92歳の田原総一朗が語る「金を受け取らない」理由と、言論の自由の現在

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概要

未来の日本を切り拓く人物に焦点を当てる対談番組「Players」で、文芸評論家の三宅香帆が92歳のジャーナリスト田原総一朗に話を聞いた。三宅が繰り返し尋ねたのは、田原がどうやって政治権力から距離を保ち、批判を恐れずに発言してきたのかという点である。田原の答えは一貫していた。政治家から金を受け取らない、権限を持たない、企業の広告にも出ない。そのうえで田原は、言論の自由はまだ獲得しきれておらず、これから獲得しなければならないものだと語った。

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人生で最もつらかった時期

三宅が最初に尋ねたのは、仕事をしてきた中で最もしんどかった時期だった。田原は「非難された時」だと答えた。当時の内閣との関係で批判を受け、「田中と同じじゃないか」と言われたという趣旨の発言があるが、字幕からはその経緯の詳細は読み取れない。

田原はこの話から、自分が絶対に妥協しない一点へ話を移した。それは「政治家から金を受け取らない」という大原則である。田原によれば、ジャーナリストの多くは実際には受け取っているという。三宅はこれを「大暴露ですね」と受け止めた。田原自身は、長い仕事の中でそうした金を一切受け取ってこなかったと話した。

政治家にならない、権限を持たない

三宅は、政治家にならないかという誘いはなかったのかと尋ねた。田原は、誘いはあったがならなかったと答えた。その理由として田原が挙げたのは、政治家として何かをしようとすれば結局自民党に入ることになり、それが嫌だという点である。

ジャーナリズムを続けてきて何が一番面白かったかという問いにも、田原は「僕は一切権限を持たない」ことを挙げた。権限を持ちたいと思ったことはないかと聞かれると、持ちたくないと即答した。田原の説明では、権限を持つことは汚れることであり、汚れたことはやりたくない。現在も自分には全く権限がないという。

批判を恐れる空気と「損得」

三宅は、今は集団から批判されることへの恐怖が多くの人にあるのではないかと問いかけ、田原のように振る舞うにはどうすればいいのかと尋ねた。これに対して田原は、自分はこの国を潰そうとしているわけではないと述べた。世界の中でこの国がもっとよくなるにはどうすればいいかを考えており、そのためには正論をきちんと根拠を示して言えばいい、という立場である。

では、皆がそうして正しいことを言う世の中になれば、日本はもっといい国になるのか。三宅のこの問いに、田原は「そうはならないと思う」と答えた。理由は、人は皆「損得」で動くからだという。損得は昔からあったのかと三宅が確かめると、田原は「損得だけは昔からある」と二度繰り返した。三宅は、損得で動くからこそ日本はなんだかんだ平和なのかもしれないと述べ、では損得で動かない国になればいいと思うかと重ねて尋ねたが、田原は「そんな国はあり得ない」と笑った。

そのうえで日本にどうなってほしいかと聞かれると、田原は、批判されるようなことをあえて言っても通用する国にしてほしいと答えた。皆が聞くというより、聞くべき人が聞いてくれればいい、という趣旨である。

「僕は92歳、金ゼロ円」

会話の途中、田原は「僕は92歳」と切り出し、今日は金を全く持っていない、「金0円」だと話した。三宅は、滋賀県出身なので近江商人の魂があるのではと冗談を向けたが、田原は、自分は滋賀出身で才能もなく、それでもなんとかやってきたと返した。三宅が「自分が持ってないってだけ」と受けたように、この場面は財産の話というより、その日の手持ちについての冗談めいたやり取りとして交わされている。

好奇心や「喧嘩を見たい」というエネルギーはどこから来るのかという質問には、田原は、喧嘩を見たいのは誰でも思っていることだと答えた。三宅は自分はむしろ喧嘩を見たくないと思ってしまうと応じている。

女性議員が少ない理由

三宅は、日本で女性議員がまだ少ない理由を尋ねた。田原の答えは「男女差別」だった。明らかにある、歴然とある、と田原は強調した。どこにそれが表れているかと問われると、例えば役員を選ぶ時にやはり男性を選ぶ、と具体例を挙げた。

