紛争はなぜ同じ場所で起きるのか――中田敦彦が地政学の基本から読み解く日本の位置
中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY中田敦彦はこの授業で、地政学とは地理の条件によって国際政治がかなりの程度決まっていくと考える学問だと説明し、アメリカ・中国・ロシアがなぜそのように動くのかを理解する手がかりとして紹介する。前半では地政学の基本的な考え方とキーワードを整理し、後半ではその視点から、日本に米軍基地がある理由、北方領土が返ってこない理由、尖閣諸島が問題になる理由を読み解いていく。参考文献は奥山真司『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』で、中田は著者を、防衛省の幹部候補生に地政学を教えている専門家だと紹介している。
覇権国のための学問として生まれた地政学
中田によれば、地政学の発祥は比較的新しく、19世紀後半のヨーロッパである。国家の戦争や紛争を地理から説明できるのではないか、どこを押さえればその国をコントロールできるのか、という戦争研究の中で考えられてきた。それを最初に戦略的に使った国としてプロイセンが挙げられる。普仏戦争で、当時大国だったフランスに対し、プロイセンは地政学に基づいて要所を押さえ、逆転勝利したと中田は語る。
この成功で注目された地政学を、主にイギリスとアメリカが研究し続けた。中田はこの点を重視する。第二次世界大戦以前の長い期間、ポンドを基軸通貨とする覇権国だったイギリスは、どこを押さえれば覇権を長く維持できるかという観点から地政学を見ていた。その後、覇権国となったアメリカも同じ問題に真剣に取り組む必要があり、20世紀にイギリスとアメリカの学者が理論を進めて、体系的な学問になったという。
つまり地政学は、もともと覇権国が世界をコントロールするための方法だったというのが中田の整理である。ただし覇権国以外の国も、覇権国の考え方を知れば次の動きを読むことができ、それを逆手にとって要所を取りに行くこともある。そして中田は、世界にとって重要な要所は国ごとに違うのではなく、実は決まっていると強調する。要所が決まっているから、衝突する場所も決まってくる。
世界の「3大衝突地」
参考文献では、世界の3大衝突地が挙げられている。1つ目はヨーロッパで、NATOとロシアがぶつかる地点だ。中田は、ロシアとウクライナの戦争が始まる前から、地政学ではこの地域の衝突が必然のこととして書かれていたと語り、そこに地政学を学ぶ大きな説得力があると述べる。
2つ目は中東で、主に争っているのはイランとアメリカである。この対立を発端として、さまざまな国の内紛が起きているという。3つ目はアジアで、ここで争っているのはアメリカと中国だ。朝鮮半島、台湾、そして日本を含む日本海沿岸で起きていることは、米中の争いに端を発している。中田は、このアジアが含まれているからこそ日本人は地政学を学ばなければならないと考えている。
なぜこれらの場所で衝突が起きるのか。中田はその背景を核の時代に求める。核兵器はあまりに強力で、撃ち合えば当事国が滅びるどころか地球全体が滅びかねない。だから大国同士は直接撃ち合うことを避けつつ、勢力争いを進める局地戦になる。ロシアとウクライナの戦争も、俯瞰すればアメリカ・ヨーロッパとロシアの大きな勢力争いがウクライナを舞台に表面化したものだと中田は見る。これを単にウクライナとロシアの戦争と見るのはミクロな見方であり、マクロに見れば覇権国とそうでない国のせめぎ合いが起きている、というのが中田の立場である。
争いの核心は物流と軍事基地
では各国は何を奪い合っているのか。中田はここを「大トロ」の部分と呼び、答えは物流と軍事基地だと述べる。
輸出入は陸・海・空のどれで主に行われているか、と中田は問いかける。速さを考えると飛行機と思うかもしれないが、現代でも大規模物流は海運一択だという。コストと量の面で、海が最大のルートになっている。
しかも海は自由に航行できるわけではなく、どうしても通らなければならない場所がある。地政学ではこれをチョークポイントと呼ぶ。海峡や運河のように、狭く、そこを通らなければ向こうに行けない地点だ。中田によれば、こうした場所は世界に無数にあるわけではなく、10個程度しかない。例として、シンガポールとインドネシアの間のマラッカ海峡、パナマ運河、イギリス海峡が挙げられた。
このチョークポイントを押さえるかどうかが覇権を握るかどうかを決める、と中田は言う。理由は、海上輸送されるのが日用品だけではなく、石油や天然ガスといったインフラに関わる物資だからだ。石油や天然ガスなしに運営できる国家はない。海運ルートは国家の大動脈であり、その要所である海峡や運河を押さえられて「通るならお金をください」と言われれば、相手に血管を握られているのと同じ状態になる。
その血管を守るために必要になるのが軍事拠点、つまり基地である。日本人は沖縄や横須賀に米軍基地があることは知っているが、アメリカは中東にもドイツにも、世界中に基地を置いている。それは要所を守り、相手が要所を攻めないよう監視するためだと中田は説明する。空軍やミサイル、核兵器で覇権が争われていると思われがちだが、中田は「海を制する者が世界を制する」「物流を制する者が世界を制する」と強調する。10個程度しかないチョークポイントを押さえるために監視拠点や軍事基地をいくつ持っているかが覇権国家としての説得力になり、アメリカはそれを世界で最も多く持っているから覇権国家と呼ばれる、というのが中田の説明だ。
沖縄、北方領土、尖閣諸島が重要になるのもこの文脈であり、1つの島や海峡がいかに大事かが分かれば地政学の基礎は半分理解できたようなものだと中田は述べる。
シーパワーとランドパワー
残り半分のキーワードがシーパワーとランドパワーである。中田はこれを海洋国家と内陸国家と理解してほしいと言う。海洋国家は国の大半が海に囲まれ、交易や貿易で外に出ていく国だ。内陸国家は陸続きのため、他国から侵入されやすく、侵入もしやすい。単純に分ければ、イギリスや日本はシーパワー、広大な大地を持ち他国と地続きの中国やロシアはランドパワーになる。
アメリカは国土も大きいが、国土の大半が海岸線に囲まれ、海洋国家として力を伸ばしてきた歴史があるので、シーパワーの国だと中田は説明する。日本も、島国であっても海に出なかった時代はシーパワーとは言えないが、海運の発達以降は外に出るようになり、アメリカのシーパワー戦力の一員になった。そのため日本、アメリカ、イギリスはシーパワーの国とされる。
重要なのは、ランドパワーとシーパワーが常にせめぎ合うという点だ。ランドパワーの国は土地が大きく、陸続きなので他国に攻め入りやすい。それは同時に攻め込まれやすいことも意味する。中田は、侵略され続けた歴史を持つため猜疑心と恐怖を抱えた国だと表現する。古代中国は周辺民族に常に侵略され、万里の長城を築いたり遠征を行ったりしてきた。内側でも勢力が分かれ、内部の力をコントロールしながら外からの侵入を防ぐことに追われてきた。ロシアも国境が長く、東は中国や日本、西はヨーロッパと接しているため、どこに戦力を配分するかに苦心してきた。ナポレオンやヒトラーが攻め込んできた際にはモスクワを捨てて焦土作戦で退かなければならなかったというトラウマがある。
だからランドパワーの国は、油断すれば攻め込まれることを恐れ、同時に力を得れば攻め込まれる前に攻めようとする。力を持てば拡大しようとし、拡大されたくない海洋国家はそれを抑え込もうとする。その間の地域が紛争地帯になる、というのが中田の説明である。
ハートランドとリムランド
この構図を説明する言葉として、中田はハートランドとリムランドを紹介する。人類の主な舞台は最も巨大なユーラシア大陸であり、その中心、ランドパワーの中心であるロシアのあたりをハートランドと呼ぶ。ハートランドは広大だが環境が厳しく、広すぎ、寒すぎる。周辺から攻め込まれ続けて危機感を募らせ、力を得るとすぐに外へ拡大しようとする習性があるという。
一方のリムランドはユーラシア大陸の沿岸部である。気候に恵まれ、大きな川もあり、古代から文明が発達し、人が集まり技術が生まれてきた。中国、中東、インドなどがこれにあたり、豊かな都市が沿岸部に集中している。ハートランドはこのリムランドに出てこようとし、シーパワーを持つ側がそれを押さえ込もうとする。そのせめぎ合いの地点が紛争エリアになる。
