異状死の9割が解剖されない日本:法医学者・岩瀬博太郎が語る死因究明の現場
PLAYERS公式千葉大学で法医学教室を率いる岩瀬博太郎さんに、東京大学医学部医学科5年生のベテランちさんが話を聞いた対談である。岩瀬さんは3年前まで東大で法医学の講義も担当しており、ベテランちさんはその授業を受けていたはずだという。二人は先輩と後輩の関係にあたる。対談の中心は、日本では警察が扱う死体のうち解剖されるのは約1割にとどまるという問題である。岩瀬さんは、その結果として殺人が見逃されていると考えている。出演を引き受けた理由について、岩瀬さんは、法医学を真面目に取り上げてもらえそうな依頼は基本的に断っていないと説明した。
法医学者の一日と仕事の範囲
岩瀬さんによれば、法医学の主な仕事は遺体を解剖し、各種の検査を行って死因を明らかにすることだ。それだけでなく、傷害事件の被害者や虐待を受けた子どもなど、生きている人の診察も行う。
解剖はほぼ毎日ある。午前8時半にまずCTを撮り、9時頃から解剖を始める。一件あたり2時間以上かかり、長いときは12時間に及ぶ。長引く理由は傷の多さで、チェックすべき箇所が増えるほど時間がかかる。解剖が終わると警察に仮報告をして、その日の解剖業務は終わる。解剖のない日は学部生や大学院生の指導にあたる。
報酬の仕組みは大学ごとに異なる。千葉大と東大では大学からの給料だけで仕事をしている。警察からは解剖ごとに謝礼金が出るが、これを個人で受け取ってよい大学なら「結構いい給料」になると岩瀬さんは話す。千葉大や東大が個人の受け取りを認めないのは、解剖が就業時間中の業務だからだという。
解剖の種類についても説明があった。事件の可能性を否定できないときに行うのが司法解剖で、実際には結果的に事件性がないものがほとんどだという。また、ここ10年ほどは比較的新しい「調査法解剖」が行われている。こちらは死因がわからない遺体であれば解剖できる制度で、事件性のあるものに限らず幅広い遺体を扱っている。
遅刻した実習が法医学への入口になった
岩瀬さんはもともと内科か皮膚科に進むつもりだった。考えが変わったのは、当時の東大が研究に偏りすぎていると感じたからだ。ある科の実習を回っていたとき、学生を指導していた教員に対し、教授が「なんでここにいるんだ、学生の相手なんかしないで研究しろ」という趣旨のことを言う場面を見た。それから臨床に不安を覚えるようになった。そこへ、のちに恩師となる当時の法医学教授から声がかかったという。
ただ、岩瀬さん自身は当時かなり不真面目な学生だったと振り返る。午後1時ごろに起き、授業にはほとんど出ず、夕方から卓球部の練習をして酒を飲んで寝る毎日だった。最初のきっかけは、その寝坊で法医学の実習に遅刻したことだった。その回の実習は早く終わる内容で、1時半にはほとんどの学生が帰り、5〜6人だけが残っていた。岩瀬さんは慌てて友人の記録を写させてもらった。そこで当時の法医学の先生に目をつけられ、おそらく皮肉だったのだろうが「頑張ってますね」と言われた。さらに「うちにはお酒がいっぱいあるから遊びに来なさい」と誘われ、教室に入り浸るようになったという。ベテランちさんは、今の大学は真面目になって実習にも絶対に遅れないよう言われる、と対比していた。
志望者はいても残らない理由
法医学に進む人が少ないと言われる点について、岩瀬さんは、まずポストがないことを挙げる。内科や外科なら病院に就職できるが、法医学は大学の基礎教室しか行き先がなく、定員が決まっている。そのうえ給料もさほど良くない。
ドラマの影響もあって、志望者は意外といるという。法医学ドラマは1〜2年おきに作られていて、岩瀬さんは『アンナチュラル』を面白かった作品に挙げた。ただ、志望していた学生も、在学中に臨床科の魅力に惹かれて離れていく。ドラマの登場人物のように部下を罵倒するようなことは実際にはしないそうで、最近の法医学は女性が多く、7〜8割を占めるという。こうした実情を知ってもらい、人が来てくれればという思いも出演の理由にあると岩瀬さんは語った。
警察にとっても人手不足は困るはずだが、国としては法医学の重要性があまり認識されていない、と岩瀬さんは見ている。国は問題が起きていないと認識しているのだろうが、実際には「起きているはず」だという。
解剖して初めてわかった死因
解剖をしていなければ誤った結論になっていた例として、岩瀬さんは二つを挙げた。一つは、自転車に乗っていて車と接触した翌日に自宅で亡くなった人のケースである。交通事故による死亡の可能性があるとして解剖したところ、覚醒剤のような乱用薬物が検出され、それが死因だった。事故として処理されていれば、車の運転者の責任が実際より重く問われていたかもしれない。もう一つは子どもの解剖で、普通は子どもが飲むはずのない精神科の薬が大量に検出された例である。
ただし、岩瀬さんは前提として、解剖に回すかどうかを判断するのは警察だと強調する。その判断を法医学者に任せればもっといろいろなものが見つかるはずだと考えている。警察が「念のため」程度で持ち込む遺体の中にさえ、こうした例が混じっているからだ。千葉大では年間400件前後を解剖している。解剖数を10倍にすれば、こうした事例も10倍見つかる可能性はあるか、とベテランちさんが問うと、岩瀬さんは「ありえるでしょうね」と答えた。埋もれている事例はそれなりにあるはずだが、表に出ないために日本は安全だとされ、国として必要性を感じていない、というのが岩瀬さんの見方である。
医者の世界の固定観念と「自己暗示」
話題は医師のキャリア観に移った。ベテランちさんは、特定の病院で研修してこの科に進むのが花形、といった内輪のキャリアプランが今も固定化していると感じている。知人の東大生は在学中に休学して起業し、成功した。ところがOB会で教授に事業の話をしたところ、「そんなことをしていたら根無し草になる」と説教されたという。
