オブ・ウォーター』の監督で、10歳年下のメキシコ人、ギレルモ・デル・トロである。この回の話の多くは、キャメロンがデル・トロに語ったエピソードとして紹介される。
キャメロンは高校時代にカナダからカリフォルニアへ移住し、カリフォルニアの州立大学に進んだが、5人の兄弟を養うために中退してトラック運転手になった。その頃、高校の同級生と再会する。ドライブインのレストランでウェイトレスをしていた彼女に一目惚れして結婚した。岡田によれば、『ターミネーター』のサラ・コナーがもともとファミレスのウェイトレスだったのは、この女性のイメージから来ている。岡田は、キャメロンは「働く強い女」に弱い人物だと評している。
転機は23歳で『スター・ウォーズ』を観たことだった。キャメロンはデル・トロに、この映画は自分が撮るべきだった、撮れなかったのはトラック運転手なんかしていたからだ、という趣旨のことを語ったという。岡田はこの発言を、キャメロンが自分の才能をまったく疑っていない証拠として紹介する。その後キャメロンは友人と2人で35mmフィルムの自主SF映画『ゼノジェネシス』を撮った。岡田によれば、この作品はメカのデザインから動きまで「もろにターミネーター」で、その頃すでにイメージが完成していたことがわかるという。
ロジャー・コーマンのもとで見せた「アメリカの宮崎駿」ぶり
『ゼノジェネシス』のフィルムを履歴書代わりに、キャメロンは低予算映画の帝王と呼ばれたロジャー・コーマンを訪ねる。コーマンは才能があればキャリアに関係なく雇う人物だった。ところがキャメロンに与えられた仕事は、またトラック運転手だった。コーマンは安い土地を探してアメリカ中でロケをするため、その移動専門の運転手になってしまったのである。
待遇に不満だったキャメロンは、コーマン自身への売り込みを始める。当時コーマンは、『七人の侍』を下敷きにした『荒野の七人』をさらにSFにした『宇宙の7人』を製作していた。岡田もこの映画を映画館で観ており、メカデザインだけがやたらに良く、特に宇宙船の着陸脚が伸びる場面が格好良かったと記憶している。後に資料を読むと、無名の新人美術スタッフだったキャメロンが、デザイナーの描いた宇宙船を勝手に作り直していたことがわかったという。最初はミニチュア作りの手伝いだったのが、宇宙船のミニチュアを丸ごと作るようになり、ついにはデザインまで自分で手がけて監督やコーマンに売り込んだ。
岡田はこの手口を、東映動画で『太陽の王子 ホルスの大冒険』に関わった頃の宮崎駿と同じだと言う。新人の動画マンとして入ったはずの宮崎がイメージボードを描いて壁中に貼り、高畑勲は最初それを天才だと喜んだが、『アルプスの少女ハイジ』の頃には宮崎の力を抑えることを考えた。岡田はキャメロンを「アメリカの宮崎駿」と呼ぶ。
キャメロンはさらに、フロントプロジェクションの装置まで自作した。俳優をスクリーンの前で演技させ、正面からあらかじめ撮影した映像を投影することで、ロケをしなくても俳優がその場にいるような絵が撮れる仕組みで、『2001年宇宙の旅』で使われたものだ。キャメロンは州立大学の映画学科まで見学に行って作り方を調べ、コーマンの会社のビルを1つ改造して専用スタジオにし、自ら所長を名乗った。入ったばかりのアルバイトが宇宙船のデザインを奪い、ビルを占領したのだから、周囲に嫌われたのは当然だと岡田は言う。キャメロンが周りから嫌われる傾向はこの頃から始まっていたという。
コーマンが「安くできれば何でもいい」人物だった例として、岡田は『風の谷のナウシカ』のアメリカでのビデオ販売を挙げる。徳間から権利を買ったコーマンは、上映時間が長いとして約20分をカットし、吹き替えで勝手な台詞を入れ、テンポが遅いと感じた箇所はビデオの早回しで再録画したという。この販売をめぐって鈴木敏夫と宮崎駿が大喧嘩になり、岡田はアニメージュのグランプリ会場でその現場に居合わせたと話している。
『殺人魚フライングキラー』のジャマイカロケ
コーマンに取り入ったキャメロンは27歳でようやく初監督作『殺人魚フライングキラー』を任される。軍が開発した、ピラニアに羽がついたような空飛ぶ魚が人を襲う話である。最も安く撮れる場所として選ばれたのはジャマイカだった。
俳優より1日早く現地入りしたキャメロンが驚いたのは、現地コーディネーターが何も準備していなかったことだ。ロケハンもロケ場所の確保もしておらず、天気予報さえ調べていない。話しているうちに目の前がくらくらしたキャメロンは道路に飛び出し、最初に通った車を止めて、運転していた若者に10ドルを渡して3日間の運転手兼通訳として雇った。そのまま車で回りながら、病院、警察署などを見つけては、若者から借りたメモ帳に手書きで契約書を書き、その場で3ドルか5ドルの手付金を渡して撮影場所を押さえていった。
初日の最後に見つけたのが死体安置所だった。中に入ると解剖台の上に死体が3段に積まれていた。キャメロンは明日までに片付けておくよう頼んでホテルに戻った。翌日、アメリカから俳優とスタッフが到着し、病院と警察署を撮り終えて、夕方の光が差す頃に安置所へ向かう。扉を開けると床中が巨大なゴキブリだらけで、キャメロンはこれも撮ろうと自らカメラを回し始めた。アメリカ国外なので組合の規則を気にせず監督がカメラを回せたのだという。
ところが死体は片付けられていなかった。キャメロンは自分で死体を押しやってベニヤ板で隠したが、主演俳優が「本物の死体があるならそれを使えばいい」と言い出し、制止を聞かずに板をずらして嘔吐してしまう。キャメロンは前日に手配していたケータリングで皆を外に連れ出したが、その間に安置所の職員が一番下の死体だけを墓場に運ぼうと引き出したため、上の死体が床に落ちて血まみれになった。キャメロンは皆に「サラダは足りてるか」と声をかけながら、合間に床を必死に掃除していたという。
結局キャメロンはこの作品の監督を途中で降ろされた。コーマンが思っていたような映画にならなかったのが理由だが、岡田はちゃんといい映画になっていると言う。キャメロンは今もこの作品を自分のフィルモグラフィーに入れておらず、トラウマになっている。そして岡田によれば、コーマンの会社自体も翌年に倒産した。
『ターミネーター』から『アビス』、そして元を取る監督へ
その後キャメロンはロサンゼルスに移り、『ターミネーター』の脚本を書いて売り込む。この脚本の出来が評判を呼び、『ランボー/怒りの脱出』と『エイリアン2』の脚本依頼が来た。岡田は、ハリウッドの監督は途中から脚本を人に任せるようになるのが普通だが、キャメロンは最新作の『アバター』まですべて自分で脚本を書いている珍しい監督だと指摘する。この仕事を取ってきたのは、コーマンの会社のアシスタントだったゲイル・アン・ハードで、後にキャメロンの2人目の妻となり、『ターミネーター』『エイリアン2』、さらに『ウォーキング・デッド』のプロデューサーも務めた。
『ターミネーター』『エイリアン2』のヒットで、キャメロンは自分の作りたい映画を作れる立場になる。しかし1989年の深海冒険映画『アビス』は莫大な予算をかけて失敗した。岡田によれば、『アビス』は1億ドルを超えて赤字になった。ただしキャメロンは転んでもただでは起きない。『アビス』で開発した、水だけが動いて人の顔になるCG技術を、『ターミネーター2』の液体金属の敵T-1000に応用した。
岡田は、キャメロンが1本の映画のために新技術を開発し、それを次の作品で回収する監督だと強調する。好きなことをやっているだけでは仕事がなくなることを、コーマンのところで懲りて学んだからだという。出資者に「あいつに好きなものを作らせれば必ず儲かる」と思わせなければ仕事にならないと、キャメロンはわかっていたと岡田は見る。
1985年の発見と「バナナ現象」
1985年、アメリカとフランスの合同探検隊が大西洋の水深約4000mでタイタニック号を発見した。船体は2つに折れ、600m離れて沈んでいた。岡田によれば、これでいくつものことがわかった。以前は船がつながったまま沈み、海底に激突して崩れたと考えられていたが、実際には前半分は折れて離れた後に静かに着底しており、手すりや、割れていない窓まで残っていた。一方、後ろ半分は激しく壊れており、垂直に沈んだのではないかと考えられるようになった。
キャメロンはこの沈み方を確かめるために、大きな模型を作って水槽で実験までしている。キャメロンはこれを「バナナ現象」と呼んだ。バナナを折ると皮の一部だけでつながることがあるように、船首から沈んだタイタニック号は一部だけがつながった状態で折れ、前半分の重みで引きずられた後、前半分が切り離されて沈むと、後ろ半分がいったんコルクのように浮かび、それから垂直に沈んでいく。岡田によれば、折れたという説は以前からあったが、ボイラー爆発説など他の説もあり、一時は「折れていない」という説に落ち着きかけていた。キャメロンはそれを実験で検証したのだという。
誰のものでもなくなった船と、キャメロンの危機感
キャメロンが映画化を考え始めたのは発見から9年ほど後の1994年頃だと岡田は言う。その間にタイタニック号にはある問題が起きていた。所有していたホワイト・スター・ラインはとうに倒産し、沈没から数十年が経って訴訟もすべて終わり、財産権がどこにもなかった。遺族も遺品の権利を主張していなかったため、海底にお宝が眠っている状態だった。日本でも展示された初期の遺品は、岡田によれば勝手に潜って持ち出したものだった。
キャメロンは、このままではタイタニック号がなくなってしまうと強い危機感を覚えた。『ターミネーター2』の成功で自由になる資金もあった。ナショナル ジオグラフィックの記録映像を観たキャメロンは、その日のうちにモスクワへ飛んでロシアの海洋学者たちと会ったという。ソ連崩壊後で1年半も予算ゼロの状態だった彼らは、ハリウッドの有名監督を大歓迎した。キャメロンは海洋調査船ケルディッシュ号と2隻の潜水艇をチャーターした。
巨大模型によるリハーサル:プリビズの原点
キャメロンがケルディッシュ号に持ち込んだのは、全長7.7mのタイタニック号の模型だった。船の中央にあったレクリエーション室のスポーツジムなどの設備をすべて撤去し、そこに模型を据えた。乗組員が「ウォッカの密造用の蒸留装置だけは残してくれ」と頼んだので、それだけは残したという。
キャメロンは潜水艇の操縦士たちに小型ビデオカメラを持たせ、この模型の上で徹底的に撮影の練習をさせた。いずれ映画を作ることになる、主人公がここに立ってカメラが回り込み、かつての美しい船から現在の海底の朽ちた姿へそのまま変わる絵を撮りたい。そのためにどんな絵を撮るのか完璧にシミュレーションしてほしい、と説明したのである。岡田は、朽ちた状態を再現した模型をロシア人カメラマンが撮影するメイキング映像を示し、これが「プリビズ」だと言う。
プリビズは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で庵野秀明が行ったことでもある。岡田によれば、日本でその前にプリビズを試みた作品が、樋口真嗣監督の2005年の映画『ローレライ』だった(庵野も水兵役で出演している)。岡田は以前から『ローレライ』の伊号潜水艦のミニチュアが7m以上もあることを不思議に思っていた。資料はほとんど残っていなかったが、古書店でようやく見つけたムックを取り寄せて調べると、やはり大型模型をビデオカメラで舐めるように撮影し、本編でどこをCGにしてどこを特撮にするかを割り振っていたことが書かれていたという。本にはタイタニックとは書かれていないが、岡田は、1990年代から2000年代初頭にDVDの特典でハリウッド映画のメイキングが見られるようになり、日本の監督たちがその撮り方を学んだ時代だったと推測している。『ローレライ』では大型ミニチュアによるプリビズはあまり効果が出なかったが、庵野は『シン・エヴァ』で使いこなした、と岡田は見ている。
キャメロンは後にメキシコに巨大スタジオを建設する際にも、まず全長13.5mの模型を持ち込んだ。撮影期間の約4か月間に太陽がどう動き、どこに影が差すかを模型で調べておけば、原寸大のセットを建てる向きを決められ、合成素材の作成やスタジオ内の人工照明にも役立つからだ。この模型の先端に人形を置いてキャメロン自らがカメラで回り込んだ映像は、ジャックが「世界の王だ」と両手を広げる本編の場面とまったく同じ構図になっている。岡田によれば、プリビズで事前に撮っておけば俳優にもスタッフにも撮りたい絵を説明でき、クレーンの動かし方も共有できるので失敗が減り、スケジュール内で最良の絵が撮れる、というのがキャメロンの考え方である。
岡田が面白いと感じるのは、日米での使い方の違いだ。ハリウッドでプリビズを使う理由はコスト削減で、潜水艇で無駄な動きをしないためだった。一方、日本では『シン・エヴァ』に見られるように、格好いいアングルや構図を探すため、つまり品質を上げるために使われる。岡田は、CGについても同じで、ハリウッドはコストを下げるためにCGを使い、日本は絵のクオリティを上げるために使うと話す。
「小さな映画」のはずが舞台はタイタニックに
