ロボット、AI秘書、CTOのCHRO就任:安野貴博とハヤカワ五味が語るAI時代の働き方(前編)

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概要

安野貴博氏の番組に、ハヤカワ五味氏がゲストとして登場した。前編では、ハヤカワ氏が最近熱中しているロボットづくり、AIで3Dモデルやゲームを作る試み、Claude CoworkとNotionを組み合わせて秘書業務をほぼ自動化した実例、そして所属先のメルカリでCTOがCHRO(最高人事責任者)を兼ねるという人事ニュースが扱われた。後半の中心にあるのは、AI活用を広めるうえでなぜ人事が要になるのかという問いである。ハヤカワ氏は、評価制度と組織設計を変えなければ会社員がAIを使う動機は生まれない、という立場をとる。

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ゲストの経歴と「ロボにはまっている」近況

ハヤカワ氏は現在、IT企業でAI関連の推進を担当している。AI関連のポッドキャストやXで情報発信も続けている。以前は約10年間、D2Cと呼ばれる領域でアパレルブランドを経営していた。そこから流れでAIの分野に移り、最近はロボットにはまっているという。会う人ごとに「もうロボ組み立てましたか」と聞いて回るほどだと本人は話す。

オープンソースロボットと回転寿司ロボ

ロボットづくりのきっかけとしてハヤカワ氏が挙げたのは、AI系のオープンソースで知られるHugging Faceが、オープンソースのロボットに力を入れていることだ。ハヤカワ氏の説明では、ヒューマノイドの脚部が30万円ほどで組み立てられるという話もある。これはさすがにハードルが高いが、アームやオムニホイールで動く土台なら3〜4万円程度で組める。パーツは3Dプリントすればよい。一度自分で組み立てると、世の中のロボットがどう動いているのかが見えるようになって楽しいという。

実際に組み立てたのは、Hugging Face系の「SO-101」という機械学習・模倣学習用のアームと、それに関連するルンバのような移動用ベースだ。ハヤカワ氏はベースの上に寿司を載せて「回転寿司ロボ」に仕立て、秋葉原でロボットを街に放つイベントで走らせた。外国人観光客に「これが日本か」とウケたという。

AIによる3Dモデル生成と「Fable」への未練

パーツを自作する話から、AIによる3Dモデル生成に話題が移った。ハヤカワ氏によれば、今はテキストや画像から3Dモデルを作れる。3D変換に特化したモデルもあり、画像生成で作ったものを3D化することもできる。引き出しの内側の仕切りのような実用品も、CADを使って作ってくれる。3Dプリンターで印刷まですれば、AIの効果がパソコンの中だけでなく外の世界にまで広がる。ハヤカワ氏はそこにAIの可能性を感じていると述べた。

安野氏が「Fable」を試したかと尋ねると、ハヤカワ氏はずっと頭から離れないと答えた。Fableは2Dも3Dも非常に良かったという。特にハヤカワ氏が評価したのは、ゲーム用3D制作ソフトのBlenderと連携できた点だ。ハヤカワ氏は以前Blenderに挫折しており、安野氏も挫折した経験があると応じた。そのBlenderでも、Fableと会話しながらデータを作ってもらえたという。ただ、ハヤカワ氏の話では、Fableは水曜日ごろにリリースされ、土曜日の午前中に使えなくなってしまった。平日は忙しく、週末にじっくり触るつもりだったハヤカワ氏は落胆したと語る。二人は、収録日の6月20日時点ではFableが「いなくなってしまった」状態で、配信されるころには戻ってきてほしいと話していた。

安野氏も、BlenderのほかUnrealやUnityといったゲームエンジンをAIで操作するデモや、ゲームエンジンを使わずにブラウザー上で3DのFPSゲームを作る例を見ていると述べた。

「作れる」と「面白い」は別物

ハヤカワ氏は、もともと大学時代にゲームを作りたくてゲーム系の会社にいたこともある。ただ、その後起業したため、ゲームは作れずにいた。ChatGPTに初めて触ったとき「これでゲームが作れるようになるかもしれない」と感じたことが、AIにはまった原点だという。

安野氏が「もう普通に作れますよね」と振ると、ハヤカワ氏は「あとはやる気だけ」と応じた。そのうえで、実際に作ってみて感じるのは「作れること」と「面白いこと」は別だという点だと述べた。数か月前にゲーム系のハッカソンに参加し、2日間でボードゲーム的なものを作った。ハヤカワ氏によれば、組み立てる作業よりもゲームバランスを整えるほうに時間がかかったという。既存のゲームがいかによくできているかを痛感し、ゲームクリエイターへの敬意が増したと話す。