中田は、人類史を大局的に見ると、ほとんどの戦争はハートランドからリムランドへの拡大を、シーパワー国家がその間で押さえ込もうとする戦いだったと述べ、第一次・第二次世界大戦もそうだったという分析を紹介する。ランドパワーの国としてドイツ、中国、ロシアがあり、あるときはドイツ、あるときはロシア、あるときは中国が拡大しようとし、それをイギリスやアメリカが押し返そうとしてきた、という見方である。
覇権を維持する作戦「バランス・オブ・パワー」
覇権国が決まるまではリムランドとハートランドの戦いになり、覇権国が決まった後は、チョークポイントで物流を押さえ、軍事拠点でそれを守る。そのうえで覇権を長く続けるための基本的な作戦として、中田は最後のキーワード「バランス・オブ・パワー」を挙げる。
中田の定義では、これは1位以外の国が常に小競り合いをして、どこも突出しない状態を保つことである。中田は「ある意味恐ろしい作戦」と評する。最初にこれをうまく行ったのはイギリスで、2位に上がってきた国を3位、4位と連携して潰すことを続けてきたという。ドイツが伸びればフランスやロシアと組み、スペインが伸びればフランスやドイツと組む。これを続けられれば1位は安泰だ。
これを引き継いだのがアメリカだと中田は言う。冷戦期は1位がアメリカ、2位がソ連で、景気を上げていた日本が3位だったため、アメリカは日本と組んでソ連を抑えた。そして80年代、日本が2位になったときの3位が中国であり、そのときは中国とアメリカが組み、バブルが崩壊した、と中田は語る。これはバランス・オブ・パワーの考え方による中田の解釈として示されている。
チョークポイントを押さえ、軍事拠点を築き、バランス・オブ・パワーで国家をコントロールする。中田はこれをパックス・アメリカーナ、アメリカによる世界のコントロールだと説明する。
2位の国のストレスと、日本から見えにくいもの
このコントロールのもとでは、2位になった国は常に狙われ、攻撃される。中田は、その摩擦の中で紛争が起き、代理戦争がなくならないのは、1位が世界の均衡を保つために必要なことなのかもしれないし、2位の野心のためなのかもしれない、と両方の可能性を挙げる。
アメリカのコントロールに強い不満を持つ国の1つがロシアだ。NATOによってロシアの成長が常に削られているというのがプーチンの主張だと中田は紹介し、「NATOの東方拡大をやめろ」という言葉が日本人に理解しにくいのは、日本がアメリカ陣営、シーパワーの一員だからだと説明する。中国にとっても、中国のアプリや技術を使うなというアメリカの動きはストレスであり、1位のコントロールを逆転しようという野心につながる。中田は、中国やロシアの理屈から見れば「なるほど」と思える面もあると述べる。
一方で、日本は現時点ではアメリカにかなり頼っており、アメリカも日本を非常にうまくコントロールしているので、アメリカ側の立場に立つのが基本的にはオーソドックスだとも言う。そのうえで中田は、どちらが正しいということではなく、どの国にもストレスと野心と戦略がある世界に私たちは生きているのだと前半をまとめる。
日本は江戸時代までランドパワーだった
後半は日本の地政学である。現在の日本はシーパワーの国だが、中田は、江戸時代までの日本はランドパワーの国だったと述べる。外国から攻められたり外国を攻めたりすることがほとんどなかったという意味である。白村江の戦い、元寇、秀吉の朝鮮出兵など、攻められたのは2度、攻めに行ったのは1度程度で、侵略する・されるという関係はほとんどなかった。
中田はその理由を、島国であることだけでなく、海流に恵まれていたことと、ヨーロッパから遠かったことに求める。島国でもヨーロッパに近ければ大変で、イギリスでさえノルマン・コンクエストで北欧に征服された歴史があり、フィリピンもアメリカの支配を受けた時代がある。「島国でよかった」というコメントがときどきあるが、島国だからというだけではない、と中田は指摘する。大航海時代に勢いを持っていたのはヨーロッパで、中国が攻められる側だった中、日本は侵略の候補として最後に挙がる位置、つまり極東にあり、立地的に侵略されにくかったという。
シーパワーとランドパワーは両立できない
第一次・第二次世界大戦を通じて、日本はシーパワーを手に入れつつランドパワーとしても拡大しようとした、と参考文献では分析されていると中田は紹介する。東南アジアに進出して海を拡大する一方で、満州という大陸にも打って出た。
地政学には、シーパワーとランドパワーは両立できないという考え方がある。内陸国が海洋国として力を得ようとすると内陸のコントロールが取れなくなり、海洋国が大陸の奥深くまで進むと海洋国としての力が削がれる。中田は例としてベトナム戦争を挙げ、アメリカが陸地に踏み入りすぎたという分析があるらしいと述べる。旧日本軍も、東南アジアまでは行けたが中国の内陸まで進もうとしてどっちつかずになり失敗した。いずれも、自分が今シーパワーとランドパワーのどちらを主に使っているのかを自覚していなかったことによる失敗ではないか、という見方が紹介される。
敗戦後、日本はアメリカという巨大なシーパワー国家の一員として連携の恩恵を受け、今ではシーパワーの一員になっている。ただし、シーパワーの国がランドへ、ランドパワーの国がシーへ向かうことは起こりうる。中田はその例として中国の一帯一路構想を挙げる。ランドの大国が海洋国家としても覇権を握ろうとする表れだと言われており、中国という大国をコントロールするだけでも大変なのに海にまで出ていって大丈夫なのかが議論され、地政学上はうまくいくのか危ぶまれているという。
北方領土はなぜ返ってこないのか
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、北方領土もかなり取り沙汰された。中田の説明では、北方領土は第二次世界大戦で日本が降伏した後にロシアが攻めて取ったものだ。日本は降伏後のことなのだから返してほしいと主張し、ロシアは実効支配して人も住んでいるので返さないと応じる。
中田は、地政学で考えればロシアは絶対に返さないと言う。ロシアにとって北方領土は要所であり、ウクライナと同じく緩衝地帯の役割を持つ。その目的は、1つは中国の監視、もう1つはアメリカへの牽制である。ロシアが最も恐れるのは、返還後に北方領土が沖縄のように米軍基地の設置場所になり、アメリカがミサイルを置く理由になることだ。ロシアの巨大な国土から見れば小さな地域でも、安全保障上の軍事拠点として譲れない。
もう1つは物流である。通れないと言われていた北極海ルートをロシアが開発したらしく、それを保護するためにも北方領土が必要だと中田は語る。物流と軍事拠点の両面から、ロシアにとって返す理由はなく、「返すかもしれない」という可能性が日本との交渉カードとして使われているだけだ、というのが中田の見立てである。
一方、日本にとっては国民感情として返還を望む気持ちはあるが、地政学上どうしても押さえなければならない拠点かといえば、そうでもないらしい。ロシアには絶対に必要だが日本には絶対ではない。だから日本は実力行使に至るところまでは踏み込まず、何年たっても返ってこない。中田は、北方領土がなぜ今の状態になったのかは第二次世界大戦の出来事で説明でき、なぜ返ってこないのかは地政学で説明できる、と整理する。
沖縄の米軍基地とアメリカの「支配の4段階」
沖縄に米軍基地がある理由について、中田は、アメリカにとって沖縄は完璧な軍事拠点だと言われていると述べる。沖縄県民の感情や、繰り返し起きている事件・事故を考えれば、主権国家の日本になぜ米軍基地があるのかという声が出るのは当然だが、アメリカの都合が大きく影響しているという。
中田は、アメリカが世界のコントロールの仕方を4段階に分けていると紹介する。
- 相手国の全土に軍事基地を置き、政治や政策にも直接口を出す
- 相手国の要所に軍事基地を置き、政策は間接的にコントロールする
- 相手国には基地を置かず、近くに基地を置いて間接的に圧力をかける
- 基地は置かず、重要なことがあったときだけ干渉する
日本がどれにあたるかははっきり言われていないが、この分類でいけば明らかにレベル2だと中田は述べる。アメリカにとって日本はどうしても必要な国なので、日本は基地をどかしてくれと強くは言えないし、強く言ったとしても、アメリカは安全保障上沖縄を譲らない。
中田は、それが良いか悪いかの話ではなく、そういう仕組みになっているのだと繰り返す。地政学は「冷酷な学問」と言われ、国家がこうあるべきだという感情や思想、イデオロギーを考慮せず、国家がどう動くかを分析する。強い国は弱い国にこうしてきたし、これからもするだろう、そうしなければ逆にやられてしまう。だから小国はこうしなければならない。そうした冷酷な国家の側面を見る必要があると参考文献でも述べられている、と中田は紹介する。
