若い線維芽細胞は増やせるのか:友利新さんが解説する、コーセーの同一人物追跡研究と黒麹発酵液

YouTubeで開く ↗
概要

皮膚科医の友利新さんが、学会発表を聞いて「本当にすごい」と感じたという老化研究と、そこから開発された成分を紹介する動画である(コスメデコルテ提供)。友利さんが繰り返し強調するキーワードは「細胞の増殖性」だ。美容皮膚科医として、日々のエイジングケアにも美容医療との併用にも関わる重要な概念だと位置づけている。

7分で読めます

同一人物の皮膚を36歳から72歳まで追った研究

友利さんが最初に紹介するのは、2023年にコーセー(KOSÉ)が発表した論文である。同一人物の健康な男性から36歳から72歳まで皮膚を採取し続け、老化がどう進むのか、細胞がどのような運命をたどって老化するのかを調べた研究だという。

友利さんがこの研究を貴重だとする理由は、比較の方法にある。通常の老化研究では別々の人の細胞を比べるため、どうしても個人差が入り込む。この研究は同じ人の細胞が年齢によってどう変わるかを純粋に追いかけている、というのが友利さんの説明だ。動画の終盤では、この追跡調査を「35年という気の遠くなるような」期間と表現している。

解析にはシングルセル解析が使われた。細胞一つひとつの個性を遺伝子レベルで明らかにする技術だと友利さんは説明する。線維芽細胞にもさまざまな個性があることが最近わかってきており、人間と同じように、細胞がどんな個性を持っているかを知ることが大事なのだという。

4タイプの線維芽細胞と、年齢による割合の変化

研究の結果、肌のハリを生み出す線維芽細胞は大きく4つのタイプに分けられることがわかったと友利さんは紹介する。

  1. 増殖性に特化した若い細胞
  2. 老化細胞
  3. 中間的な性質を持つ細胞
  4. 老化の状態にない細胞

友利さんが注目点として挙げるのは、年齢によってこの割合が変わることだ。36歳時点と72歳時点を比べると、中間的な性質を持つ細胞と老化状態にない細胞はほぼ変化していなかった。一方で、増殖性に特化した若い細胞は3分の1に減り、老化細胞は約2倍以上に増えていた。友利さんはこれを、細胞レベルで明確に示された結果として紹介している。

老化には「分岐点」がある

友利さんがさらに驚いた点として挙げるのが、細胞の運命に関する知見である。普通に考えれば、若い細胞はどんどん老化細胞になっていくと思える。しかし研究では、老化する道と老化しない道があり、そこに分岐点があることがわかったという。老化細胞になる道を選ばず、老化しにくくなる細胞の存在が明らかにされた、というのが友利さんの説明だ。

そのうえで研究は、増殖性の高い若い細胞が減ることと、老化細胞が増えること自体がエイジングを進めるものだと定義した、と友利さんは述べる。

友利さんが注目したのは「若い細胞を増やす」側

この話を聞くと、老化細胞にさせない仕組みが見つかったのだから、老化細胞を減らす方向に注目しがちだと友利さんは言う。しかし美容皮膚科医としての友利さんは、むしろ増殖性に特化した細胞を増やすという方向に「ワクワク感」を覚えたという。エイジングケアでは、この細胞を増やすことが非常に大事だと考えているからだ。

増殖性が高いと聞けば、元気で若々しい細胞が増えるというイメージは持ちやすい。だが友利さんによれば、それだけではない。研究によって、増殖性の高い細胞は細胞同士の結合が強いことがわかっているという。そして線維芽細胞は、細胞同士が結合することで初めてコラーゲンを作る。つまり増殖性が高まれば細胞同士がしっかり「手をつなげる」ようになり、結果としてコラーゲンが作られやすくなる、というのが友利さんの説明である。そうなればシワやたるみといったエイジングサインが出にくくなるため、そのケアには増殖性に特化した細胞を増やすことが大事だと友利さんは結論づけている。

美容医療の効果を支える「土台」としての増殖性

友利さんがもう一つ注目するのが、美容医療との関係だ。友利さんはレーザー治療を、熱を加えることで肌にムチを打って筋トレさせるようなもの、とたとえる。そのとき細胞の増殖性が高くなければ、いくら高価なレーザーを当てても細胞が反応せず、十分な効果が出ないという。