キャメロンは実際にロシアの潜水艇で海底のタイタニック号を見てきたが、それでもすぐに映画化を決断できなかった。その前に、シュワルツェネッガー主演のアクションスパイコメディ『トゥルーライズ』(1994年)を完成させている。予算は8000万ドル以上かかり、シリーズ化もできない。しかも誰もが結末を知っている。儲からなければ自分のキャリアは終わる、とキャメロンは考えたという。予算が大きくなると多くの会社が口を出し、動きが取れなくなることもキャメロンは嫌っていた。
そこでキャメロンは『E.T.』のような、小さいが心に残る作品を作ろうとした。1930年代のジョージア州を舞台に、耳が聞こえず声も出ない少女が主人公の小説の映画化権を買い、脚本に書き直し始めた。ところが完成した脚本をデル・トロに読ませると、舞台がタイタニックになっていた。デル・トロが笑いながら、小さな映画を作りたいと言っていたのではないかと突っ込むと、キャメロンは真剣な顔で語り始めたという。
海底4000mで見たもの、そして夜中の涙
キャメロンの話はこうだ。潜航には10時間かかり、トイレは渡されたビニール袋で済ませる。水深4000mの海底に着くと目の前に山があり、スクリューを回すと泥が舞い上がって何も見えなくなった。レーダーを見ながら山を越えて停止し、泥が沈んでライトをつけると、目の前にタイタニック号の船体の壁があった。あと3m進んでいたら衝突していた。垂直に上昇すればまた泥が舞うので、後退しながら上昇し、レーダーで1mほど下に地面があるのを確認して着地すると、そこはタイタニック号の前部甲板で、目の前にはまだ割れずに残った窓が並んでいた。
その瞬間は感動したが、0.5秒ほどで、すぐにカメラを回そうと考えたという。まだ正式な契約前で、調査船も潜水艇もすべてキャメロンの自腹だったからだ。7.7mの模型で何度もシミュレーションしたとおりに、1隻を照明係にしてもう1隻で撮影し、沈没の際に楽団が演奏していた場所なども撮った。いい映像が撮れたと満足して戻り、その夜は密造ウォッカを飲んで眠った。
ところが夜中に突然目が覚め、体の震えが止まらず、涙がぼろぼろ出てきた。なぜかと問うデル・トロに、キャメロンは「タイタニックは本当にあったんだ」と語った。一緒に潜ったロシア人たちは、窓の中から誰かが見ている気がすると言っていた。キャメロンはそのときは迷信深いと思い、ガラスの反射だろうと気にしなかったが、今になってその気持ちがわかる。沈没のときには勇敢に振る舞った立派な人も、卑怯に振る舞った嫌な人もいた。その人たちが皆まだあそこにいる。自分たちはその人たちの墓の上で、いい画が撮れた、このショットはこっちから撮ればよかったと大騒ぎしていたのだ、とキャメロンは言ったという。
デル・トロは、もともとお前が小さな映画なんか作るはずがないと思っていた、これからはお前が小さな映画を作りたいと言ったら、それは映画史上最大の予算の映画になるという意味だと受け取る、と返した。それでもキャメロンは、タイタニックを舞台にしたラブストーリーでは駄目で、本当にあの船があり、そこに本当に人がいたのだと思ってもらえなければ駄目なのだと語った。岡田は、ここから映画『タイタニック』が始まったと述べる。
なぜ氷山に衝突したのか
後半で岡田は映画本編の解説に移り、まず衝突の理由を4つ挙げる。
1つ目は増速していたこと。氷山が多いことはわかっていたので、4月14日の夜、ほかの船の多くは停止していたが、タイタニック号だけは最高速度に近い速さで航行していた。岡田の説明では、石炭で動く蒸気船は炉の壁に燃えかすがこびりつくと燃焼効率が落ちていくため、処女航海が最高速度を出す唯一のチャンスだった。何日も天気が良かったことも重なった。
2つ目は無線の警告を無視したこと。当時の船の無線室は船の設備ではなく、無線通信を発明したマルコーニの会社マルコーニ社が運営していた。業務の大半は、到着日の連絡や株の売買指示、誕生日のメッセージなど、乗客から1件いくらで請け負う通信で、遠くの中継点と交信するため受信感度を最大にしていた。そこへ近くの船から氷山発見の通信が大音量で入り、あまりのうるささに無線士が「黙れ」と返してしまった。記録も残っているという。怒ったカリフォルニアン号の無線係は電源を落として寝てしまった。岡田によれば、カリフォルニアン号はわずか1時間の距離にいたので、救助に来ていれば乗客のほとんどは助かっていたはずだという。ただし無線士は船の所属ではなく、船同士の連絡はマルコーニ社の好意で行われていたので、無線士の責任とも言い切れないと岡田は付け加える。
3つ目は氷山が見えなかったこと。高さ15mの見張り台はあったが双眼鏡がなかった。双眼鏡を入れたロッカーの鍵を持つ航海士が寄港地で下船したまま戻らず、しかも豪華客船なのでロッカーも豪華で、壊すのがもったいないとそのままにされた。さらにその夜は波がないほど静かだった。岡田の説明では、夜に氷山を見つける手がかりは根元に当たる波の白さなので、凪の夜はかえって氷山が見えない。
4つ目は舵が効かなかったこと。ブリッジにいた一等航海士は有能で、衝突直前に舵を左いっぱいに切り、スクリューを逆転させた。しかしタイタニック号の3つのスクリューのうち、左右の2つは推進用の大型エンジンで回り、中央のスクリューはその排気を使うタービンで回っていた。舵は中央のスクリューが生む水流で向きを変える仕組みだった。全速後退のためにエンジンを逆転させると一時的に止まり、中央のスクリューに蒸気が流れず止まったままになる。そのため舵が効かなかったと岡田は説明する。大洋を高速で渡ることを優先し、方向転換は港でタグボートに任せればいいという合理性で設計されていた、というのが岡田の見立てだ。こうして午後11時40分、タイタニック号は氷山に衝突した。
なぜ沈んだのか:リベット、火災、開いた窓
岡田は沈没の理由として、まずリベットを挙げる。全金属製の船はまだ歴史が浅かった。ペリーが乗ってきたサスケハナ号(1853年)はまだ木造で、1858年のグレート・イースタン号は全金属製だが形は昔の帆船と同じだった。当時は溶接ではなく、重ねた鉄板に穴を開けてリベットを打ち込み、両側から蒸気ハンマーで潰して留めていた。船体の平らな部分は鋼鉄のリベットを機械で打てたが、船首付近の複雑な曲面では蒸気ハンマーが使えず、鋼鉄より柔らかく脆い錬鉄のリベットを熟練工が手で打っていた。計算上は十分な強度だった。
しかし錬鉄は低温で粘りを失う。岡田はこの「低温脆性」の例として、バンダイの子会社ポピーが昭和40年代に発売したマジンガーZの超合金を挙げる。後にコレクターアイテムとして高騰した際、北海道の倉庫で見つかった品はほとんどがぼろぼろで、わずかな振動で崩れたという。塩水は0度では凍らず、当夜の海はマイナス2度ほどだったらしい。岡田の表現では、リベットは「茹ですぎた細いパスタで段ボールを縫っている」ような状態で、氷山に触れた瞬間にぷつぷつと外れた。右舷に約60mの裂け目ができたが、裂け目の幅は数センチで、開いた穴を合計してもマンホールより小さい約1.1平方メートルにすぎなかったという。リベットの危険性が明らかになったのは第二次世界大戦中で、アメリカが同様の工法で約2700隻造ったリバティ船が寒冷地で次々に沈み、岡田によれば1割以上が沈没したのを受けて初めて調査が入った。
2つ目は、前回も話した石炭庫の火災である。ボイラー室の間にある石炭庫が燃えて隔壁の金属が弱っていたところが裂け、防水扉が閉まらないまま両側に水が入った。結果として船首から5つの区画すべてが浸水し、船首が重くなって前に傾いて沈み始めた。3つ目は窓が開いていたことだ。船が急に停止したため、何事かと乗客が窓を開け、その約15分後に退船命令が出て開けたまま逃げたので、沈むにつれて窓から水が入って沈没が加速した。
映画はこの構造をどう描いたか
岡田は、映画がこうした事実を細かく描写していることを示す。本編1時間40分あたりで浸水ランプがつき、防水扉が降りる。船長への報告で「ボイラー室が2.5m浸水」と告げられ、設計者のアンドリュースは「郵便室は」と尋ね、浸水していると聞いて絶望的な表情を見せる。
岡田によれば、郵便室は喫水線より上にある。本来なら船体にいくら穴が開いても水が来るはずのない場所に水が来たということは、すでに船首から傾き始めているということだ。さらに隔壁はFデッキまでしかなく、Eデッキには乗組員が速く移動するために船首から船尾まで貫く長い通路、通称「スコットランド通り」があった。水がEデッキに達すれば、この通路を通って後方へ流れ込み、もう止められない。アンドリュースは沈まないように万全を期して設計したが、5区画が浸水して前に傾くことは想定していなかった、と岡田は説明する。また、こうした重要な場面には偶然ジャックとローズが居合わせ、ローズが事態を知る形にして、2人の主観で物語が進むように撮られていると岡田は指摘する。
その後、ジャックは宝石を盗んだ濡れ衣を着せられる。ローズは最初は信じようとするが、ジャックが一等客室に忍び込む際に借りていたコートが、甲板でコマを回していた少年の父親ライアンの盗難届の出ていたものだったとわかり、ジャックと目を合わせられなくなる。ジャックが手錠をかけられたEデッキの部屋のすぐ近くまで水が来ている描写は、スコットランド通りへの浸水が迫っていることを意味すると岡田は言う。船長は無線室で遭難信号CQDを出させ、一等客はボートデッキへ案内される一方、三等客は階段で待たされる。
救命ボートが足りないことは問題ではなかった
ローズが「乗客は2200人いるのにボートには1200人しか乗れない」と言う場面について、岡田はこれを映画上の嘘だと指摘する。当時、金属製の豪華客船は沈むのに少なくとも24時間はかかると考えられていた。1909年に全金属製のリパブリック号が衝突事故で大破したときも、沈没まで36時間かかり、周囲の船との往復輸送で乗員乗客全員が助かったという。救命ボートは全員を一度に乗せるためのものではなく、ある程度の数があれば往復輸送で足りると考えられていた。
岡田によれば、乗組員や一等客の男性たちが紳士的に振る舞っていたのも、沈んでも大丈夫だと思っていたからだ。実際、周囲には多くの船がおり、4時間かけて駆けつけた船も、6〜7時間かけて来た船もあった。船がすぐに沈みうると広く知られるようになったのはタイタニック号以降のことで、ローズの台詞はドラマを盛り上げるためのフィクションだと岡田は見ている。
三幕構成で読む『タイタニック』
最後に岡田は、シド・フィールドのシナリオ理論にある三幕構成を使って映画を分析する。120分の映画なら、第1幕の状況説明が30分、第2幕の葛藤が60分、第3幕の解決が30分で、第2幕の中間にミッドポイントがある。岡田は『スター・ウォーズ』『アナと雪の女王』『スタンド・バイ・ミー』も、日本のアニメ映画もほぼこの構造だと言う。
『タイタニック』は187分の映画で、ちょうど中間の95〜98分目にジャックとローズが結ばれ、キャルがローズの裏切りを知り、船が氷山に衝突するという事件が立て続けに起きる。これがミッドポイントだ。プロットポイント1は、身投げしようとしたローズをジャックが救い、自分の絵を見せて「君は馬にまたがるような女になる」と言い、船長が引退記念に最高速度を出す辺りだと岡田は位置づける。
第2幕後半では、ジャックを信じきれなかったローズが、その責任を取るために1人で救いに向かう。本編1時間57分22秒の「さよなら、お母様」の場面で、ローズはボートに乗らず船に残る。第3幕は、ボートをめぐる大混乱で威嚇射撃が行われ、階級社会が崩れていく辺りから始まる。プロットポイント2は、ジャックとキャルの2人がかりで説得されて救命ボートに乗ったローズが、自ら飛び降りる場面だ。岡田は、守られるべき弱い女であることを自ら否定し、「先に行ってくれ」というジャックの言葉に逆らって、第1幕でジャックが言ってくれた「生き方を自分で決められる人間」になるために戦う展開だと読む。飛び降りたローズはジャックと大階段の時計の下で再会して抱き合い、そこはラストの夢の場面で2人が出会う場所でもある。
ただしここまでで約140分で、映画はまだ30分以上残っている。その間に何があったのか、ローズはなぜラストであの夢を見たのか、なぜ「碧き海の心」のダイヤモンドを大西洋に落としたのか。岡田はこれらの問いを提示したところで、無料部分の解説を終えている。続きではディカプリオの話や予算が尽きていく製作の経緯、ラストと時計の謎解きを扱うとしている。
追加情報:映画の外へ潜り続けた監督
動画の終わりに付けられたアップグレード情報で、岡田はキャメロンの特異さを改めて語る。スピルバーグ、スコセッシ、ルーカスら同世代の監督の多くは大学で映画を学び仲間を作ったが、キャメロンはトラック運転手をしていて『スター・ウォーズ』に衝撃を受け、それまでの人生を反省して映画を作り始めた。新しい映画には新しい映像技術や機械が必要だと考え、カメラの発明に向かうような方向に進むのも、ほかのオタク系監督とは違うと岡田は言う。
キャメロンはタイタニックの撮影のために実際の沈没現場へ33回潜った。岡田はこの回数を、映画のための取材を超えていると評する。やがて潜ること自体に興味が移り、映画とは関係なく深海探検を始め、自分専用の潜水艇を開発して、マリアナ海溝で最も深いチャレンジャー海淵の底まで単独で到達した。岡田によれば、この深度は当時の世界記録で、2019年に別の冒険家に破られるまで保持されていた。キャメロンは2025年のインタビューで再挑戦を口にしており、72歳になっても『アバター』の新作を自ら監督すると言っている。岡田は「映画を作れよ」と笑いながら、それでいて映画も作り続けるこのペースこそがキャメロンのおかしさだと述べて話を締めくくっている。