岩瀬さんは、医者は自分の科を愛さないとやっていけないほど辛い仕事だからではないか、と推測する。そして「医者は自己暗示の生き物」だと言う。解剖で人の体にメスを入れるときも、これは罪なことではないという暗示がある。相手が生きている人になる外科では、その行為が患者を救う大事な行為だという信念がなければ続けられない。だから外科医は外科行為を神聖なものと考えているのだろう、と岩瀬さんは話す。ベテランちさんは、医者の中には科の数だけ宗教のようなものがあると表現した。
岩瀬さん自身、法医学に進むときにはかなり「何をしているんだ」という目で見られた。最後まで皮膚科、内科、法医学の間で迷っていたころ、皮膚科の勧誘の場に顔を出した。そこで同級生が「こいつは法医学の大学院を受けている」と明かしてしまい、医局員たちが「なぜそんなところへ行くんだ」と大騒ぎになった。そのとき医局長が「そんなことを言うな、こういう人間が本当は必要なんだ」と周りを制した。これで法医学をやめられなくなった、と岩瀬さんは笑う。最近は起業する学生やAI研究に進む人も増えて多様になっており、面白いと思うとも付け加えた。
北欧は9割、日本は1割
本題の死因究明制度について、岩瀬さんは、日本の解剖率は他国と比べて低いと指摘する。北欧では警察が取り扱う死体、医学的にいう異状死の約90%を解剖するのに対し、日本は約10%だという。
解剖しない残りの9割は、遺体の外表を見たうえで、現場が荒れていない、怪しい人物がいないといった理由から、解剖不要とされる。しかし岩瀬さんは、外表だけで死因を判断するのは基本的に無理であり、判断しているのも慣れていない人たちなので「結構騙されていると思う」と言う。
その結果として岩瀬さんが挙げるのが、保険金目当てや遺産目当ての殺人が繰り返される事件だ。こうした事件は「大体10件目でバレる」。ベテランちさんが、解剖率が10%だからかと聞くと、岩瀬さんは「そうなんですよ」と応じた。ベテランちさんが木嶋佳苗の事件を例に出すと、岩瀬さんは、あの事件も10人ぐらいに手をかけていたと述べた。食事を喜ぶ男性に睡眠薬を混ぜて飲ませる手口だったという。
岩瀬さんによれば、最近は警察もこの点に気をつけていて、解剖をしない場合でも保険金の有無は必ず調べるようになった。ただ、目的が保険金でなかったらどうするのか、という問題は残る。
なぜ制度は変わらないのか
どうすれば解剖が増えるのか、という問いに、岩瀬さんは簡単な答えを示さなかった。遺族が国を訴える道を考えても、見逃された被害は見逃されたこと自体に気づかれない。遺族が「おかしいのではないか」と訴えることは実際によくある。しかしその時点で遺体はすでに火葬されていて証拠がなく、取り合ってもらえない。
ベテランちさんは、防衛医大や産業医大のように警察が法医学者養成の大学を作ってはどうかと提案した。岩瀬さんは、それには法医学者が反対するだろうと答えた。警察の内部に置けば客観性を保てなくなるからだ。警察は「こいつが犯人だ」と思い込むとそちらに引っ張られやすく、組織内では中立を守るのが難しいという。
警察から謝礼が出るなら大学は解剖を増やせば得をするのでは、という問いにも、岩瀬さんは否定的だった。大学はこの分野にあまり注目しておらず、法医学教室だけが潤っても他の部署との兼ね合いがある。そもそも病院はどこも赤字で、千葉大病院も東大病院も厳しい。病院に組み込んで大量に解剖したとしても、今度は警察が予算不足を理由に「やめてくれ」と言い出すだろう、と岩瀬さんは言う。ベテランちさんが、警察も国も死んだ人のことだからとなあなあになっている状態かと問うと、岩瀬さんは「そんな状況ですね」と認めた。
解剖の費用と「20年前は0円」
費用についても具体的な数字が出た。岩瀬さんによれば、人件費を含めて解剖だけで20〜30万円ほどかかり、各種検査まですべて行うと40〜50万円ほどになる。医師を一日拘束し、補助スタッフも必要になるためだ。現在は警察が負担しているが、20年前は0円でやっていた。
岩瀬さんは、これが日本の法医学が小さいままの原因だと考えている。警察が費用を払い始めるのが遅く、大学には解剖をやるメリットがなかった。そのため、他国では巨大な研究所が法医学を担っているのに、日本は大学の教室レベルにとどまっている、と岩瀬さんは説明する。
週刊文春に実名で訴えた経緯
岩瀬さんが千葉大に赴任した初日、最初に言われたのは、来年から国立大学が法人化されて文部科学省からの予算が削られるので、お金にならない司法解剖はやめてほしい、ということだった。岩瀬さんはこれに対し、法人化されるなら法人への業務依頼として警察から費用を取れるはずだと学部長に主張し、一緒に働きかけてほしいと頼んだ。学部長はこれを了承した。
二人は県警本部長などのもとを回って要望書を出したが、前例主義の役人たちには当然のように無視された。困っていたとき、ある役人が「国民が死因究明に関心がないから財務省は金を出さない」と口にした。それを聞いた岩瀬さんは、それなら世間に知らせてやろうと考え、週刊文春に実名で記事を書いてもらった。辞める覚悟でやったという。もともと内科や皮膚科をやりたかったので、辞めさせられたらそちらをやり直せばいい、という気持ちもあったと話す。当時は警察内で千葉大に解剖を持ち込むなという指示も出ていたらしいが、最終的には費用が支払われるようになった。
病院側から解剖を求めることもある
法医学者の側から解剖を求めることはあるのか、という質問に、岩瀬さんは子どもの死亡例を挙げた。小児科のある病院から、子どもが亡くなったが死因がわからない、なんとかならないか、と相談が来ることがあるという。岩瀬さんによれば、他国では子どもの異状死はほぼ100%解剖される。
日本では、初動を担う所轄の警察官が、解剖すれば仕事が増えるために面倒がって、解剖しない方向に傾くことがある。そういうときは警察本部の検視官に、解剖しないのかと問いかけることがあるという。ベテランちさんが、警察も大学もやる気がないように聞こえて暗い気持ちになったと言うと、岩瀬さんは、皆基本的には悪い人ではなく、どこも仕事量が多すぎるのだと補足した。
