友利新がたどるディオールの南仏からグランヴィルまで:肌の老化指標「15」とグランヴィル ローズの研究現場

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概要

皮膚科医の友利新は、南フランスで開かれたディオールのスキンケア サイエンティフィック カンファレンスに参加し、その後ブランドゆかりの地であるラ コル ノワール、グランヴィルのローズガーデン、クリスチャン・ディオール美術館、パリのラ ギャラリー ディオールを巡った。動画のテーマは二つある。ディオールが発表した肌の老化研究の中身と、その研究の素材となるバラがクリスチャン・ディオールの生い立ちとどうつながっているかである。友利は旅の終わりに、ディオールのスキンケアを「自然の恵み」「科学」「伝統」の組み合わせとして受け止めたと語っている。

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ディオール スパでの新クリームの施術

旅の始まりは南仏のディオール スパだった。担当したのは、新たに発売されるプレステージのクリームの適切な塗り方を指導する立場にある、トップクラスのエステティシャンである。友利はすっぴんで施術を受けた。撮影は許可されなかったが、ディオール独自の機器でLEDの光を当てるなど、友利が「クリニックっぽい」と表現する工程も含まれていたという。

施術のあと友利は、強くこすったわけではないのにリフトアップした感覚があり、色々施したので顔が赤くなっているかと思ったら、メイクをしたような仕上がりになっていたと話した。使う製品がすべてディオールで、香りまで統一されている点も印象に残ったようだ。朝一番に景色と空気を楽しみながら施術を受けられたことを含め、友利は「空間がもうブリリアント」と冗談交じりに振り返っている。

老化の指標を「肌に特化」して15に

カンファレンスで友利が最も重視したのは、ハーバード大学医学部のヴァディム教授による発表である。友利の説明はこうだ。これまで広く知られてきた「老化の12の指標」は、体全体の老化を示すものだった。今回の発表は肌に特化した指標を見いだし、そこに3つを加えて、肌の老化を示す15の指標としてまとめた。

友利がこれを高く評価する理由は、老化がどのように起こるのかを定義したことにある。15のどの指標に対して、どのようなケアをすれば肌の老化を止められるのかが分かるようになった、と友利は述べる。この研究は海外の有名な医学雑誌で特集されたという。

発表では、遺伝子レベルを含めて若い人と老化した人の肌を解析し、新たな指標を設けたことが説明された。また、友利が新商品について事前に対談していたパトリシア先生は臨床データを示し、細胞が実際に若返ったことを確認したと報告した。友利は発表直後に「殴り書き」のメモしか取れておらず、後で整理すると話しつつ、もっと詳しく知りたいとして研究者へのインタビューを試みた。

「ディオール スキン ロンジェビティ コンパス™」についての質疑

シンポジウムの後、友利はディオールのビルジニーさんを捕まえ、英語でインタビューした。最初の質問は、新たに作られた「ディオール スキン ロンジェビティ コンパス™」とは何か、である。

ビルジニーさんの回答によれば、科学の世界では老化の特徴として12の指標が知られている。今回はそれを肌のレベルで捉え、肌の老化に関わるメカニズムの全体を扱ったのはこれが初めてだという。コンパスは、ディオールのリバース エイジングに関する諮問組織との共同研究、とくにハーバード大学医学部のヴァディム教授との協力によって構築された。研究では1万2000の遺伝子を解析し、あらゆるメカニズムとバイオマーカーを検討した。その結果、どのバイオマーカーを標的にすべきかが分かり、そこに向けた技術を開発してメカニズムを逆転させることを目指している、と説明した。

友利は続けて、自ら「意地悪かもしれない」と前置きしたうえで、15の指標すべてにアプローチしなければならないのか、一つでも欠けてはいけないのか、と尋ねた。ビルジニーさんは、老化のプロセスは複雑で多因子的だと答えた。老化に伴う機能低下は別々の時期に起こるのではなく同時に進むので、複数のメカニズムに同時に働きかけることが重要になる。一つに対処するだけでもよいが、複数に対処できればさらに効果的だという。そのうえで、新しい技術は15のうち10の指標に同時に働きかけ、それによって目に見える老化のサイン10項目を逆転させると述べた。生物学的な内側の働きに作用すれば、目に見える部分にも影響が出るという考え方である。

ビルジニーさんはさらに、ライフサイエンスだけでは十分ではなく、グランヴィル ローズこそが本当の魔法だとして、グランヴィルのローズガーデンを訪れるよう友利に勧めた。これを受けて、一行は北のグランヴィルへ向かうことになった。