横須賀基地の役割
横須賀の米軍基地については、日本人は何のためにあるのかをあまり知らないと中田は言う。中田によれば、横須賀の特徴は米軍の軍艦、特に空母のような巨大艦船を修理できることにある。そうした修理はどこでもできるわけではなく、横須賀がなくなればハワイ、さらにはアメリカ本土まで戻らなければならない。
空軍や陸軍に目が向きがちだが、チョークポイントを押さえ、相手に取らせないためのせめぎ合いを担うのは海軍力だ。世界の覇権の鍵が海軍にあると言われる中で、巨大空母を修理するために横須賀は譲れない。だから横須賀と沖縄から米軍は退かないと地政学上は言われている、と中田は説明する。
尖閣諸島と石垣島――台湾有事の「3方向」
尖閣諸島は石垣島の北にある。中田は、その重要性は台湾との関係にあると説明する。ランドパワーの大陸国家は外に打って出るとき、まず近海を制圧してから出ていく。玄関前を掃除してから外に出るようなもので、近くに障害が多いと出られないという。
台湾有事で中国と台湾が争いになった場合、中国は正面からと、台湾を回り込んだ南北の両側からの3方向で攻めると言われている、と中田は紹介する。その例として、ロシアがウクライナに対して東部、ベラルーシ側の北部、クリミア側の南部から同時に侵攻し、首都キーウに向かった事例を挙げ、同じ理屈だと述べる。囲めるなら囲むということだ。
その3方向のうち1方向を邪魔しているのが石垣と尖閣であり、中国はそこを通って回り込みたい、だから押さえたいと考えている、というのが地政学上の見方だと中田は言う。リゾート地として親しまれている宮古島、与那国島、石垣島も、軍事拠点として強い個性を持っている。尖閣が中国に取られれば石垣は孤立し、深刻な事態になると中田は語る。
米軍が守る石油ルート
米軍の存在をどう受け止めるかは難しい問題だが、中田は、米軍が日本に貢献している点も確かにあると述べ、それは石油だと言う。電気をつくるにも車を走らせるにも、石油は長く最重要のエネルギーであり、グリーンエネルギーが叫ばれるのも石油から解放されるためだ。そして石油を運ぶのは船である。
船以外の方法を交渉していた相手がロシアだった。ロシアからパイプラインを引いて天然ガスなどを受け取る話が、北方領土を「とっかかり」にして進んでいたが、うまくいかなかった。ロシアとウクライナの問題で日露関係はさらにこじれ、パイプラインはおそらく無理だろうと言われているという。中田は、ドイツがロシアとの間でノルドストリーム2を何兆円もかけて作ったものの、経済制裁によってドイツへの天然ガス供給が難しくなった例を挙げ、日本もヨーロッパも結局は海運に戻らざるを得ないと述べる。
では船で石油をどこから買っているかといえば中東であり、そこまでの航路で通過するチョークポイントはマラッカ海峡とホルムズ海峡の2つだ。中田は、これを普通に安全に通れると思ったら大間違いだと言う。マラッカ海峡の近くには海賊がいるし、ホルムズ海峡では原因や詳細が分からないまま船が襲われたことがある。その石油ルートを米軍の艦隊が守ってくれているらしく、だから「米軍がなくなればいい」とは簡単に言えない。アメリカの力を借りなければ安全に通れないという海運の事情があるからこそ、米軍は日本に残り、日本も守ってもらいたいという姿勢を続けている、と中田は説明する。
自衛隊の南西諸島展開
ただし日本が何もしていないわけではない、と中田は付け加える。台湾有事の際に石垣島も尖閣と同じく軍事拠点として重要になることは日本も分かっており、沖縄の島々で徐々に軍事拠点を拡大している。中田は、2016年に与那国島、2019年に宮古島、そして石垣島で自衛隊の駐屯地を建設していると紹介する。石垣島に実際に部隊を置くかどうかといった議論は常にニュースになっているが、私たちはあまりそれをキャッチアップしていない、と中田は指摘する。
沖縄がどういう立場に置かれているのか、米軍はあるべきなのか、自衛隊を拡大すべきなのか、中国はどう動くのか、北方領土での日本の立場はどうなっているのか。中田は、こうしたことは突然起きるのではなく常に進行しており、国家と国家の境界線はじわじわと押したり引いたりしているのだと語る。ニュースに敏感になり、「これは危ないのではないか」と気づけるかどうかが大事だという。
地政学を知ることの意味と、残された問い
日本がどのような国防体制をとるべきかについて、中田はさまざまな考え方があると述べ、結論を示していない。アメリカに守られるべきなのか、アメリカは本当に守ってくれるのか、という点もかなりグレーだという。大国は常に自国の利益のために動く。自国の利益になると判断すれば日本の拠点は譲らないし、利益にならないと判断すれば容易に撤退する。それも事実だと中田は言う。
最後に中田は、地政学が戦争の説得力として使われ、「地政学上ここが必要だから戦争に行け」と悪用された歴史もあったらしいと触れる。だからこそ、そう使われないために地政学を知っておくべきだというのが中田の考えだ。拠点が必要だから軍隊を拡大しろと言われたときに、「正確に考えれば、ここだけで大丈夫なはずだ。それ以上の拡大はシーパワーとランドパワーの両取りになろうとしているのではないか。これ以上行けば失敗する」と議論できるリテラシーの高い国民であれば、日本は軍に過剰に投資することも、極端に弱気になってすべてを他国に任せることもない立場をとれるのではないか、と中田は述べる。
それでも中田自身、日本人として国防にどう関わるべきかは非常に難しいと認め、まず考えることから始めてほしいという趣旨でこの授業を締めくくっている。
どうも中田敦彦です。本日は地政学、こちらをやっていきたいなと思っております。まず地政学とは何かというところから、ご説明させていただきたいんですけれども、これ、地理の条件で国際政治っていうのはかなり決まっていくんだと、そういう学問なんですね。比較的新しい学問なんですけども、これを知ることで、どういうところで紛争が起きやすいのかですとか、どういうことを大国は考えて動いていくのか。だからアメリカであるとか中国であるとかロシアであるっていうのが、なんでこんな動きをしてるんだろう。これが分からないという方々が多いと思うんですけれども、ニュースを見ても分からないことは、地政学の観点を持つと、やっぱりアメリカはそう動くよねとか、中国はそうなるよねっていうことが分かるようになるっていう学問。それが地理と政治をつなぐ地政学という学問らしいんですね。なのでこれを知ることで、ニュースをより深く分かる。
前半は地政学とは何なのか、その基本的な考え方とキーワードを分かりやすくお伝えしたいと思います。そして後半はその知識を持って日本を見た時に、どのように日本が見えてくるのか、これを述べていきたいと思います。後半の日本は、なぜ日本に米軍基地があるのかですとか、北方領土はなぜ返ってこないのか。そして尖閣諸島は一体なぜ問題になってるのか。北朝鮮とはどういう関係になってるのか、こういったことが分かる授業になっていくと思いますので、ぜひご覧いただければと思います。
今回の参考文献がこちら。ビジュアルも非常に分かりやすいですし、この著者自体が地政学の専門家で、防衛省の幹部候補生に向かって地政学を教えたりなんかしてるっていう先生らしいので、非常にためになる授業であると思います。この本を、僕の動画を見た後に、なるほどな、面白いなと思っていただいたら、読んでいただけるとより深く理解できるんじゃないでしょうか。それでは早速参りたいと思います。
地政学。先ほど、地理条件を元に国際政治を見るぞというふうに申し上げたわけなんですけれども、なぜそれが生まれたのか。これは発祥自体は非常に新しいんですね。1800年代後半、19世紀後半なんですね。189X年とかに、まずヨーロッパの方で生まれた。ちょこちょこ生まれてたわけなんですけど、こういう考え方をすると、国家の戦争とか紛争っていうのは辻褄が合うんじゃないか。そしてどこを押さえたら、その国ってのはコントロールできるんだという、戦争を考える上で研究されてた学問なんですけども、それを最初に戦略的に使った国がプロイセンと言われております。ドイツの元になった国ですね。プロシアとかプロイセンとかね。
