岩手の村で育ったアメリカ人サイモンと語る、日米の教育の違いと「完璧を目指さない」英語学習

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概要

英語学習系クリエイターのHinaが、最近一緒に仕事をするようになったサイモンを迎えて、ドーナツとコーヒーを前に英語と日本語を混ぜながら話した回である。サイモンはアメリカ国籍で両親もアメリカ人だが、日本で生まれ、日本の公立学校で育った。Hinaは冒頭で、ここまで日本語が流暢なアメリカ人には初めて会ったと紹介している。英語と日本語の両方を使って育った立場から、日本の学校で英語を話せることがどう受け止められたか、日米の教育や働き方の違い、そして英語学習者は何を意識すべきかが語られる。二人が最後に強調したのは、完璧を目指すより、自信を持って実際に話しに行くことだった。

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出会いと初コラボ

二人が出会ったのは前年ごろ、英語クリエイターや英語業界の人が集まる飲み会だった。飲み放題の店に自分の酒を持ち込む人がいるような雑然とした会で、そのときはあまり話さなかったという。その後に気が合い、今では一緒に仕事をする関係になった。ただ、動画でのコラボはこれが初めてである。Hinaはサイモンの経歴が興味深いのにあまり語られていないと考え、今回じっくり聞くことにしたと説明している。

日本一人口の多い村に生まれたアメリカ人

サイモンの両親はともにアメリカ人で、サイモンが生まれる直前に来日した。30歳ごろに日本へ来て、岩手県の滝沢村で働いたという。サイモンによると、滝沢村は当時人口約5万人で、日本一人口の多い村だった。サイモンはそこで生まれ、インターナショナルスクールではなく普通の公立学校に通った。それも村の田舎の学校だったと本人は強調する。

家の中では英語、外では日本語という環境だった。Hinaは、家庭が英語なら5歳で初めて日本語に触れるような状態だったのではと尋ねた。サイモンは、家の周りに日本人の友達がいて日本語も話していたので問題はなかったと答えている。

「アメリカ人」と呼ばれ続けることへの抵抗

とはいえ、村の中でアメリカ人の子どもとして暮らすのは楽ではなかった。サイモンは外出するときいつもフードをかぶっていたという。人から見られ、判断されることが多かったからだ。いちばん嫌だったのは、常に「アメリカ人」「外国人」と呼ばれることだった。一度だけフランス人と言われたことがあり、それを今でも覚えているという。金髪で青い目という見た目から、周囲は普通なら「外国人」か「アメリカ人」と言うはずなのに、という笑い話である。目立つことが恥ずかしかったとサイモンは振り返り、Hinaは今なら普通にかっこいいと思うけど、と応じている。

いじめは特になく、友達にはとても恵まれていたとサイモンは言う。ただ、見られることはあった。学童保育の行事で他の学校と集まるドッジボール大会では必ず何か言われた。野球で右打者として打席に立つと、見た目から長打を打つと思われたのかレフトが大きく後ろに下がった。ところが結果は三振だった、というエピソードも紹介された。

英語の授業では「話せないふり」をした

Hinaが特に気になっていたのが、英語を話せるサイモンが日本の英語の授業をどう過ごしたかである。サイモンによると、周りが英語を話せない中で一人だけ話せるのがとても恥ずかしく、話せないふりをしていたという。教科書の「Hey Tom. How are you today?」も、わざと日本語式の発音で読んだ。ネイティブの発音で読むのが恥ずかしかったので、みんなの発音に合わせて溶け込んでいたと話している。

テストでも、高得点を取ると目立って恥ずかしいので、点数を調整して65点くらいに抑えていた。しかし100点近くを取っている同級生がいるのに気づき、なぜ自分だけ抑えているのかと思って本気を出すようになった。中学校の先生に教科書を発音して読むよう求められたときは、きちんときれいな発音で読んだという。

両親が日本を選んだ理由とニューヨークとの対比

両親が日本に来て30年、サイモンの見立てではもう40年ほどになる。Hinaは来日を1990年ごろと推測したが、サイモンはそれより前、80年代かもしれないと答えた。サイモン自身が住んでいた千葉も当時はかなりの田舎で、今ほどきれいではなかったという。

