鹿児島・薩摩川内を歩く:生シルク化粧品、再建中の道の駅、2兆8500億円のAIデータセンター計画

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概要

鹿児島ロケの後半として、株式会社Wiz代表の山崎俊氏と、M&A BANKのMCである島袋直樹氏が鹿児島県薩摩川内市を回った。蚕を自分たちで育てて化粧品原料をつくる会社、Wizが再建に関わる道の駅、市長への取材で語られたAIデータセンター誘致、パン屋のフランチャイズ店、バスケットボールチーム「鹿児島レブナイズ」のスポンサー企業を取材している。移動中の会話では、山崎氏が地域事業を本業とどう結びつけているのか、なぜ上場を目指さないのかも語られた。

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2万頭の蚕を自社で育てる化粧品ブランド「BIOND」

最初の訪問先は、蚕を使ったオーガニック化粧品を販売する会社である。ブランド名はBIOND(ビヨンド)。取材時の飼育場には約2万頭の蚕がいた。蚕は最終的には蛾になるが、同社は蛾になる前の繭からシルクのタンパク質を取り出し、化粧品の成分にしている。ラインナップはクレンジング、洗顔、化粧水、美容液、乳液で、最初に試しやすいお試しセットも用意されている。

担当者によれば、蚕に着目したのは、シルクのタンパク質と肌のタンパク質では、構成するアミノ酸20種類のうち18種類が共通しており、人の肌との親和性が高いと考えたからだという。山崎氏は、繭は中の蚕を紫外線などから守っているので、それを肌につければ同様の効果も期待できそうだが、薬機法の関係で効果があるとは直接言えない、と補足し、担当者もこれを認めた。OEMに頼らず、鹿児島で蚕を飼って原料まで自前でつくっている点を、担当者は「大切に大切に作ってます」と表現した。

蚕の育ち方と飼育環境

担当者の説明では、蚕は生まれた時は鉛筆の芯ほどの大きさで、約1か月で繭になる。人間に例えると1万倍のスピードで成長すると言われているそうだ。脱皮するとき以外はずっと桑の葉を食べ続けている。取材時の蚕はあと数日で繭になる段階だった。触っても刺すことはなく、担当者は「むにむにしてて可愛い」と繰り返した。蚕は「天の虫」と書き、かつては「お蚕様」と呼ばれて人間より大事に育てられたという。

屋外では鳥や虫に食べられてしまうため、室内で育てている。暑すぎても寒すぎても育たず、人間が快適と感じる温度でしか生きられない。普段は温度を調節し、出入りできる人も限られている。繭になるまでの期間は29.5日と言われているそうだ。

前日に採ったばかりの繭も見せてもらった。中にはさなぎが入っていて、蛾になる前の大きな変態の最中だという。この繭は冷蔵庫に入れられていた。温度を下げると成長が遅くなり、羽化を遅らせられるからだ。繭のシルク部分がタンパク質で、同社はこれを加熱せず生のまま分解して化粧品に配合している。

「生のタンパク質」が他社との違いだという主張

島袋氏が、市販のシルク化粧品は多いが何が違うのかと尋ねると、担当者は、原料を手作りし、生のフレッシュなタンパク質をその場で取り出している点だと答えた。担当者の説明では、養蚕農家は今とても少なく、流通させるには繭を加熱して、中の蚕が羽化しないようにする必要がある。そのまま輸送すると羽化してしまうからだ。加熱すると中の蚕は死に、タンパク質は熱変性を起こす。担当者は、鶏肉や目玉焼きが焼くとぎゅっと縮むのと同じだと例えた。熱変性を起こさないままタンパク質を取り出せることが自社の強みだという。山崎氏は、冷蔵庫から出した袋の中に水滴がついていたのは水分を含んでいるからだと付け加えた。

売れ筋は化粧水で、普通の化粧水より少しとろみがあり、美容液のようだと好評だという。価格は100mlで7,000円(税別)。少量で済むので2〜3か月は持つと担当者は説明した。山崎氏が、安いのは原料を自分たちでつくっているからかと確認すると、担当者はそうだと答えた。化粧水の次は、美容液と乳液を合わせた3点で買う人が多い。販売はBIONDのサイト、楽天のふるさと納税、Instagramのダイレクトメッセージで受け付けている。

量産できるのかという問いには、羽化した蚕を交尾させて卵を産ませ、「頑張って蚕ちゃんを作ります」と答えた。島袋氏は、自身が手がける男性向け育毛剤の会社で女性向けラインを展開する場合に、BIONDの蚕原料でOEMやコラボブランドをつくれるかと尋ね、担当者は「もちろん」と応じた。