金曜ロードショーではですね、先週から2週間連続で映画『タイタニック』が放送してるんですけども、先週の金曜が前編で、今週の金曜、明日の金曜がですね、後編ですね。というわけで、岡田ゼミでもですね、先週に引き続き『タイタニック』の解説動画ですね。おはようございます。岡田斗司夫です。
今日のですね、無料部分の動画の見所は2つあってですね、1つ目はですね、映画監督のジェームズ・キャメロンですね。なぜタイタニックの沈没事故を映画にしようと思ったのかというですね。これはもうジェームズ・キャメロンがなんでこれをやりたかったのか、何をやりたかったのかという動機の部分ですね。これを紐解くことで映画のテーマが見えてくると思います。
2つ目はですね、タイタニックはなぜ沈没したのかという話なんですけども、先週のですね、タイタニック解説の前半のですね、アップグレード部分ですね、タイタニックが沈没した理由はほぼ分かってると言ったけども、その話になります。
2つの話を一緒にしたのでですね、今日の動画めちゃくちゃ長いです。1時間20分あります。ただ、それだけ熱を込めて話したのでですね、最後まで付き合ってくれると僕はすごい嬉しいです。今回の動画はですね、2021年5月9日に配信した岡田斗司夫ゼミ第394回をですね、再配信します。動画終わった後もですね、追加のアップグレード情報あるので、ちょっとだけですけど楽しみにしてください。それではこっから動画スタートです。
ま、こっからだね。じゃあ、ジェームズ・キャメロン、この左側の背の高い人です。1954年の8月生まれだから僕より4つ上ですね。だから今年でですね、67になるんだろうな。カナダの出身です。4回離婚して、今5人目の奥さんがいますね。
で、隣にいるですね、この太ったおっさんはですね、親友のですね、ギレルモ・デル・トロですね。『パシフィック・リム』とか『シェイプ・オブ・ウォーター』の監督という風に言えばいいのかな。10歳下のですね、メキシコ人の親友の監督ですね。
キャメロンっていうのはですね、割と面白い人でですね、高校の時にですね、カナダからカリフォルニアに移住しててですね、で、大学もカリフォルニアのですね、州立大学行ったんですね。でも中退したんですよ。で、なんでかって言うと、5人の兄弟を食わせなきゃいけないということですね。そのためにトラックの運転手やってたんですよね。
で、この時期にですね、高校の同級生のですね、女の子と再会してですね、で、この高校の同級生の女の子がですね、ウェイトレスしてたんすよ、レストランで。で、一目惚れしてですね、結婚したと。
『ターミネーター』でサラ・コナーがですね、元々ファミレスでウェイトレスやってたのはですね、もう高校の時のこの彼女のイメージなんですね。再会した時にですね、自分がトラックの運ちゃんやってて、入ったドライブインレストランでですね、ウェイトレスやってて、かっこいいと。働く女かっこいい。もう本当キャメロンはね、働く女に弱いんですよ。で、一目惚れしてですね、働く強い女が好きと、そういう男なんですね。
しかしですね、トラックの運転手をしてて、それなりに満足の生活だったかもわかんないですけど、23歳の時に『スター・ウォーズ』見ちゃったんですよね。で、『スター・ウォーズ』見た時のもう言い草が、これもやっぱデル・トロに言ってるんですけども、「この映画を俺が撮るべきだった。なんで撮れなかったのか? 俺がトラック運転手なんかしてたからだ」っていう風に言うんですね。だからもう自分の才能に関しては疑ってないんですよ。トラック運転手さえしてなかったら『スター・ウォーズ』を俺が撮ってたと思ってですね。
で、友達と2人ですね、『ゼノジェネシス』っていうですね、SF映画をですね、これ35mmの自主映画撮るんですね。最初から35mmの自主映画ってなかなかすごいんですけども、YouTubeで見れます。『ゼノジェネシス』っていうタイトルですね。で、もう内容がですね、もろに『ターミネーター』なんですよ。もうメカデザインから動きからですね、全部『ターミネーター』で、もうあの頃からイメージ完成してたんですよね。
で、この『ゼノジェネシス』って35mmのフィルムを、自分の履歴書というのかなとして持っててですね、ロジャー・コーマンっておっさんに会いに行きます。ロジャー・コーマンっていうのは、低予算の帝王とかですね、B級映画の帝王っていう風に言われた男でですね、めちゃくちゃ安く映画を作るんで有名な人なんですよ。で、割とね、才能のある人だったらそれまでのキャリアとか関係なしに雇ってくれるんですね。
しかしですね、ロジャー・コーマンの映画社に就職したんですけども、与えられた仕事がですね、またもトラックの運転手だったんですよね。だからコーマンの映画って安いから、アメリカ中の安い場所にいっぱいロケに行くので、そこに行く専門のトラック運転手になっちゃったんですよね。
で、こういう待遇に不満なキャメロンはですね、コーマン自身に売り込みを開始するんですけども、『宇宙の7人』というですね、僕もこれ映画館で見たんですけども、『スター・ウォーズ』ブームの頃ですね、三流のSF映画がいっぱいできたんですよ。で、その中で、元々は黒澤明の『七人の侍』があって、それをネタにした、パクってですね、『荒野の七人』という映画があってですね、それをさらにパクって『宇宙の7人』というですね、どうしようもないですね、映画をですね、ロジャー・コーマン作ったんですけども、
僕も昔見てメカデザインだけやたらいいなと。特に宇宙船の着陸脚が伸びてくるとことかすごいかっこいいんですね。で、後で資料を見ると、まだジェームズ・キャメロンが無名の頃に、この新人の美術やってるやつが勝手に、デザイナーがデザインした宇宙船のデザインとかを勝手に変えて、で、トイレットペーパーの芯とかを利用して宇宙船をですね、かっこよく作り直したっていう風に書いてあった。こいつセンスあるなってその頃から思ってたんですけども。
『宇宙の7人』でですね、最初だからミニチュアの手伝いだったんですよ。それがですね、宇宙船のミニチュアまるまる1つ作るようになって、それどころではなくてですね、宇宙船のデザインを自分でやってコーマンに売り込み出すんですね。監督とかコーマンに売り込み出すんですよ。
だからもう手口がまるで『太陽の王子 ホルスの大冒険』やってる時の宮崎駿と同じなんですよね。東映動画で『ホルス』やる時に、宮崎駿はただの新人の動画で入ったはずなのに、いつの間にかイメージボードを描いてそこら中に貼ってですね。で、こんなシーンがあるはずだと言って、高畑勲はそん時は「うわ、こいつ使える天才だ」と思ったんですけど、『アルプスの少女ハイジ』の頃になると、宮崎駿に勝手にさせるわけにはいかんと言って宮崎駿の力を抑えることを考えたんですけど、本当にキャメロンってですね、アメリカの宮崎駿なんですよ。そういうやつなんですね。
で、色々自分の能力を見せつけると。で、おまけにですね、勝手にですね、フロントプロジェクションのですね、機械を作っちゃったんですね。フロントプロジェクションっていうのは、合成とかの手間をなくすためにですね、スクリーンの前で俳優に演技させる。で、俳優の真正面からですね、あらかじめ撮った特撮の映像を映写するんですね。そうするとですね、うまく映写すると、この後ろのスクリーンとかレンズとかの作用も相まって、ロケしなくてもですね、まるでその場に俳優がいるような絵が撮れるっていうですね。そういう便利な機械で、『2001年宇宙の旅』でですね、使われたんですけど、
これをですね、どうやって作るのかっていうのを、カリフォルニアの、やっぱり州立大学の映画科まで行ってですね、見学してきたキャメロンはですね、ロジャー・コーマンの映画社の中にそれの簡単な機械作って、おまけにそれの専用のスタジオまで作って、で、なんか建物を改造して、コーマンのビル1つ改造して専用スタジオにしちゃったんですね。で、自分で所長って名乗ったんですよ。
なので周りのスタッフからは大顰蹙なんすよ。こないだ入ったバイトのミニチュアを作る男が、いつの間にか宇宙船のデザインやって、あろうことかビル1つ占領してですね。で、そこにフロントプロジェクションの機械設置して、で、そこの所長って名乗ってるわけですから。これはもう嫌われて当たり前で、キャメロンが周りから嫌われるっていうのは前回もちょっと話したんですけど、この頃からだったんですよね。
ところが、ロジャー・コーマンは安くできれば何でもOKなのでですね。どれぐらい安くできれば何でもOKな男かって言うと、ロジャー・コーマンがですね、このキャメロンが来た時代にやってた仕事がですね、『風の谷のナウシカ』のアメリカでのビデオ販売だったんですね。『ナウシカ』のね、アメリカの販売権ですね、徳間から買ったんですよね。
これ鈴木敏夫がですね、アメリカで売っちゃったんで、後々鈴木敏夫と宮崎駿が大喧嘩することになったんですけどもですね、大喧嘩の現場僕もいました。アニメグランプリの会場でですね、いた。ま、それは以前にも話したことがあるんですけど、それをね、ロジャー・コーマンが買ったんですよね。
でも、上映時間が長いってことで、もうまずですね、映画をですね、20分ぐらいバーンとカットして、で、吹き替える時にですね、勝手なセリフ入れてですね、で、おまけにですね、ちょっとテンポがゆっくりだとロジャー・コーマンに思えたところはですね、早回しするというですね、ビデオの早回し機能を使ってそれを再録画するっていうですね、悪魔のような手法を使ってですね、評判の悪いですね、アメリカ版の『ナウシカ』を作ったりしてたんですよ。それぐらいですね、安く、簡単によその国から買った映画でもですね、どんどんどんどん売ってるような男だったんですけど、
そんなロジャー・コーマンに媚びまくって、27歳でようやっと初監督作品です。『殺人魚フライングキラー』っていうやつなんですけど、この『フライングキラー』ね、途中でね、降ろされちゃうんですよね。実は降ろされちゃうんでですね、キャメロンは自分の作品、フィルモグラフィーに入れてません。なので公式のキャメロンのには載ってないんですけど、Wikipediaとかキャメロンの評論本にはみんな載ってて、で、みんなキャメロンがこの作品のことをどんなに嫌がってるのかっての書いてるんですけどもですね。
でもしかしですね、この『殺人魚フライングキラー』ですね、キャメロンはかなり命かけてました。ジャマイカで撮影だったんですよ。なんでそんな遠いところなのかっていうと、もうコーマンですからですね。1円でも安く撮影できるところを探した結果、『殺人魚フライングキラー』っていうですね、軍が開発した、なんだろうな、ピラニアみたいな、でもトビウオみたいに羽がついてて空飛ぶ魚みたいなのが人間襲うみたいな話なんですよ。で、そういうのを1番安く撮れる場所どこかっていうと、ジャマイカだったんですね。
で、ジャマイカに行ってですね、コーマンが映画撮ってこいという風なことを言ってですね、キャメロンが俳優より1日早くジャマイカ行ったんですよね。交通費かかるんですけども、結局アメリカでロケするとかよりも全部安くつくという、トータルで計算したらそうなるんでですね、ジャマイカ行ったんですよ。
で、ジャマイカ行ったら、コーマンが、あ、コーマンじゃない、キャメロンが驚いたのはですね、現地のコーディネーターが何もしてなかったことなんですよ。現地のコーディネーターは「はい、もう準備オッケーです。はい、大丈夫です」。大丈夫ですのは全部ジャマイカ乗りだったんですよね。ジャマイカ乗りで、なんとかなるさ、なんとかなるさと思って。
で、キャメロンが来たらですね、何1つ準備してない。それだからロケのロケハンもしてなければ、ロケの現場も確保してなければですね、どこでどういう風に撮るのかのプランとかも分かってない。それか現地の天気予報さえ調べてないので、一体本当にこれから1週間足らずの間に全部撮らなきゃいけないんだけども、晴れるのかどうかもわかんないですよ。
で、その現地のコーディネーターとキャメロンです。キャメロン一生懸命自分抑えて喧嘩にならないようにしてたんですけど、話してるうちにだんだんだんだん目の前がクラクラクラクラしてきて、そいつちょっと置いといて道へバンと飛び出したんですね。
で、道へ飛び出して、本当にマジで最初に通った車の前にバンと手を出して「ちょっと待て」って言って、で、中から兄ちゃんが出てきて「なんだお前、危ないじゃないか」って言ったら、10ドルバンとそいつに渡してですね、「今日からお前は3日間俺の運転手兼通訳だ。とりあえず俺をこのままぐるぐるぐるぐる案内しろ」って言って、その若者本当にマジで3日間雇ってですね。で、ぐるぐるぐるぐる回ったんですね。
で、1日目でとりあえず病院見つけて、警察署見つけて、で、何だったっけな。なんかデパート見つけたんだったかな。で、これ全部ですね、その場で撮影許可交渉、キャメロン取ってくんですよ。で、それもですね、その場でメモ帳をですね、そいつが持ってたんで、それ借りてペン借りて、もう全部後で俺が払うって言ってペンとメモ帳を取り上げてですね。