安野氏も、生成AI以前にボードゲームを作ろうとした経験を語った。ルールはすぐ考えられたが、一度テストプレイしたら完全に崩壊していたという。世の中のゲームは絶妙なバランスの上に成り立っている、と二人は同意した。

フィジカルAIの入り口にある壁

最近のホットトピックとして、ハヤカワ氏は「フィジカルAI」を挙げた。AIに手足や周囲を認識する手段を与え、ロボットに載せていくという流れだ。ハヤカワ氏が特に気にしているのは、ロボット分野に女性クリエイターが極めて少ないことである。AI分野も初期は女性が少なかったが、最近は増えてきた。ロボット分野でも女性を増やしたいというのが、ハヤカワ氏自身のテーマだという。

一方で、入門のハードルは上がっているとハヤカワ氏は指摘する。ロボットづくりに関わる人はそもそも少なく、専門分野の出身者が多い。加えて部材の値段が上がっている。ハヤカワ氏によれば、Raspberry Piは1.5倍ほど値上がりし、Raspberry Pi 5でメモリの多いものを買おうとすると数万円になる。以前は安いので何個も買って壊しながら触れたが、今は緊張感を持って扱っているという。ロボットを広めたい一方で、あらゆるものが高くなっており、今は難しいタイミングだとハヤカワ氏は見ている。

ヒューマノイドの怖さと、服を着せたときの愛着

安野氏は、周囲で中国製のヒューマノイドロボットを触った人の話を紹介した。大きくて運べないうえ、威圧感がある。その人は安全装置を切っていたため、ロボットが暴れ出して「死ぬかと思った」と話していたという。ハヤカワ氏は、二足で立つこと自体が難しいためにバランスを崩すと激しく暴れて音もうるさく、危険を感じると応じた。展示では上からハンガーのようなもので吊り下げられていることが多い、と二人は話した。

安野氏はさらに、メディアアート作家の藤堂氏による、鎖につながれた犬型ロボットが近づく人に襲いかかる作品に触れた。ハヤカワ氏も安野氏の投稿で知って見に行ったという。来場者の多くが本気でビビっていたと振り返る。ハヤカワ氏は、想像以上に馬力があると述べ、全力で暴れる赤ちゃんの力強さにたとえた。大人は全力で動くことがあまりないので、全力で動かれると独特の存在感を感じるという。

逆の体験もある。あるハッカソンで、提案の流れからヒューマノイドにメイド服を着せることになり、会場に持ち込んで着せたところ、可愛く見えた。途中から愛着が湧き、服を脱がせるのが申し訳なく感じたという。ただ最後は、ヒューマノイドがかなり独特な折りたたまれ方をして大きな楽器ケースのような箱に収まっていった。ハヤカワ氏は、家庭に入るまでにはまだ先が長く、もう少し小型のものがあれば入門しやすいと話した。

「見た目の柔らかさ」と受容

安野氏は、50万円ほどでそれなりの犬型ロボットが手に入るらしいと述べ、使い道はないかと問いかけた。ハヤカワ氏は、それならaiboのほうが可愛いと感じると答えた。力強さが活きる用途としては物を運ぶことや買い物くらいしか思いつかず、スーパーに犬型ロボットがいたら自分でもビビるという。安野氏は、人はどのくらい慣れるものなのかと疑問を投げた。

これに対してハヤカワ氏は、見た目の柔らかさが非常に大事だと述べた。安野氏も、レストランの猫型配膳ロボットにはもうみんな慣れていると応じた。ハヤカワ氏が印象的な例として挙げたのがLOVOTである。東京ディズニーランドの奥のほうで、仮装したLOVOTを抱えた人を見かけたという。ほかにも、年始に無料でプロカメラマンが撮影してくれるイベントで、振袖姿の人がLOVOTを連れていた。オーナーのオフ会もある。ハヤカワ氏はこうした光景から、LOVOTはしっかりプロダクトマーケットフィットしていると感じている。