このプロイセンがフランスとの戦争で使った、これがかの有名な普仏戦争なんですね。普仏戦争。プロイセンとフランスとの戦争。このフランスっていうのは、その当時大国だったわけです。ですがこの地政学に基づいて、要所をきっちりと押さえることができたということで、プロイセンがフランスを逆転勝利で下すことになったということですね。そこから注目されて、主にイギリスやアメリカが研究を続けたということなんですね。なぜイギリスやアメリカが研究を続けたのか。ここが非常にポイントなんです。
それは、イギリスっていうのはかつての覇権国ですよね。この覇権国っていうのは、米中の覇権争いとか新冷戦っていう話でよく出てきますよね。かつては米ソで争ってた、世界で一番強い国、世界のルールを決めてしまう国、それが覇権国。現在ではアメリカですよね。それがかつてイギリスだった時代があるわけですよね。第二次世界大戦以前は、イギリスが長く覇権国をやってたわけなんですけども、その覇権国、基軸通貨を持ち、ポンドが基本だった。そんな覇権国イギリスは、どのようにしてその覇権を続けられるかという観点から地政学を見てたわけですよ。つまりこの地理で、どこを押さえたら覇権は長く続くの? これを研究するために続けられた。
そして次はアメリカですよね。もちろんアメリカが覇権国になったら、アメリカは、これはイギリスが研究してた、どこを押さえたら世界をコントロールできるんだっていう学問を真剣にやらなきゃということで、イギリス、アメリカが20世紀あたりで、イギリスの学者、アメリカの学者がその理論を前に進めて、かなり体系立った学問になっていったというのがこの地政学なわけですよ。つまりこれは覇権国のための、世界をコントロールする方法だったわけです。ですがもちろん覇権国以外も、それを考えることで覇権国の考え方を知り、じゃあこう動くんだなということで、それを逆手に利用して、覇権国を狙っている国もその要所を取りに行くっていうことがあるわけですね。
世界でそんな要所ってあるの? それは国によって違うでしょ。そう思うかもしれませんけど、そうではないんですね。世界に、ここはものすごい大事だという要所ってのは、これ実は決まってるんです。要所が決まってる。重要なポイントが決まってる。それがなぜなのかは後ほどお伝えするんですけども、だからこそ、ここがポイント。衝突する場所も決まってくる。ここなんですよ。世界三大衝突地。この本に出てくるんですけども、三大衝突地、どこが衝突してると思います?
まず第一はヨーロッパ、欧州ですね。それがNATOとロシアのぶつかる点。ウクライナ、ロシアの戦争。これが始まる前ですよ。その時からすでにこれ言われてる。つまり地政学の中では、このロシアのウクライナの戦争っていうのは必然のこととして書かれてるわけなんですよ。これが地政学を学ぶべきっていうところの、非常に大きな説得力ですよね。この三大衝突地の一つにウクライナの辺りが出てくるわけです。そしてその理由というのもはっきり書かれています。それがNATOとロシアとの衝突である。これはもうすでに書かれてることだったんですよ。
では、残りの二つ気になりますよね。残りの二つのうち一つが、それが中東です。主に争ってるのはイランとアメリカです。このイランとアメリカの争いに端を発して、いろんな国の内紛っていうのが起きてるんだ。こういうことですよね。そしてもう一つ、それがアジア。これが入っているから、日本人は地政学を学ばなければいけない。私はそう思うわけです。つまりアジア、どこが争ってるか。それこそがまさにアメリカと中国。そうなんですよね。中国とアメリカとの争いの中で、朝鮮半島であるとか台湾であるとか、そしてまさにその日本を含む日本海の沿岸でのいろんなことっていうのが、このアメリカと中国の争いっていうものに端を発して行われてるよ、ということなんですよ。
この三大衝突地、なぜ衝突するのか。それは核の時代に入ってるからですよね。核をそれぞれが持っているということで、じゃあアメリカとロシアが、アメリカと中国が、アメリカとイランが、それぞれ核を発射し合えばいいんじゃないのか。そんなわけないですよね。なぜならば核はあまりにも強い力なわけですよ。なので核を撃ち合ってしまった場合、その国が滅びるどころか地球全体が滅びるかもしれない。それぐらいのダメージを与える。それが核兵器なわけですよね。だとしたらどうするかということは、なるべく直接撃ち合わずに、しかし勢力争いを前に進める局地戦になってくるわけです。
ですからこのロシアとウクライナというものの戦争も、俯瞰で見ると、NATOとロシアの争いが表面化しているということが言えるわけですよね。そのNATOとロシアのっていうのは、つまりアメリカ、ヨーロッパとロシアとの大きな勢力争いが、そのウクライナを舞台に行われてるっていうことなわけですよ。そういう見方ができるかどうか。できない場合、ウクライナとロシアの戦争っていう非常にミクロな見方になってしまうんですね。マクロに見ると、覇権国とその覇権国でない国とのせめぎ合いが行われてて、それが必然的に起きるだろうと言われてるのが三大衝突地点なわけですよ。ですからこのアメリカ、中国というのも非常にホットであるがゆえに学ばなければいけないと。
じゃあ、その三大衝突地点っていうのは、一体どのような法則でそこに集約していったのか、ここが知りたいですよね。そしてそれこそがまさに地政学の考え方なんですよ。何を奪い合って、何が要所となって、そのエリアに集中していくのか、争いが。これが大事です。ここがもう大技のところです。ここがもう大トロのところですよ。それが何か? それは物流と軍事基地です。最も大事なのは物流を押さえたいっていうことなんですよ。
物流と言いますと、物を運ぶ輸出とか輸入っていう考え方ですよね。皆さん、輸出輸入というのは、陸海空どれで行われてると思いますか? メインはどれですか? シンキングタイム、スタート。ここなんですけども、皆さん、やっぱり飛行機が一番早いから、便利だから飛行機だろうとお思いかもしれませんが、違うんです。そうではないんですよ。これ実は現代においても海なんですよ。大規模物流は海運一択なんです。飛行機、もちろんそれは早いんですよ。ですがコストの面と量の面で、海っていうのが最大のルートなんです。これを頭にはっきり入れてください。
海運の場合、海運のルートを押さえた者が勝つんですけども、じゃあ海と言っても道路みたいに決まった道じゃないんだから、自由に泳げばいいんじゃないか、自由に船を進めればいいんじゃないかとお思いかもしれません。でも違うんですよ。海運の中でも絶対ここを通らなきゃいけないポイントがあるんです。それを地政学の言葉でチョークポイント、絞るポイントと言うんですね。絞られているポイント。これどういうところ? 海峡とか運河です。非常に狭くて、そこをどうしても通らないと向こうに行けないという海峡や運河。それがチョークポイントと言われて、絶対に押さえておかなければいけない要所とされてるんです。
どれくらいあると思いますか、世界中に。それ無数にあるんじゃないと思うかもしれませんね。違うんです。なんと10個程度なんです。東南アジアであれば、シンガポールとインドネシアとの間、マラッカ海峡ですよね。シンガポールの南にあるマラッカ海峡とか、パナマ運河とかイギリス海峡とかですね。10個程度なんですよ。絶対に通らなきゃいけなくて、その上で絶対に必要な場所。それが10個程度の海峡なんです。これを押さえるか押さえないかというのが、覇権を牛耳るか牛耳らないかなんです。
なぜか。物流と言っても、生活の日用品だけじゃないですよね。インフラに関わるからです。そうです。石油とか天然ガスですよ。石油や天然ガスなしに運営できる国家はありません。つまり国家の血管、大動脈、それが海運ルート。そして海運ルートの要所、それが海峡、運河。そしてその海峡や運河を押さえられて、そこをあなたの国は通らないでね。通るんだったらお金くださいね。そうされることで、ものすごい負荷がかかるんですよ。血管を相手に握られてるようなもんなんですよね。
そしてその血管と同時に、血管を守るっていうために、軍事拠点、これが必要になってくるんですね。基地です。例えば沖縄にアメリカの基地ありますよね。日本人は米軍の基地が沖縄にあるとか横須賀にあるってことは知ってます。でもアメリカの基地って、他にもたくさん世界中にあるってご存じでしたか? あまり考えたことがないかもしれませんね。ですが中東にもありますし、ドイツにもあるんですよ。実は世界中にアメリカの基地は置いている。それはなぜか? そういう要所を守り、その要所を攻めないように監視するためなんです。