で、その場で車で移動してる最中に手書きで契約書書くんですよ。で、手書きで契約書書いて病院に飲み込んで、「明日からここ使いたい。午前中空いてるか? 空いてないか? じゃあ、どこだったら空いてるとか、夜出るところないか」って言って、その病院を交渉して撮影場所として押さえて、手書きのやつやって、で、その場でその病院に3ドルとか5ドル手付金渡して、「はい、次行け」って言って、次警察署行って、「この警察署で明後日ロケしたい」って言って、そのままでまた契約書いてまた3ドルか5ドル手付渡してっていうのを繰り返したんですね。
で、その1日目の夜、最後に見つけたのがですね、死体安置所だったんですよ。で、死体安置所見つけて、これはバッチリだと。『フライングキラー』の、例えば遺体を解剖するシーンとか、そういうので、なんか不思議なものが、この歯は何だっていう時に、これはいいぞということで死体安置所、契約しようとしたんですよ。
で、中入ったらですね、ジャマイカの死体安置所ですね、死体がいっぱいで、なんか解剖用のベッドあるじゃないですか。そこにですね、死体があるんですけど、その上に積んで、さらに上に積んで死体の3段になってたんですって。で、いくらなんでも本物の死体は使えないから、「この死体明日までに片付けといてくれ」っていう風にキャメロン言って、とりあえずその日はホテルに帰って泥のように眠ったんですよね。
で、次の日の朝、もうカメラのスタッフとかですね、あと俳優がアメリカから来るんですよ。すいませんね。全然まだまだ『タイタニック』に入りませんけども、あと10分ぐらいこんな感じだと思います。
で、アメリカからですね、来るわけですよ。で、来てですね、キャメロンはですね、「よっしゃ、もうロケに行こう」って言って、最初にですね、病院のシーン撮って、警察署のシーン撮って、で、夕方になったらですね、光の加減が良くなるんですね。いわゆる誰が撮っても映画に見えるっていうですね、夕方の光になるんですよ。「よし、そこで死体安置所行こう」。死体安置所の高いとこに窓があったから、そっから斜めに差す光でいい感じになるだろうってキャメロンは思ってですね、バッと行くんですよね。
で、俳優とかを案内してですね、ドアバーンと開けたらですね、床中ゴキブリだらけですよね。ゴキブリだらけだ、ああって思ったんですけど、キャメロンが「いや、このゴキブリにも出演していただこう。ゴキブリ撮ったらリアルじゃないか」ってことで。ジャマイカのゴキブリがめちゃくちゃでかいんです。これはなんかちょっとそれなりにシーンになるわと思って、もうその場で自分でですね、カメラ回し出して。
アメリカじゃないからね、アメリカのですね、組合がうるさくないんですね。だからアメリカだったら本当はカメラマンがカメラ回さなきゃいけないんですけども、誰が回してもですね、別に組合違反にならないんですよ。だからもうキャメロンそこでゴキブリとかを撮り出した。「よし、これも撮ろう。これも撮ろう」ってことで中へ入ってって、
で、中へ入ってたらですね、約束してた死体片付けるっていうのやってくれてなかったんですね。で、キャメロンしょうがないから自分でガーっと死体を向こうに押して、ベニヤ板を3枚ぐらい立てかけて俳優に見えなくしたんですよね。
で、「よっしゃ、じゃあもう夕日がいい感じになってきたから、もうこのまま撮影始めよう」と思ったら、主演俳優が「その向こう何なの」っていう風に聞くんですよ。で、「いや、死体なんだよ」っていう風に言うんですね。で、キャメロンのスタッフたちはアメリカから持ってきた死体のダミーですね。それをですね、部屋の真ん中の手術台の上に置いたりしてるんですよ。で、これで撮影するはずだったんですけど、
主演俳優が「いや、そこに本物の死体あるんだったらそれ使えばいいじゃん」っていう風に言い出してですね、「死体そのまま本当に使えばいいじゃん。リアルなんだから」という風に言って、キャメロンが止めるのも聞かずですね、主演俳優がベニヤ板をずらしてみた瞬間に、主演俳優がゲロゲロゲロゲロ吐き出してですね、ちょっと収録ができなくなったと。
で、これはやばいと。みんなこれはやばいなと思ったんでですね、キャメロンが「とりあえずちょっとみんな、外でご飯食べないか。ケータリング用意してるんだ」と。キャメロン前の日にですね、ケータリングでご飯の手配までしてたんですね。で、みんな外へ出てですね、俳優とかスタッフが楽しく、とりあえず先にご飯食べようかと思って、ご飯食べてる間ですね、キャメロンがどうしようかなと思ったら、
そこにですね、死体安置所のスタッフがやってきて、「これ、墓場へ回すことになったから、1番下の死体だけ持っていくわ」と。3段重ねの死体ですね。1番下の死体持っていくわって言って、1番下の死体だけずるっと引き出して持ってったら、他の死体も床の上にダンダンと落ちて、床が血まみれになってですね、
キャメロンはみんなと一緒にご飯を食べずに、時々外へ飛び出て「みんなどう? サラダは足りてる?」とか「ドレッシングここにあるよ」とかって言いながらですね、床掃除必死にしてですね、なんとか撮ったというのが、キャメロンのデビュー作『殺人魚フライングキラー』という映画なんですよ。もう、もうレジュメなんか見ずに話してる。
ところがですね、そのキャメロンですね、この『フライングキラー』降ろされちゃうわけですね。未だにトラウマになってます。で、降ろされた理由は本当に、なんかロジャー・コーマンが思ってたような映画にならなかったということで、ちゃんといい映画になってるんですけども。で、おまけにですね、そのロジャー・コーマンの映画社自体も次の年にですね、倒産してしまいました。
ということでキャメロンはですね、わざわざトラック運転手をやめて、ロジャー・コーマンの会社に入って、で、そこでまたトラック運転手から成り上がって、ついに監督まで行ったのにですね、監督は一作でですね、途中で降ろされて、で、会社も倒産してしまうということになったんですね。
で、そのままですね、ロサンゼルスにですね、引っ越して、ロサンゼルスの中央部、首部に引っ越してですね、『ターミネーター』の脚本を書いて売り込みを始めました。で、これが割と好評だったんですよ。で、『ターミネーター』の脚本の出来の良さで、『ランボー』の続編ですね。『ランボー/怒りの脱出』ですねと、『エイリアン2』の脚本の依頼来たんですよ。かなりこれでキャメロンの脚本がですね、優秀であることが分かります。
えっとね、ハリウッド監督って最初の頃はね、割と自分で脚本書くんですけど、途中から人に書かせるんですね。ところがキャメロン未だにですね、最新作の『アバター』に至るまで全部自分で脚本書いてるんです。割と珍しい監督です。脚本うまいんですよ。
で、この仕事を取ってきたプロデューサーがですね、コーマンの会社のアシスタントのですね、結構美人のですね、ゲイル・アン・ハードっていうですね、女の人です。で、このゲイル・アン・ハードはですね、後にキャメロンの2人目の奥さんになってですね、『ターミネーター』、『エイリアン2』、あと『ウォーキング・デッド』のプロデューサーにもなるんですから、かなり優秀な女の人ですよね。
で、この後、キャメロンのですね、映画人生はまあまあ順調です。本当に『ターミネーター』がメガヒットして『エイリアン2』もヒットしたんでですね、脚本家としての仕事もういっぱい来るんですけど、もう自分でこの映画を作りたいって言って作れる立場になったんですよ。
しかし、『アビス』という映画ですね、海の底のですね、冒険を描いたですね、1989年の映画で、これでね、結構ね、こけちゃったんですよね。ものすごい予算かけたんですけども、こけちゃったんですね。
ただ、キャメロン転んでもただでは起きないので、その『アビス』で使ったCG技術ですね。水の中にいる宇宙人がですね、その水だけがこうガーっと動いてきて、で、それが人の顔になってっていうですね、これをですね、『ターミネーター2』で、T-1000っていうですね、液体金属でできたモンスターみたいな、なんだろうな、警官からですね、自由に変形するやついましたよね。あれの技術に応用してたんですよ。
だから、映画を1本作るために新しい技術を開発してっていうですね、割とすごいことやって、それでちゃんと後で元を取り返す人なんですよね。好きなことをやってるだけだったらどんどんどんどん仕事がなくなってしまうというのは、もうやっぱ1回目のですね、ロジャー・コーマンのとこで懲りたんですよ。それよりはヒットさせて、必ず儲けて、その技術を次に使ってっていう風なことで、ハリウッドのその出資してくれる人たちから「あいつは儲かる監督だ。あいつに好きなものさせたら絶対に儲かるよ」という風に思わせないと仕事にならない。これが分かってたんですね。
さてですね、『アビス』でですね、失敗して、『ターミネーター2』やって、それでやっと生き返ったんですけど、次回作はどうするのかですね。ここでですね、事件が起きます。1985年ですね、アメリカとフランスの合同探検隊がですね、合同遠征隊っていうのかな、大西洋の深海4000mでですね、沈んでいたタイタニック号を発見したんですね。これはもう世紀の大ニュースとして有名になりました。
沈んでいたタイタニック号っていうのは、こういう風にですね、2つにへし折れた状態で600m離れてですね、こう沈んでたんですね。かなり離れて沈んでたんですよ。で、これでいくつものことが分かりました。
とりあえずこの前半分がかなり完全な状態だという風なこと。昔の説ではタイタニック号っていうのはこうくっついたまま沈んだと思われたんですね。で、くっついたまま沈んでドーンと落ちて、なのでぐちゃぐちゃに崩れただろうという風に思われてたんですけど、実は前半分と後ろ半分が離れて、で、この前半分がすーっと落ちて、ほとんど静かに着底したんですね。だからこの前の方のですね、手すりなんかもまだ綺麗に残ってるし、窓なんかもですね、割れずに残ってる部分すらあった。これが1985年に発見されたと。
で、次にですね、この後ろ半分はかなりぐちゃぐちゃに壊れてるということは、この後ろ半分ってのはどういう風に沈んだのかというと、どうも垂直に沈んだんじゃないのかっていうのが分かってくると。なんでこんなことになったのかと。
キャメロンこれをですね、確かめるためにですね、わざわざですね、これのでかい模型を作ってですね、水槽の中で実験までしてるんですけども、「バナナ現象」って彼呼んでるんですけど、バナナをポキっと折ったら皮の1部分だけで繋がる時あるじゃないですか。それと同じようにですね、タイタニック号がですね、沈む時に頭から沈んだっての分かってるんですね。で、頭から沈んでポキッと折れたんじゃないかと。
これ前から言われてたんですけども、「いや、そんなはずがない、折れたんではなくてボイラーが爆発したんだ、エンジンが爆発したんだ」、いろんな説があったんですけども、結局は折れてないだろうという説に落ち着きかけたんですよ。
で、キャメロン実験してですね、ここの部分、底の部分だけがくっついてこう折れて、最初こう沈み出すと、そうするとこいつが重みで引きずられて、で、ガッと前半分が落ちて沈んでいったら、今度は逆にですね、沈みかけてた後ろが1回コルクのように浮かんで、またこう垂直に沈んでいくと。こういう風な現象があるっていうのを発見したんですね。発見したというかですね、これ実験でわざわざ検証までしたんですよ。
で、タイタニック自体はですね、実はキャメロンが「あ、これ映画で作ろうかな」と思ったのが、1985年に発見されて、映画作ろうと思ったのがですね、94年ぐらいですからですね、実は9年ぐらい後なんですよね。その間にタイタニック号ってかなりね、問題が起きてました。
まずですね、タイタニック号自体は誰のもんでももうなくなってたんですよ。持っていた会社はですね、ホワイト・スター・ライン社はですね、とうに倒産しているしですね、沈没してもう数十年経ってるのでですね、あらゆるですね、その訴訟とかが終わった後なんですね。財産権がどこにもなかった。で、遺族の遺品っていうのもですね、誰もですね、その権利を主張してなかったんで、海の中にお宝が眠ってる状態だったんですね。
なので初期のですね、タイタニック号から出てきた遺品とかですね、そういうのが日本でも展示されたんですよね。で、ああいうのは全部実は勝手に潜っていって盗んだものなんです。盗んでいったって言ったら失礼ですけど、所有権誰にもないですからね。取ってきたようなもんなんですよ。
で、キャメロンはですね、これこのまんまほっといたらタイタニック号なくなっちゃうぞって、すごい危機感覚えたんですね。で、タイタニックの映画作りたいなという風に思い出したんですけどもですね、思い出したらですね、キャメロンね、『ターミネーター2』で当てた後なので、そこそこね、自由になる金あったんですよ。
なので、キャメロンですね、そのナショナルジオグラフィックのですね、その記録映画を見た後ですね、いきなり90年ですね、モスクワに行ってですね、で、ロシアの海洋学のですね、スタッフと話します。いきなりもう本当にその映画見て、うわ、これ行けるんじゃないかと思った。その日のうちにですね、モスクワまで行ったんです。
