AIは数学の未解決問題を解いたのか:「エルデシュ問題」をめぐる報道の実態

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概要

「AIが数学者にも解けていない未解決問題を解いた」という話題が、2025年末ごろから繰り返し聞かれるようになった。安野貴博は、この動画でその中身を調べた結果を紹介している。安野は数学に詳しくないと断ったうえで、自身で調べた範囲の情報として、話題になっている事例には割り引いて受け取るべき点が多いと述べる。一方で、AIが数学研究を加速させていること自体は間違いないとも話している。

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話題になった2つの出来事

安野が取り上げる出来事は2つある。1つ目は2025年10月、OpenAIの幹部が「GPT-5でエルデシュ問題が解けた」と投稿した件だ。エルデシュ問題は数学の未解決問題とされるもので、数学者がまだ解けていない問題をAIが解いたという内容だったため、大きな反響を呼んだ。

2つ目は2026年1月で、X上で再び「AIがエルデシュ問題を解いた」という話題が同時多発的に広がった。安野も最初に見たときは「すごいじゃん」と思ったという。ただ、調べていくうちに注意が必要な情報だと分かったため、その注意点を共有したいというのが動画の趣旨である。

エルデシュ問題とは何か

安野によれば、まず押さえるべきなのは、有名な「エルデシュ=シュトラウス予想」と、いま話題の「エルデシュ問題」は別物だという点である。今回の話題で言うエルデシュ問題とは、エルデシュという数学者が作った約1100問の未解決問題の集まりを指す。そのうち約40%はすでに解決済みで、残る660問ほどが未解決だという。

注意点1:難易度が大きくばらついている

安野が重要な点として挙げるのが、問題ごとの難易度の差である。調べた情報によると、エルデシュ問題の中には非常に難しい問題もあれば、取り組めばそれほど難しくない問題もあり、その差は桁違いだという。数学が得意でない人から見ればどれも難しいのだろうと断りつつも、大半は難易度がとびぬけて高いわけではない問題だと安野は紹介する。

そして、今回「解けた」と言われているのは後者、つまり比較的易しい問題である可能性が高いという。したがって、エルデシュ問題が解けたと聞いても、それが業界で知られる難問だとは限らない。厄介なのは、難しい問題も含まれているため、専門家でなければどちらのタイプなのか見分けがつきにくいことだ。それでも、世の中で「解けた」と言われているものは易しい方が多いと言われているそうだ。

注意点2:投稿の削除と撤回

もう一つの注意点は、最初の話題の後日談である。OpenAI幹部は10問ほどのエルデシュ問題が解けたと投稿したが、調べてみると、AIはすでに解決済みの問題の解法を見つけてきただけだったことが分かった。この投稿は、他のAI研究者や、Google DeepMindのデミス・ハサビスから「恥ずかしいことだ」「これは違うのではないか」と批判を受け、撤回・削除されたという。

2026年1月の話題についても、中身を見ると同じように既存の解法を見つけ出しただけで、未解決問題を解決したとは言えないものがかなり含まれているそうだ。

部分的な進展はあり得るが、諸説ある

一方で安野は、最近出てきた事例の中には、完全な解法ではないものの、問題を部分的に進展させる発見もないわけではないとされている、と紹介する。つまり、AIが問題を部分的に進展させたり部分的に解決したりすることはあり得る、という評価である。

ただし、その場合も解かれている問題が非常に難しいものとは限らない。エルデシュ問題の難易度は大きくばらついているため、比較的簡単な問題が解かれている可能性もある。安野は、調べるうちにこうした事情が徐々に分かってきたと述べ、この点については諸説あると注意を促している。

安野の所感

安野は、部分的に進展させるだけでもすごいことだとしたうえで、「AIが数学の未解決問題を自律的にどんどん解決している」と言うのは、2026年1月時点では言いすぎではないか、と整理する。こうした話を聞くときには、割り引いて受け止め、実際はどうなのか、どれくらいの難易度の問題なのかを気にしながら見るとちょうどよい受け取り方になるだろう、と視聴者に勧めている。

そのうえで安野は、現在騒がれている事例は見た目ほど騒ぐ話ではないかもしれないとしつつ、AIが本当に数学の未解決問題を解けるようになる時期は意外と早いかもしれない、という見方を示す。加えて、数学者がGPT-5などをうまく使いながら自分の研究を加速させているのは事実であり、AIが数学研究を加速させていることは間違いないと述べる。過大評価でも過小評価でもなく、何が起きているのかを今後も注視したい、というのが安野の結論である。