ハンドルのないサイバーキャブが公道へ FSD 14 LiteとOptimus製造ラインに見るテスラの現在地

YouTubeで開く ↗
概要

テスラ関連のニュースを伝えるこの動画で、話者は京都のチームラボ前の公園から3つの話題を取り上げた。ハンドルもペダルもない「サイバーキャブ」の公道テスト、旧世代コンピューターAI3向けに提供が始まった「FSD 14 Lite」、そしてフリーモント工場で始まったヒューマノイドロボット「Optimus」の製造ライン建設である。話者は3つのニュースを、テスラが自動車メーカーではなく「AIロボティクス企業」であることを示すものとして紹介している。

10分で読めます

サイバーキャブが公道を走る映像

最初の話題は、テスラ公式アカウントが突然公開したサイバーキャブの公道走行動画である。車内にはハンドルがなく、話者の見立てでは20インチほどの大きなディスプレイが中央に置かれている。ブレーキペダルもアクセルペダルもない。

話者によれば、現在はまだテスト段階だが、7月か8月には一般の乗客を乗せた運行が始まると言われている。全米各地でサイバーキャブのテストが行われており、オースティンではすでにモデルYによるロボタクシー運営が始まっている。こうした状況から話者は、リリース直前なので映像を見せ始めたのではないかと推測している。

ファーストレスポンダー向けガイドから分かった仕様

公道テストと同じ時期に、救助隊向けに緊急脱出や消火、牽引の方法を示す「ファーストレスポンダー」向けの資料のサイバーキャブ版が公開された。テスラは他の車種でも同様の資料を出しているが、サイバーキャブ版が出たことで車両の中身がより詳しく分かった、と話者は説明する。資料は誰でも閲覧できるという。

資料から話者が紹介した点は次のとおりである。ドアのボタンは後方カメラの下に押し込む形で設置されている。車両識別番号(VIN)は他のテスラ車と同様にフロントガラス部分と左下のシールにある。骨格への刻印の位置は、話者にはまだ分からないという。カメラやマイクがオンのときには、iPhoneと同じように画面右上にマイクはオレンジ、カメラは緑のアイコンが表示される。

話者が新しい事実として注目したのは外部マイクである。運転席側、つまり左側にマイクがあり、ドアが開かないなどの異常が起きたとき、車外の人がオペレーターと会話できるという。話者は、どこかにスピーカーも付いているのだろうと推測し、このような形で車外と通話できる仕組みはテスラとして初の試みだと述べた。アンダーカバーにももう1つマイクがあり、人との会話だけでなく、救急車のサイレンなどを拾う用途も予想されているという。

フランクなし、48Vシステム、電源遮断の仕組み

ボンネットを開けても荷物スペースはなく、機材で埋まっている。いわゆるフランクはサイバーキャブにはない。

テスラ車は床にメインバッテリーを敷き詰めており、火災時に電力供給が続くと延焼の原因になる。そのため全車に、メインバッテリーからの電力供給を強制的に断つ配線が用意されている。サイバーキャブでも、他のテスラ車とほぼ同じくボンネットを開けた左側に、コンタクター(メインバッテリーの電源を供給するリレー)を遮断する配線があり、これを切断するとすべての電源が落ちる。さらに右後方の壁の中にも、オレンジ色のシールで示された配線があり、ここを切っても遮断できるという。

電装系については、一般的な乗用車の12Vに対し、サイバートラックとサイバーキャブは4倍の48Vシステムを採用しており、その補助バッテリーは車両の中央付近にある。完全に電源を失った場合は、フロントバンパーのカバーを開けて出てくる配線に12Vを供給するとボンネットが開き、その後に48Vの補助バッテリーを充電する、という手順だと話者は説明した。

手動ドア開放への懸念

サイバーキャブのドアはアクチュエーターで自動的に跳ね上がる方式で、電源がなければ開かない。電源喪失時には内側のレバーを引くとロックを解除できる。話者はこのレバーの位置について、乗客が降りるときに普通に開けてしまいそうで危なくないかと疑問を口にしつつ、非常用なので分かりやすい場所に置いているのだろうかとも述べた。

ただし資料には注意点も書かれているという。ドア自体が非常に重く、手で開ける場合は奥の方を押しつつ上方向に押し上げる必要がある。手を離すとドアは閉まってしまうため、押し続けながら降りなければならない。話者はこれを「結構怖い」とし、女性や力の弱い子供が緊急時に脱出できるのか怪しいのではないかと懸念を示した。一方で、トランクのようにある程度押せばバネで支えられる構造なのかもしれず、実際に試してみないと分からない、とも付け加えている。

そのほか、車内からドアを電動で閉めるボタンは画面の下にあり、USBポートは画面の横に移った。以前は座席の間にあったように思う、と話者は述べる。

話者は、ファーストレスポンダー向け情報が出たことは車両の構成と仕様が固まった証拠だと受け止め、このペースならオースティンでは7月下旬から8月中にほぼ間違いなく登場すると感じている、と締めくくった。

FSD 14 LiteがAI3車両に届く

2つ目の話題は、旧世代コンピューターAI3(ハードウェア3)向けに提供が始まった「FSD 14 Lite」である。話者によれば、FSDの最新バージョンは基本的に最新世代のAI4でしか更新されておらず、AI3のオーナーは見放された状態にあった。話者の記憶ではAI3はバージョン12.6で止まっており、その後13、14と進んでもアップデートがなかった。そこへテスラのエンジニアが、AI4向けFSD 14相当の自動運転プログラムを低性能なAI3に載せることに成功したという。