ミス ディオールのバラ園とラ コル ノワール

グランヴィルへ向かう前に、友利はフレグランス用のバラを育てる畑を訪れた。ディオールはスキンケアだけでなくフレグランスにもバラを使っている。この畑のバラは、ミス ディオールの着想のもとになったと言われている。摘みたての花を嗅いだ友利は「そのまんまミス ディオール」だと驚いた。ただし、フレグランスに合うバラとスキンケアに合うバラはまったく違うと聞かされ、バラの奥深さに感動したと話す。ガイドによれば、朝一番のバラが最も香り豊かだという。

ここはムッシュ ディオールが住んでいた家のバラ園で、かつては5ヘクタールほどの敷地一面がバラとジャスミンの畑だったという。友利はこの場所で新しいミス ディオールの香りも試し、華やかさとほのかな甘さを感じたうえで、実際のバラを嗅いだ後だと香りへの思いがより深まると述べた。

続いて訪れたのは、ディオールが理想郷として作った邸宅ラ コル ノワールである。本来は内部を見学するだけの予定だったが、ミス ディオールのミューズであるナタリー・ポートマンにインタビューする機会を得た。撮影は許可されなかった。友利は日本を代表して話を聞いたものの、興奮してあまり覚えていないと笑う。一方で、16年以上ミューズを務めてきたナタリー・ポートマンのミス ディオールに関する知識の深さや、最後に日本の女性へ向けた特別な言葉が印象に残ったと語った。インタビューの詳細は、MAQUIAの記事を見るよう案内している。

5時間の車移動と真冬の寒さ

一行はニースからパリへ移動し、そこから車で5時間かけてグランヴィルを目指した。友利は車中で、グランヴィル ローズは過酷な環境に耐えてきたバラだからこそ多様な成分を含んでいる、という話に期待を寄せた。なんとなく「バラのエキス」だと思っている人には考え直してほしい、同じバラでもこれほど違うのだから、とも話している。現地では、摘んだばかりのバラをその場でエキスに変える工程も見られると聞いていた。部位によって抽出方法を熱や酵素などに変えているため、そうした話も聞けると楽しみにしていた。

車中で友利は、ディオールの気持ちにも思いを寄せた。友利自身、子どもの頃に住んだ家を今でも覚えており、夢に見るのはいつも以前の家だという。そこから、ディオールが幼少期の家に強い思い入れを持っていたことや、南仏のような明るい土地に行きたくなる気持ち、戦争のことを忘れて家族と庭園で過ごしたいと考えた気持ちがよく分かると語った。ゆかりの地ごとにフレグランスが生まれている理由も理解できるという。歴史を知るとブランドがより好きになるし、物語だけでなくサイエンスと結びつくところにスキンケアの素晴らしさがある、と友利はこの移動の意味を位置づけた。

ただし移動は楽ではなかった。北上するにつれて天候が荒れ、トイレ休憩で降りたパーキングエリアでは風が強く、ひどく寒かったという。ニースでは半袖で汗ばむほどだったのに、こちらは真冬のようだった。友利は「48年間生きてきて」1日でこれほどの寒暖差を感じたのは初めてだと話し、その場でベンチコートを購入した。宿に着いたのは23時47分で、到着時には真っ暗だった。

グランヴィル ローズの畑

翌朝、一行はホテルから車で1時間40分かけてローズガーデンに到着した。全行程では8〜9時間かかったと話している。前日までは雹や大雨に見舞われていたが、訪問時は晴れていた。現地の人によれば、晴れるのは珍しく「奇跡」だという。それでも気温は低く、風が非常に強かった。

グランヴィル ローズのエキスやペプチドは、この畑のバラから作られている。友利は実物を観察しながら、葉の一枚一枚が厚く、つぼみが大きく詰まっていること、茎がまるで木のようで、雹や風にも倒れないことを指摘した。強風の中でも満開の花が散っていない様子を見て、生命力の強さを感じたという。無農薬の自然栽培のため、虫に食べられた跡もあった。

グランヴィル ローズの由来についての説明もあった。もとは、ムッシュ ディオールが幼少期を過ごした家の近くの崖に自生していた野生のバラである。友利が見せたオリジナルの株はトゲが多く、「超絶ワイルド」な姿をしており、強風でボサボサになってもびくともしない。これを見れば、このバラに秘めた力があると考えた気持ちが分かる、と友利は言う。このバラを7世代にわたって交配し、畑で育てているグランヴィル ローズになったという。

「ローズペプチド3」の説明:表皮・基底膜・真皮

畑で友利は再びビルジニーさんに話を聞いた。友利によれば、これまでの製品では、ローズペプチドといえば抗炎症、つまり炎症を抑える作用が中心だった。今回は茎、花びら、実から取れるペプチドなどを組み合わせた「ローズペプチド3」が採用されている。友利はそれが肌にどんな効果をもたらすのかを尋ねた。