なので非常に重要なことは、実は海の勢力を押さえてるかどうか。これが覇権国家としての最重要事項なんです。空軍、ミサイル、核兵器、そういうようなことで覇権国家っていうものが争われてると、どこか皆さん思ってたかもしれません。なぜなら陸から海、海から空と技術が進化したから、そうなんじゃないかなって思ってたかもしれませんけど、実は海を制する者が世界を制する。物流を制する者が世界を制する。なので物流の基本的なポイント、チョークポイント、それは世界に10数個しかない。10個程度しかないそのチョークポイントを押さえんがために、監視拠点を、軍事基地をいくつ持ってるか。そういうことが覇権国家としての説得力になってくるわけですね。
そしてまさにアメリカというのが、その軍事基地と海運の拠点を世界で今最も多く持っている。だからこそアメリカは覇権国家と言われてる。そういうことなんですよ。これがご理解いただけましたでしょうか? だからこそ沖縄であるとか北方領土であるとか尖閣諸島であるとかっていうのは、その文脈上で大事になってきているというお話なんですよ。なぜ尖閣、尖閣言ってるのか。なぜ沖縄から基地がなくならないのか。なぜ北方領土が返ってこないのか。そういったお話は、全てこの海運と軍事拠点、ここをどう押さえるかが国家の要衝なんであるということが理解されていれば、いかにその島、一個の島とか海峡が大事なのかということがご理解いただけるよっていうお話なんですよ。この考え方が理解できたら、地政学の基礎は半分理解できたようなもんなんですね。
そしてもう半分のキーワード、それがシーパワーとランドパワーってやつなんですよ。海洋国家と内陸国家っていう理解の仕方だと思ってください。海洋国家、分かりやすいのは島国ですよね。国の大半を海で囲まれているから、基本的に交易とか貿易っていうもので外に出ていく、そうやって交流していくという国家です。内陸の国家ってのはどうなんでしょうね。逆に陸に囲まれているので、地続きで他国からの侵入もされやすいし、侵入もしやすいという国家ですね。シンプルに分けると、イギリスとか日本はシーパワーの国と言えるでしょう。そして中国やロシア、これは広大な大地を持ってて、地続きで他国とつながってるので、ランドパワーの国ということが言えるでしょう。
じゃあ問題です。アメリカはどちらでしょう? アメリカはシーパワーの国なんですよ、実は。大半のところを海岸線で囲まれてまして、アメリカってのは内陸国というよりは、土地もでかいんですけれども、海洋国家として非常にパワーを隆盛させてきたという歴史があるわけですね。もちろん島国だけども、ほとんど海に出ずに、ずっと内陸でいた時代は、シーパワーの国ということではないんですよ。ですが海運が発達して以降、日本というのもどんどん外に出るようになりましたので、そしてアメリカのシーパワー勢力の一員になったということで、日本、アメリカ、イギリスってのはシーパワーの国と地政学上言われてるというわけなんですね。
そして大事なこと、これはランドパワーとシーパワーはせめぎ合う。ここなんですね。ランドパワーとシーパワーってのは常にせめぎ合うんです。ランドパワーというのは大きな力を持ってます。それは土地が大きいということですよね。そして地続きであるので他国に攻め入りやすいんです。でも攻め入りやすいということは、つまり攻め入られやすい。なので侵略されてきた、され続けてきたという歴史を持つ、非常に猜疑心と恐怖のある国なんです。
中国のことを思い出してください。古代中国の歴史というのは、周辺の民族から常に侵略されてきたわけですよね。なので東はこう、西はこう、南はこう、北はこうと言って、それで万里の長城を築いてみたりですとか、遠征に走ってみたり、そういうことを常にやってきた。さらに内陸の中でもいろいろ勢力が分割されて、常に中の力をコントロールし、外から攻め込まれないために、争いとパワーコントロールに追われてきたわけです。
ロシアもそうですよね。あまりにも国境が長いため、東と西では、東は日本の方に近いわけですよね。中国と近いわけですよね。西はヨーロッパと接してるわけですよね。どこに攻められて、どこに戦力を配分するのか、非常に苦心してきたわけですよ。ですからヒトラーとかが、うわーっと来た。ナポレオンがうわーって来た。そういう中、モスクワを捨てて、焦土作戦で逃げなきゃ。こういうトラウマがあるわけですよ。攻め込まれる。油断したら攻め込まれる。これが怖いんです。であると同時に、力を得たら攻め込まれる前に攻めてやろう。こういうふうに思うというのが必然の国家なんです。それがランドパワーの国家ね。なので力を持ったら拡大しようとするんです。
でも海の国家は拡大されたくないから、それを抑え込もうとするんです。なのでランドパワーの国とシーパワーの国の間のエリアが紛争地帯になるんです。そのエリアをリムランド、その中心エリアをハートランドというふうに呼ばれています。つまりランドパワーの国のど真ん中であるロシア。ユーラシア大陸こそが、この人類の中で舞台となってるわけなんですよ。最も巨大なユーラシア大陸。そのユーラシアのど真ん中をハートランドと呼び、そのユーラシアのど真ん中は環境が厳しいことと、周辺から攻め込まれまくることで非常に危機感を募らせ、力を得るや否や外に拡大するという習性を持っている。であるがゆえに、ハートランドからリムランドの方。リムランドっていうのはユーラシア大陸の沿岸部です。
ユーラシア大陸の沿岸部というのはどういう特徴があるか。実は非常に豊かな都市が育つんですね。ユーラシア大陸の沿岸部に豊かな都市が集中してるんですよ。ですから中国であるとか中東であるとかインドであるとか、そういう国ってユーラシア大陸の沿岸なんですよね。非常に気候に恵まれていて、さらに大きな川があったりして、古代から文明が発達し、人が集まり、そして技術っていうものがどんどん生まれてくると。それがリムランドなんです。そしてハートランドは広大な土地を持っているにもかかわらず、非常に厳しい。そう、広すぎて寒すぎるんですよね。なのでハートランドからリムランドの方にどんどん来ようとするわけです。それをリムランドはどんどん押さえ込もうとするんです。シーパワーを持ったリムランドとランドパワーを持ったハートランド、これがせめぎ合うポイント。それこそが紛争エリアである。これが地政学の基本的な考え方になります。
皆さんご理解いただけましたでしょうか? あまりそういうふうな目線で見てこなかったんではないでしょうか。基本的には国は国、それぞれと思ってたかもしれません。でも人類史上で大局的に見てみると、ほとんどの戦争が、このハートランドからリムランドへの拡大を、シーパワー国家がリムランドとハートランドの間で押さえ込もうとする戦いだった。それが第一次とか第二次世界大戦にしてもそうだったというお話なんですよ。そのランドパワーの国家の一つにドイツがあります。中国があります。ロシアがあります。このドイツがある時は拡大しようとし、ある時はロシアが拡大しようとし、ある時は中国が拡大しようとするのを、海洋国家であるところのイギリスやらアメリカやらが押し込もう、押し返そうとした、そういう大きな争いだったというふうに分析ができるということなんですね。
そしてその覇権を握った国は、チョークポイントで物流を押さえ、そのパワーをコントロールする、こういうことなんですよ。このバランス・オブ・パワー、覇権国家になるまではリムランドとハートランドの戦いですよね。じゃあ覇権国家が決まったら、チョークポイントを押さえて軍事拠点でそれを守る。それによって何がしたいかと言うと、覇権を長く続けたい。どうやって続けるか。その基本的な作戦。それが最後のキーワードです。それがバランス・オブ・パワーです。バランス・オブ・パワーって何でしょう? これは、一位以外の国が常に小競り合いして突出しないことなんですよ。これ、ある意味恐ろしい作戦ですよ。
これを最初にうまくやったのがイギリスです。イギリスというのは、二位になってきた国家というものを、三位、四位と連携して潰すということをやり続けてきたんですね。ドイツが伸びてるなと思ったら、フランスとロシアと協力してドイツを潰す。スペインが伸びてるなっていう時は、それ以外のフランス、ドイツと組んで潰す。これが続けられれば、一位は安泰なんですよ。こういうことを常にやる。それを引き継いだのがアメリカです。
