米中のロボタクシーに乗り比べる:サンフランシスコのWaymoと上海のPony.ai

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概要

エンジニアでSF作家の安野貴博氏が、サンフランシスコでWaymo、上海でPony.aiのロボタクシーに乗った体験を紹介する動画である。安野氏は学生時代に「将来は自動運転が来る」と考えて運転免許を取らず、それから約15年が経った。本人の言葉では、その自動運転が「いよいよ来る」段階に入ったという。アメリカと中国にはそれぞれ別の用事で渡航し、ちょうど両社のサービス提供エリアだったため、実際に乗車して乗り心地や画面の設計、トラブル時の対応を確かめた。

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ロボタクシーの基本的な仕組み

乗車記の前に、安野氏は自動運転タクシーの概要を説明している。ロボタクシーは運転手のいない車が乗客を乗せて走るタクシーで、車内に運転手はいない。使い方はUber、GO、S.RIDEといった配車アプリとほぼ同じで、スマートフォンのアプリで行き先を指定して呼ぶと無人の車が迎えに来る。目的地に着いたらドアを開けて降りればよい。人が遠隔で操作しているのではなく、車に積んだコンピューターが車両を制御している、と安野氏は説明する。

覚えておくとよいものとして、安野氏はライダー(LiDAR)というセンサーを挙げる。車の屋根の中央、パトカーでいえばサイレンが載っている位置で回転している装置で、周囲の景色を高精細に把握できる。霧や雨で視界が悪いときにも機能するセンサーだという。また現在のロボタクシーはどこへでも行けるわけではなく、サンフランシスコ市内や上海の特定区画のように、運行できるエリアが決まっている場合が多い。

安野氏は、自身のSF作家としてのデビュー作『サーキット・スイッチャー』でも自動運転が重要な技術だったことに触れている。

Waymo:Google発のロボタクシー

1社目のWaymoは、Googleの親会社Alphabetの傘下にあり、もとはGoogle社内のプロジェクトから生まれた。安野氏によると、現在はアメリカの約11都市で一般向けの有料サービスを提供しており、2026年2月の発表では週に40万回以上乗客を乗せて走っている。

Waymoは安全性のデータも公表している。安野氏は「あくまでWaymoが発表しているデータ」と断ったうえで、同じ都市で同じ距離を走った場合、重傷以上の事故が人間の運転より94%少ないという数字を紹介した。人間が100件の事故を起こすとすれば、Waymoでは6件程度になる計算である。安野氏はこれを、人間の運転より安全な運転を実現できているのではないかと評価している。

Waymoは海外展開も進めており、その一つが東京である。2025年4月から日本交通とタクシーアプリのGOと組み、都内7区で実証実験を行っている。技術検証が目的で、まだ乗客は乗せていないが、かなりの距離を走っているという。

Pony.ai:トヨタと提携する中国企業

2社目のPony.ai(小馬智行)は、日本ではまだあまり知られていないかもしれない、と安野氏は言う。中国の自動運転企業で、本社は広州にある。北京、上海、広州、深圳の4都市でロボタクシーの営業運行をしている。今回乗車した上海では、運転席を無人にしたまま料金を取る許可を2025年7月に取得した。

車両は、トヨタと共同開発したモデルをベースにしているという。トヨタとPony.aiは2019年頃から戦略的に提携し、2020年頃にはトヨタが出資もしている。

サンフランシスコでWaymoに乗る

サンフランシスコでは、同行者と2人でWaymoに乗った。到着した車両はアプリでロックを解除して乗り込む。乗車すると車内の案内が日本語で挨拶してきた。同行者が以前乗ったときは英語しか話さなかったといい、2人は日本語対応に驚いていた。シートベルトを締めずにいると車が注意してくることも確かめている。

発進時、車は前の車の後について出るのかと思わせて、もう少し待ってから動き出した。走行中は歩行者を認識し、赤信号で止まり、交差点を曲がる。2人は「ちゃんと法律を遵守してる感じがある」「もうできてる」と話し、すぐに「普通になっちゃう」「もう慣れてきた」と感じていた。

