デヴィ夫人が語る「総理になったら」――憲法改正、歴史教育、徴兵制、そしてアスペン事件の真相

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概要

経済学者の成田悠輔がMCを務める対談番組『夜明け前のPLAYERS』に、元インドネシア大統領夫人のデヴィ・スカルノが出演した。成田は「もしデヴィ夫人が総理候補としてマニフェストを掲げるなら、何を最優先にするか」と問いかける。デヴィ夫人は、憲法改正、歴史教育の見直し、徴兵制の導入、離島防衛の強化を挙げ、抑止力としての軍事力が必要だという立場を一貫して示した。番組の終盤では、ネット上で語られている1992年の米国アスペンでの逮捕事件について、本人が経緯を説明している。

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憲法は時代に合わせて変えるべきだ

デヴィ夫人がまず挙げたのは憲法改正である。憲法はその時代に寄り添っていなければならず、時代に合わない憲法は変えるべきだというのが基本的な考えだ。加えて、今の憲法はその成り立ちからしても直さなければならないと述べた。

夫人が特に問題視するのは、「軍を持つことは戦争が始まることと同じだ」と日本人が教えられてきた点である。夫人はこれを「まず間違っている」と言い、国を守るには抑止力以外にないと主張した。

自虐的な歴史教科書を改め、開戦の経緯から教えるべきだ

二つ目の柱は教育、とりわけ歴史の教科書である。デヴィ夫人は、今の教科書には「自虐精神」が蔓延していると見ており、文部省がきちんとしたものを作って歴史を教えるべきだと語った。事実は敬わなければならないものだ、というのが夫人の考え方だ。

夫人は、なぜ日本が第二次世界大戦を始めなければならなかったのかを知らない日本人が多いと感じている。日本とアメリカが戦ったことを知らない人や、「どっちが勝ったの」と聞く人までいて、本当に驚くという。成田も、戦争を直接経験した世代から話を聞く機会がほとんどなくなっていると応じた。

そのうえで夫人は、自身の理解する開戦までの流れを語った。日清戦争・日露戦争を経て、満州や朝鮮半島は日本のものになり、資源のない日本はそうした地域から資源を得る一方で、助けた時代もあった。ヨーロッパの国々がみな植民地を持っていたなかで、アメリカは植民地を持っていなかった。アジアで頭角を現し、満州、中国大陸、朝鮮半島まで支配する日本を見て、アメリカは日本を兵糧攻めにしようと考えたのだろう、と夫人は推測する。

夫人の説明によれば、アメリカ、イギリス、中国、オランダによる「ABCD包囲網」で、日本には鉄もゴムも何も入ってこなくなった。その後にハル・ノートを突きつけられ、満州・中国・朝鮮半島から全部引き上げるか、そうでなければアメリカの属国になるか、独立国として生きるかの選択を迫られた。象のように大きな国に蟻のように小さな国が勝つには奇襲しかない。停泊している艦船をすべて沈めればアメリカは8か月は立て直せないだろうという計算で、8か月で戦争が終われば日本は勝てた、というのが夫人の見方である。

ただ、その後については夫人は厳しい。ガダルカナル、さらにオーストラリアまで兵を送ったのは「おかしい」とし、当時の軍人は勝っているような様子だけを宣伝し、実際にはどんどん負けていき、300万人以上が亡くなった、と語った。

成田が付け加えた「現代の兵糧攻め」のリスク

成田はこの話を受けて、あの経緯から同じ失敗をどう繰り返さないかという議論がほぼ忘れられていることが問題だと述べた。

成田によれば、当時と同じ兵糧攻めのリスクを今の日本も抱えている。エネルギー源がほとんどなく、原発の再稼働ですら揉めている。食料自給率は低く、最近は米がなくなるという事態も起きた。デジタルの世界でも、基礎的なサービスと計算力のほとんどを海外企業に握られ、そこに多額の支払いをしてかろうじて使えている状態であり、スマホもほぼ外国製だ。自衛隊の武器もアメリカ製で、暗号を変えられたら使えなくなる。つまり物の世界でも情報・データの世界でも、生活の基本を海外の国や企業に握られていて、そこを締められたらこの国はいつでも立ち行かなくなる。成田は、日本人がこの当たり前の現実を忘れていると指摘した。

そして、100年前の経緯を思い出せば、そうした状況から日本人がどれほど「狂ったこと」を始めかねないかが分かる、と成田は言う。それを伝える仕組みとして教科書は大事だが、若い人は文字を読まなくなっている、とも付け加えた。デヴィ夫人が計算はコンピューターやスマホがしてくれるし漢字も書けないと応じると、成田は自分も漢字が書けず新聞も読めない人間になりつつあると、半ば自嘲してみせた。

徴兵制を1年程度導入すべきだ

マニフェストの次の項目として、デヴィ夫人は徴兵制を挙げた。韓国には2年間の兵役があり、有名な俳優や歌手も甘んじて兵役に就いている。日本でも1年くらいの兵役があってよいのではないか、というのが夫人の提案である。

その理由として夫人は三つを挙げた。組織の中で動くことを学べること、兵役がないと愛国心が生まれないのではないかということ、そして一本筋金が入る人間になってほしいということだ。

成田は、大事なのは兵隊に行くことそのものなのかと確認した。夫人は兵役だと答えつつ、スイスでは全国民が消防を担う例を挙げ、自分たちが国を守るという意識が重要だと述べた。成田はさらに、国を守るために不可欠な仕事は兵隊だけではないのだから、1〜2年、子育てのような世の中に不可欠な公的な仕事に強制的に就く、という考え方もありうるのではないかと提案した。これに夫人は「とんでもない」と即座に否定し、やはり兵役だと譲らなかった。