この話を受けて安野氏は、チームみらいの党内向けAIエージェントをSlackで運用していることを紹介した。キャラクターを犬にしたことで愛される存在になったという。ハヤカワ氏は、犬だと思うと厳しく当たれないと応じた。二人は、Slack上のエージェントに犬というインターフェースがあるなら、それが犬型ロボットとして物理的な体を持つ道筋もありうると話を広げた。カレンダーを見て忙しそうだと判断し、お茶を運んでくれるなら愛せる、というのが二人の想像である。ハヤカワ氏は、エージェントを犬にするやり方を全社におすすめしたいと述べた。

自分の記録をデータとして残す

エージェントを「育てる」うえでは、蓄積やコミュニケーション履歴が大事だという話になった。ハヤカワ氏は、自分に関するさまざまな記録をデータとして残すようにしているという。スマートウォッチによる睡眠などの健康データに加え、ハヤカワ氏が挙げたのは、行った店が美味しかったかどうかという記録だ。こうした記録は意外と残していなかったという。今はテキストメモで残し、定期的にエージェントに渡す。そのうえで、どういう店が好きなのかをメタ的に考えさせ、自分の好みを理解してもらっている。食の評価は非常に個人的なものだ、というのがハヤカワ氏の見方である。

記録の対象は日常のワークフローにも及ぶ。ハヤカワ氏は忘れっぽいが、エージェントのサポートがあれば回せるという。デバイスが良くなって手軽に記録できるようになったため、何かとメモを残し、ブログなどさまざまな形に変換している。

Claude Cowork+Notionで秘書業務を自動化

安野氏が視聴者も特に聞きたいはずだと振ったのが、秘書業務のAI化である。ハヤカワ氏によれば、既存の秘書がいると置き換えるのは難しかった。ところが、以前の担当者が辞め、代わりに入った友人も「秘書業務はだるい、苦手」と率直に言っていた。秘書に向いている人はかなり限られ、人材も足りていない。そこで友人と相談し、AIエージェント化することにした。

現在の構成はClaude CoworkとNotionの組み合わせだ。Notion単体でも運用できるが、6月頭ごろに出たNotionのカスタムエージェントは、フタを開けたらかなり高かった。そのため、Coworkと組み合わせる形にしているという。

流れは次のとおりである。仕事の依頼は、今回の出演依頼も含め、まずGoogleフォームで受け付ける。収録日、内容、共演者などを入力してもらい、回答はGoogleスプレッドシートに自動で溜まっていく。新しい回答が来ると、Notionのデータベースに案件として起票される。Gmailの新着メールについては、どう返信すればよいかをエージェントが提案し、返信案をNotion側に蓄積する。ハヤカワ氏がそれを目視で確認し、送ってよいと判断して「送信可」にすると、自動で送信される。最後のチェックは本人が行うが、大枠の流れはほぼ自動化されている。

ハヤカワ氏が特に便利だと感じているのは日程候補の提示である。自分でカレンダーを開くと「そういえば明日これがある」と注意が逸れ、気づけばTwitterを開いている。Coworkにカレンダーの権限を渡しておけば、会議の前後なども考慮して候補を選び、メールの下書きに入れてくれる。

個人事業主やフリーランス向けにハヤカワ氏がすすめるのが、振り込み作業だ。映像編集者などへの月末の支払いが面倒だったが、ネットバンキングには10件などをまとめて振り込める「総合振込」がある。その取り込み用CSVを生成させ、最後に確認してアップロードすれば振り込みが完了する。請求書のPDF発行もCoworkに任せているという。残っているのは、自分が物理的にどこかへ行くことくらいだとハヤカワ氏は話した。

プロンプトはもう自分で書かない

ハヤカワ氏は、この構成をnoteにざっくり書いていると述べた。加えて、今のような話をそのままClaudeに伝えれば、スキルなどをいい感じに作ってくれるという。最近はプロンプトをゼロから書くことはほぼなく、任せたほうがスムーズだというのがハヤカワ氏の実感である。

運用上の悩みも語られた。ハヤカワ氏は、スキルやワークフローはメンテナンスしやすいよう小さく切って作っている。ただ数が増えると重複が出てくる。Fableにまとめて渡せば調整してくれただろうと思うと、結局「Fableがいれば」と考えてしまうという。Fableが出た週、ハヤカワ氏はCTOを含め会う人ごとに「Fable使いましたか、使ったほうがいい」と勧めて回った。その週の自分の一番の貢献はそれだった、と冗談めかして話した。

CTOがCHROに:メルカリの人事

続く話題は、ハヤカワ氏の所属するメルカリでCTOがCHROに就任するというニュースだ。ハヤカワ氏はそのCTOの下で働いている。安野氏は、技術畑のトップが人事の責任者になるのは普通ならあまり聞かない話だと指摘した。ハヤカワ氏も、HRはHR、テックはテックという感覚が一般的だったので驚いたと認める。