安野氏が挙げた利点の一つは、運転手がいないことで車内が完全にプライベートな空間になることだ。普通のタクシーでは、後部座席でオンライン会議をしたり、英語のシャドーイングを始めたりすると運転手を驚かせるかもしれないと気が引けるが、その遠慮がいらない。同行者は歌ったり踊ったりもでき、カラオケもできると応じている。

画面の設計についても2人は細かく見ている。車の状況を示す画面では、車が何を考えているかを吹き出しで表示し、「赤だな」といった判断を示す。安野氏はこれを「ちょっと可愛い」と評した。リアルタイムビューでは周囲の車が3Dで表示され、かなり遠くの車まで見えている。「カメラプライバシー」という項目は、マイクで音声を取っていないことを示すものらしいと2人は読み取った。忘れ物をするとカメラで知らせてくれると聞いたという話も出たが、試すと面倒なことになりそうなのでやめている。ほかに温度や音楽を選ぶ機能もある。

計算処理をどこで行っているのかも話題になった。2人は、アメリカは通信インフラが貧弱なので、処理はほぼ車載コンピューター(エッジ)で行っているのではないかと推測している。日本語対応については、そろそろ東京でサービスを始めるという意気込みの表れかもしれない、という見方も出た。

到着が近づくと、忘れ物に注意するよう案内が流れる。アプリで降車場所を調整することもできる。停車は難しい動作だと思うが、車は適した停車場所を見つけて止まり、画面上で目的地がハイライトされた。

乗車中のトラブル:Waymoが突然停止

別の乗車では、Waymoが走行中に突然止まり、サポートに連絡することになった。同行者はそれなりの回数Waymoに乗っているが、こうした経験は初めてだという。車内のスピーカーでサポート担当者と話す形で、つながるまでに時間はかかった。それでも2人は、依頼したことには普通に対応してもらえ、サポートの体験としては快適だったと振り返っている。今回と次回の乗車が無料になるプロモーションも付与された。2人はこれを「レア体験」と呼んでいる。

上海へ:乗車前の会話と自動運転をめぐる状況

上海では、同行者と2人でPony.aiに乗った。現れたのは白いレクサスで、屋根に大きなライダーが載っているためすぐに分かる。同行者は、完全な自動運転車に乗るのは初めてだという。Pony.aiは料金が安いらしいと話している。免許を持たない安野氏は運転の巧拙を判断できないと言い、毎日運転しているという同行者が評価役を引き受けた。

待つ間、日本と海外の制度の違いも話題になった。日本では高速道路の一定区間で手放し運転までは条件付きで認められているが、運転手は必ず乗車して注意を払わなければならず、今はレベル1〜2程度が中心だという。一方、アメリカや中国ではFSD(フルセルフドライビング)がどんどん導入されている、と2人は話している。

上海の街を見る限り、ロボタクシーの台数はまだそれほど多くなさそうだった。サンフランシスコでは前後がWaymoだらけのこともあったのと対照的である。東京でも最近は永田町付近でWaymoの試験車両をよく見かけるといい、安野氏は東京にもWaymoに来てほしい、政府側の人間としても日本でFSDが認可されていくとよいと述べた。チームみらいの議員が国会の委員会で自動運転について質疑していることにも触れている。

上海の路上では、日本ではあまり見かけないAIONのほか、キア、ボルボ、少数ながらトヨタなどの日本車、知らないメーカーの車が走っていた。中国のメーカーは海外の人気モデルをよく研究して寄せてきている、と2人は話す。レクサスに似た名前のMaxusという車もよく目にしたという。なお、予約には現地の電話番号が必要で、手配が難しかったとも話している。

Pony.aiの乗車体験:ウェルカムカラーと車内UI

Pony.aiの車両は、乗客が選んだ「ウェルカムカラー」を光らせて迎えに来る。今回はチームみらいのイメージカラーである緑を選んでいた。Waymoにはこの機能がなかった。Waymoでは屋根のライダー部分の表示にアカウントのイニシャル(例えば「TA」)が出る仕組みだったという。安野氏はロボタクシーのサービス設計はまだ黎明期にあると述べている。