医者になるべきかという後輩の悩み
話がそれる形で、ベテランちさんは本当に医者になって大丈夫か不安だと打ち明けた。岩瀬さんは、医者にはいろいろな形があり、向いているところは必ずどこかにあると答えた。例として作家になった森鷗外を挙げ、手塚治虫の名前も出た。ベテランちさんは安部公房の例を持ち出した。成績が悪すぎたが、医者にならないなら卒業させると言われて卒業したらしい、という話である。岩瀬さんは、それでも単位は取らないといけないと返した。
死者と向き合う仕事のつらさ
亡くなった人を相手にする仕事はしんどくないか、という問いに、岩瀬さんは、つらい面とつらくない面の両方があると答えた。つらいのは、めった刺しで傷が多すぎて解剖が終わらないときや、腐敗が進んでウジが湧いている遺体を扱うときだ。一方で、臨床と違って自分の処置で人が死ぬリスクはない。自分が感染するリスクはあるが、という。
傷の扱いについては、一つひとつについて所見を正確に取り、長さを測り、形を記録し、いつごろの傷かを見ていく。だから傷が多いと大変な作業になる。多数の傷でカモフラージュして別の傷が本当の死因だった、というケースは「ほぼない」。それでも後から指摘されるおそれがあるため、しっかり確認しなければならない。
扱う死因には季節の傾向があり、夏は溺死が、冬は焼死が増えるという。ほかは交通事故が多く、殺人はまれで、日本の殺人では刺殺と絞殺が多い。首吊りや飛び降りといった自殺も運ばれてくる。そうした仕事を毎日続けていて落ち着いた人柄になったのかと聞かれ、岩瀬さんは、今も毎日酒を飲んでいると笑った。
解剖現場の「あるある」とドラマへの違和感
最後に「あるある」として、岩瀬さんは腐敗臭を挙げた。手袋を二重にしていても、外した後に手に匂いが残り、洗っても取れない。それがなぜか一晩寝て起きると消えているという。
法医学を扱うドラマや漫画で「これは違う」と思う描写はあるかと聞かれると、岩瀬さんは、お腹に溜まったガスで遺体が跳ねるという描写は「絶対ないと思う」と答えた。解剖の世界のあるあるについては、次回に続く形で対談は締めくくられた。
他の国に比べても解剖率が低いですよね。例えば北欧ですと、警察取り扱い死体って、いわゆる異状死と医学的には言いますけど、あれは90%ぐらい解剖するんですけど、日本は10%。
保険金目当ての殺人とか遺産目当ての殺人が繰り返されてたりするんですけど、10件目でバレるんですよね。それはやっぱり10%だからってことですよね。
ある役人が「国民が死因究明に関心がないから財務省は金出さないんだよね」って言うから、ああと思って、ばらしてやるかと思って、それでちょっと週刊文春とかに書いてもらったんですよ。実名で。
すごい気合いっすね。やめる覚悟でやってました。それほんますごいっすね。
いやいやいや。警察も、検察官もですね、誘導するようなことは無きにしも非ずですよね。過去どんなこと言われました?その警察に。
「俺の見立てでは絶対あいつがやってるから、先生、首絞めたことにしてくれよ」みたいなことは言われたことがありましたけどね。でもその時。
こんにちは。よろしくお願いします。お願いします。お願いします。
ということで初めまして。はい、どうもよろしくお願いします。ベテランちと言います。東京大学医学部医学科の5年生になります。あ、5年生なんですね。わかりました。
先輩ということで伺ったんですけど。そうですね。一応3年前まで、私、法医学の東大の講義も持ってたんで。あ、じゃあ多分授業受けてると思います。そうのはずですね。
僕今5年生なんですけど、えっと、4年生…で、5年生なので、多分受けました。すいません、ちょっと不真面目な学生であまり記憶が不確かなんですけども。ちゃんと単位は取れてるんですよね。はい。テスト受かったはずです。それは良かったです。
なぜ今回出演していただけたんでしょうか?いや、そうですね。基本的には真面目に法医学を取り上げていただけそうだったら、お断りはしていないっていうのもありますんで。はい、もちろん。医学を志す者として、今日は広めましょう。全世界に。大事だと。ありがたいです。それで受けさせてもらいました。お願いします。
ちなみに大学も東大医学部なんすか。そうです。じゃあもう完全な先輩ということで、今日はちょっと冗談封印で。いやいやいや、いくらでも。授業ということで。いやいやいや、でもないです。
岩瀬さんは法医学者として活動されているということなんですけども、今千葉大の法医学教室みたいな。そうですね。今千葉大の法医学でやっております。
どういうお仕事なんでしょうか?僕もなんとなくしかわかんないというか、解剖をして警察と協力してぐらいのイメージなんですけど、多分見てる人は本当全然知らないと思うので。
そうですね。メインとしては確かにご遺体の解剖をして、あるいはいろんな検査をして、死因をはっきりさせるっていうのがメインの仕事ですけども、他にも例えば生きてる人の診察もしますね。傷害事件とか、虐待を受けたお子さんの診察もしたりします。
1日のスケジュールで言うとどういう感じなんでしょうか?まあ、大体毎日解剖ですけども、午前8時半にまず解剖の前にCTを撮って、9時ぐらいから解剖をして、大体2時間以上解剖がかかって、長い場合は12時間とかかかって終わり。
それはもうわかんないぞっていう時ですか?いや、傷が多いとどうしても。あ、なるほど。チェックしなきゃいけない箇所が増えれば増えるほど。
そうですね。なるほど。まあそれが終わると警察に仮報告をして、一応解剖の仕事は終わりなんですけど、解剖しない日は、我々の場合は学生さんの指導とか大学院生の指導とかもしているということですね。
先生、今多分大学の教授という扱いだと思うんですけど、お給料としては大学の先生としてのお給料があって、解剖は解剖で別で給料が入るみたいなことなんですか?