NMNサプリと視聴者向け特典

同社はNMNのサプリメントも扱っており、価格は1か月分で12,000円。現在はBIONDの購入者に特典として付けているという。担当者は、体の内側と外側の両方からアプローチすることが目的だと説明し、腸まで届く設計で自信を持って勧められると話した。飲むタイミングは、腸に吸収されやすい食事の前がよいという。NMNは若返りのサプリと言われ、若返りに関わるサーチュインにしっかりアプローチしてくれる、というのが担当者の説明だ。男性も利用できる。

島袋氏はその場で交渉し、化粧品一式(全部買っても3万円ほど)を買ったM&A BANKの視聴者のうち50名に、このNMNを付けてもらうことになった。

20年以上続く蚕への関心と桑畑

移動中、担当者は蚕への思いを「20年以上続いている」と語った。きっかけは着物が好きだったことだ。着物の布から糸、さらにその原料へと関心が移るうちに、蚕の可能性に惹かれた。蚕の遺伝子が解読されたと知り、タンパク質をつくる天才である蚕で何が起きるのかと、眠れないほど調べたという。その中で事業として成り立つと考え、まず化粧品から始めた。蚕は人間と5000年以上の付き合いがあるとも話した。

続いて桑畑を見た。取材時は葉が摘まれて硬い部分しか残っていなかったが、また伸びてくれば餌として使える。夏場は2〜3日で草が生えてくるため、草との戦いだという。2万頭を育てるのに約10アールの桑畑を使い、その広さは畑全体の3分の1ほど。畑全体は約50アールある。

取材を終えた2人は、これほど突き詰めている人がいいと評価した。20年間蚕を愛し、餌の畑までつくり、生の蚕にこだわった化粧品なら売れる。ただしウェブサイトだけでは伝わらない、というのが2人の感想だった。山崎氏は、Wizグループ内のブランドとして蚕ブランドを扱うこともあり得ると話した。

ガラガラだった道の駅が数か月で混雑するまで

次に訪れたのは、Wizが薩摩川内市とともに再建に関わっている道の駅だ。山崎氏によれば、以前はガラガラだったが、関わり始めて数か月で大きくにぎわうようになった。道の駅の運営を任されるようになったのは、レブナイズが盛り上がっていることの効果だと山崎氏はみている。

現場への指示について山崎氏は、とにかく人・物・金を集めてにぎやかにするよう伝えていると話した。イベントを開き、よいコンテンツやよい出店者を集めることをみんなが頑張っている。ただし本人は「まだまだ全然」とも述べている。店内では野菜が特に安く、シイタケが100円、ほかに130円や330円の商品が並んでいた。以前の様子を知る島袋氏は「前回と全然違う」と驚き、このロケで一番感動するかもしれないと話した。道の駅再建のノウハウができれば、全国の道の駅でも展開できそうだという感想も出た。

出資の形も説明された。Wizは40万円を出資して8株を持ち、持分は4%だ。運営はWizが担うが、運営費は受け取っておらず、現時点ではボランティアに近い。Wizの商材を入れてプラットフォームにしていく考えはあるという。山崎氏はこれを地域貢献と位置づけた。島袋氏が「まず実績づくりが大事ということか」と尋ねると、「そういうことなんでしょうね」と応じた。

売上200億円の本業と地域事業のつながり

食事中、島袋氏は本業の規模を尋ねた。山崎氏の答えでは、Wizの本業の売上は200億円強、利益は5億円ほどで、利益率は低いと自ら認める。ほかに投資にも5億円ほど回しており、新規事業への投資や、継続課金のストック型ユーザーへの転換にバランスを取って振り向けているという。

山崎氏は、地域事業が本業を加速させていると話した。本業で取引している企業が地域戦略や業種別の進め方を考えるとき、鹿児島での取り組みに関心を持ち、一緒にやろうという話になる。鹿児島に投資して5年ほど経ち、その効果は「めちゃめちゃ」出ているという。相手企業の金儲けには誰も興味を持たないが、地域を盛り上げる、地域を巻き込む、企業のコミュニティをつくるといった話にはみんなが興味を持ち、商売にもつながる、というのが山崎氏の見方だ。島袋氏も、レブナイズに出資して以降、財界から国政まで山崎氏の人脈が広がっているのは外から見ても分かると述べた。そのうえで、こうした動きは未上場企業ならではだと付け加えた。上場企業では赤字を開示すれば株主の目もあり、地方創生をやりたくても動きにくいが、未上場なら自分たちでコントロールできる、という理由だ。