で、ロシアの海洋学というのはちょうどソ連が崩壊した後なのでですね、1年半予算0でやってたんですよ。で、ハリウッドから有名な監督が来るってことはもうみんな大喜びで、「いや、何でもしますよ。何でもしますよ。ハリウッドに協力しますよ」っていうな感じで歓迎したんですよね。
で、キャメロンはですね、彼らの持っている海洋調査船、ケルディッシュ号って言うんですけど、ケルディッシュ号チャーターします。で、そのですね、ケルディッシュ号です。チャーターして、「じゃあちょっとこの船で早速タイタニックを見に行きたい」っていう風に言ったんですけども、そん時にですね、キャメロンが持ち込んだのがですね、巨大なタイタニック号の模型だったんですよ。
えっとね、この模型大体70cmから80cmぐらいあるんですけど、この10倍の模型持ち込んだんですよ。あのね、1/5のタイタニック号の模型ですね。全長7.7mの模型をケルディッシュ号に持ち込みました。
で、もうケルディッシュ号ってですね、真ん中にでかいレクリエーション室があったんですね。で、そこにスポーツジムがあって、色々ですね、隊員たちがですね、休める設備があったんですけど、それ全部取っ払って外して外して、1番でかい部屋にこの7.7mのですね、調査船ですよ、タイタニックの模型をドンと置いたんですよ。
で、何のためかって言うと、これが、まあね、一応ケルディッシュ号のですね、スタッフたちがウォッカの蒸留装置だけは残してくれと。密造酒のウォッカの蒸留装置があったんですね。それだけ残してくれって言ったんで、それだけ残してですね。
で、実際に潜水艇に乗る、潜水艇2隻あったんですけど、潜水艇2隻に乗るですね、操縦士たちに小さいビデオカメラを持たして、この7.7mの模型の上で徹底的にみんなに研修させたんですね。どういう状態で海底にあるだろうかと考えて、「俺多分これの映画作ることになるんだと。で、主人公はここに立って、ぐわーっと回り込むシーンが撮りたいと。
で、この回り込むシーン撮りながら、昔の綺麗なタイタニック号から現在の海底のボロボロなタイタニック号に、そのまんま絵が変わる絵を撮りたいと。そのためにはお前らが完璧にどういう風な絵を撮るのかシミュレーションしてくれないとわかんないんだ」と。「だから全員カメラ持って研修するぞ」っていう風に言って、キャメロンのですね、研修が始まったんですね。
それがこれ、これですね。これね、ケルディッシュ号の中にさらにですね、ボロボロの状態のですね、正確なやつを作った時のカメラテストなんですけども、船の真ん中のですね、部屋にボロボロになったタイタニック号の巨大な模型を置いて、で、ロシア人のカメラマンですね。下もそうですね、ロシア人のカメラマンに話をするキャメロン監督なんですけど、ビデオカメラを持たしてですね、で、徹底的なシミュレーションすると。これ、何かって言うとですね、プレビズなんですよ。『シン・エヴァンゲリオン』で庵野君がやったことですね。
で、実はですね、『シン・エヴァンゲリオン』でプレビズやる前にプレビズをですね、やった作品が日本にもあって、それ何かと言ったら、『ローレライ』っていう映画なんですよ。樋口真嗣監督がですね、2005年に作った映画でですね、庵野秀明もですね、水兵役で出演してるんですけども、
『ローレライ』って僕昔から不思議だなと思ったのが、『ローレライ』のね、潜水艦のミニチュアがやたらでかいんですよ。7m以上あるんですね。なんで7m以上もあるのかと思ったら、ひょっとしてと思って調べようと思ったんですけど、もう『ローレライ』の資料なんかほとんど残ってないんですよ。で、しょうがないからですね、『ローレライ』のムックがですね、ようやっとですね、古本屋で見つかったんでですね、取り寄せて調べてみたらですね、やっぱりそうだったんすよ。
樋口真嗣がですね、『ローレライ』でですね、『ローレライ』に出てくる伊号潜水艦のですね、7m以上ある模型作ってプレビズ撮ってたんですね。で、なんでかなと思った。実はね、1990年代から2000年の頭にかけて、日本の映画監督とかですね、アニメ監督がハリウッド映画のメイキングを見て、ちょうどそん時DVDの時代になったんですよ。VHSビデオからですね、DVDに流れが変わってきてですね、特典映像でメイキングつくようになったんですね。
で、メイキングがついてくるので、これどうやってるのかと、どうやって撮るのかがやっと分かってきたんですよ。で、それを見ながらですね、樋口真嗣とかがですね、「あ、こういう風にして撮るんだ。こういう風にして撮れば実はコストも安いし、本格的な絵が撮れるんだ」ってのが分かってきた時代なんですね。
で、樋口真嗣はですね、おそらく、さすがにこの本の中でも『タイタニック』とは書いてないんですけども、でかいミニチュアを作ることに固執して、で、それでですね、プレビズですね、つまりビデオカメラを持ってですね、あらかじめ潜水艦の周りを舐めるように撮って、で、本編でどこをCGにして、どこを特撮にするのかの割り振りっていうのを決めたっていうのが書いてあったんですね。
で、それをですね、えっとですね、84年かな? あ、違うな。94年だ。94年の時点でやったのがこのキャメロンなわけですね。『ローレライ』ではですね、実際にそのあんまり巨大なミニチュアによるプレビズって効果が出なかったんですけども、庵野秀明はですね、庵野君はですね、『シン・エヴァ』で使いこなしたという風になると思います。
で、後にですね、キャメロンがですね、メキシコに巨大なスタジオを作ることになるんですけど、そん時もですね、最初にですね、メキシコに持ち込んだのが、これ、その7.7mよりもさらに大きいですね、13.5mのですね、1/2のですね、タイタニックの模型をまずメキシコに持ち込んだんです。
で、なんでそんなでかい模型を最初に持ち込んだのかって言うと、これからメキシコに巨大なプール作って、そこに実物大のセット作るわけですね。で、どの向きにタイタニックを作ればいいのかっての調べたかったんですね。もう撮影期間分かってるわけですよ。大体4ヶ月ぐらいあって、太陽がこっから昇って、こっから沈むってのが分かってるから、
じゃあこの13.5mの模型持ち込んで地面の上に固定して、太陽がどういう風に当たるのかっていうのシミュレーションしといたら、後で合成用の素材作る時でも、スタジオ内で人工照明でやる時でも、ばっちり分かるので。まず巨大なミニチュア持ち込んで、現地で日が当たって日が沈むまでにどういう風に太陽が動くのか分かっとけば、で、どの影がどこに差すのかが分かっとけば、実物大のタイタニックを作っても、後で「こっちの方向から太陽ちょっと不便だな」っていうことがなくて済むと。
そういう風なことを考える人間なんですね、キャメロン。なのでまず最初にロシアの船に持ち込んだのも巨大なミニチュア。メキシコに最初に持ち込んだのも巨大なミニチュアって、そんな男なんですよ。
で、それをですね、13.5mのですね、メキシコの話ちょっと飛ぶんですけども、持ち込んでですね、最初に撮ったのがやっぱこうプレビズなんですよね。分かりますか? あのね、上がね、プレビズの映像で、下が実際の映画内の映像で、ちょっと荒れてて分かるんですけど、これ僕メイキングの映像からですね、ちょっと抜いてきたんですよね。
13.5mのミニチュアの先にですね、人形置いてるんですね。で、キャメロンがですね、カメラを持ってこういう風に回り込んで撮るんだっていうシーンと全く同じシーン。これ上のシーンも動いてたんですけど、全く同じシーンが、ジャックですね、ディカプリオがですね、「俺は世界の王だ」って言って手を広げて風をこう受けるシーンと同じになってんです。
こういう風にしてですね、プレビズであらかじめ撮ると、なんだろうな、自分がどんなシーン撮りたいのかって俳優にもスタッフにもすごい説明できるし、で、クレーンとか動かす時もこういう風に動かすんだっていうのは説明ができると。で、説明ちゃんとしてると失敗がないのでですね、その与えられたスケジュール内でベストの絵がすごく撮りやすいようになる。押すと基本的にはスケジュール管理も楽じゃなくなるし、良さもどんどんどんどん落ちていくっていうのが、キャメロンの考え方なんですね。
で、プレビズっていうのはキャメロンが始めてですね。で、その後『ローレライ』の樋口真嗣が日本へ持ち込んで、『シン・エヴァ』で庵野秀明がですね、初めて多分日本で使いこなしたという風なことになるんじゃないのかな。
ちなみに僕、プレビズ面白いなと思ったのは、今話して分かるように、ハリウッドでプレビズを使う理由っていうのはコストを下げるためなんですよ。潜水艇で潜って、タイタニックの実物を撮る時に無駄な動きしなくて済むように、ロシアの潜水艇乗りたちにですね、潜水艇の操縦士にカメラ持たせて、こういう風に撮りたいから頼むよっていう風に、コスト下げるためなんですよね。
ところが日本でのプレビズの使い方は、『シン・エヴァ』で分かる通り、コストを下げるためではなくてですね、品質を上げるためなんですよ。かっこいいアングルを見つけるため、かっこいい構図を見つけるため、品質を上げるためなんですよ。クオリティアップのために使っちゃうんですよね。
CGと同じです。ハリウッドでCGを使う理由はただ単にコストを下げたいからなんです。でも日本で映画の中でCG使うというのは絵のクオリティを上げたいからなんですよね。これの差が面白いですね。
こうやってですね、キャメロンはですよ、海底で本当のタイタニックに会いました。本当にロシアのね、潜水艇をチャーターして自分自身で潜ったんですよ。潜ってですね、タイタニックを見てきたんですよ。しかし見てきたと言ってもまだですね、『タイタニック』を作るという風にはですね、キャメロンなかなか決心できませんでした。
キャメロンはですね、そういうわけでですね、『タイタニック』を作る前に『トゥルーライズ』っていう映画ですね。シュワルツェネッガー主演のアクションスパイコメディなんですけど、1994年に完成させてですね、『タイタニック』には迷ってました。もうどう考えても予算はですね、8000万ドル以上かかると。80億円以上かかるし、おまけにシリーズ化もできないと。だってタイタニック沈むんだもんと。
で、おまけにタイタニック沈んでほとんど死ぬよって結末をみんな知ってるので、これ映画でやっても儲かんないよ。で、俺作りたいんだけど、儲かんなかったら俺のキャリアここでおしまいになっちゃうっていう風に考えたんですね。で、同時にですね、この8000万ドルで済まないんじゃないかなってキャメロンも思ってたんですよね。
トゥルーライズがね、1億ドル超えて、ちょっとキャメロンもですね、これは偉いことになってきたぞという風に思ってきたんです。あ、1億ドル超えたのはあれか、アビスだ。アビスで1億ドル超えて、で、赤字になったのですね。そっから先トゥルーライズとかちょっと少ないの作ったんすけども、キャメロンはとりあえず予算を大きくするの嫌いなんですね。そういう風にするといろんな会社がいろんなことを言ってきてどんどんどんどん動き取れなくなると。で、そうじゃなくてもっと小さい作品を作ろうということですね。大騒ぎする作品じゃなくてETみたいなものを作りたい。小さな作品でなんか心に残るようなですね、そういうのを映画にしたいということでですね。
キャメロンがですね、次の作品として選んだのがですね、1930年のジョージアを舞台にした話ですね。耳も聞こえなくて、声も出ない女の子がですね、主人公の映画を撮ろうとしました。これ、小説の原作権を買ってですね、で、キャメロンはですね、この小説をですね、脚本に書き直し出したんですね。
で、脚本ですね、できたから読んでくれっていう風にですね、デル・トロ呼び出すんですよ。で、デル・トロですね、呼び出して脚本できた。俺の新作の脚本できた。読んでくれという風に言って、デル・トロに見せたらですね、デル・トロがですね、おいおい、ちょっと待ってくれよ。キャメロンと。ジョージア州の話なのに、なんでこれ舞台がタイタニックなのって聞くんですよね。なんでとデル・トロ呆れ返ってですね。お前は小さい作品を作りたい。地味な女の子の話で俺にもこんなのが作れるんだって。スピルバーグのETのような小さい話を作りたいって言ってたんじゃないのかって言ったらですね、キャメロンがですね、なんかもう語り出してしまったんですね。
その時デル・トロが笑いながら突っ込んだらです。キャメロンが真剣な顔して語り出して、タイタニック潜ったんだよと。10時間かけて潜るんだ。10時間かけて潜って、もうビニール袋与えられてトイレはもう全部そこでしろと。おしっこもうんちもそのビニール袋でしなきゃいけないと。そうやって10時間かけて潜っていったら何があったと思うと。海底4000mについたら目の前にでかい山があったんだよな。で、山があって、これ山があるから越えなきゃいけないと思って、で、スクリュー回したんだ。スクリュー回したらもうね、海の底は堆積物だらけだからスクリューでぐわーっと砂が舞い上がって泥が舞い上がって何も見えなくなると。で、潜水艇がその山をこうよいしょっとレーダー見ながら乗り越えたら、で止まったんだよと。とりあえず前に何があるかわかんないから止まったと。