これはですね、大学によって違うんですね。千葉大と東大の場合は、基本的には大学からの給料だけでやってますけど、警察から謝礼金みたいのが解剖をやると出るんですね。で、それを個人でもらっていいっていう大学だと、結構いい給料もらえる感じですね。
なるほど。そうっすよね。当たり前にその単価というかは発生してるけど、東大とか千葉大だと大学に結構持ってかれる。まあ、ていうかやっぱりね、就業時間中にやってるわけですから、よろしくないということでね。はい、そうですね。すいません、お金の話。なるほど。
それは、基本的には事件があって、警察の方からご連絡が来たものを解剖するという?まあ、それだけではないんですね。司法解剖ってのがありますけど、あれは事件の可能性が否定できない時にやるんで、実はほとんどは事件性が結果的にはないですね。
で、あとここ10年ぐらいやっている調査法解剖っていう比較的新しい解剖があるんですけど、そっちは死因が分からない死体であれば解剖ができちゃうので、結構幅広いご遺体を解剖してますね。事件性があるものだけではないですね。岩瀬さんが東大医学部を卒業される時、法医学者になろうと思ったのはどういう経緯でなんですか?
まあ、元々は内科か皮膚科になりたかったんですよね。だけども、学生やってる時の当時の東京大学がですね、ちょっと研究偏重すぎるところもあって。例えば、ある科の実習で回ってる時に、教員の先生が我々を指導してくれてるんですけど、教授が「お前なんでここにいるんだ、学生の相手なんかしないで研究しろ」みたいなことを言ってたのを見ちゃったりしてですね。確かにね。
それでちょっと臨床に対して若干不安を覚えるようになったところに、恩師になる当時の法医学の教授が私に目をつけて、声をかけていただいたっていうところがきっかけですね。君来ないかって。そうですね。そういうことですね。
どこが良かったんすかね。解剖しそうな感じが出てた?いや、私はかなりその時は不真面目だったんで。あ、本当ですか?毎日の日課がですね、大体午後1時ぐらいに目を覚まして、授業ほとんど出ませんでしたね。で、夕方から卓球部の部活やってたんで、部活の練習をして、酒飲んで、寝るというのを繰り返す日々でしたね。
じゃあちょっと言い方あれですけど、はぐれ者っぽいから、いわゆる真ん中の臨床行ってみたいなルートじゃない、法医学にちょっと引き込めそうだぞみたいなのもあったんですかね。
実は一番最初のきっかけっていうのは、法医学の実習に私がそれで遅刻してったわけですよ。お昼まで寝てるんで。で、その回の実習は意外と早く終わる実習で、もう1時半ぐらいにはみんないなくなってたんですよ。で、5、6人だけ残ってて、やばいと思って、友達のを写さしてもらってたら、当時の法医学の先生に目をつけられて、多分皮肉なんでしょうけど「頑張ってますね」とか言われて。それで「うちいっぱいお酒があるからお酒飲みに遊びに来なさい」って言われて、そこでちょっと入り浸るようになったのがきっかけで。
素敵っすね。僕誰にも言ってもらえてないですよ。寝坊して行ってますけど、「あ、そうですか」みたいな顔されて、「早よどっか行ってください」みたいな。最近なんかね、大学もだいぶ真面目になってますから。
先輩で大学病院のお医者さんに会うんすけど、「実習はもう余裕でしょ、何もしなくても取れるから適当にやってたらいいよ」みたいに言われるんすけど、いざ担当の人に話聞いたら「絶対に遅れないでください」とか。そうです。昔に比べると。そうなんすよ。ちょっとどうにかしてください。改革して緩めてください。もう離れてます。
なるほど。他の動画とか拝見したんですけど、法医学に進む人が少ないとか、待遇があまりよろしくないみたいに聞いたんですけど、それ本当なんですか?