冷戦の時、世界一位の国アメリカ、二位がソ連だったわけです。そしてそこに三位として、どんどん景気が上がってきた日本がついてきたわけですよね。その時は日本と組んでソ連を潰す。そういう動きに出てたわけです。じゃあ80年代どうなったか? それは日本が二位になった時です。日本が二位になった時の三位が中国なんです。その時は中国とアメリカで組んで、バブルが崩壊した。そういうことをやろうとしている。これが地政学のバランス・オブ・パワーです。そしてチョークポイントを押さえ、軍事拠点を築き、バランス・オブ・パワーで国家をコントロールする。これがパックス・アメリカーナであり、アメリカによる世界のコントロールです。
それに対して二位となった国は、やはりストレスを感じるわけですね。常に狙われるわけです。二位になったら狙われる。二位になったら攻撃される。そこの争いと摩擦の時に、必ず起きるのがそこでの紛争なわけですよね。その代理戦争の紛争というのがなくならないのは、ある意味では一位による世界の拮抗、バランスを取るために必要なことなのかもしれないですし、その二位の野心ゆえなのかもしれないわけですよね。
なのでアメリカのコントロールに対して非常に不服だと思ってる国の一つが、ロシアなわけですよね。NATOによってロシアの成長を常に削られているというのがプーチンの主張なわけですよね。NATOの東方拡大をやめろという言葉が日本人に理解がしづらいのは、日本はアメリカ陣営、シーパワーの一員だからですよね。アメリカがどのように世界をコントロールしてるかというのは、ロシアや中国にとっては非常にストレスなわけですよね。中国のアプリであるとか中国の技術っていうものは使うなよということで、中国のエネルギーを削ごうとするアメリカの動きを見ると、中国はストレスに感じますから、一位のコントロールというものを逆転してやろう。そういうふうな野心につながったり、ロシアもそういうNATOのコントロールが嫌だということで、それを押し返してやろうというふうになるというのは、中国やロシアの理屈で言うと、なるほどということがあるわけです。
ですが日本は現時点においてはアメリカにかなり頼っておりますし、アメリカは日本を非常にうまくコントロールしておりますので、アメリカ側の意見に立つというのが、基本的にはオーソドックスなことだと思います。なので、どちらが正しいということではないんですよ。そういう世界の中で我々は生きていて、そのどちらにもストレスや野心や戦略というものがあるということなんですね。
ここまでご理解いただきましたでしょうか? 基本的には海運の物流が大事、軍事と拠点が大事。そして大国というのは、覇権国は常にコントロールしようとして、バランス・オブ・パワーをやろうとしている。その中で摩擦が起きて、三大衝突地点で常に衝突が起きようとしている。これが大事なんですよ。では日本の地政学、こちらをちょっと絞っていきたいなと思います。なぜ米軍は日本からなくならないんだろう。なぜ北方領土が返ってこないんだろう? なぜ尖閣諸島で争ってるんだろう? 今日はそんな授業をさせていただきたいと思います。
まず日本、前半で話したように、シーパワー、ランドパワーで言うとシーパワーの国なんですよね。つまり海洋国家。だから島国だからずっと海洋国家だろうと思ってたかもしれないんですけど、実は江戸時代まではランドパワーの国だったっていうのも、皆さんここ覚えておいてほしいんですね。どういうことかというと、日本は海外に攻められたり攻めたりという国では元々なかったんですよ。元々は朝鮮半島の白村江の戦いであるとか、元寇、モンゴルとの元寇であるとか、そして朝鮮出兵、秀吉の頃。二度攻められて、一度攻めに行ってぐらいで、基本的にほとんど外国との、侵略する、されるがなかったんです。
それは非常に島国であるっていうだけじゃなくて、海流的にも恵まれていたということと、ヨーロッパからすごく遠かったっていうのがあるわけですよ。ヨーロッパから近いとどうなるか。島国でも大変なんですよね。あのイギリスでさえも、かつてはノルマン・コンクエストって言って、北欧に征服されたっていう歴史があるんですよ。フィリピンはどうでしょう? フィリピンもアメリカの支配を受けてたっていう時代がありますよね。なので島国でよかったというコメントが時々あるんですけども、島国だからと言ってっていうのもないんですよ。海流の具合とヨーロッパから遠かったっていう。
最も大航海時代でブイブイ言わせてたのがヨーロッパなわけですよね。その頃、逆に中国っていうのは攻められる側だったわけですから、そのヨーロッパの侵略の一番最後に、要するに日本っていうのは候補に上がったわけですよね。だから極東なんです。だからなるべく侵略されづらかった。それは立地的なものがあるわけですよね。その江戸時代までは、内陸の争いだけだったわけですね。
ところが第一次世界大戦、第二次世界大戦を通して、日本はシーパワーも手に入れようとして、ランドパワーにも拡大しようとしたっていうふうに分析されてるんです。今回の参考文献ではですね。その頃、東南アジアにどんどん進出していきましたよね。日本っていうのはシーを拡大したんです。でもシーだけじゃなかったんですね。日本は内陸、大陸にも打って出たんです。満州ですよね。この地政学の中で、シーパワーとランドパワーは両立できないというふうにも言われてるんですよ。
これが非常に複雑なんですけれども、つまり内陸国は海洋国として力を得ようとすると、内陸国のコントロールが取れなくなってパワーダウンする。海洋国も大陸まで深く行くと、海洋国としてのパワーをそっちに削がれて、パワーダウンするという。アメリカは海洋国としてはいいんですよ。ですがベトナム戦争を思い出してください。あれは陸地に踏み入りすぎたっていう分析らしいんです。そして日本、旧日本軍は東南アジアまでは行けたけれど、中国の内陸まで行こうとして、やはりどっちつかずになり失敗した。地政学的には、アメリカの失敗や日本の失敗も、シーパワーとランドパワー、今どちらをメインで使ってるのかというのを自覚してなかったがゆえに起きた失敗なんじゃないか。そう言われてるんですね。
なので江戸までは日本はランドパワー。内陸だけ。外に行かない、外からも攻めてこない。そういう時代だった。それが第一次、第二次の世界大戦の時に、シーもランドも取ろうとして失敗した。その結果アメリカに戦争で負けて、そこからはアメリカ、巨大なシーパワー国家の一員として、その連携の恩恵を受けるようになって、今は立派なシーパワーの一員ということになってるということなんですね。なので現在は日本はシーパワーであるけれども、時としてシーパワーの国がランドまで、ランドの国がシーに、そういうことがありうるよというお話ですよね。
まさに現在言われている中国の一帯一路構想。これはランドの大きな国が海洋国家としても覇権を握りたいという、そういう現れだと言われてますので、うまくいくのかどうかっていうのが、地政学上はかなり危ぶまれてるところなんですよ。中国という大きな国をコントロールするだけでも大変なのに、そんなに外に、海まで攻めて出てって大丈夫か? これが非常に議論されてるんですね。
ですが日本、その中国だけじゃないですよね。ロシア、ウクライナ問題で北方領土、かなり取り沙汰されましたよね。北方領土がなぜ北方領土になったのか。第二次世界大戦が終わって、日本が降伏した後にロシアが攻めて取ったのが北方領土なんですよね。なので、いや、これは降伏した後でしょう。だから返してください。これが日本の主張ですよね。でもロシアは、いや、もう実効支配して人も住んでますと。返しませんと。こういう議論になるわけです。パワーバランス的にも、それがなかなか進まないということなんですけども、北方領土、皆さん、北海道の上の島がなんでそんなに大事なの? ここですよね。
これがあまり理解されてないことがあるんですけども、ロシア、返してよと。なんで返してくれないのと。これは地政学で考えると、ロシアは絶対に返さないんです。地政学上、北方領土はロシアにとって要所なんですよ。ロシアは北方領土を取っておけば、緩衝地帯が作れる。そう、まさにウクライナと同じ役割なんです。その緩衝地帯で何をしたいか? 一個は中国の監視です。そしてもう一つはアメリカへの牽制です。
この北方領土、ロシアが返しますとなった時に何が怖いと思います? もちろん北方領土が沖縄のように米軍基地の設営場所になるのが一番怖いわけです。そうなるとアメリカのミサイルを置く理由になってしまうわけですよ。なので安全保障上、この北方領土、小さなエリアかもしれません。ロシアの巨大な国土からすれば小さなエリアかもしれないんですけども、安全保障上、軍事拠点として絶対に譲れないんです。だから返ってこない。