アプリでロックを解除して乗り込み、「スタートライド」を押すと走行が始まる。車内ではPony.aiのCMが流れ、前方の画面には人の歩き方など周囲の状況を示す絵が表示された。助手席にはマスコットキャラクターが座っており、助手席には座らないでほしいという意味らしい。画面ではマスコットのロボットがタッチパネルの操作に反応して動き、「アイム・ポポ」と名乗っていた。曲の選択、UIのダークモード、利用規約の表示、乗車時アナウンスのオンオフといった設定もある。

画面の表示が実際の状況と少し違うのではないかと感じる場面もあった。人がいる位置に人が表示されないことがあるように見えたが、確認するとそれはバイクで、バイクとしては正しく認識されていた。Waymoと同様に吹き出しで「左に曲がる」といった意図を示し、かなり遠くまで状況を把握している様子だった。日本ではあまり見かけない珍しい乗り物も認識していた。走行中には降車地点が更新され、別の場所に向かうことになった。

Waymoとの違いについて、安野氏は表面的な点として画面の配置を挙げたうえで、音楽をかけられることや周囲のビューを定期的に表示することなど、全体としてはかなり似ていると述べた。先行するWaymoを参考にしているのかもしれない、という見方である。

走行性能:信号の秒数表示、雨の中の認識、時速60km

運転に慣れた同行者がまず注目したのは、アクセルとブレーキの快適さだった。停止時にガクッとなるような不快な乗り心地はまったくなく、とても快適だったという。カーブもスムーズだった。

交差点では信号が10個ほど見えており、そのなかから自分の従うべき信号を判定するのはすごいと安野氏は感心している。この日は雨で、画面に映るカメラ映像には雨粒が付いていた。カメラの視界は普段より悪いはずだが、周囲を正確に捉えていたことについて、2人はライダーのおかげだろうかと話している。

安野氏がWaymoになかった機能として強調したのが、発進までの残り秒数の表示である。中国の信号は残り秒数を表示するため、車がそれを認識して表示しているのではないかと2人は推測し、その可能性が高いと話している。

青信号になると車はしっかり加速し、時速60kmで走行した。ブレーキもガコンとならず滑らかだった。画面には生の認識情報が表示され、車両は緑、バイクと思われる物体はオレンジ、歩行者は黄色で色分けされているようだった。オレンジが何を示すかは2人にもはっきりとは分からなかった。車は歩行者の前で一時停止し、曲がるたびに画面の視点が上に移動する演出も「おしゃれ」と評された。

印象的だったのは、逆走してくるバイクを少し避けた場面である。安野氏はこれを道を空けてあげる「優しさ」と表現した。右側から来る車にも対応しており、2人とも危なっかしさは感じなかったという。車内には緊急停止ボタンがあったが、後部座席からは手が届かない位置だった。ほかに路肩に寄せて止める「プルオーバー」ボタンや、サポートにつながるとみられるアシストボタンもあった。

目的地に着くと車は路肩に停車し、子どものような声のアナウンスが降車を促した。2人が降りると車は走り去っていった。

乗り比べの結論

Pony.aiの乗車後、同行者は極めてスムーズで、人間の運転手よりもよいのではないかと思えるほどの乗り心地だったと評価した。曲がるときに強い遠心力を感じることも、止まるときにガクッとなることもなく、安定感があったという。

安野氏は、逆走するバイクに道を空けた場面を特に印象的だったと振り返った。UI・UXについては、吹き出しで車の意図を示す点も含めてWaymoとかなり似ており、先行企業を参考にしているのではないかと見ている。明確な違いは信号の残り秒数を表示する点で、これはPony.aiで初めて見たという。

最後に安野氏は、各社がさまざまに切磋琢磨しており、ロボタクシーはいろいろと発展していきそうだと述べた。ただ、ウェルカムカラーの色を選べることが利用者にとってどんな嬉しさにつながるのかは分からない、とも付け加えている。