そうですね。基本的にまずポストがないんですよね。内科・外科は大体病院に就職ができるじゃないですか。こちらは法医学教室っていう大学の基礎教室しかなくて。研究者みたいな扱いですもんね。そうです。定員が決まっちゃってる中で給料もさほど良くないっていうところで。意外と希望者はいるんですけど、ドラマの影響でですね。
見ましたよ。アンナチュラルとかね。でもやっぱり学生でいる間に他の臨床科の方の魅力にね、引かれてっちゃうんですよね。確かにそうか。
なんかドラマいっぱいやってますよね、法医学。大体1年か2年おきにはやってますね。そうなんや。おすすめありますか?法医学の。いや、アンナチュラル面白かったですね。いいですね。あれ面白いですね。これは良かったと思いますね。窪田かっこいいわっていう。窪田正孝と井浦新でもかっこいいですよね。
いや、あれは本当いいドラマでしたね。結構普段、井浦新みたいな感じでやって…いやいや、そんな感じではないですね。「バカ野郎」って。いやいやいや。そんなわけねえだろ。
いや、最近法医学は女性が多いんですよ。大体もう希望者の7、8割女性なんで。あんな態度取ったらもう大変なことに。でも結構ボロクソに言ったりするじゃないですか。「バカ」みたいな。それはやってない。やらないですね。
へえ。それでじゃあやっぱ普及していこうということでいらしてくださっているみたいな感じ。まあ、そうですね。意外と知られていない分野でもあるので、実情がですね。少しでもそれが分かっていただいて、人が来てくれればっていうのもありますね。
でも警察からしても困りますよね、人少なかったら。そうなんですけどね。すごいな。国としてあんまり、だからそういう重要性は認識されてないでしょうね。悲しいっす。そうですよね。
そうか。だって言ったら、調べられなければ調べられないほど闇に埋もれる犯罪みたいなのが出てくるみたいなことですよね。そうですね。そうなはずなんですけどもね。それでいいと思ってるんだ、国は。うーん。特に問題が起きてないという認識なんでしょうね。起きてるはずなんですけどね。
実際現場でお仕事されてて、これ解剖してなかったらやばいことになってたぞみたいなこと、やっぱあるわけですよね。ありますね、それは。言える範囲でどういうのがあるんですか?事故やと思ってたら事件やったとかあるわけですよね。
ただ、どうしても解剖に持ってくる判断が警察なので、おそらくそこの解剖するしないの判断を我々に任せれば、もっといろんなものが出てくると思うんですけど、今警察が念のためっていうレベルで持ってくる中でも、全然「ええ」みたいなのが混じるんですよね。例えばどういうのがあるんですか?
例えばですね、交通事故で、自転車でちょっと車に接触されちゃったみたいな事故にあった翌日にお家で亡くなった方がいて、事故かもなみたいな形で解剖されたんだけど、調べてみたら乱用薬物ですね、覚醒剤みたいのが出てきて、それで死んでたとかですね。そういうのがあったり。
じゃあ事故扱いだったら、ぶつけちゃった人の責任がめっちゃ過剰に重くなってたってことですね。そう。もしかしたらそうなんだけど、実はご自身で多分お飲みになられてたみたいなものだったりですね。あるいは、お子さんの解剖してみたら、普通子供が飲まない精神科の薬が大量に出てきちゃったとかですね。そういうこともありますね。はあ。へえ。
で、それが年どれぐらい見られるんですかね?何百とか見られる?千葉大だと年間400前後解剖しておりますので。で、1件あったってことは、10倍やったら10倍あったんじゃないかということにはなってしまう。ありえるでしょうね。はあ。怖い。まあ、そうですね。埋もれてるのはそれなりにあるはずですね。なるほど。
ただ表に出てないから日本は安全だということで、おそらく国として必要性を感じないという話になってると思いますね。
やりたがる人少ない…なんか結構お医者さんの世界って、なんかこう内輪でのいいキャリアプランみたいなのが結構固定化されている感じはするというか。
うん。あるかもしれないですね。この病院で研修して、この科に行って花形ですみたいなのが、僕ぐらいの世代でもまだ結構聞くというか。ああ、ていうかおそらくですけど、医者って行った科を愛さないとやれないんじゃないですか。結構辛い仕事なので。あ、そうっすか。やっぱなんとなく、この仕事大事なんだって思わないとやりきれないのかなと思ったりしますね。
確かに。知り合いで、東大の知り合いで在学中に休学して起業して、すごいサービスを作って、すごいお金稼いで成功してる人はいるんですけど、その人が大学のOB会みたいなので教授に会って「起業してこういうことやってるんです」って言ったら、「君ね、そんなことしてたら根無し草になっちゃうんだよ」っていう説教されたみたいな。そうですか。ちゃんと研修をして、やっぱ何かの医者になって専門医になりなさい、みたいなのがやっぱあるっていう。
やっぱりそういう固定観念は確かに持ちがちですよね。それは思いますね、私も。岩瀬先生の周りの人とかは、やっぱ臨床で教授とかになってみたいな人もいっぱいいらっしゃるんですか?そうですね。同級生で教授になったやつも何人かいるんですけど。今より多分もっとそういう出世レースみたいなのの価値が高いと思うんすけど、その時代って。法医学に行くっていうのは「何してるんだ」みたいな見方はされなかったですか?されましたね。かなりね。あ、そうなんだ。
実は最後まで皮膚科か内科か法医学かっていうところで悩んでまして。で、ある日、皮膚科の勧誘みたいのがあったんで、皮膚科も興味があったんで行ったんですね。そしたら同級生が「こいつ法医学の大学院受けてるんですよ」ってばらしちゃったんですね。そうしたら医局員がみんな「お前なんでそんなとこ行くんだ」って大騒ぎになっちゃって。
