髪にも効く「パンテノール」――パンテーンの80年の研究から友利新が読み解く毛髪補強の仕組み

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概要

スキンケア成分として近年注目されるパンテノールは、肌だけでなく髪の補修にも力を発揮するのか。医師の友利新は、長年ヘアケア研究を続けてきたP&G(パンテーン)の最新研究資料を借りて、この問いを解説する。話の軸は、パンテノールが髪の内部に浸透して留まり、主成分のケラチンと結合して内側から構造を補強するという研究結果と、成分表だけでは見えない処方技術の存在である。

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髪は「死んだ細胞」であり、自己再生しない

友利がまず前提として強調するのは、髪の毛は死んだ細胞だという点だ。肌と違い、一度ダメージを受けると自力では元に戻らない。

髪の構造は海苔巻きによく例えられると友利は説明する。一番外側のキューティクルが海苔、その内側にあるコルテックスというタンパク質がご飯にあたる。ドライヤーやアイロンの熱など日々のダメージを受けると、まず表面の海苔にあたるキューティクルが剥がれる。すると内側のタンパク質が流れ出し、髪の中身はスカスカのスポンジのような状態になる。

こうなると、ご飯とご飯をつなぐ役割を持つケラチン繊維がほつれ、髪そのものが弱くなる。これが、いわゆるダメージ毛に見られるパサつきやゴワつきの原因になるという。こうしたダメージを補修する成分はいろいろあるが、今回取り上げるのがパンテノールである。

パンテーンの名前の由来と1940年代の発見

友利によれば、パンテーンは80年前からパンテノールについて先進的な研究を続けており、ブランド名そのものもパンテノールに由来する。

きっかけは第二次世界大戦中の1940年代だという。スイスのある医師が、皮膚のある部分の毛だけが健やかであることに偶然気づいた。その原因となっていたのが、医師が塗っていたパンテノールだった。この1945年の発見をもとに、パンテノールを配合した世界初のビタミンヘアトニックが「パンテーン」と名付けられ、これがブランドの始まりになったと友利は紹介する。以来80年にわたり、同社はパンテノールを製法や商品の中心に置いて自社研究を続けてきたという。

髪の深部まで浸透し、洗い流されずに蓄積する

友利が「とんでもない事実」として紹介するのが、「化粧品のオリンピック」と呼ばれるIFSCCで発表された研究である。パンテノールは非常に小さな水溶性の成分であるため、キューティクルの隙間を通り抜けて髪の深部まで浸透することが分かった。さらに、単に入り込むだけでなく、洗い流されずに髪の内側に留まり、蓄積していくことも明らかになったという。

2025年の発表:ケラチンと直接結合する

さらに2025年の最新の発表では、分子レベルの高精度な分析機器を使い、パンテノールが髪の中でどういう状態にあるのかを可視化したと友利は説明する。その結果、髪の内部に浸透したパンテノールが、髪の主成分であるケラチンタンパクと直接結合し、いわば手をつなぎ合っていることが分かった。

友利の説明では、パンテノールは分子の中に結合手のようなものを多く持っている。その手がケラチンタンパクの手をつかむことで、ダメージで不安定になった繊維を内側から支える。この働きによって髪の構造が強化され、全体としてより強くしなやかな髪へ導かれるようだという。つまりパンテノールは表面を覆うだけのコーティングではなく、髪の一部となって内側の構造を補修・補強している、というのが友利の要約である。

動画では、同じダメージを与えた毛髪について、パンテノール処理をしたものとしていないものを比較する映像が示された。友利は、未処理のダメージ毛のほうがすぐに切れてしまうことが映像から分かると述べる。また、固体NMRという特殊な機器でパンテノール処理毛と未処理毛を解析したデータも紹介され、友利はこれを、毛髪のタンパク質であるケラチンに対してパンテノールが物理的相互作用によって髪の一部になっていることを示すものだと説明した。

広がりやうねりはダメージのサイン

友利は、多くの人が悩む髪の広がりやうねりも、ダメージの一つのサインだと指摘する。ダメージでスカスカになった髪は切れやすくなり、そこに余分な水分が入り込むと髪が膨らんだり、短く切れた毛がアホ毛のようになって表面をふわふわさせたりする。そのため、パンテノールが内側から補修・補強することが、しなやかでハリのある髪につながるという。髪がしなやかであればスタイリングもしやすく、見た目もよくなると友利は話す。

友利自身は、今回説明を受けるまでパンテノールがIFSCCで発表されるほど研究されていることを知らなかったと率直に述べ、その研究の深さに感心したと語っている。

成分表には載らない処方技術

後半、友利は「成分表だけでは読み解けない情報」に話を移す。例として挙げるのが、ときどき話題になる洗浄成分のサルフェートである。友利が聞いた話では、パンテーンはサルフェートをただ配合しているのではなく、「ミセル化」という技術を使っているという。サルフェートをベタイン系の別の洗浄成分と組み合わせ、分子同士をくっつけるようにして塊を大きくする。塊が大きくなると皮膚のバリア機能を通過できず、中に入り込まない。これにより、汚れを落とす力は残しつつ、バランスの取れた洗浄剤に調整しているのだという。

もう一つは、最近話題の「ラメラ構造」によるアプローチである。洗浄成分の中に脂質成分を挟み込み、シャンプーで洗いながら同時に脂質を補給する仕組みだと友利は説明する。

そして最も重要だと友利が挙げるのが、シャンプーやトリートメントの成分同士の相性である。パンテーンは、ブランドの根幹であるパンテノールがより効果的に髪に浸透するよう、独自のシリコーンやカチオン系界面活性剤などを使って緻密に計算しているという。

一つの成分だけで判断しないでほしい

友利が視聴者に知ってほしいと強調するのは、ミセル化やラメラ構造、成分同士の相性の計算といった技術は、パッケージ裏の全成分表には載らないという点だ。成分表にある一つの成分だけを見て「これはダメだ」と切り捨てるのは簡単で、最近はそういう人も多いと友利は言う。しかしその裏には、低価格でも品質の高いものを届けたいという研究者の熱意や、成分の弱点と利点を理解しているからこそ可能になる、効果を最大限に引き出す技術が隠れていることもある。

そのうえで友利は、どんな成分が入っているかだけでなく、成分の組み合わせや、そのブランドがどんな研究をしているのかも知ったうえでヘアケアを選ぶほうが本質的で楽しいのではないか、と提案する。最後に、パンテノールが肌だけでなく髪の補修にも役立つことが伝わればよい、と述べて動画を締めくくった。