永野がMCの夜、石田健・みなみかわ・宇垣美里が「本気で観ているYouTube」を持ち寄る

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概要

『夜明け前のPLAYERS』の特別編として、成田悠輔に代わり永野がMCを務めた回である。企画は「コンテンツ・ベストプレイリスト」。出演者が、もっと評価されてほしいと思う作品を深く語る。今回の題材はYouTubeチャンネルで、石田健、みなみかわ、永野の3人がリストを出した。宇垣美里は主に聞き手に回った。テレビとネットの作り方の違い、ニッチな題材の価値、金のためではない発信とは何かが話題になった。

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成田不在の番組で永野がMCをする

冒頭で永野は、番組の空気を村上龍のイメージで作ったと話す。ただし村上龍の本は読んだことがないとすぐに認め、「世界観的には村上龍」だと言い直した。自分が配信番組に出ると再生数が伸びる、だから起用されたのだろうとも冗談めかして語る。

永野がこの番組に出たのは、成田の回にロケで1度出ただけだという。成田については、眼鏡のフレームが丸と四角を組み合わせた形であることを「メディア界で初めて暴いた」と話し、本人に「おやめなさい」と言ったと振り返る。相手に遠慮しない理由として、永野は「あんたより長く生きてんだから」と年齢を持ち出す。自分は「年功序列とルッキズム」で生きていると言って、場を笑わせた。

ゲスト3人の紹介

宇垣美里の紹介では、永野があえて外見の話をする。そこから、テレビ業界によくいる男性の話になった。「宇垣さんの思い、分かりますよ」と理解者の顔をして近づく人たちである。宇垣はこれを「アップデートしてる自慢」とまとめた。永野はそういう人たちについて、見透かされていることに本人が気づいていないのだと言う。

The HEADLINE編集長の石田健について、永野は「ソフトに見えてちゃんと言う」人だと評した。パフォーマンスではなく、筋の通ったことを言うという意味である。石田自身は、テレビに出始めた頃はとにかく逆張りで目立とうとしていた、今はそうならないよう気をつけている、と話した。

みなみかわは映画好きのイメージを持たれているが、本人によれば昔映画館で働いていただけだという。この日はデニムにプレデターの服で、コンテンツの話をする回なので一応それらしい服を選んだと説明した。永野にいじられることも前提だったという。

石田健:もうチャンネル単位では観ていない

石田のリストは次の5つである。

  • 自身のThe HEADLINE
  • 箕輪世界観チャンネル。
  • ゲンロン(「今週の人文ウォッチ」)
  • Johnny Harris
  • Rap EJ

ただ石田は最初に、リストを出しておいて何だがリストにはあまり意味がないと思っている、と断った。以前はチャンネル登録をして観ていたが、今は「お前このコンテンツ好きだろう」とアルゴリズムが勧めてくる。だからチャンネルごとには観ていないという。代わりに気になるのは、発信している個人のストーリーだと石田は話す。

「予定調和ではないストーリー」を人は求めている

石田はこの話を、冒頭の永野と成田のやりとりにつなげた。テレビにはどうしても予定調和の世界がある。永野が気持ちで突っ込んでいくと、その予定調和が壊れる。そこがネットらしさだ、というのが石田の見方である。

石田はここでドナルド・トランプを例に出した。政治家は普通「すみませんでした」「考えていきたい」と言う。ところがトランプは「グリーンランドを手に入れたい」と言い出す。予定調和ではないことを言う人物が頂点にいて、みんながそういうストーリーを求めている、と石田は見る。そしてこれがテレビとネットを分ける大きなラインだと述べた。

石田はさらに、YouTubeでは制作者と演者が同じ熱量で作っていると指摘する。テレビでは、演者の多くが「作り手の用意した台本と構成を演じるのが仕事」と考えている。ここでボケて、ここで話を振る、という進め方だ。石田は、人間はそのゲームに慣れすぎて飽きてきた、だから全く予定調和ではない話が求められている、と説明した。

Johnny Harris:体験で見せるニュース解説

その例として石田が挙げたのがJohnny Harrisである。石田の説明では、Johnny HarrisはNew York Timesなどアメリカの新聞にも登場する記者で、以前はオンラインメディアに所属していた。今は独立して、話題のニュースを解説したり、現地に行ってみたりしている。

日本のニュース系YouTube、たとえばPIVOTやReHacQは、有識者を呼んで話してもらう形式が多い。石田によれば、ニュースはそれが一番コスパがいい。一方でJohnny Harrisは、国境に行ってみる、日本の自衛隊で訓練を受けてみる、といった企画をやる。知識の裏付けはしっかりしているのに、決まった型を崩していく。石田はそこが好きだという。

動画は英語だが、最近のYouTubeには日本語の字幕や吹き替えに切り替える機能がある。本人が英語で話していても日本語で聞ける。自衛隊の回も日本語で観られると石田は紹介した。