そうっすね。今より医局の力が多分強い時というか。そう。ただその時の医局長が立派な方で、みんなが「なんだなんだ」って言ってる時に「お前らそんなこと言うな。こういうやつが本当は必要なんだ」って言われちゃったのもあって、やめられなくなっちゃった。かっこいい。逆にね。確かに一肌脱いでくれたのに「やっぱり入局します」って言ったら「なんだお前」。そうそう、そうなんですよ。「金欲しいのか」みたいになっちゃうんで。あれも1つのきっかけでした。へえ。いや、なるほど。
いやいや、言われまくりですよ。今僕もYouTubeなんてやってたらもう。ちゃんとね、固定観念のない先生もたまにいらっしゃるのは事実で。あ、そういう人とじゃあ仲良く。まあでも本当最近は多様なので、我々の学生時代よりもね、起業される方も多いし。そうですね。増えては来てますけど。ですよね。研究面でもAIであったりとかね。そうですね。多いですね。いらっしゃるんで。いや、面白いと思いますね。そうっすね。私もそういう意味じゃね、皆さんから「なんでそんなとこ行くんだ」って言われたものですからね。
いや、外科の先生とかね、やっぱ外科最強みたいな顔をしてるか。まあ、でもやっぱりね、偉いんですけど実際。
いや、もしかしたら後で話題に入るのかもしれないですけど、医者って自己暗示の生き物なんで。我々も、解剖する時って、普通人の体にメスなんて入れられないじゃないですか。学生の時に解剖されたと思いますけど。はい。何やってるんだろうなと。あれでなんかこう、別にこれは罪なことではないみたいな暗示があるじゃないですか。そうですね。でもそれが外科だと生きてる人になってくるんで。レベルが上がりますよね。そうですね。そうすると、この行為はすごい大事な患者さんを救う行為なんだっていう信念がないと多分できないんで。ストレスとかプレッシャーが強すぎてね、やってられないっていう。おそらくそうなると、この神聖な外科行為っていう風に思ってやられてると思うし、強いと思いますね、その思いはね。
医者の中にもその科の数だけ宗教みたいなのが発生してる。まあ、そんな感じはありますよね。平気で精神科をディスる先生とかやっぱいらっしゃいますもんね。「なんだあれ、意味ねえよ」みたいに言う人。本当はそういうことしちゃいけないんですけどね。大事なんですけどね。そういう人もまあいるという。
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さっきも軽く触れたんですけど、日本の死因究明制度が、ちゃんとなってないみたいな、解剖に回ってこないみたいな話があったと思うんですけど、それやっぱどうにかした方がいいっすか?
いや、僕はそう思ってますけどね。やっぱり他の国に比べても解剖率が低いんですよね。例えば北欧ですと、警察取り扱い死体って、いわゆる異状死と医学的には言いますけど、あれは90%ぐらい解剖するんですけど、日本は10%ですんで。
異状死ってなった中で10%しかないと、残りはどうしてるんですか?いや、まあ死体の外表を見て、あと現場が荒れてないとか怪しいやつがいないっていうことで、解剖しないでいいでしょってなっちゃうんですね。
はあ。でも警察官わかんないですよね、そんな。結構騙されてると思いますけど。そうっすよね。なんか習ったんすよ。それこそ多分先生のテストで、何色になるとか、こういう跡がつくとかあるじゃないですか。それやってないじゃないですか、警察官は。はい。やっぱりそんな慣れてない人たちがやってますし、死体の外表では基本的には無理なんですよね。そうっすよね。普通に考えてだって薬もあれば。そうなんですよ。
だから大体今までもね、殺人事件というか、保険金目当ての殺人とか遺産目当ての殺人が繰り返されてたりするんですけど、10件目でバレるんですよね。それやっぱり10%だからってことですよね。そうなんですよ。だからちょっとまずいと思いますけどね。
保険金の人、同じ人がいろんな人の保険金狙いで、こう順番に…そうですね。手をかけていって、大体10件目ですね。でも確かにあの有名な事件で、木嶋さんでしたっけ?あれとかも5人目、6人目ぐらいまでなんか…いや、あれも10人ぐらい行ってますね。10人目。そうっすよね。しかも最後の人はもうやりすぎて感覚おかしくなってて、家に一緒に住んですぐ火事にしてやっつけたみたいな。ああ。なんか練炭だらけにしてすごいみたいな。
そう。あの人はでもね、ご飯で喜ぶ男の人にね、睡眠薬混ぜて飲ませちゃうっていうのがプロです。そうか。プロでしたね。いや、そうか。
ただ、やはり最近警察もそこは気をつけていて、解剖しなくてもいいから保険金は必ず調べるみたいにはなってる。なるほど。色々その辺はしてますけどね。だけども、じゃあ目当てが保険金じゃなきゃどうするんだとか、色々な問題はあるんですけどね。はあ。怖い。コナン君みたいになってきました。いやいやいや。だから解剖をもうちょっとやった方がいいですよね。
へえ。これでも、じゃ実際どうしたらするようになるんでしょうね。うーん。遺族が国を訴えるとかですか?でももう亡くなっちゃってたらもう無理っすもんね。分かってないからどうにもならないってのはあるんですよね。被害を感じていないっていうところがあるから。そうね。見過ごされちゃった人は見過ごされたということにも気づけないから。気づけないです。ああ、事故で亡くなっちゃったんだなと思って。
そうなんですよ。ただ時々、亡くなった方の家族、遺族がですね、おかしいんじゃないかっていうことはいっぱいあるんですけど、おかしいんじゃないかって言っても、もう遺体は火葬されちゃってるんで、証拠がないから騒いでも誰も気づいてもらえないんですよね。そうっすね。そこで文句言ってももうどうにもならないんで、後からはもう無理っていうことになるんだ。
あれどうっすか?防衛医とか産業医とかあるじゃないですか。自衛隊のお医者さんとか産業医とかが必要だから、それ用の教育機関があるじゃないですか。警察の組織として、なんか解剖の医学大学みたいの作って、そこにぶち込むっていうのはどうっすか?