そしてもう一つは拠点だけじゃないんですよね。地政学上もう一個押さえなきゃいけないのが物流なんですよ。海運の物流で、ロシアが開発した北極海ルートという、通れないだろうと言われてた北極海のルートを、ロシアが開発したらしいんですね。そしてそれを保護するためにも北方領土が必要なんです。なので物流と軍事拠点、その両方の面でロシアからすると絶対に返さない。これが北方領土なんです。ですが返すかもしれない。返すかもしれないということで、日本との交渉っていうもののカードに使われてる。それだけなんですよ。
じゃあ日本からするとどうかと言うと、日本からすると国民感情的に、やっぱり返してほしいってのはあるんですよね。ですがこれ、なかなか話が進まないのが、日本としての地政学上、どうしても押さえなきゃいけない拠点かというと、そうでもないらしいんですよ。ロシアからすると絶対必要なんだけれども、日本からすると絶対ではない。それが北方領土なんですよ。なのでギリギリのところで、返してもらうためには絶対この実力を行使するぞっていうところまで至らない。だから何年たっても返ってこない。それが北方領土なんですね。なので北方領土は今どうなってるの? なぜこうなったのっていうのは、その第二次世界大戦の時の出来事で、なぜこうなったのかは説明できて、なぜ返ってこないのかは地政学で説明できるんです。ここが非常に大事ですね。
じゃあ、なぜ米軍基地が沖縄にあるのか。これも非常に日本人からすると理解しづらいですよね。なぜよりによって沖縄なのか。ここなんですよ。ただ、このアメリカにとって米軍基地は完璧な軍事拠点って言われてるんです。まさにこれは軍事拠点なんですよ。もちろん沖縄県民の方の感情的問題とか、何度も起きてる事件であるとか事故であるとか、そういうものからすると、アメリカの軍の基地が沖縄にあるっていうのはどういうことなんだと。日本は主権国家のはずですよね。こういうことを言うわけですよね。なぜあるんですかと、米軍基地がある。これ、一個の理由としてアメリカの都合っていうのはすごく大きいわけなんですね。
アメリカは世界のコントロールの仕方というのを四段階に分けてるんですよ。レベル1、2、3、4ってのがあるんですね。最も強い支配の仕方というのは、その国の全土に軍事基地を置き、政治政策にも直接口を出してコントロールする。それが一番強い支配のレベルです。そして二番目の支配が、要所、その国の要所に軍事基地を置き、政策は間接的にコントロールする。これがレベルの2なんですね。そして3は、軍事基地は置かないけれども、近いところから、近いところに軍事基地を置き、間接的に圧力をかける。それがレベル3なわけですね。レベル4になると、それは軍事基地も置かないし、何か重要なことがあった時だけ干渉するという国家的干渉、支配の、覇権国としてどういうふうにコントロールするかで言うと、はっきり日本がどうっていうふうには言われてないわけですけども、この分類でいくと明らかにレベル2ですよね。
上から二番目ですよね。要所に基地を置いて間接的にコントロールするという、そういう支配の仕方をされているというふうに言えます。そしてその国は、アメリカがどうしても必要な国なわけですから、日本はね。なので軍事基地をどかしてくれというふうには強くは言えないし、もし強く言ったとしても、アメリカは安全保障上、絶対に沖縄は譲らない。そういう事情があるということです。我々は理解しておく必要があると。それがいいか悪いかっていうお話ではないんですよ。それがいいか悪いかっていうお話ではないですよね。そういうふうにできてるんです。
この地政学、非常に冷酷な学問って言われてるんですね。それは国家に対してこうあるべきだとか、こうしてほしいっていう感情とか思想、イデオロギーを全く配慮しない。国というのはこういうふうに動くものですよというのを分析するんですよ。なので強い国は弱い国に対してこういうことをしてきたし、するでしょう。しないと逆にやられてしまうということを分析して、こういう事情でこういう動きをするんです、大国は。だから小国はこうしなきゃいけないんですと。そういうことを分析する学問なんですよ。なので非常に冷酷な国家の側面を見る必要があるというふうに、この本でも言っています。
じゃあ横須賀の海軍、あれ何のためにあると思いますか? これも日本人は知らないんですね。なんとなく横須賀に海軍があって、なんとなく沖縄に米軍があるんだというふうに思ってるかもしれないです。横須賀の米軍基地ってのは、あれは何ができるかというと、米軍の軍艦の修理ができるという、こういう大きな個性があるんですね。特に空母とか巨大軍艦サイズの修理っていうのは、おいそれとできないんですよ。それができるっていう拠点が、もうそこから日本がなくなると、横須賀がなくなるとハワイまで行かなきゃいけなくて、ハワイと本土まで戻らなきゃいけないってなった時、アジアでこれ大事なの、これ海軍力なんですよね。
要するに空軍とか陸軍のことばかり、皆さん考えてしまう。海軍の時代じゃないのかって思うかもしれないですけど、海運を押さえてるチョークポイントを押さえて、それをいかにせめぎ合って取らせないかと、これ海軍力なんですよ。世界の覇権を握るかどうかのポイントは海軍にあると言われてる中で、その海軍の巨大な空母を直すためには横須賀は絶対に譲れないと。なので横須賀と沖縄、ここからは米軍はどきませんというふうに、地政学上は言われてるということなんですね。
じゃあ、そのアメリカの力で守ってもらえるのか、もらえないのか、そういう話にもなってくると思うんですけども、尖閣諸島ですよ。この尖閣諸島、どの辺りにあるか? 石垣島の北にあるんですよね。この尖閣諸島がなぜ大事なのか。これは台湾との関係の中で大事になってくるんですよ。ランドパワーの大陸の国というのは、基本的に外に打って出ようという時は、近海を制圧してから外に出ていくんですね。じゃないと邪魔で出れないわけですよ。それ、玄関前を掃除してから外に出るということですね。玄関前がちょっと障害が多いと出れないよということなので、その近海のエリアで、これまた非常にシビアな話があります。
台湾で有事が起こったとします。中国、台湾で争いになったらどうなるのか。これは中国は三方向から攻めるってことになるわけですよね。中国と台湾がある中で、中国から台湾へと真正面に行くのと、台湾を回り込んで東西から攻めるっていう、南北から攻めるということになるわけですね。それはロシア、ウクライナでも皆さん耳覚えがありますよね。聞き覚えがありますよね。東部からと、ベラルーシの北部からと、そしてクリミアの南部からと、同時に侵攻して首都キーウに向かっていったっていうニュースを聞いたわけじゃないですか。ああいうことが台湾で起きた場合ですよ。起きた場合に、正面からとその左右両方からという、その三方向で攻めるというふうに言われてるんです。
その時に、その一方向を邪魔してるのが石垣と尖閣なんですよ。これ非常に邪魔なんです。そこを通って裏から回り込みたいらしいんですよ、地政学上は。なので尖閣、石垣、これを押さえたい。そう思ってる。そんなこと考えたことありましたか? ないですよね。台湾有事になったらどうしようとかっていうお話はよくしますけども、じゃあ実際になった時にどう攻めるのかなんてことは考えもしないんですけども、どう考えてもこの三方向なんですって。それはロシアがウクライナに対して三方向から攻めたのと全く同じ理屈なわけですよ。行けるんだったら囲むということですよね。その時に一方向邪魔になってくる。それが軍事拠点ですよ。ですから石垣ってのは、これリゾート地として我々は非常に親しんでるわけですけども、この
沖縄の宮古島であるとか、与那国島であるとか石垣島であるとか、そういうのは軍事拠点としての非常に強い個性を持ってる。そういうことなんです。なので、それがじわじわと圧迫されてったら大問題なんですよ。これ尖閣を中国に取られるとなった場合、とんでもないことになっていく。石垣は孤立するわけですね。とんでもないことになっていくというお話なんです。
なので尖閣諸島や北方領土、それがなぜ中国やロシアとの議論の俎上に上がってくるのか。なぜ沖縄に米軍の基地があるのか。そういうお話を地政学で考えると、かなり理解が深まったんじゃないでしょうか。なぜそこなんだと。なので尖閣の流れから、石垣も非常に重要なポイントだったっていうことが分かりますよね。
では、ロシア、中国の中で米軍があるってことをどのように受け止めるのか。これ非常に難しい問題なんですけれども、何もしてないかというと、米軍が日本に貢献しているというポイントも、これ確かにあるんですよ。何か。石油なんです。日本は石油をどこから買ってるか、ご理解いただいてますか?