テレビとの違いについて、永野は規制の硬さを挙げた。石田はそれに加えて尺の問題を指摘する。テレビなら、体験したVTRを流してスタジオでコメントする形になる。Johnny Harrisの動画では、訓練の様子をずっと映して1時間近く見せる。そのうえで中国との軍事的緊張をどう見るか、といった話もする。永野が「分からない人も入ってきやすそう」と言うと、石田も同意した。

石田は、視聴者は本当はニュースの深い文脈や背景を知りたがっていると考えている。マスメディアは「視聴者には分からないだろう」と考えがちだ。しかし深く知りたい人は世の中に確かにいるはずだ。Johnny Harrisはその仮説でやっていて、それが当たっている、というのが石田の見立てである。

Rap EJ:ケンドリック・ラマーだけで1時間話す

同じ流れで石田が紹介したのがRap EJだ。ヒップホップをひたすら解説するチャンネルである。たとえばスーパーボウルのハーフタイムショーでケンドリック・ラマーがパフォーマンスをしたとき、なぜケンドリック・ラマーがすごいのかを1時間ほどかけて話したという。

テレビ的な作りなら「今人気の洋楽チャート」を紹介するところだ。Rap EJはケンドリック・ラマーひとりで1時間話す。ドレイクとケンドリック・ラマーはどちらが優れているのか、両者のビーフ(対立)の歴史はどうだったのか、といったテーマもある。永野は「ピンポイントだけど知りたい」と反応した。石田は、いろいろな文脈がつながった「ハイコンテクスト」なものを観られることがYouTubeの一番の面白さだとまとめた。

メディアは一方に移るのではなく共存する

永野は、メディアはこれからどうなっていくのかと問いかけた。自分も深く掘るものが好きだが、そこまで掘らなくていいという人もまだいるのではないか、という疑問だった。

石田の答えは「両方が共存していく」である。石田は芸人のYouTubeが観られている状況を例に挙げた。メタバースの話をテレビでしても、そもそもメタバースとは何か、というところで伝わらない。芸人のYouTubeでは、そういうマニアックな話をどんどんする。それでも分かる層にはちゃんと届いてウケる。石田は、そうした笑いの形がYouTubeによって劇場のように再現されていると見ている。だから全部がネット側に移るのではなく、共存していく感覚だという。永野が「自分はどちらかというとこっち(ネット側)っぽい」と言うと、石田はうなずいた。

みなみかわ:剃刀を紹介して剃るだけのチャンネル

みなみかわのリストは次の4つである。

  • KOJAK-RAZOR
  • ソラカラ研究所
  • プロセスX
  • 永野ショートムービーCHANNEL

永野はまず、芸人がこういう先進的なメディアに出ると格好をつけて知らないものを挙げることがある、と釘を刺した。みなみかわは、永野のチャンネルを入れて申し訳ないが、どれも本当に自分が観ているものだと答えた。そして、たぶん誰も観ないと思う、とも付け加えた。

KOJAK-RAZORは、剃刀を紹介して、本人が剃るだけのチャンネルだという。みなみかわはこれをずっと観てきた。「この刃物綺麗やな」と思いながら観ているという。みなみかわ自身も一枚刃の剃刀を持っていて、一番高いものは3万6000円する。よく切れるが危ないそうだ。チャンネルでは、剃刀がなぜこういう作りなのか、どう剃れば一番よく剃れるのか、クリームの素材で剃りやすさがどう変わるのかを淡々と解説する。配信者は日本人で、兵庫の人ではないかとみなみかわは話していた。

一枚刃の剃刀はエジプト、ロシア、中国、日本などさまざまな国のものがあり、その差が面白いという。新製品が出たり、仕組みに感心したりする楽しみもある。5枚刃のようなものもあるが、みなみかわは一枚刃が好きで使っている。永野は、石田の言うピンポイントなものであり、テレビではできない題材だと受け止めた。

永野ショートムービーCHANNEL:回らないことが特徴になっている

みなみかわが特に勧めたのは、永野ショートムービーCHANNELだった。永野には2つチャンネルがある。ひとつは好きな洋楽などのコンテンツを勧めるチャンネルである。もうひとつがこのショートムービーのチャンネルで、1〜3分ほどの短い映像を載せている。みなみかわの評では「とにかく性格悪い」。

みなみかわが挙げた例のひとつは、サザンオールスターズのドラマー松田がアー写を撮るときにビジュアル系っぽい撮り方をする、というだけの動画だ。全然再生されていないが、めちゃくちゃ面白いという。永野によれば、女子高生の化粧の動画のほうがよほど回っているそうだ。

もうひとつは、芸人の単独ライブの全国ツアーで、スタッフのひとりがクビになる瞬間を描いた動画である。しかも名前が出ていて、実在の人物だという。永野はこれを、自分がされたことをコントで返しているのだと説明した。

みなみかわは、どれも8分ではなく本当に1分程度で、「これは1分でいい」と永野が抽出したものだと感じている。だから利益のにおいがせず、本当にやりたいことをやっていると伝わる、と話した。永野も、もうひとつのチャンネルには案件も増えてきたが、このチャンネルにはそれがないと認める。金のためではなく自分の私怨を晴らすためのものだという。ただ、悪口をそのまま言っても仕方がないので、笑いというフィルターを通しているそうだ。