いや、それは多分我々が反対しますね。それは逆に。やっぱり客観性が維持できなくなるっていうのが怖いので。自前で作っちゃうと、やっぱなんだかんだ警察はどうしても「こいつ絶対犯人」っていうと、もうそっちに行っちゃうんで。確かに。客観性の維持は難しいですよね。
なるほど。じゃどうしたらいいのかな。でも警察から大学にお礼は支払われるわけじゃないですか。はい。じゃ、大学としては基本やった方が、儲かるのは儲かるというか。うーん。でも大学もあんまりこの分野に注目はしてないとは思いますけどね。興味がないってことなんですかね。興味もないし、まあ、一部潤ってもっていうのもあるんじゃないですかね。ああ、法医学の研究室だけ潤っても他がちょっと気まずいというか。うん。それはあると思いますね。ましてや今病院は大体どこも赤字ですからね。そうっすね。えぐいらしいです、東大病院も。ですよね。千葉大病院もかなりやばいですね。
でもな、じゃあ病院に入れ込むのはダメなんすかね。病院に入れ込んで、めちゃくちゃ解剖して、めちゃくちゃ警察からお金入ってくれば。でも逆にあんまりやりすぎると、今度警察が「もう予算がないからやめてくれ」ってなっちゃうんで、やっぱそこは難しいですね。
じゃあ今、警察も余計なお金使うぐらいやったら真相が究明されない社会の方がまあいいでしょ、お金払いたくないもんねということで警察もサボっているし、そうですね。国もサボっているし、全員がもう死んだ人やからまあいいかということで、なあなあになっているという状態なんだ。そんな状況ですね。ちょっと僕が立ち上がります。これはさっさと卒業せよっていう感じですよね。あ、それは是非。
そもそもなんですけど、いくらかかるんですか?その検死というか。解剖はですね、人件費入れると大体解剖するだけで20〜30万は。まあそうですよね。1日お医者さん拘束するわけですから、その人件費。そう、そう。色々補助する人とかもいるんで。プラス各検査をしていくと、大体全部やったら40〜50万かかるみたいな値段がかかりますね。そうか。で、それは警察が出してるっていう形ですね。そうですね。今は警察が出してくれてますが、20年前は0円でやってたっていう。ガチっすか?そうです。だからこんなになっちゃったっていう。
なるほど。警察にお金を払い始めさせるタイミングが遅かったから、大学もやるメリットがないから。うん。そうなんです。めちゃちっちゃくなっちゃって、他の国はもう巨大な研究所が法医学やってるんですけど、日本はもう教室レベルっていう。そりゃそうっすよね。だって1銭も来えへんのに大学がボランティアでやってたんでしょ。そう、そうです。かわいそすぎません?
私が千葉大に赴任したその日に最初に言われたのは、「来年から国立大学が法人化されて文科省からの予算が削られるから、金にならない司法解剖はやめてください」。それがやっぱ最初のお言葉でした。
へえ。それも別に当たり前っすけど、もっと払ってもいいけど、どうやって警察が払うようになったんですか?まあ結構その時は千葉大が騒いだっていうのはあるんですよね。あ、大学が騒いでくれてというか。学部長にそう言われた時に、「来年から国立大学が法人化されれば、そのお金が取れるはずです」って言って。逆にね、法人なんだから、法人に何かを依頼してるんだから金払いなさいよと。そうなんです。それで「一緒に働きかけてください」って言ったら、学部長が分かったって言ってくれて。良かったですね。それで大騒ぎして、結構色々恨まれたりもしたんですけど。
え、なんで恨まれることがあるんですか?それは。いや、ちょっと手荒な真似もしたりしてね。え、いやいや、お薬…?ではないですよ。学部長と一緒に、例えば県警本部長とかに行って要望書を出したりするんですけど、お役人って前例主義だから、当然無視するわけですね。そうですね。で、これは困ったなって思った時に、ある役人が「国民が死因究明に関心がないから財務省は金出さないんだよね」って言うから、ああと思って、ばらしてやるかと思って。それでちょっと週刊文春とかに書いてもらったんですよ。
なので。それ言っていい話?いや、もう実際記事になってますから。あ、それはもう岩瀬さんの名前も出して。出して、実名で。すごい気合いっすね。まあ、やめる覚悟でやってました。それほんますごいっすね。いやいやいや。そんなことやってましたんで。
だって大学の人って結構そこきついじゃないですか?上から締めつけられて、やめさせられたらとかあるじゃないですか。まあね、元々内科、皮膚科やりたかったしみたいな。あ、じゃあもうそれでやめさせられたら、また皮膚科でもやるか。やり直しもいいかなみたいな気もありましたけどね。ああ。いや、すごいっすね。
そこもね、僕が実習してる立場で言うのもあれですけど、入ってくる話を聞いてるだけでも、先輩とかのお話聞いてるだけでも、官僚主義というか、それこそ東大病院とかもやっぱ昔から続いてる組織でとか。そうですね。いや、そっか。今話題ですけど、東大病院は。まあお恥ずかしい話はいっぱいありますね。
すごい僕今口封じられてて。あ、そうなんですか。あんまり東大病院で起こったこととか喋るなよみたいな、言われてはないっすけどオーラが。オーラがね。あんま余計なこと喋らんといてなみたいな。それ、そちらさんの責任でしょうとか思いながら。まあみんな卒業生は本当に恥ずかしいと思ってますけど、本当に。そうですよね、本当にね。ですよね。人の金でねって話ですよね。そうっすよね。自分で行くよね。自分で行くなら、女の子好きなのは勝手なんですけどね。そうですよね。全くそう思います。あ、本当ですか?嬉しい。先生、ありがとうございます。よかった。東大の先生にもこういう考えの方はいらっしゃるんです。いやいやいや、多分みんな思ってる。みんなそうですよね。それはね、一部のやばい人がやばいっていう。あ、そっか。良かった。