自衛隊の役割は災害支援だけではない

夫人は自衛隊の現状にも言及した。東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などのたびに自衛隊員が動員され、自衛隊の人たちには大いに助かっている。しかし、国を守ることと震災後の手伝いとはずいぶん違う、というのが夫人の問題意識だ。

成田が、自衛隊は災害支援をしない方がよいという意味かと尋ねると、夫人は、人目に入る自衛隊の姿が今は災害支援になっている、という趣旨で応じた。では他に何をすべきかと問われると、世界情勢を踏まえて国を守るとはどういうことかを考えるべきだとし、武器を持っていても使うべきかどうか、襲われたらそのままでいいのか、と問い返した。成田は、現状では幸いにも襲われる事態が起きておらず、自衛隊が自衛の力を発揮する場面がないのだと応じている。

尖閣、辺野古、南沙諸島――「日本人には緊張感がない」

具体的な安全保障の話題として、夫人はまず尖閣諸島を取り上げた。尖閣の問題が起きたときになぜすぐに自衛隊を置かなかったのか、人を住まわせればよいではないか、と夫人は言う。ヤギが住めるのだから人間も住めるし、昔は漁師がそこで鰹節を作っていた跡もある、というのがその根拠である。

沖縄・辺野古の基地拡張については、沖縄は世界有数の自然がある素晴らしいところで、自然が破壊されるのは悲しいことだと認めたうえで、基地は必要だという立場をとった。南沙諸島では中国がすでに大きな基地を作っており、台湾がいつ襲われるか分からない状況で大きな基地がなければ大変なことになる。それに反対するのは日本の人たちに緊張感がないからではないか、と夫人は述べた。

話題はNHKの件にも及んだ。夫人によれば、中国語でニュースを伝える際に中国人の通訳が「尖閣諸島は中国のもの」と発言し、それが20秒ほど放送されてしまい、その人物を雇った側も責められているという。成田が「デヴィ夫人と尖閣諸島に住もう」という企画を冗談めかして提案すると、夫人は竹島に話を移した。竹島は日本のもの、島根県のものと声を上げても、韓国はすでに建物を建てて使っている。それなのに声を出すだけでは仕方がなく、非常に愚かなことだと夫人は評した。

成田はここまでを、自衛隊改革、徴兵制、憲法改正を柱とする「骨太マニフェスト」とまとめた。収録は8月末で、自民党総裁選を控えた時期だったと成田は触れている。

アスペン事件の真相――「全然間違って伝わっている」

番組の最後に成田は「失礼な質問」として、ネット上の情報を読み上げた。1992年、コロラド州アスペンで第4代フィリピン大統領の孫娘らと会話中、侮辱されたと思って激怒したデヴィ夫人がシャンパングラスで相手の顔を殴って大怪我を負わせ、傷害罪で逮捕され、実刑判決を受けて収監された。のちに夫人は「刑務所での生活は学生寮のようで楽しかった」と語った――という内容だ。

夫人は「全然間違って伝わっている」と否定した。まず相手は第4代大統領ではなく、独立前の指導者の孫だという。そして夫人自身が喧嘩したのではなく、相手の女性と夫人のガールフレンドが大喧嘩をしていて、夫人が仲裁に入った。その際に夫人の持っていたグラスが相手の顔に当たった、というのが夫人の説明である。仲裁に入ったのは、アスペンでそのガールフレンドの家に泊まっていたからだという。ボトルで殴ったという話も誤りだとしている。

夫人によれば、パリやニューヨークであれば喧嘩の際の事故として終わっていたはずだが、コロラド州の法律はまったく違い、家の塀を車でこすっただけで逮捕されるほど厳しい。収監はされたものの、朝8時から夜8時までは自由で、夜寝るときだけ施設に戻ればよく、それが30日間続いた。日中は外で絵を描いていたという。加えて100時間の社会奉仕が課され、教会の掃除や、お年寄りの話し相手などのボランティアをしたと語った。

街宣車に植木鉢を投げた話

成田が、戦う姿勢とともに、いざというときに実力行使できる抑止力を大事にする思想を感じると言うと、夫人は右翼の街宣車に植木鉢を3つぶつけたことがあると明かした。自宅の前に来て騒いだため「黙れ」と言って投げたという。幸い何にも当たらなかったが、当たっていたら器物損壊で逮捕されたかもしれない、と夫人自身も認めている。

それでもやめないので、運転していた若い男を引っ張り出して殴ってやろうと思ったところで警察官が駆けつけた。ところが警察官は男ではなく夫人を制止したため、夫人は激怒した。街宣車は音量に許可が必要であり、大通りしか通ってはいけないはずで、こうした道に入ってはいけないことを知らないのか、なぜ止めないのか、と警察官に詰め寄り、男を警察に連れて行かせ、自身も渋谷警察署に乗り込んだという。

成田は「戦え、街宣車が来たら植木鉢を投げつける」というのが今日のメッセージだと冗談で締めくくった。収録終了後も夫人は話を続け、駆けつけた警察官は自宅から1分ほどの場所にある長官公邸を警護していた警察官だったと明かした。2分ほどの場所にある麻生大臣の家の警察官は門番をしていただけだった、とも付け加え、「大事件でしょ」と語っていた。