三宅は、人数比だけが正義ではないとしつつ、国会議員と家庭の両立しにくさは男女共通の問題であり、男女ともに家庭に関われなければ少子化が進むばかりだと考えていると述べた。これに対し田原は、家庭をちゃんとしなければいけないと思っているのかと問い返し、女性は男性や世の中に対して気を使いすぎていると指摘した。もっと皆が気を使わずにものを言った方がいい、というのが田原の見方である。三宅に対しては「頑張ってください」と声をかけた。

役職につかず、女性を応援する

田原は、自民党から役職を持ちかけられても一切つかないと話した。権力を持たないようにしているのは、女性の応援のようなことをしたいからだという。三宅が、外部にいた方がやりやすいということかと確認すると、田原は、自分は現に何の役職にもついていないと答え、だからこそ動きやすいという理解を示した。田原は「女性議員を増やす会」という勉強会を開いていると話し、三宅は、同じ立場の女性同士が集まれる場があれば全く違うだろうと応じた。

これから挑戦したいことを尋ねられた際も、田原はまず女性議員の応援を挙げた。加えて、自民党の中で損をしていて、上におもねらないために役職につけない人間がいる、そういう人間を役職につけたい、とも語った。

YouTubeを始めたきっかけとテレビの変化

最近の田原はYouTubeで朝食を作る動画を出すなど、動画に力を入れている。三宅が新聞より動画の影響力が強まっている状況をどう見るかと聞くと、田原は動画は全部やっていると答えた。きっかけは、炎上によって番組が打ち切られた時に、周囲の人からそれではいけない、何かやりましょうと声をかけられたことだという。自分の動画があれば番組が打ち切られても大丈夫、という位置づけである。

テレビに今も出たいかと聞かれると、田原は「あんまないな」と答えたが、三宅に「今も出ていただいて」と返され笑いが起きた。昔と今のテレビの違いについては、今は昔よりも出したくない人間を出さない、と田原は述べた。三宅が、批判されないような人がテレビに出るようになっているということかと確認すると、田原はそれに同意した。

スポンサーを断り続けた理由

三宅は、テレビ局側が炎上を嫌い、コマーシャルが引き上げられるといったスポンサーの問題があることにも触れた。これに対し田原は、自分は企業のコマーシャルには出ないと答えた。オファーは複数来ていたが断ってきたという。理由として示されたのは、一つの企業から金をもらうと自由ではなくなるという考えである。三宅は、お金よりも自由を選んだということかと受け止め、田原は、他人を見ていてそう感じた面があるという趣旨の反応を示した。

「自主規制じゃない、奪われている」

終盤、三宅は今の日本や若い世代に残したい言葉は何かと尋ねた。田原の答えは「言論の自由」だった。田原は、今は言論の自由が危うく、若い人たちは年長者や地位のある人間に対して言うべきことを言えなくなっていると述べた。

三宅が、誰かに奪われるというより自主規制してしまう人が多いのではないかと言うと、田原はこれを否定した。奪われるから、やむを得ずやめているのだ、というのが田原の認識である。どういう時に奪われるのかと問われると「いっぱいある」と答え、これだけテレビ番組があるのに、そういう番組がない、と例を挙げた。

言論の自由を守るために一番大事なことは何かと聞かれると、田原は、言論の自由を封じ込めようとするものを蹴飛ばすことだと答えた。そうした圧力は企業にも政治にも、あらゆるところにある。三宅が、圧力に従ってしまう人もいると言うと、田原は「ほとんど従っている」と応じた。その中で自由を守るには、と問われた田原は、だから自分は頑張っているのだと述べ、書いたり話したりする言論人が担うべき役割を自分が実践しているという立場を示した。いろいろなものを受け取らないことが大事だと気づいたのは、最初の頃からだったという。

まだ獲得しきれていない自由

最後に三宅は、振り返ってみて自由だったと思うかと尋ねた。田原の答えは、今もなお言論の自由を獲得しなければいけないと思っている、というものだった。まだ獲得しきっていないのかという確認に、田原は「全然」と答えている。92歳の田原にとって、言論の自由は過去に手にした成果ではなく、これからも取りに行くべきものとして語られた。

対談の締めくくりに、休日は何をしているかと聞かれた田原は、たいてい本を読み、原稿を書いていると答えた。三宅は「休日じゃないですね」と笑い、自分も頑張ろうという気になったと述べて対談を終えた。