だからこそ日々のスキンケアで細胞の増殖性を高め、細胞が常に元気で手をつなげる状態の土台を作っておくことが、美容医療との相乗効果を高めるうえでも重要になる、と友利さんは話す。

玄米を丸ごと発酵させるための壁

では、年齢とともに減った細胞の増殖性をどう高めるか。その答えとして友利さんが紹介するのが、コスメデコルテが独自に開発した日本古来の黒麹発酵液である。友利さんによれば、開発にはかなりの苦労があったようだ。

一つ目の課題は、発酵させるお米だった。お米の中でビタミンやミネラル、脂質を最も多く含むのは米ぬかの部分であるため、コスメデコルテは米ぬかを取り除いていない玄米を丸ごと発酵させたいと考えたという。

しかし、通常の玄米はそのままでは発酵できないらしい、と友利さんは説明する。麹菌を繁殖させるには、お米に水分をしっかり吸い込ませることが大事になる。ところが玄米表面の米ぬかは脂質を多く含むため水を弾き、十分に水分を含むことができない。そのため、これまでは栄養がたくさん入ったぬかを削り落とさなければならなかったという。だがそれではパワフルな発酵液は生まれない。

そこで玄米のまま麹菌で発酵させる方法を考え、選ばれたのが秋田県の「泡雪小町」という玄米だった。友利さんによれば、このお米はもともと玄米のままでもおいしく食べられるように開発された品種である。玄米はそのまま食べるとパサパサしたり、炊くときに水加減を変えたりする必要があるが、おいしく普通に炊けることをコンセプトに開発されているため、スポンジのように水をしっかり吸収できる。友利さん自身もご飯として食べてみたところ、玄米とは思えないほどもちもちしてふっくらしており、とてもおいしかったという。この吸水性のおかげで、玄米ならではの栄養を捨てることなく、発酵の力で丸ごと活用できるようになったと友利さんは説明する。

約300種類から選ばれた黒麹菌

二つ目の課題は麹菌である。約300種類の菌の中から選ばれたのが、ACTD1597という特殊な黒麹菌だという。友利さんは、黒麹菌は天然保湿因子を作るうえで大切なものの一つだと説明する。

さらにこの黒麹菌は、タンパク質を効率的に分解するペプチダーゼという酵素をしっかり出す。その結果、肌にやさしいアミノ酸やペプチドが多く作り出される。友利さんによれば、発酵液には470種類以上の美容成分が含まれており、表皮の細胞の増殖性を高める、ヒアルロン酸の産生を促す、肌をなめらかにするといった作用もわかっているという。

香りとべたつきという発酵液の難しさ

発酵液は、ほかではなかなか作れない多種多様な成分を含む魅力的な成分である一方、独特の香りやべたつく感触があり、扱いが難しい成分でもあると友利さんは指摘する。それでもコスメデコルテは、発酵液を高濃度で配合することを前提に黒麹発酵液を開発したという。

そのためには多くの検討と品質管理が必要だったらしい。原料である泡雪小町の品質管理を徹底し、発酵方法も何度も試行錯誤を重ねた結果、特有の香りやべたつきのない発酵液を作り出せた、と友利さんは紹介している。

友利さんの結論

友利さんは、栄養豊富な玄米と特別な黒麹菌を掛け合わせて生まれた黒麹発酵液を、老齢の線維芽細胞に与えることがエイジングケアにとって大切だと述べる。「なんとなく肌に良さそう」ではなく、明確なデータに基づいた本格的なエイジングケア成分として覚えておいてほしい、というのが友利さんの呼びかけだ。

締めくくりに友利さんは、長期にわたる同一人物の追跡調査とシングルセル解析を組み合わせて細胞の運命や増殖性の大切さを見いだし、美容医療の土台作りにもなるかもしれない成分が、日本の発酵の力をヒントに生まれたことを「本当に素晴らしい」と評価した。日本の化粧品会社がさまざまな研究を重ねていることに、友利さん自身も感動したと語っている。