ChatGPTに広告が始まった:狙いと反発、Anthropicの皮肉CM

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概要

ChatGPTで広告のテストが始まった。かつて「広告は最後の手段」と語っていたOpenAIが、なぜ広告を導入したのか。安野貴博氏はこの動画で、広告の見た目と仕組み、導入の背景にある経営状況、ユーザーやメディア企業の反応、Anthropicによる皮肉なCMを順に紹介している。そのうえで、広告モデルの採用は自然な流れであり、将来は当たり前になる可能性があるという見方を示す。

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ChatGPT広告の見た目と仕組み

安野氏によると、ChatGPTは2026年2月9日から広告のテストを始めた。対象はアメリカのユーザーだけで、日本からは見られない。広告が表示されるのは無料プランと、月8ドルのGoプランの利用者に限られる。月20ドルのPlusプランや月200ドルのProプランには広告は出ない。

画面では、AIの返答の下に店名とアイコンが並び、「Sponsored」という表示とともに商品がいくつか示される。その下には「Chat with」ボタンがあり、広告とそのまま会話を続けられる。広告の中身はユーザーの質問に連動する。料理について聞けば食材や食品、レストランの広告が出る。「京都に旅行に行きたい」と相談すれば、京都のホテルが提案される。

広告はAIが生成する文章の中に織り込まれてはいない。「ここから先は広告」と分かる形で領域が区切られている。安野氏は、検索キーワードに応じたスポンサー枠が検索結果の上に出るGoogleの検索広告によく似ていると述べる。一方で、広告と直接会話して追加の情報をやり取りできる「Chat with」ボタンは、検索広告にはないAIチャットならではの機能で面白いと評価している。

OpenAIは、広告の有無によってChatGPTの返答文が影響を受けることはないと明言している。安野氏はこの点については安心してよいと考えている。また、18歳未満のユーザーには広告を表示しない。健康、メンタルヘルス、政治といったセンシティブな話題の近くにも広告は出さないという。

「最後の手段」だった広告を、なぜ導入したのか

安野氏が注目するのは、OpenAIのサム・アルトマン氏が約2年前に「広告は最後の手段だ」と語っていたことだ。当時アルトマン氏は、AIとのチャットに広告が入り込むのはかなりまずく、あまり自然ではない感じがするという趣旨の発言をしていた。それから2年で、OpenAIは実際に広告を始めた。

安野氏はその理由として、経営状況が大きく影響しているとみる。内部資料によると、OpenAIは2026年だけで約2兆円の赤字を見込んでいるという。一方でユーザーの95%は無料会員で、ほとんどの人がお金を払わずに使っている。巨大なユーザー基盤がありながら、そこから直接収益を得る方法をまだ持っていない。そこで広告というマネタイズ手段が浮上したのだろう、というのが安野氏の見立てである。

強気の価格設定と市場予測

報じられている数字も紹介された。ChatGPT広告のCPM(1,000回表示あたりのコスト。Mは「ミル」の略で1,000を意味する)は約60ドルで、1回の表示あたり0.06ドルになる。これはMeta社の広告の約3倍で、Metaで3回表示されるのとChatGPTで1回表示されるのが同じ金額だという。最低出稿額は20万ドル(約3,000万円)とされ、安野氏はこれを「結構強気な価格設定」だと評している。

ChatGPTの広告がどれほど人の心に刺さるのかは、まだ分からない。安野氏は、それを確かめるためにテストを始めたのだろうと推測する。業界アナリストの予測では、ChatGPT広告の市場規模は2030年までの約4年で250億ドル程度に達するとされる。安野氏は、その規模になればGoogleやMetaと広告市場で直接競う存在になるとみている。

ユーザーの反応:「うざい」とプライバシーへの懸念

ネット上で安野氏が見た限り、ユーザーの反応でまず目立つのはシンプルに「うざい」というものだ。安野氏はこれを仕方ないと受け止めている。Googleの検索広告も当初は同じように思われていたが、今ではスポンサー表示を見ても多くの人はそれほど不快に感じず、見慣れてしまった。そのため、最初の反応はかなりネガティブでも、将来的には自然なものとして受け入れられる可能性があると安野氏は考えている。