回答を友利が日本語でまとめた内容は次のとおりである。ローズペプチド3は、表皮、基底膜、真皮のそれぞれに作用する。表皮では水分量に関わり、フィラグリンが増える。基底膜ではKi67マーカーが指標になる。真皮では、1型、4型、7型の3種類のコラーゲンが増える。7型コラーゲンは基底膜の接着にも関係しているという。友利は、コラーゲンの数値として示された「814%」に「どういうこと」と驚いた。これについては、ネットワークが重要なので一つだけでなく複数を増やすことが大事であり、だからこそここまで増えるのだという説明を受けたと伝えている。

友利が特に驚いたのは、細胞学的には10歳若返るという説明だった。大人になると皮膚が薄くなってくるが、各層に働きかけることで厚みが戻り、ハリのある肌になるという。

友利は、こうした研究が成り立つのは、目の前に植物があり、その場で研究者が多様なペプチドを取り出して組み合わせ、肌への効果を常に検討しているからだと受け止めている。研究者と自然栽培の生産者が一体となってこの地にいることが大事で、化粧品とはまさにそういうものだと思う、遠かったが来てよかった、と語った。研究者たちは今回のローズペプチド3以外にも、グランヴィル ローズの成分や抽出方法を日々研究しているという。友利はそれを「植物と科学のミックス」による最先端の研究と表現し、あと2〜3日はここにいられそうだと話した。

クリスチャン・ディオール美術館:幼少期の家と幸運の星

ローズガーデンから車で40分の場所に、ムッシュ ディオールが幼少期を過ごした家がある。現在はクリスチャン・ディオール美術館になっており、訪れた日も見学者で賑わっていた。館内には幼い頃のディオールの写真や竹が置かれていた。友利は、ディオールが浮世絵など日本的なものから着想を得ることが多かったと紹介し、その影響かもしれないと話した。母親が好んで描かせたという浮世絵風の絵も、当時のまま残されている。

館内では、父親が化学肥料メーカーを営んでいたことも紹介されていた。現在の服のロゴより前に、父の会社のロゴとして「ディオール」の名が使われていたという。一家はその事業で財を成し、パリへ移った。友利が指輪として身につけているラッキースターや、ラッキーコンパスのモチーフも、この家にゆかりがあるという。家を購入した当時からあったもので、今ではシンボル的な存在になっているそうだ。

2階では、星のモチーフにまつわるエピソードが紹介された。ディオールはデザイナーとして働いていた頃、独立するかどうか迷っていた。自信がなく、本当は独立の話を断りに行くつもりだった。ところが道端で、車輪の一部である星形の金属につまずき、幸運の星を見つけたと考えた。きっと幸運が起こるに違いないと思い直し、断らずに独立を決めたという。友利は、これにつまずいていなければディオールは生まれていなかったかもしれない、と語る。ディオールで化粧品や香水を買うと星のモチーフが添えられるが、その原点はこの逸話にある。家の中にはモザイクなど星のエンブレムが至るところにあり、友利はディオールが幸運を呼ぶモチーフを好んだのだろうと見ている。アクセサリーやクリームの蓋など、今もブランドの象徴として使われるモチーフの原点に来られたことに感動したと話した。

家の裏には、母親が手がけたバラの庭が広がっている。その先は海で、断崖絶壁になっている。その崖に生えていたトゲの多い野生のバラが、グランヴィル ローズのもとになった。友利の説明によれば、この地はディオールにとって思い出の場所であり、後に南仏へ移ったときにもここを思い出してローズガーデンを作った。自分が最後に過ごすならと考えて、この家を再現したのがラ コル ノワールだという。友利はここを「原点」と呼んでいる。

パリ、モンテーニュ通り30番地で旅を締めくくる

一行はニース、カンヌ、グランヴィルを経てパリに戻り、ムッシュ ディオールがアトリエを構えたモンテーニュ通り30番地を訪れた。現在はラ ギャラリー ディオールとして、さまざまな作品が展示されている。

友利は最後に、ディオールはファッションブランドであると同時に、伝統と最先端の科学を組み合わせたブランドだと総括した。今回見たスキンケアは、バラという自然の恵みと科学を融合しながら、伝統に沿っている。その伝統と文化を肌で体験できたと語り、動画を締めくくった。

エンディングでは、撮影スタッフが友利の舞台裏を明かした。旅の間ずっと話し続け、バラ園を走り回るほどはしゃいでいた友利は、ある朝ベッドの3分の1ほどに小さく丸まって寝ていたという。友利によれば、部屋に人が来るのでベッドメイキングを崩さないよう縮こまって寝ていた、とのことである。