みなみかわは、永野にはいずれ映画を撮ってほしいとも話した。このチャンネルはその原点のようで、今まさに現役だと感じるという。永野はこれを受けて、マスに向けたテレビっぽい動きはこのチャンネルではしていない、YouTubeで本当にやりたいことをやっている、と語った。当初は「コントチャンネル」と名乗っていたが、「これはお笑いじゃない」と言ってくる人がいた。それも嫌なので「ムービー」と名乗れば言われないだろうと考えた、という経緯も明かした。

石田は、普通はショート動画で再生数を稼いで長尺に誘導するのがセオリーなのに、このチャンネルはショートを回そうとしていないのがすごい、と指摘した。永野は、言いたいことが狭すぎて1分以上にできないのだと答えた。みなみかわは、芸人が楽屋で話すことを1分にして悪口を詰め込み、映像にしたようなものだと表現する。展開を入れると不純になっていくのだという。

最後にみなみかわが挙げたのは競馬の動画である。競馬を観戦している人たちが集まって写真を上げていることがある。それが夜中に疲れて見ていたら団子に見えた、というだけの1分の動画だ。「お前らは気持ちよくなってる団子だ」と言って終わる。

永野:ジャミロクワイの公式ショートに見る「本当のゴール」

永野のリストは次の5つである。

  • D.Oと愉快な野良犬たち
  • ロックンロール酒場Ch
  • Jamiroquai Official
  • ひっかかりニーチェ
  • limpbizkit

自分の宣伝も含まれていると断ったうえで、永野はひとつだけ、ジャミロクワイの公式チャンネルを観てほしいと推した。20年ほど前に大人気だったアーティストである。公式チャンネルに上がっているのはほとんどがミュージックビデオで、運営側が投稿しているとみられる。ただ、ショート動画ではときどき本人が携帯で撮ったものが上がるという。

永野の説明によれば、今のジャミロクワイは年齢を重ねて太り、白い無精髭を生やしている。巨万の富を得て、広大な土地で隠居のように暮らしているのではないか、と永野は想像する。その本人が、アスパラガスを収穫する動画や、自宅の大型犬をブラッシングする動画を上げている。40秒ほどで終わり、洒落た作りでもない。

永野が感動したのは、その投稿の仕方だった。日本の同じような立場の人なら、「このチルな大人を見てくれ」という見せ方になるかもしれない。ジャミロクワイはおそらく個人の記録をアップしているだけだ、と永野は見ている。永野は自分のチャンネルで「かっこいい大人系」の芸能人への疑問をずっと語ってきた。これこそが本当のゴールであり、大げさに言えば幸せというものなのではないか、と永野は話す。これを見ると、キャンプやアウトドアで充実ぶりを見せることすら嫌らしく見えてくるという。

一方で、ジャミロクワイは環境保護を訴えながら、新作のフェラーリを普通に見に行くのだそうだ。気になった永野がインタビューを調べたところ、インタビュアーから「エコを訴えているのにフェラーリは排気がひどいのでは」と問われた場面があった。うまく答弁するかと思ったら、普通に怒っていたという。出演者たちはそれを「人間ですね」と笑った。

「資本主義で勝ち切ったから解脱できる」という皮肉

宇垣は、自分はYouTubeをあまり観ないが、この話を聞いてすごく観たくなったと話した。素敵なキャンプ動画を上げている時点で、その人たちはまだそこから逃れられていない。ジャミロクワイの動画は、本当に解脱した人を見られるものなのだ、と宇垣は受け止めた。永野は、更新がほとんどないことや、マネージャーが止めないことも含めて面白いのだと付け加えた。

石田は、ここに皮肉があると指摘した。資本主義で勝ち切ったから解脱できる、ということでもあるからだ。まだ勝っていない人ならマネージャーが止めるだろう。ジャミロクワイのレベルまで行っているから、アスパラガスの動画でもOKになる。永野が「でもフェラーリは絶対見に行く」と返すと、少し資本主義のにおいが残っているのもいい、という話で落ち着いた。年齢については、永野は54歳ぐらいだと思うと話し、思ったより若いと驚かれていた。

映画の話題へ

字幕の終盤では話題が映画に移っている。出演者のひとりが、自分のオールタイムベストだという作品を挙げた。字幕からは『マッドマックス』シリーズと続編の『フュリオサ』を指しているとみられる。出演者たちは『フュリオサ』を「最高」と評し、アニャ・テイラー=ジョイの目について「あんな孤独な目はない」と語り合った。

続いて「今一番気になっている」作品として『ガンニバル』の名が挙がった。柳楽優弥がとにかくすごいという。怖い村で襲われて命からがら逃げる話かと思えば、主人公の側も狂っていく。そこが怖くて見事だ、という感想が述べられたところで字幕は終わっている。