そのうえでハヤカワ氏は、メルカリの場合は条件がうまく噛み合ったと説明した。組織全体に占めるエンジニアの比率が高く、エンジニアのマネジメントが組織全体のマネジメントとかなり重なる。CTO自身も長くエンジニア組織を見てきており、組織系のバックグラウンドがある。こうした理由から、ハヤカワ氏は非常にきれいにはまったと見ている。ただし、このやり方がどの会社にも適用できるとは思わないとも付け加えた。それでも、IT系でAI推進に関わる人なら「結局、人事がAI化には大事だ」と多くが考えていたはずだという。思っていても実現しなかったことが実現した点で、ハヤカワ氏にとっては今年トップクラスに熱いニュースだという。

安野氏は、別の会社(字幕では「33」と表記されており、Sansanと思われる)でも人事にテック系の人が入る動きがあると指摘した。まだ特殊ではあるものの、同様の動きが複数で起きていることが構造的に面白いという。そのうえで、多くの視聴者は人事とAIを遠いものと感じているはずだとして、なぜ両者を結びつけることが大事なのかをハヤカワ氏に尋ねた。

会社員としてAIを使うメリットは「ほぼない」

ハヤカワ氏は約2年間、メルカリで社内のAI推進やDXに携わってきた。その経験から、評価制度や組織の回し方といった組織のつくりが、AI活用の阻害要因にも推進の要にもなると感じたという。

ハヤカワ氏の主張の核心は、従業員個人の単位で見ると、会社員としてAIを使うメリットはほぼないという点にある。個人のキャリアとしての恩恵はあり、ハヤカワ氏自身もゲームやロボットで恩恵を受けている。しかし会社員の立場では事情が違う。AIで効率が2倍になって作業時間が半分になっても、給与が倍になるわけではない。同じ給与のまま「では、もっと仕事をして」と仕事量が倍になれば、使わないほうが楽だったということになりかねない。AIで楽になると思って使い始めたら、むしろ「小忙しく」なったと感じている人も多いはずだ、とハヤカワ氏は述べる。考えることが増え、せわしない感じになるということだ。

だからこそ、AIを使って発揮した価値に応じて正当に評価されること、成果ベースで評価されることが必要になる。AIで全体の効率を上げていくことは経営視点の話であり、全員が使わざるを得ない状況をどう作るかも含めて、経営課題かつ組織課題だとハヤカワ氏は位置づける。AIをしっかり使ってパフォーマンスを上げたら、その分が評価され給料に反映される。そうした点まで含めて人事が制度を設計することが重要だという。

トークン費用という人事・経営の問題

ハヤカワ氏がもう一つの論点として挙げたのが、AIのコストが高いことだ。ハヤカワ氏は個人でNotionのカスタムエージェントを使っているが、デフォルトで付いてくる分を5日ほどで使い切ってしまったという。秘書業務などやりたいことをすべてNotionのカスタムエージェントに任せると、おそらく月2万円ほどかかるとハヤカワ氏は見積もる。

月2万円なら個人ならぎりぎり耐えられる。しかし社員が約2000人いる会社で全員が月2万円を使えば、月4000万円、年間では数億円になる。これまで人間のリソースを配分してきたところにAIのリソースをどう割り当てるか。人数によっては莫大な費用がかかるため、人件費や、人がAIでどうパフォーマンスを上げるかを含めた全体設計が重要になる。その意味で、人事とAIは切り離せないとハヤカワ氏は結論づけた。

安野氏はこれを「マジで大事な話」と受け止め、自身も最近、トークン費用、つまりAI費用をどのくらい予算に積むべきかという点をよく話していると述べた。人件費に対してAI費用をどの程度の比率で考えるべきか、それが一時的なトレンドで終わるのかどうかという問題意識である。

終盤:AI化とオンボーディング、働く側は何をすべきか

収録の終盤は字幕が断片的になっている。安野氏は、オンボーディングがうまい会社はおそらくAI化もうまいはずだという見方を示した。続いて話題は、企業側ではなく働く個人の側から見て、今何をやっておくべきか、具体的に何をすればよいかという問いに移りかけた。前編はそこで区切られており、人件費とAI費用の配分をどう考えるか、働く個人がどう備えるかという問いは、答えが示されないまま残されている。