両親が日本を気に入った理由として、サイモンは清潔さを挙げる。40年前の日本でも、両親はきれいだと感じた。Hinaは秩序があるからだと応じ、人々が平均的に良いという点でも二人の意見が一致した。対照として挙がったのがニューヨークである。ごちゃごちゃしていて、良くも悪くも自己中心的だと二人は言う。悪く言えば自己中、良く言えば自分の欲望に忠実で、人のことを気にせず好きなことをする。Hinaは見習いたい部分もあると言いつつ、それを危うい人がやると銃撃やドラッグにつながってしまうとも付け加えた。

サイモン自身は、国籍はアメリカで親戚もアメリカに住んでいるが、住むなら日本だという。2年ほど前にアメリカへ行った際は、姉妹や甥がいる一方で、いろいろとクレイジーなことが起きていたとも話している。アメリカの良さとして二人は、他人を気にしない自由さや、人々の表向きのフレンドリーさを挙げた。ただし、深い関係は意外と作りにくい気もするとも述べている。

日本の働き方で合わなかったところ

逆に日本の嫌なところとして挙がったのは、秩序が守られすぎている面と、個人が稼ぐのが難しい点である。アメリカ人の多くは転職を重ねて年収を上げていく考え方を持っているが、日本では安定志向が強いと二人は話す。

サイモンは日本の建設会社にいた経験から、社員が会社に人生を捧げるような働き方をしていたと振り返る。Hinaは、それも秩序であり日本の美学だと認めたうえで、アメリカは会社への忠誠をあまり求めないと話す。この給料でやってくれるなら雇う、必要なければ切る、というドライな関係だからこそ縛られない。自分はそちらのほうが合っているとHinaは言う。

サイモンも同意し、日本でサラリーマンを5年やってそう感じたと語った。給料を上げてほしいと言ったり辞めると言ったりすると、否定的に受け止められる。日本は好きだが、その点は合わなかったという。

日本の英語教育は「テストのため」なのか

二人はともに英語を教える発信者で、サイモンはこの活動を5〜6年続けている。Hinaは、英語を話す家庭で育ちながら中学で英語の授業を受けたサイモンに、日本の英語教育について尋ねた。日本の英語教育はテストで高得点を取るための教育だ、というコメントがよく届くからだ。

サイモンは、話せればテストでも良い点が取れると答えている。話せる人は全部できてしまうのだから、もっと話すことに特化した教育をした方がいいという考えだ。

Hinaは、英語の授業の内容だけを変えるのは難しいと指摘する。日本では中間・期末テストの平均で1から5の評価がつき、それでしか判断できない仕組みになっている。Hina自身、評価は2や3のこともあったが、英語は良かったという。平等さを保つには、テストという誰にとっても同じ物差しを使うしかない。サイモンは、日本は人と違うことをあまり好まないと応じ、Hinaも、みんなと違うことより協調して平和を保つのが日本の感じだと認めた。だからこそ日本は平和だという面もあるとも付け加えている。

そのうえでHinaは、海外の小学校での経験を紹介した。一人ひとりが一つの国を調べてポスターを作る課題があり、形式は決まっていない。エッセイを書く人もいれば、絵を描く人も、飛び出す仕掛けを作る人も、プレゼンテーションをする人もいた。子どもの創造性が発揮できるようになっていて、それでもA、B、Cときちんと成績がつく。Hinaはそちらの方が好きだったという。

一発勝負の日本の入試、何度も受けられるSAT

話は大学受験にも及んだ。アメリカの大学入試では、SATのような共通テストに加えて、どんなボランティアに参加したか、学生時代にどんな活動をしてきたかも重視される。二人はこれを、個性やアイデンティティを見てくれる仕組みだと表現した。サイモンは、エッセイや先生の推薦状、ボランティアなどがあり、共通試験の比重は1〜2割ほどではないかと推測している。一方、日本の受験はセンター試験かその大学の試験を猛勉強して、それ一発で決まる。個性や思考力はあまり関係がないとサイモンは言う。

Hinaは、国公立でも私立でも一発勝負の試験が多い点も問題にした。その日の体調やコンディションによって結果が変わるので、運の要素もある。対してSATは数か月に一度受けられるので、良い結果を出せた回を使える。さらにHinaによると、SATには数学と英語のセクションがあり、2回以上受ければセクションごとに良い方のスコアを組み合わせられる。Hinaはそれを「チートじゃね?」と冗談めかしつつ、アメリカにはテストを一発で行う合理的な理由はないという緩さがあると話す。本質的に大事なのは人間が考え、何かを生み出す力であり、そうした教育スタイルをHinaは強く支持すると述べた。サイモンも、学問に寄りすぎると創造性が出せないと同意する。勉強したことはほとんど覚えておらず、身についたのは点数の取り方くらいだった、と自身の経験を語っている。