で、止まってライトつけてようやっと周りの沈殿物が落ちたら目の前に壁があったんだよ。タイタニックの胴体が目の前にバーンとあったんだよと。あと3m前に進んでたら衝突してたんだ。やばいっていう風なことで次はスクリューを垂直に回して垂直上昇したんだよね。そうすると垂直上昇しちゃうとまた泥が舞うんだよ。泥がうわーっと舞ってまた前が見えなくなるから危険なので、バックかましながら上昇したんだ。で、だいぶバックかましたらレーダーの方に1mぐらい下に地面があるっていうのが分かったんで、じゃあとりあえず着地しよう。ぐぐんと着地したと。で、そこで泥が降りるのを待ってライトつけたら、そしたら目の前にタイタニックのここがあったんだって。
つまりキャメロンね、ここに着陸してたんだよ。多分最初ここにですね、近くに目の前にあった壁ってのはここで、で、こっから垂直上昇して偶然このタイタニック号の前の甲板だよね。ここに着陸して、で、真正面にこの窓を見るような感じで、この窓がまだ全部ちゃんと残ってるんだっていう。で、もちろんその瞬間はすごいって思ったんだけども1秒も感動しなかったと。まあ0.5秒ぐらいは感動したんだけど、すぐによし、カメラ回そうと。とにかく10時間かかってここまで来てると。で、おまけにまだ正式に契約してないから、この調査のためのロシアの調査船のチャーターから潜水艇のチャーターまで全部キャメロンの自腹だったんだよね。なのでとにかくカメラ回そうと言ってカメラ回してバーっと撮ったと。
で、最後まで、例えばタイタニックの沈む時にね、楽団が演奏していた場所とかも撮ったと。これも後で映画撮る時は絶対ここ使うことになると思ったから、もうそこを撮ろうと。綿密にその7.5mの模型作って何回も何回もシミュレーションしたんだから、そこ正確に。まあ具体的に言っちゃえばここなんだけども、ここをこう潜水艇で通り過ぎて、ちゃんと2台、潜水艇2台チャーターしたんだよね。1台を照明係にしてもう1台でこうガーっと撮ってですね、撮ったと。で、それでは俺はいい映画撮れたなと思って帰ってきたんだよ。
で、帰ってきて、まあその日の夜はそのロシアのチャーター船で密造酒のウォッカ飲んで寝てたら、そしたらその日の夜いきなり夜中に目が覚めて体が震えて止まんないと。で、涙がボロボロボロボロ出てくるんだって。で、なんでってデル・トロが聞いたら、いやタイタニック本当にあったんだよって語るんだよね。一緒に潜ったロシア人たちは窓の中から人が見てる気がするって言ってた。で、俺はそんなの気にしなかったんだ。まあ迷信深いなという風に思ったんだけども、まあガラスだからそんな風に光が反射することもあるだろうと。人が見てる気がするっていうのもなんかそういう風な気がするだろうけども、今になってそれは気持ちが分かると。あいつらの気持ちが分かると。あそこに勇敢な人も卑怯な人もみんないたんだよ。タイタニックが沈む時には勇敢な振る舞いをした立派な人もいっぱいいたし、卑怯な振る舞いをした嫌なやつもいっぱいいたと。でもそいつらは全部まだあそこにいるんだっていう風に言ったんだね。
で、俺らは何してたんだと思って、俺らはその彼らの、その勇敢な奴らの、卑怯な奴らのお墓の上でいいものが撮れたとか、このショットはこっちから撮ればよかったという風に大騒ぎしてたんだよと。人の墓の上で俺たち大騒ぎしてたんだよっていう風にキャメロンはね、デル・トロに言ったんだって。
で、デル・トロはまあそれを聞いたらキャメロンの気持ち分かって、いやもう元々俺はね、お前が小さい映画なんか作るはずがないと思ったよと。これからはお前のこと絶対信用しない。お前がなんか小さい映画作りたいって言ったら、それは次の映画史上最大の予算の映画になるという意味だっていう風に言い返したんですけどね。で、そういう風にデル・トロが混ぜっ返したら、キャメロンはタイタニックを舞台にしたラブストーリーじゃダメなんだと。そうじゃなくて本当にあったタイタニックを、本当にそこに人がいたんだっていう風に思ってもらわないとこれダメなんだよっていう風に言ったんだ。そっから映画タイタニックというのは始まったと。キャメロンの冒険ですね。
こっから先、後半限定でまだ話は続きます。まだまだ無料は続きますのでですね。お付き合いください。1回ちょっと休憩でお茶飲むね。
いやあ、ちょっと休憩しよう。デル・トロいいよね。いい味してるよね。さて、
さあ、あんまりね、ここで休憩長くすると本当に今日は大変なことになっちゃうから。キャメロン話だけで40分話したよね。こっからは本編の映画の説明しますけども、先週の金曜ロードショーではですね、何だっけ?碧洋のハートっていう風に言われたし、ダイヤモンドあったよね。ローズが婚約者からもらったハート、青いダイヤモンド。あれは、青き海の心っていうですね、吹き替えになってたと。まあ碧洋のハートよりはね、分かりやすいよね。耳で聞いてとりあえず理解、吹き替えだから理解しなきゃいけないので、青き海の心の方が分かりやすいと思います。
で、前半ね、氷山衝突までやろうかと思ったんですけども、金曜ロードショー実際に見たらただ単に2人のラブシーンの直前ですか、単に車の中にローズと、なんだろうな、ジャックがイチャイチャする辺りで終わっちゃったんですけども、こっからですね、映画の後半のですね、解説をします。
まずですね、押さえとかなきゃいけないのがですね、そもそもなんでタイタニックは衝突したのかですね。理由1、増速していたですね。氷山がいっぱい出てるっていうのは分かってたんですけどもですね、夜はだからそういう時は止まってるのが当たり前ですね。実際にタイタニック以外の船は大体その日の夜ですね、4月14日の夜はですね、止まってたんですよね。海の上で止まってて氷山に衝突しないようにしてたんですけど、タイタニックだけはですね、ほとんど最高速に近い速度で航行してたんですよね。
で、なんでその増速してたのかって言うとね、タイタニック号って初航海だったんだよね。で、初航海の時って石炭で動く蒸気タービン船って最高速度出しやすいんだよ。っていうのは石炭って炉の中で燃やすじゃん。で、燃えカスをまた掻き集めて新しい石炭入れて、石炭入れてってやるから、どんな風にしても石炭炉の中、釜の中っていうのは石炭のクズが壁にこびりついていて、だんだんだんだんね、燃焼温度が下がっちゃうし、燃焼効率も悪くなるんだって。なので石炭を積んでいる船の場合、昔の軍艦なんかもそうだよね。もうね、初航海、処女航海の時が最高速度を出す1番のチャンス、1番で唯一のチャンスなんだよね。なので、まあ何日も天気が良かったという風なことがあったのでタイタニック号は速度を上げていた。
2つ目ですね。無線警告を無視ですね。氷山の警告いくつもあったんだけどもね、タイタニックね、その、まあまあ割と無視しちゃったんだよね。で、近くにいたですね、カリフォルニア号の警告が、無線ってね、不便なもんで、遠くの無線は音が小さいんだ。だからボリュームいっぱい上げて、他のところと通信しなきゃいけない。で、近くにいる船のはめちゃくちゃでかく聞こえるんだよね。
で、タイタニック号の無線室っていうのは、当時の船の中の無線全部同じなんだけども、実は船の設備じゃないんで、イタリアのマルコーニ社、マルコーニってあの無線を発明した人ね、無線通信を発明したマルコーニが作ったマルコーニ社っていう会社が世界中の無線を独占販売していた時代があって、船の中にある無線室っていうのはそのマルコーニ社の運営だったんだよね。だから船の一部じゃなかったんだ。で、マルコーニ社の無線っていうのは当時何に使われたのかというと、船同士の連絡にほとんど使ってないんだよ。そうじゃなくて、お客さんから1件いくらで通信を受けてたんだよ。だから無線連絡というののそのほとんどが、月曜日に着くぞとか水曜日に着くぞとか、株がいくらになったらじゃあ買えとか、じゃあ売れっていうお客さんの無線ばっか扱ってたんだ。その中でたまに船同士の通信もあって、それはマルコーニ社がいわゆる好意で受け取って、それを船長に渡すってようなことやってたんだ。
だからマルコーニの無線っていうのは大体アメリカかイギリスか途中の中継点の船だよね。遠い船に対して無線を打ったり無線を聞いたりしてたから感度は1番上げてたんだよ。で、そうやって誕生日メッセージとか、あとなんか愛のささやきとか、あと株の売れとか買いとかっていう、もう本当にね、山のようにね注文が来るんだ。お客さんから無線の注文が。で、その間からめちゃくちゃでかい音で近くの船から、はい、氷山発見、また発見。はい、こっちの方からも氷山発見っていうのが出て、あまりにうるさくて、うるさい黙れっていう風に無線士が言っちゃったんだね。もうこれも記録残ってんだ。で、それで近くのカリフォルニア号怒って、無線係がもう電源落としてベッドに入って寝ちゃったと。
で、これのおかげでタイタニック号が沈没した時に、カリフォルニア号ってわずか1時間の距離にいた。だからもしカリフォルニア号来たら多分ねタイタニックの乗客ほとんど助かってたんだね。救助間に合ったんだけども聞こえなかった。その理由はこの無線士たちがまず別枠で船の所属じゃなかったということと、だから、じゃあ無線士の責任か、そうじゃないんだよね。タイタニックの所属じゃないから。ただ単にマルコーニ社が好意でやってる船同士の連絡だったんだから、まあそういう事情があった。
あとね、氷山が見えなかった。高さ15mの見張り台はあるんだけども双眼鏡がなかったと。これ双眼鏡を入れているロッカーの鍵を持っている航海士が、たまたまタイタニックが寄った港で降りてしまって、またもう1回乗ってこなかったというだけの、そんだけのしょうもない理由なんだけども、それのおかげで双眼鏡のロッカーが開かなくて、で、またねタイタニック号って豪華客船だから双眼鏡のロッカーも豪華なんだよ。壊すのがもったいないので、まあいいかっていう風なことで双眼鏡なしでやったんだよね。で、その日の夜は、もう本当に波がないぐらい静かだったと。で、波がないぐらい静かってことは氷山が見えないってことなんだ。氷山って夜発見する時って、氷山の根元の水面近くの氷山に当たってる波で氷山発見って分かるんだね。それだけが白いから。夜でも分かるぐらい白いから。だから波がない夜っていうのは安全に見えるんだけども氷山が見えない。双眼鏡もないし、そんな状態だったと。
4つ目。舵が効かない。これね、衝突した瞬間に、そん時にブリッジにいた一等航海士ってすごいできるやつだった。できるやつだったから、運が悪かったんだけども、衝突した瞬間に舵を左一杯に切って、でスクリューを逆転させてるんだよね。あ、まあ衝突直前だ。直前に舵を左に切ってスクリュー逆転してるんだけども、タイタニック号って、ちょっとこれプラモデルの方使うね。ああ、壊れそうでやだな。3つスクリューあるの分かるかな?でね、左右のスクリューが推進用なんだ。真ん中のスクリューが方向変える用だという風に、まあまあ思っといてください。で、このでかい舵をこの真ん中のスクリューで動かしてる水流が舵面によって方向を変えるんだけども、タイタニック号って巨大なボイラーあるじゃん。それでっかいエンジン動いてたよね、映画の中で。でっかいエンジンはこの左右のやつなんだよ。で、この左右のエンジンを動かした高圧の蒸気を次はタービンエンジンに回して真ん中用のですね、スクリューを回すんだ。つまりこの2つ、両側の前に進むためのスクリューと真ん中のスクリューは別のエンジンで動いたんだよね。
で、ぶつかった瞬間に全力後退って言ったわけだ。全力後退させるためにはこいつのギアを切り替えなきゃいけないって。エンジンを、エンジン自体を逆転させなきゃいけないんだ。自動車とかとは違うんだよな。エンジン自体を逆転させなきゃいけないんで、一時的にエンジン1回止まるんだよ。で、止まってから逆転するんだけども、その高圧がこの真ん中のエンジン用にですね、もう1回流れるまで止まっちゃうんだよね。だから舵を切ってた時、実はこの真ん中のスクリューって止まりっぱなしだったんだって。そういう理由があってですね。タイタニック号って左に舵をいっぱいに切ったのになかなか曲がらなかった。それはそのタイタニック号が持っている合理性っていうのかな。まず高速に海を渡ると。で、方向転換っていうのは港についてタグボートに押したり引いたりしてもらえばいいやっていう風なことで、あまり海の上で細かい動きをするようになってなかったんだ。エンジン自体が、巨大なエンジンは左右のスクリューを回すためのもので、真ん中はその余った蒸気を使って動かすためのものだから、どうしても方向転換する時とか、まあ特にエンジンを逆転させた時なんか一時的に真ん中のスクリューが止まってしまう。そん時に舵を切っちゃったから舵が効かなかったわけだよね。ということですね。11時40分、タイタニック号は氷山に衝突します。じゃあ次ね。ごめんな。もうこんなオタク話ばっかりで。
なぜ沈没したのか。衝突したのは分かったけども、なんで沈没したのか。まずリベットが外れて浸水。あのね、金属船、全部金属で作るような船が出現してから、まあ軍艦で出現したのはね、もうまだ30年ぐらいしか経ってないんだよね。っていうのは、ペリーが浦賀、日本で浦賀に来たですね、サスケハナ号っていうのあるじゃん。あれ1853年に作られたんだけどまだ木造なんだよ。全木造なんだよね。で、グレート・イースタン号というのは1958年にできるんだけど、これ全金属製なんだけども形がサスケハナ号と同じで本当に昔の帆船の形してるんだよ。で、旅行ブームがあったから、客船はどんどんどんどん大型化してたんだけども、全金属製の船っていうのはタイタニックが出現した辺りでようやっと誕生してきたもんだ。だから作り方がよく分かってなかった。