海運の覇権国は物流の覇権国。物流で何を主に送ってるか、石油って言いましたよね。そうなんです。その国家の電気を作るにしても、車を走らせるにしても、何をするにしてもエネルギーの、もちろん今グリーンエネルギーとか叫ばれてるのも石油から解放されるためですよね。この石油っていうものがもう一番のエネルギーになってから久しいわけですけども、この石油を運ぶには、これ船なんです。
そうじゃないやり方でもらいたいなと思って交渉してた国ってのが、実はロシアでしたよね。ロシアからパイプラインを引いて、天然ガスやそういうエネルギーをもらおうっていうふうな形で、北方領土をその特区にして、パイプをどうこうみたいな、そういうお話進んでたんですよ。でもそれがうまくいかなかった。ロシアと日本との関係は、ロシアとウクライナとの話でさらにこじれて、おそらくパイプラインっていうのは無理でしょうと言われてます。
なぜか。それはドイツがずっとやってきたから。ドイツとロシアでもパイプラインは引いてたんですよね。ノルドストリーム2、作ったんですよ。何兆円もかけて作ったわけです。でも今回の経済制裁によって、ドイツの方にその天然ガスとかっていうのをやるっていうのはなかなか厳しくって、結局海運なんですよ。
パイプラインでロシアからもらうっていうのがなかなか話が進まない。それ日本もヨーロッパも。だとしたら船でどこから買ってる? 中東からですよ。中東まで船行くのに、いくつのチョークポイントを通過するかご存じでしょうか? 二つです。東南アジア、マラッカ海峡。そして中東のホルムズ海峡。この二つを通らなきゃいけないんです。この二つ、普通に安全に通れると思ったら大間違いなんです。
マラッカ海峡の近くには海賊がいたり、ホルムズ海峡で襲われて、原因は分からない。詳細は不明で、その船が襲われた。そういうことがあるんです。それをガードしてるのが、これ米軍の艦隊。その石油ルートを守ってもらってるらしいんですよ。余計にこれは、米軍がなくなればいいのにとは言えないわけなんですよ。
厳しいですね。世界の争いは厳しいですね。マラッカ海峡とホルムズ海峡を通る。それは東南アジアと中東であると。そこを通してでしか石油はもらえないと。そういう海運の事情があった中で、そこを安全に通るにはアメリカの力をいただかなければいけない。だからこそアメリカの軍は日本にまだまだあるわけですし、守ってもらいたいというふうな、そういう姿勢を続けていることになるわけなんですね。
ですが自衛隊は何もやっていないわけじゃないんですよ。先ほどの対中国との話ですよね。尖閣諸島であるとかそういう話の中で、石垣が尖閣と同じように、軍事拠点として、あれ? これエリアに入ってるじゃないか。台湾有事の時には、これ石垣も大事になってくるんじゃないか。それはもちろん分かってるわけです。
だから日本何してるか。これもあまり日本人に知れ渡ってないんですけども、徐々に日本も沖縄の島に軍事拠点を拡大してるんですよ。2016年に与那国島、2019年に宮古島、そして石垣島で自衛隊の駐屯地を建設してます。石垣島にその自衛隊の駐屯地を建設して、実際にそこで軍を置くのか置かないのか、そういう議論は常にニュースになってるんですよ。でもあまり我々はそこをキャッチアップしないですよね。あまり我々そういうこと考えないんです。
でも沖縄っていうものがどういう立ち位置にさらされてるのか? アメリカ軍ってのはあるべきなのか? それとも自衛隊ってものを拡大するべきなのか? 中国はどう動いてくのか? そして北方領土の日本としての立ち位置、どうなってるのか。そういうことというのは常に進行してるんです。突然何かが起きるわけじゃなくて、じわじわと常に国家と国家の境界線ってのは押したり引いたりしてるんです。
なので、そういうニュースに少し敏感になって、あれ? これって危ないんじゃないのとか、これっていよいよやばいんじゃないのとかっていうのが分かるか分からないかってのは、すごく大事なことですよね。日本が実際どういう国防の体制を取るべきなのかっていうのは、これもいろんな考え方があるわけですよ。アメリカに守られてるべきなのか、それともアメリカ本当に守ってくれるのか。ここら辺もかなりグレーですよね。
なぜかと言うと、大国は常に自分の国の利益のために動く。これが大事です。なので自分の国の利益になると判断したら日本の拠点は譲りませんし、それは自国の利益にならないなと思ったら、いとも容易く撤退する。それも事実なんですよ。自分の国を守ることで必死で、その守るためなら拠点は絶対に譲らない。こういう国家と国家とのせめぎ合いというのがある世界で我々は生きていて、それを研究する学問が地政学であると。
その視点でもって、世界の拠点はどこなのか。そして紛争になる、その紛争の衝突地点がどこなのか。こういうことを理解しながらニュースを読むことで、少しでも紛争の起こらない、そういう日本であり続けたいなと私も思いますし、その地政学というものが戦争の説得力として使われ、地政学でここが必要だから戦争行けというふうに利用、悪用されるっていう、されたことのある歴史もあったらしいんですよ。なのでそういうふうに使われないためにも、地政学は知っとくべきだと私は思いますね。
地政学を利用して、ここの拠点は必要だから、だから軍隊必要だからもっと拡大して、もっとこうして、ああしてって言われないで、いやいや違うでしょと。正確に考えたら、こことここだけで大丈夫なんだから、それ以上の拡大はシーパワーとランドパワーの両取りになろうとしてるんじゃないんですか。これ以上行くと失敗しますよと。こういう議論ができるリテラシーの高い国民であれば、日本が過剰に何か軍に投資するっていうこともなければ、ものすごい弱気で何もかもを他国に任せるっていうことでもないっていう、そういうところになれるのではないかという。
非常に難しいポイントなんですけれども、まず考えることからということで、この授業をさせていただきました。日本人としてどういうふうに国防に関わるべきなのか考えていく。そういうきっかけになればと思います。ではまた。
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