もう一つ多かったのが、プライバシーをめぐる批判だ。信頼できる相手だと思って相談していたのに、その履歴と連動した広告が出るのは嫌だ、という声である。安野氏もこれはもっともだと認める。OpenAIのブログでは、会話のプライバシーは守られ、会話内容が広告主にそのまま共有されることはないと説明されている。ただし安野氏は、会話ログをもとにどの広告を表示するかが選ばれる可能性はあると読む。例として挙げたのは、「オレンジジュースが嫌い」と話した記録のあるユーザーに、代わりにブドウジュースを提案する、といった判断である。ブログを読む限りでは、こうした意思決定はあり得ると安野氏はみている。

メディア企業の反発:ゼロクリック問題

メディア企業からも批判が出ている。ChatGPTは質問を受けると、さまざまなニュースサイトを参照したうえで回答を返すことがある。その回答に広告が付けば、メディア企業が苦労して書いた記事をもとに、別の広告が収益を生むことになる。そのときメディア側の取り分はどうなるのか、という批判である。安野氏も、これにどう対応するかは難しい問題だと述べる。

安野氏によれば、この問題は広告の有無とは関係なく「ゼロクリック」として以前から指摘されてきた。Google検索の場合、サイトのデータはクローリングされて整理され、検索可能になる。それでも検索結果がクリックされれば、ユーザーはメディアのページを訪れる。データを取られても、アクセスとして手元に返ってくるので許容されてきた。ところがAIの場合、AIが読みに来た内容をまとめてユーザーに示すため、ユーザーはメディアのサイトを直接見なくなる。アクセス数が減り、メディア側のページに載せた広告も見られなくなる。それなのにChatGPTの返答の下には広告が付く。安野氏は、メディア企業からすれば自分たちの資産を取られているだけに感じるのだろうと述べている。

Anthropicのスーパーボール CMと、アルトマン氏の反論

OpenAIのライバルであるAnthropicは、この広告導入を受けてCMでOpenAIを強く皮肉った。安野氏の説明では、2月9日前後に行われたアメリカのスーパーボールで、各社が気合を入れたCMを流す中、AnthropicはOpenAIを煽るCMを出した。

CMはチャットボットを擬人化したコメディ調の内容である。ユーザーが真剣に相談しアドバイスを受けている最中に、突然広告が差し込まれる。筋トレの相談中にシークレットブーツの広告が出たり、母親との関係を相談していたら出会い系サイトに誘導されたりする。安野氏は、実際にここまで露骨な広告はほとんどないだろうとしつつ、誇張された姿として「確かにな」と思わせるものだと評し、普通に面白いので興味のある人は見てほしいと勧めている。

これに対しアルトマン氏はXで、面白いがそんな広告を出すわけがない、という趣旨の反論をした。安野氏の目には、アルトマン氏はこのCMに相当腹を立てているように見えるという。

その後、2月後半にインドでAIサミットが開かれ、AI業界の関係者や各国政府の要人が集まった。壇上でAI業界の重要人物が手をつないで万歳する場面があった。ところが、たまたま隣り合ったアルトマン氏とAnthropic CEOのダリオ・アモデイ氏だけは、頑なに手をつなごうとしなかったという。安野氏自身もこのサミットに招待されており、2月中旬にインドへ行くつもりだった。しかし衆議院の解散と首班指名などの日程が重なり、AIとテック外交の場に参加できなかった。現地にいれば2人が手をつながない場面を見られたかもしれないのに、と安野氏は残念がっている。

安野氏の所感:広告モデルは自然な流れ

最後に安野氏は、OpenAIが広告モデルを採用してテストすることは自然な成り行きだと述べた。やり方次第ではかなり嫌な感じの広告になりうるものの、企業として誠実さを保てる範囲で広告モデルを運用することはあり得るという考えだ。Googleも当初は「なぜ広告なんかやるのか」と強く批判されたが、今では当たり前になっている。ChatGPTの広告も将来は当たり前になっている可能性がある、と安野氏はみる。ただし現時点ではあくまでテスト運用であり、今後どうなるかを注目していきたいと締めくくった。