で、船の作り方、当時の船の作り方っていうのはリベット打ちって言って、リベットって何かって言うと、鉄と鉄くっつける時に溶接でつけるんじゃないんだよね。そうじゃなくて重ね合わせて穴開けてそこにホッチキスの玉みたいなん入れて、これを両側から、なんか熱してました、リベット両側からガンガンガンと蒸気ハンマーで打って潰すと。そういう風にしてホッチキスで止めるみたいにして鉄板と鉄板を止めていく手法、リベット打ちって言うんだけども、ところがねタイタニック号って、この平面部分、この平面部分は機械のリベット打ちができるんだけどさ、この先っぽの部分あるじゃん。この先っぽってね、実に複雑な曲線なんだよね。で、この曲線って蒸気ハンマーが使えないんだよ。で、蒸気ハンマーが使えないから、平面部分は鋼鉄のリベットで蒸気ハンマーで機械の近くでガンガンガンって締めることできるんだけど、曲線部分って鋼鉄よりもずっと柔らかくて脆い錬鉄というやつで、錬鉄というやつで手で持ったハンマーで熟練工が叩いて潰していかなきゃいけない。つまり弱いんだよね。ホッチキスのなんだろうな。太いので止まってる真ん中に比べて、前後の曲線部分って細い針の短いホッチキスでちょんちょんちょんちょんって止まってるようなイメージだと思って。まあでもね、当時計算したら十分だったんだよ。
で、ところがね、錬鉄のリベットっていうのは氷点下で粘り気を失って、鉄の粘り気を失って折れやすくなると。これをね、低温脆性、低温脆性、低温でもろくなる性質ねって言うんだよ、これ。僕が知ってる低温脆性の代表例は、バンダイの子会社のポピーというところがですね、昭和40年代にマジンガーZの超合金っていうの発売したんだよね。で、超合金で発売して、後にそれがコレクターアイテムになってすごい値段上がってったんだけども、で、日本中のおもちゃ屋さんで、超合金ないか超合金ないかってコレクターが探しまくったんだけども、北海道の倉庫で見つかった超合金がほとんどボロボロになってたんだ。まあなんでかって言うと、北海道の倉庫に仕舞われていたマジンガーZの超合金ってこの低温脆性でほんのちょっとした振動でバラバラバラバラ崩れちゃったんだよね。そう。金属っていうのは、特に合金っていうのは低温で崩れる性質があって、それをなんか強化するためにいろんな素材があるんだけども、北海道の冬ぐらいで崩れちゃうんだよ。
で、タイタニックが当時その走っていたですね、氷山のある海っていうのは、まあ塩水だからね、零下になっちゃうんだよね。0°で凍るんじゃなくて-2°以下で凍るんだよ。で、ちょうど-2°ぐらいだったらしいんだよね。すると低温脆性でリベットがもろくなって、もうほとんどなんだろうな、ホッチキスというよりはなんか茹ですぎた細いパスタでダンボールをこう縫ってるようなものなんだよね。もう本当にねプツプツプツプツっと氷山に当たった瞬間にそこの部分が剥がれてしまったらしいんだよね。で、まあタイタニックの左側面にはですね、あ、右側面だ。右側の側面にはですね、長さ60mぐらいの裂け目ができちゃったと。
で、このリベットのもろさが発見されたっていうのは第二次大戦の時だ。第二次大戦に同じような作り方をした船がなぜか寒い地方に航海に行くとどんどんどんどん沈むと。2700隻ぐらいアメリカで作ったリバティ船って言われるその貨物船の、まあまあ造船所で作ったやつがあるんだけど、そのうちの千隻でトラブルが起こってですね、1割以上が沈没してしまったという事件があって、第二次大戦の時に初めて調査が入って、リベットがこんなに危険だ、脆性、低温脆性ってのはこんな恐ろしいのが分かったんで、タイタニックの頃全くわかんなかったんだよね。
で、しかしリベットが外れても、実際にタイタニックが60mのね、裂け目って言ったよね。ただその裂け目自体はもう本当何センチだったんだよ。だから、タイタニック号に開いた穴っていうのは全部合わせても面積にすると1.1m²、マンホールの穴より小さい穴しか開いてないんだよ。そっから水が入ってタイタニックは沈んじゃったと。
で、まあまあなんでじゃあそんな小さい穴で沈んだのか。2つ目だよね。隔壁が不良ですね。石炭庫の火事は前回話してるんです。石炭庫の火事で隔壁が歪んでたんだけども、おかげでね、ちょっとこれ断面図ね。タイタニックのでかすぎる断面なんだけども、運が悪いことにね、この2つのボイラーの間に石炭庫あるんだけども、この位置が火事だったんだよ。で、ここが火事で、まあ金属が弱くなってるところにここはガリガリガリっと裂けて裂け目が入っちゃったんでですね、この防水扉が閉まらないまま両側に水が入っちゃったんだよね。で、頭からここまで5つのブロックに全部水が入っちゃったので、タイタニックは頭だけが重くなってだんだんだんだん前に傾いて沈み出したと。こういう流れになってたんだよな。いや、もう本当にね、みたいよ。大変だったみたいよと。
あと、しょうもない理由ですけど、窓が開いてたと。船がね、さっきも言ったようにですね、一時逆転かけて停止させたわけだよ。そうすると乗ってる客たちはみんな何があったんだって窓を開けちゃうわけだ。で、窓を開けたらそっから15分後に船長から退船命令が出て、はい、皆さん救命胴衣をつけてとにかく外へ出てください。外へ出てください。早く出てくださいっていう時に、止まってたから窓開けたんだよね。外の窓開けたのがですね、そのまんまみんな逃げちゃったんだよ。なのでタイタニックは沈んでいって1番下のフロアからだんだんだんだん窓から水が入ってきて、それでこう沈むのが加速したと。
映画の時間順で見ると、えっとですね、まあようやっとこれで映画内の話になるんだけど、もう1時間話してるな。
まあ、船の第1区画に水が入ってきた。で、大変だ、水密ドア、いわゆる隔壁を閉じろと、ランプがパパッとつくシーンがあって、で、次にこのでかい巨大な扉がガーっと下りてきてですね、水密扉が閉まるという風なシーンがですね、まあ映画で言うと1時間40分目ぐらいにあります。で、その後船長のところに報告が入るとですね。で、どういう状態かって言うと、ボイラー室が2m半の浸水っていう風に言ってる。で、これね、船長がここにいて、実はね、ジャックとローズがここにいるんだよ。できるだけジャックとローズの主観的な話にするために、こういう大事な事件があった時は必ずその場に偶然でもこの2人が居合わせて、すれ違いながらローズがその話を聞いて、大変なことになったって分かるようになってんだけど、まあうまい撮り方してるんで。
で、ボイラー室2.5mの浸水があったと。で、そこで、設計したアンドリュースが、郵便室はという風に聞いてるんだ。で、郵便室もダメです、浸水してますと聞いて、こう、アンドリュースが絶望的な表情をすると。で、青写真を見せてアンドリュースが、水が隔壁を越えて後ろの区画に流れ込んで、三等客室のあるFデッキという風な説明があるんだよね。だから隔壁をこうやって越えて後ろに流れ込むと。で、全体の状況を説明しようと思うんだけども、えっとですね、
どういう意味かって言うと、ごめんな、本当に何回も何回もこういう説明になって。裂け目はね、合計でこの紫色の箇所だよね。まあ大きく言って4箇所、これ60mにわたってあるんだけども、この部分が浸水して、三等客室に水が入り始めたと。で、隔壁のBを貫通したやつで第1ブロック、第2ブロックに水が入った。隔壁を貫通した傷で第2ブロック、第3ブロックに水が入った。で、ボイラー6番あたりの、これが火事で燃えたところだよね。なのでここを貫通した時にここまで水が来ちゃったと。だからタイタニックの水密ブロックで言うと第1、第2、第3、第4、第5までが全部水に浸かることになっちゃったわけだ。
これがなんで大変なことかって言うと、さっき言った設計士が、水は最初イチャイチャしてた例の倉庫、車があった倉庫、ここに入ってくるよね。ここまでだったらまだアンドリュース、設計技士は驚かないんだけども、その上にね、メールルームって書いてるじゃん。ここ郵便物とかを貯めとくとこなんだけど、ここまで水が来たっていう風に言われて、アンドリュースはもうダメだって顔するんだ。それはなんでかって言うと、この赤い線あるでしょ?この赤い線は喫水線で、実はタイタニックってこの喫水線の割とこの下、ちょうど僕がこの棒持ってる辺り、ここまでしか海に沈んでないんだよ。こっから上は海の上に浮いてるはずなの。ということは、いくらここの周りに穴が開こうともメールルームに水が入ってくるはずがないんだ。だって水面より上だから。ところがここに、メールルームに水が入ってきたということは、すでにもう前方傾斜が始まってるってことなんだよね。前方傾斜が始まってるので、本来水の上にあるメールルームに水が入り出した。
なのでアンドリュース設計士は、タイタニック号で倉庫に水が入った、大変なことになってる時に最初に郵便はどうかっていう風に聞いた。郵便室はどうかと。ところが郵便室にも水が入ってますと聞いた瞬間に彼は実に絶望的な顔をすると。実に絶望的な顔して図面を出してもうダメだと。もうダメだっていうのは、あ、これもう1回使うんだ。あのね、めんどくさい話だって、本当悪いよね。
ここにまあまあABCDデッキってあるよね。これがいわゆる一等客室が使うとこだ。で、この下のEFGっていうのは三等客が使うとこだと思って。まあ違うところもあるんだけど。で、この隔壁っていうのかな?これね、Fまでしかないんだよね、水密で。このEのここって実はこっからここまで長い廊下が繋がってんの。このEの長い廊下っていうのは、えっと、スコットランド通りっていう風に言われてるんですけど、乗員が便利に使えるように、高速で移動できるように前から後ろまで、本当はそんなことやっちゃいけないんだけど、1本の通路作ったんだよね。なのでこのメールルームまで水が来ちゃったら、いずれはもうGデッキまで水来てるわけだから、Eデッキまで水が来ると。そうするといくらここに隔壁があってもこの長いスコットランド通路を通って水がどんどんどんどん後ろの方に流れていって、いくら窓を閉めても、こっから先防水しても、スコットランド通路を通って後ろの方まで水が入ってくるのもう止められないと。もうこれで沈んでしまうことが確定だっていう風に設計士のアンドリュース。設計士だから船を沈まないように作ったんだよ。でも万全のつもりで作ったんやけども、まさかこんな前方に傾いて、それでなんか5つのブロックが全部浸水して傾いて沈み出すなんてこと想定しなかったんだよね。
まあそれでですね、タイタニックが沈むっていうのが分かるわけだよね。で、まあタイタニックが沈むと。長くて1時間か2時間っていうですね、時間までは言います。で、危険を知らせようと、これをですね、聞いてたですね、ジャックとローズはもうこの船は危ないという風なことでお母さんたちの部屋に行きます。まあ自分たちがこう隠れてた、イチャイチャしてた、逢引きしてた、そんな事実はもうどうでもいい。この船が危ないんだってことを説明しようとしていたんですけども、しかしですね、その場で、まあ怒っていた婚約者のキャルとですね、船員に逮捕されてしまいますですね。
で、逮捕されて、ジャックはね、宝石を盗んだって濡れ衣を着せられるんだけども、でっち上げだっていう時、こん時のキャルの驚きの表情、こん時まだ信じようとしてるんだよ。ところがそのジャックがそん時にたまたま羽織っていたコートの、実はそのしばらく前に、えっとね、一等客室に忍び込むためにデッキの上でコマを回していた少年っていうのがいたじゃん。コマを回してた少年のお父さんのコートを椅子から拝借してたままなんだよね。えっと、ハロルドさんだったっけな。なんかそれでですね、ライアンさんだ。ライアンさんのコート借りたで、で、ライアンさんのコートです、盗難届が出てるってことで一気に信じられなくなってしまう。このローズの表情をね、もう信じてないじゃん。こっちは目合わせてるんで。ちゃんと目合わせるんだけども、信じてくれるだろうと言われてももう目を合わせることができない表情になってしまっているわけだよね。
で、Eデッキに連れて行かれてですね、スチュワードの部屋でですね、手錠をかけられるわけだ。で、もう手錠かけられてカメラが外に出ると、もう実はEデッキの近くにまでですね、水が来ていると。もうすぐさっき言ったスコットランド通路にですね、水が入ってきてしまう。非常事態が近づいてきてるっていう意味です。で、ついにですね、こっからタイタニック号はどんどんどんどん沈没していくことになります。船長から命令されてですね、客室担当は、全ての客室をですね、叩き起こして救命胴衣を付けさせます。もう夜中12時過ぎてるからね。で、避難し出します。さっきも言ったようにこの時に窓を開けっぱなしだった人が結構いたので沈没が早くなっちゃったと。で、一等客はAデッキ甲板に案内されて、しかし三等客は途中の階段で待ってろという風に言われますですね。まあこの辺りだよね。