食事は軟骨うどん。2人は、鹿児島は醤油が甘いので出汁も少し甘く、そばは太いと話していた。

「上場を目指さない方がキャッシュリッチになった」という観察

島袋氏は、上場を目指したことはないのかと山崎氏に尋ねた。答えは「ほぼない」。ただ、出身の光通信の関係者とは、グループから1〜2社は上場企業を出したいという話をしたことがあるという。Wiz本体は上場を目指さないが、グループ会社のどこかが上場したり、上場企業と合併したりする可能性はあると話した。

島袋氏は、時価総額の問題やガバナンスの厳格化で、上場を目指す会社自体が減っていると指摘した。上場の目的は、公募で資金を調達することや信用力を高めることにあるとも述べた。山崎氏は、上場した会社は時価総額が下がって勢いがないように見えると話した。自分の周りで、上場を目指した人と目指さなかった人を答え合わせすると、目指さなかった人の方がキャッシュリッチで規模も大きくなっているという。個人の資産までは分からないが、会社としては余力を持って大きく育ち、AIのように変化の激しい時代にも事業をシフトしやすいのではないか、というのが山崎氏の見立てだ。

これに対し島袋氏は、上場しているのにM&Aが下手な会社を見ると、なぜ上場したのかと思ってしまうと述べた。上場しているなら積極的に買収して攻めるべきだという。山崎氏は、創業者が過半数を持ちながらパブリックカンパニーとして挑戦している会社はすごいと思う、と付け加えた。

薩摩川内市長が語る2兆8500億円のAIデータセンター計画

ロケでは薩摩川内市長へのインタビューも行った。市長が今いちばん力を入れている政策として挙げたのが、AIデータセンターの誘致である。取材当日、日本と台湾の企業による合弁会社と市との立地協定が結ばれ、県知事が立会人を務めたという。

市長の説明によると、建設予定地は川内港の隣にある川内火力発電所跡地だ。跡地32ヘクタールのうち北側14ヘクタールに、国内最大級のAIデータセンター(字幕では3550MWと語られている)を整備する。計画期間は令和8年度から令和14年度(令和15年3月)までの7年間で、関連投資を含めた投資額は2兆8500億円と相手企業の社長が公表したという。鹿児島県で初めての協定だと市長は強調した。

市長は、このデータセンターを中核に産業が横に広がる姿が具体的に見えてきたと話す。建設や維持に関わる人材、関連企業が集まり、隣の川内港には大きな港湾が整備されつつあり、流通業界も倉庫を建てると言っているという。一方で、農産品のような地元の基礎産業も大事にしたい考えだ。行き着くところは市民だとも述べた。データセンターの企業は市民から遠い存在に見えるかもしれないが、経済が循環して子どもや高齢者にもどこかでメリットが回る仕組みをつくりたいという。文化や音楽も含め、みんなが楽しめる仕組みができればいい、とも語った。

このインタビューは山崎氏が前夜0時にアポイントを取り、土曜日に実現したという。山崎氏は、データのやり取りが薩摩川内に入ってくることを「デジタルインバウンド」と呼び、これで何が起きるか楽しみだと話した。

未経験で始めたパン屋フランチャイズの実情

山崎氏の依頼で、もちもち食感のパンを売りにするベーカリーのフランチャイズ加盟店も取材した。店主はパン屋の経験がなかったが、マニュアルやレシピが整っているので営業できており、その点はとても楽だという。一方で、フランチャイズには制約もある。ただ、社会人としてそこは従わなければならないと受け止めていると話した。

調理は本部ではなく店舗で行う。本部から提供されるのは主に広告と、数種類の商品の資材だという。投資回収は5年を見込んでいたが、まだまだだと店主は答えた。戦争の影響で小麦の価格が上がっていることを理由に挙げている。

レブナイズのスポンサーは「大人の部活動」

最後に、鹿児島レブナイズのスポンサーである南日本引っ越しセンターの担当者に話を聞いた。スポンサーになってみると、楽しい部分と大変な部分が同居しているという。島袋氏が「大人の部活動のようなコミュニティですね」と向けると、担当者は同意した。いろいろな先輩経営者と会えること、山崎氏がとてもビジネスライクな人なので学ぶことが多いことを理由に挙げ、部活動に近い感覚かもしれないと答えた。

県外企業のスポンサーもいるかという質問には、いると答えた。そうした企業との交流もかなり頻繁で、特に東京の企業とはよく交流しているという。