Hinaがグレた理由

サイモンは、Hinaが一時期「非行」に走ったと聞いたと切り出した。ここでサイモンが「非行」という単語を知らなかったというやり取りもある。Hinaによると、ガチガチに固められた日本の教育が息苦しかったことが理由の一部だった。昔から集団が少し苦手で、なじめなかったという。

部活は1週間ほどで辞めることが多く、野球だけはワンシーズン頑張った。多くの人は3年間やり切り、部活をやり切れないのはあまり良いイメージではない。それでもHinaにとっては、続ける合理的な理由がなく、時間の無駄にも思えた。みんなと同じなのが嫌だったとHinaが言うと、サイモンも、自分もみんなと同じ曲を聴くのが嫌だったと応じた。

Hinaは、その時々でいちばんワクワクする刺激的なものが好きだったと振り返る。当時はそれが少し悪いことで、かっこいいと感じていたので、目立って楽しんでいた。その後、大学受験で一度猛烈に勉強に集中して合格し、立ち直ったものの、また戻ってしまったという。詳しい話はサイモンのチャンネルのコラボ動画で、英語で話していると案内されている。

机の上より「現場に出る」

最後のテーマは英語学習者へのアドバイスである。テスト中心の日本の教育スタイルに対して、二人は現場に出ることを勧める。机の上だけで得られるものはほんの少しだという。実際にネイティブと話してみると、自分の発音が意外と通じなかったり、ネイティブの発音が聞き取れなかったりする。そうした経験は、その場に行って話さなければ得られない。だから頑張りすぎず、完璧でなくてもいいので、自分から外国人に話しかけられる人は強いという。

二人は、日本人には完璧主義の人が多いと見ている。もちろん語彙、文法、発音の基礎は必要だが、単語はまず1000語覚えれば十分で、3000語も覚える必要はないと英語で語られる。これは自分たちがいつも言っていることだという。もっと完璧な状態になってから海外に行きたい、話したいという気持ちも分かる。しかし二人はそれを先延ばしの言い訳と捉え、完璧になっても結局行かないのではないかと話す。一度でも突破すればそれだけ幅が広がり、「やった」と気分が良くなる。そして誰も見ていない、とも付け加えた。マンネリ化している人や次の一歩に進みたい人に対しても、次の行動として現場に出ようと呼びかけている。

申し訳なさそうに話すより、堂々と

会話の中では、LAに行ったときの体験も紹介された。LAのヒスパニック系の人たちは完璧な英語を話すわけではないが、自信があるように見え、完璧主義もない。それが日本人と他の英語学習者との最大の違いだという。聞き取れないならそっちのせいだ、というくらいの態度で話す人がいる一方、日本人は「ごめんなさい」と申し訳なさそうに話してしまう。二人は、自信を持った方が伝わるし印象も良いと話す。

サイモンは、外国人から見ると「すみません」という態度はかえって怪訝に思われるだろうと述べ、先月この趣旨の動画を出したと紹介した。間違ってもいいし、発音もアメリカ英語、イギリス英語、アジアの英語などさまざまある。正解はあるかもしれないが、自分の英語を自分の正解にすればいい。間違った英語ですらそれでいい、というのがサイモンの考えだ。Hinaも、「あなたネイティブなんだから私のジャパニーズイングリッシュを聞き取ってよ」くらいの態度でいいと応じる。堂々としていることはコミュニケーションの大事な表の部分であり、どれだけ知識があっても自信がなさそうでは本末転倒だとHinaは言う。

会話においては完璧を目指すより大体でいい、と二人は話す。サイモンは、みんなネイティブになろうとしているが、なろうとしなくていいのではないかと語る。今の自分が持っている力を自信を持って伝えれば伝わるし、昨日の自分よりレベルアップしていればいい、というのがサイモンの結論だった。動画は、今後も一緒に動画を撮るので聞きたい話があればコメントしてほしい、という呼びかけで締めくくられている。