無線で、無線室でですね、船長がCQDだという風に言うんですよ。CQDっていうのはコール・トゥ・クォーターズ・ディストレス。コール・トゥ・クォーターズっていうのは、とりあえず無線を受信してくれてる全局へっていう意味なんですけども、我遭難せり、ディストレスっていうの、そういうので遭難信号を出します。で、一等客は、まあ案内してるんだけども、とりあえず、まあ船に乗る準備をしてくださいと、ボート、ボートに乗る準備をしてくださいって言ってんだけども、まあ皆さんまだ救命胴衣をつけてる人もいればつけてない人もいると。で、寒いから、これ最初はみんなちゃんと甲板に出てくれたんだけども、みんな命令聞かなくてどんどんどんどん中へ入ってお酒を飲み出す。その間三等客はこの階段に並ばされると。全然助けが来てくれないというような状態になりました。
で、実はこの時すでにタイタニックは信号用のロケット弾上げてるんだよね。で、ロケット弾上げて全貌が明らかになるんだけども、前の方が傾いてて、もう前の窓が全部沈んでるような状況になってきてるんだよね。
Eデッキですね、ジャックの閉じ込められた部屋はどんどん水が上がってきてるんでね。で、こっから加速してですね、タイタニックは沈んでいきます。さっき言ったスコットランド通路に水が入って、船の後ろにまでどんどんどんどん水が行ってしまってるからですね。
で、ローズのお母さんがボートに乗るシーンだけども、2等の女性とかね、下品で嫌いなモリーとかがいたので、まあお母さん不満だったんだけども、しかしローズにですね、ボートは半分しかないのよって風に言われて、マジギレされて渋々従いました。で、ここでローズが、乗客は2200人いるのにボートには1200人しか乗れない、みんな助からないって思ってるのは映画上の嘘なんですよね。
実はね、多分この映画の中で割と乗組員も一等の乗客の男性たちも紳士的に振る舞ってたのは、沈んでも大丈夫だと思ったからなんで。救命ボートとか半分しかなくても大丈夫だと思ってたんだよ。で、なんでかって言うと、そもそもその豪華客船の救命ボートっていうのは全員乗って、なんだろうな、助かるために行くようなもんじゃないんだよ。豪華客船で、それも金属船でもそうなんだけども、普通ね沈没するのに何日かかかるんだって。少なくとも24時間はかかると。で、この前の事故で、全金属船のリパブリック号が沈んだ時に、1909年に世界初の全金属船リパブリック号、まあタイタニック号と同じだよね。それが海上で衝突事故を起こして船がもう本当にぐっちゃぐちゃに崩れたんだよ。それで沈没した時もね、沈没するまで36時間かかったんだって。
で、36時間かかったから、その救命ボートの数がなくても関係ないんだよ。近くに船なんか無線で連絡したらいっぱいいるから来て、で、その船とピストン輸送するんだよね。で、ピストン輸送するから、実はその乗客全員分じゃなくてある程度の数があればピストン輸送で助かるんだ。現にこのリパブリック号って全員助かってんだよ。乗員も乗客も。だから船が一般的に沈むのは、タイタニックのおかげですぐに沈むっていうのが急に知られるようになったんだけど、それまでは何日もかけて沈むもんだから。で、タイタニック号も周りに船がいっぱいいたからさ、で、現にかなり遠くの船が4時間かけて来てくれたんだけども、他の船も6時間から7時間ぐらいかけて来てくれるんだ。で、こんぐらい沈まないのが当たり前だったから、ピストン輸送で他の船に乗れるはずだったんだ。だからローズが、船が少ないからみんな助かるはずがないっていうのはこの映画の中でのフィクションなんだ。ちょっと嘘をついてるわけだね。まあまあドラマとして盛り上げてるわけなんだよね。
で、ローズはですね、ボートに乗らないことを決意します。お母さんだけを見送って、さよならお母様っていう風なシーン。映画スタートから1時間57分22秒。ほとんど2時間で、これ映画全体でどういう位置かって言うと、ごめんね、もうすぐ終わります、無料。
シド・フィールドっていう人がシナリオ理論の本を出してるんだけども、まあ後で紹介します。メジャーな映画っていうのは3幕構成でできてるんですよ。大体どんな映画も3幕でできてるんだけど、全体を、まあ大体120分ぐらいとしたら、第1幕は30分、第2幕は1時間、第3幕は30分。大体これでできてると。第1幕は状況説明。つまり登場人物の紹介とラストに向けての動機付けな。で、第2幕は葛藤なんだけども、葛藤って書いてるんだけども、まあクライマックスの盛り上がりだと思って。で、この中間にミッドポイントがあると。で、第3幕は解決って書いてある。まあつまりクライマックスの盛り上がりのことだね。ここで30分。スター・ウォーズもアナと雪の女王もスタンド・バイ・ミーも全部この3幕構成でできてます。もう調べてください。みんな自分で書いてみれば分かるよ。で、日本のアニメ映画ももうほぼこの構造でできてると。
で、映画の構造とか表に興味ある人はこの図だよね。この3幕構造で好きな映画を当てはめて考えてみてくれれば、本当にね、時間見ながらやったら真ん中辺で何かが起こるし、最初から30分あたりのちょっと前でプロットポイント1ってことで、主人公が何かこうしなければいけないという劇的な欲求を持つっていう事件が起こって、で、第2幕のラストのところでプロットポイント2っていうのがあると。で、タイタニックの衝突があったのがちょうどこの真ん中あたりなん。大きい転換点があるとこね。
で、タイタニック号っていうのは3時間2分、あ、3時間7分ある映画だから、まあ187分だね。で、ちょうど中間の95分から98分目、1時間半あたりでジャックとローズが結ばれる。で、キャルはローズの裏切りを知る。氷山に衝突してですね、事件が立て続けに起こる。これがミッドポイントでね、まあつまり全体の転換点で、まあプロットポイント1が、船から飛び降りようとするローズを救うという辺りと、あとローズに自分の絵を見せて、で、君は将来馬にまたがるような女になるんだっていう辺りが、まあこの第1幕の劇的欲求だと思ってください。
で、第2幕はこっから先、実はローズは、あ、これさよならお母様のポイント、ここら辺ね。138分あたり。さよならお母様と言って、ここでは船が衝突して、そん時にジャックが宝石を盗んだと疑いをかけられ逮捕されて、そん時にローズはジャックのことを信じきれなかったと。でもやっぱり信じようということで、さよならお母様って言って船に残ることを選んで、こっからジャックを助けに行こうとするっていうのが第2幕後半の展開になっていくわけですね。まあ自殺から助けられたローズがジャックから君は馬にまたがるような人だと言われて、船長は引退記念に最高速度を出すっていうのがプロットポイント1ね。で、第2幕はこの後半は延々、ローズはジャックを信じきれない。で、その結果ローズはその責任を取るためにジャックを1人救いに行くって、こういう転換点になってるわけだよな。
で、第3幕っていうのはどの辺からこう始まるのかって言うと、ボートの避難について大混乱が起こって、甲板は大混乱で、ついに銃を撃って威嚇射撃をすると。階級社会が崩れていく辺りがこの第3幕になってるんで、で、第3幕のこのプロットポイント2で救命ボートを降りるローズ。これね、ジャックと婚約者のキャル2人がかりで君はボートに乗れっていう風に説得されてボートに乗るローズだったんだけど、いやそうじゃない、私は守られる女じゃない、私は自分で生き方を決める女だと、自分から船を、ボートを降りるシーンがあって、これがプロットポイント2になってるんだよね。
守られるべき若い弱い女っていうのを自ら否定してボートから飛び降りるですね。ジャックの、まあ先に乗って行ってくれよっていう言葉に逆らって、第1幕の、君は自分の行きたいように生きる人なんだと、生き方を決められる人なんだという言葉に従ったわけだよね。だから自分の命をかけてジャックを助けて、第2幕の構成っていうのは。で、おまけに第3幕になるとジャックの言葉に逆らって、じゃあかつてジャックが言ってくれた自分になるために戦うっていう、まあそういう風な展開になってます。飛び降りたローズはこの
後、あのジャックとシデッキ階段の下だよね。つまりあの、大階段の時計の下で再び出会って固く抱き合うと。それは全部のラスト、1番最後の夢の世界でラスト、ジャックとローズが出会う場所でもあるんだけども、ここまででまだ140分ぐらいなんだよね。で、こっからラストまでまだ30分あるの。30分以上あって何があったのか。ローズはなぜラストであんな夢を見たのか。なぜ青き海の心というあのダイヤモンドを大西洋に捨てたのか、落としたのかですね。
お疲れ様でした。今日無料はここまでです。ここから続きは限定で話しますので。タイタニック解説終わりです。お疲れ様でした。
いや、アンケート出してくれ。まだ無料なんだよ、今日は。もう今日はしょうがない。まだ半分ぐらいですね。絶対やばいな。
はい。よいしょ。じゃあ、お願いします。はい。ありがとうございます。
説明すいません。これでもものすごく削って落としたんですよね。限定ではこっから先、キャメロンの話にもう1回戻って、ディカプリオの話になって、予算がなくなってきて偉いことになって、でこっから先は後半の映画の展開の話、プロットポイント2に行って、ラストの謎解き、時計の謎解きという感じになります。はい。
お疲れ様でした。今日の無料動画ここまでです。動画の前半でジェームズ・キャメロン監督の話をしたんですけど、キャメロン監督ってすごい変わった人でですね、大ヒット映画を何本も作ったすごい映画監督なんですけども、キャメロンの世代の映画監督って、スピルバーグもそうですし、マーティン・スコセッシもそうですし、ジョージ・ルーカスもそうなんですけども、みんな大学で映画を学んで、そこで仲間を作った人が多いんですよ。でもキャメロンは違ってですね、なんだろうな、トラックの運転手やってて、スター・ウォーズ見て「これは俺が作るべきだった」って言って、それまでの人生を反省して映画を作り出すという、ちょっと変な人なんですね。
で、同じようなオタク系のSF映画を作っててもですね、スピルバーグとかルーカスが、そういう映画を作る仲間がいっぱいいるのに対して、キャメロンは、全く新しい映画を作るんだから、全く新しい映像技術というか、新しい発明機械がないとダメだって言って、カメラの発明をしようとしたりですね。ちょっと変な方向に行くんですね。
で、そういうキャメロンの、他の監督とは違うオタクさ、マニアックさでできたのが今回のタイタニックだと思うんですね。タイタニックの沈没シーンを完璧に仕上げるために、まず本物のタイタニックが沈んでる海の底へ、自ら、あいつ33回潜ってるんです。回数が変なんですよ。いや、そんなことする映画監督とか他にいると思うんですけど、33回っていうのはもう映画を作るためにという、それを超えてると思うんですね。
で、そんな海底の取材を続ける中で、とりあえず潜ること自体に対する興味がどんどん湧いてきて、その後は映画と関係なしに、海底探検を趣味でするというか、変なこと始めちゃうんですね。で、最終的に、世界で1番深い海と言われるマリアナ海溝に潜りたくなって、自分専用の深海調査艇を開発して作る。もう本当に、こんな映画作りたいからこんなカメラを作るのと同じように、もうタイタニックの映画作りたいから潜水艦を作るっていう、変なこと始めちゃうんですね。
で、最大深度1万1000mのチャレンジャー海淵っていう、マリアナの中でも1番深いところ、本当にそこの底までたった1人ですよ。もう本当にこのキャメロン監督の変さっていうのは、どんな言葉を尽くしても言いきれないんです。普通こういうことする時って、パイロットと自分だけとかいうのは時々あるんですけども、自分で操縦してってのは本当にいないんですよね。で、本当にそのチャレンジャー海淵の海底まで行ってしまったわけですね。
で、この最大深度、まあ1万2000m、11kmというのは当時の世界記録ですね。この記録は2019年に別の冒険家に破られるまで本当に世界記録だったんですけど、2025年のインタビューでキャメロンは「また俺は挑戦する」っていう風に言ってるんで。映画作れよって、映画作れよって言っても、もうこれが他の映画監督と違うところで、本当に映画をどんどん作りながらこのペースだから、本当におかしいね。もう72歳ですよ。で、アバターの新作も監督はまだ自分でやるって言ってますから。前は他の人に任せるって言ってたんですけど、自分でやんなきゃダメなんでしょうね。
というわけで、今日見てもらった動画の続きは、何がというわけかわかんないですけど、有料会員のみの配信で、どんな話をしてるのかというと、タイタニックの開発の続きです。あとキャメロンの話の続きと、さらにレオナルド・ディカプリオの話ですね。彼、後に語ってるんですけど、「この映画で、単なる生意気なガキだった俺は、本当の大人に、大人の男になれた」という風に言ってるんですけども、彼がなんでそんなこと言ったのか、あとラストシーンの意味と、映画全体のテーマについて話しています。
続きが見たい方は、YouTubeのメンバーシップ、ニコニコチャンネルのどちらかに参加してご覧になってください。それではまた次の動画でお会いしましょう。じゃあまた、バイバイ。
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