話者はAI3の性能の低さを示す数字として、ニューラルネットワークの処理で重要な要素とされるメモリー帯域が現行のAI4の15%しかないことを挙げた。その制約の中で推論を行うためのモデル軽量化技術が証明された、というのが話者の評価である。

テスラのAI部門を率いるアショック氏は、FSD 14 Liteがアーリーアクセスに配信されたと投稿し、様子を見て問題がなければ数週間かけて全米のAI3オーナーに配信していくと述べたという。話者の紹介によれば、AI4のバージョン14と同様のスピードプロファイル、最後まで後退で入れる自動駐車、路肩への停車といった挙動も再現できているとされる。

すでに愛好家たちはその日のうちにアップデートを入れ、街中でのレビュー動画を公開している。動画では、ボタンを押すだけで駐車枠から出て、アクセルやブレーキ、ハンドル操作なしに目的地まで走る様子が映っている。話者はFSD 12には不安定な部分が多かったと振り返り、自身もAI4車両でFSD 14に乗った経験から、それがAI3に来ることに驚いている。イーロン・マスクも本音では諦めていたのではないか、AIチームがやり遂げたことに驚いているだろう、というのは話者の推測である。

軽量化モデルとしての意味づけ

話者はこの成果を、GeminiのFlashやChatGPTのminiのような軽量化モデルになぞらえて説明した。大きな高性能モデルを作った後、お酒や原油の「蒸留」のように最も重要な部分だけを抽出して小さくする手法は以前から広く行われている、という理解である。大規模モデルには不要な部分も含まれているが、どこを削れるかを判断して軽量化する作業は非常に骨が折れるものらしい、と話者は述べる。ただし自分は専門家ではなく分かっていない部分も多い、と断っている。

そのうえで話者が強調したのは、自動運転という用途の厳しさである。ClaudeやChatGPTは多少微妙な出力をしても許されるが、FSDは車内のコンピューターでリアルタイムに動かなければならず、1秒の遅れが人を傷つけかねない。そうした領域でここまで作り込んだことに、話者はテスラが自動運転の最先端にいると感じ、だからこそロボタクシーやOptimusも作っていけるのだろう、と述べた。

日本のAI3ユーザーへの影響

話者によれば、テスラは第1四半期の決算発表で、FSD 14 Liteをまず第2四半期に米国で配信し、その後FSDが提供されている各国にも展開すると述べている。日本でも今年中にFSDが来ると言われており、そうなれば日本のAI3ユーザーも恩恵を受けるだろう、と話者は期待する。話者自身もAI3車両を多く所有しているため、非常に嬉しいニュースだという。もちろんAI4の方が高性能であることに変わりはない、とも付け加えている。

フリーモントでOptimus製造ラインの建設が始まる

3つ目の話題は、テスラがヒューマノイドロボットOptimusの製造ライン建設を始めたことである。イーロン・マスクは、フリーモント工場で元々モデルSを製造していたラインが撤去された更地の写真とともに、Optimusの製造ラインが作られる場所を歩いていると投稿した。柱にはOptimusの絵が描かれている。

話者は、自動車の製造ラインを壊してヒューマノイドの製造ラインを作る会社はテスラしかないだろうと述べる。そして、テスラは自動車メーカーではなくAIロボティクス企業であり、車は「4つのタイヤが付いたロボット」と位置づけられている、というのが話者の見方である。テスラのミッションが「サステナブル・アバンダンス」から「アメイジング・アバンダンス」に変わったことについても、AIとロボティクスで世界を圧倒的な豊かさで満たそうというコンセプトだと説明した。

1枚の絵が示すテスラのプロダクト群

同じタイミングでテスラは、自社のプロダクト全体を1枚で示す画像を投稿した。話者は、その中心にあるのはAIとロボティクスで、そこにエネルギーが加わり、SpaceXとの統合が進めば宇宙も入ってくると読み解く。

画像を左から見ると、背景にはギガテキサスがあり、そこで車というロボット、トラック、そしてOptimusが製造される。Optimusは製造や物流を手伝い、人間と共存している。製造と世界のエネルギーを支えるのが産業用バッテリーのメガブロックやメガパックで、ソーラーパネルとセットで展開されている。モビリティはサイバーキャブ、サイバートラック、モデル3、モデルYが担い、スーパーチャージャーがその充電を支える。

次の乗り物として描かれているのがロボバンである。話者によれば、サイバーキャブが2人乗りなのに対し、ロボバンは20人乗りのバスになると発表されており、サイバーキャブの製造が安定しつつある今、その次に製造されるのがロボバンだという。

ヒューマノイド市場への話者の期待

話者は、テスラにとって次の大きな金脈はヒューマノイド市場だと考えている。車の販売やロボタクシーも大きな市場だが、ヒューマノイドはそれ以上に世界を変える市場になる、という見方である。世の中は人間向けに設計されているため、人間の形をしたロボットが物流、家事、犬の散歩まで担えるとし、介護、工場、危険な建設現場、料理、洗濯、荷物運び、レストランの配膳などを例に挙げた。そうした世界が5年後くらいには来ている、と話者は述べている。

さらにマスクは火星や月のコロニー建設にもOptimusを使おうとしており、それを考えると市場規模は想像できないほど大きい、と話者は語る。こうしたビジョンに共感する人は株を買っているのだろうとし、自身もその1人だと明かした。話者は、フリーモントの更地と1枚の絵を、テスラが描く世界の「始まりに過ぎない」ものとして紹介し、動画を終えている。