で、週刊文春に訴えて、お金が降りるようになって。そうですね。結構あの時はもう色々、警察からも「千葉大に解剖持ってくな」とか指示も出てたらしいんですけども、まあ、なんとかなったんですね。まあ必要っすもんね、結局は。そうですね。
なんか回ってくるやつを警察が決めてるっていう話もおっしゃってたと思うんですけど、「これ回してよ」みたいなのもあるんですか?岩瀬さんの方から。いや、それは、でも無きにしも非ずですかね。お子さんが亡くなった時に、時々小児科の病院の方からですね、「ちょっと子供が亡くなって死因わかんなくって、なんとかならん?」みたいな時は。他の国だと大体、そういうお子さんが異状死になった場合っていうのは100%解剖する。そりゃないと。子供がね、最近も事件ありましたしね。そう、そうなんですよ。
だからそれで、意外と所轄の方って、意外とめんどくさがって解剖やらない方向に行きかねないんですけど。まあ警察官からしたら確かにね。善悪は置いといて、やったらやっただけ仕事は増えちゃう。増えちゃうからですけどね。で、そこを本部の検視係の人に「やらないんですか」っていうことはありますね。やった方がいいんじゃないですかみたいな。病院の志ある方が「これちょっとやばいかも」っていうので言ってくださると。そうですね。そういうことはたまにありますね。
ああ、すごい。なんか暗い気持ちになってきました。あ、そうですか。なんか警察官もやる気ないし、大学もやる気ないし。まあでもみんな基本的には悪い人じゃないんだけどね。はい。もちろん。すいません。普段お仕事されてます。ただやっぱりね、仕事量が多すぎるというのは感じますよね。どこも、県警も。うん。それはそうですね。みんな言ってますもんね。いや、お医者さんとかもうみんなそうですね。みんな大変ですよね。
ちょっとそれちゃうんすけど、これほんまに医者になって大丈夫かなってめっちゃ思うんすけど。
ああ。いや、でも医学部っていうか、いろんな医者いますんで、なんか向いてるのは必ずどっかにありますよ。例えばね、森鴎外とかは作家になりましたからね。そうっすね。東大出てますけどね。いや、そっち行こうかなと思ってたけど恐ろしいんで。手塚治虫さんだって阪大ですしね。ね、ああいう方も。なんか安部公房、安部公房そうですね。もう東大医学部じゃないですか?卒業する時に成績悪すぎて、「医者にならないんだったら卒業させてあげます」って言われて卒業したらしくて。今、土下座してそれで卒業させてもらおうかなと思ってて。はい。まあでも単位取んないとダメですね。実習がね、本当恐ろしいですね。
さっきもちょっとあったと思うんですけど、基本的にいわゆる普通の臨床をやっておられるお医者さんって、生きてる方を相手にされて治していくみたいなことだと思うんですけど、基本的には亡くなった方を相手にされてるわけじゃないですか。それやっぱしんどいですか?
うーん。しんどい部分としんどくない部分は両方ありますよね。しんどいのは、例えば本当めった刺しみたいな、傷の数が多いと、解剖が終わらないみたいな時とか、あとは腐敗してて、ウジ虫がいっぱいとかいうのは、うーって思いますけど。ただね、臨床と違ってもう人が死ぬリスクはないんで。自分が感染するリスクはありますけどね。もう死んでますからね、言ったら。そうなんですよね。そこはだからだいぶ違うかな。両方あると思いますね。辛い面、辛くない面っていうのはね。
授業で、それこそ教えていただいたはずなんですけど、傷によってどういう傷か分けられるみたいなのあるじゃないですか。裂創とか。そういうのを全部の傷に、いつぐらいの傷だねみたいに調べていくってことですか?その通りですね。はあ。あと一応所見は正確にとって、長さも測って、あと傷の形とかも所見として取るんで、1つずつやるからすごいことになっちゃうんですよね。そっか。そうですよね。その中に1個でもなんか別の傷があったら、別の傷で本当はやってたのに、カモフラージュでいろんな傷をつけてみたいなパターンもないことないわけです。まあほぼないけど、でも後で言われたらっていうのはあるんでね。しっかりやらないといけないですね。
それ何パターンぐらいあるんですか?刺されてるパターンもあれば、燃えてるパターンもあれば、溺れてるパターンもあると思うんですけど。まあ多種多様ですけどね。まあまあ、夏場は溺死が増えて、コナン君みたいなやつ。で、冬場は焼死が増えるっていう傾向はあるんですけど。それは普通に火事が多かったり。そうそうなんです。だからそこはあるんですけど、あとは大体交通事故とか、まれに殺され…首絞められた、刺された。日本だと殺人としては刺された、首絞められたが多いですね。
あと時々自殺で首吊ったとか、飛び降りたとか、そういうのも来るっていう感じですね。そういうの毎日見てると、この落ち着きになるんですか?いやいやいや。
若い頃毎日酒を飲んでたとは思えない。今でも毎日酒は飲んでますけど。それはやめられない。あ、そうなんか。そっか。
検視してて、よくあるあるみたいなのあるんですか?これあるなとか。腐敗の匂いっていうのはなかなかきつくてですね。手袋二重にしてるんですけど、終わった後取っても匂うんですよね。で、洗っても匂うんです。でもなぜか一晩寝て起きると消えるっていう。あるあるやな。めっちゃあるあるっすね。
解剖とか法医学を扱うドラマとか漫画とかいっぱいあると思うんですけど、これ違うだろうと思うこともやっぱありますか?まあ、ありますね。お腹に溜まったガスで体が跳ねると。それは絶対ないと思う。
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