新幹線は観光を増やすのか 星野佳路と堀江貴文が語る交通網の「つなぎ方」

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概要

堀江貴文のオンラインサロンHIUの定例会に、星野リゾート代表の星野佳路が登壇した。この回で話したのは、新しい路線ができれば観光客が増えるとは限らない、という問題である。星野は、延伸が逆に観光客を減らした例を挙げ、重要なのは速さより乗り換え、運賃、空港との接続だと述べた。新幹線好きを自称する堀江が各地の路線への不満や要望を出し、星野が観光の観点から応じる形で対談は進んだ。

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北陸新幹線の延伸で、金沢以西の観光客が減った

二人は石川県の加賀温泉で開かれた「エンジン01」以来の再会だという。堀江が「新幹線もできたし、いいところ」と話すと、星野は延伸後に起きたことを紹介した。北陸新幹線が金沢まで開業したときは、金沢の観光客が増えた。ところが福井県まで延伸されると、金沢より西の地域の観光客は開業前より減ったと星野は言う。

星野によると、この一帯の観光客の大半はもともと関西から来ていた。関西からは特急サンダーバードで乗り換えなしに来られた。延伸後はサンダーバードが途中止まりになり、敦賀で新幹線に乗り換えなければならない。所要時間の面でも手間が増え、運賃も全体に高くなった。関西からの客が減った分が、新幹線で東側から加賀温泉に来る客の増加分を上回った、というのが星野の説明である。

星野は、開業前に「新幹線が来る」と盛り上げすぎた面があるとも指摘した。その期待をもとに駅や周辺で公共工事が進められ、結果が期待外れだったため、今は各方面から批判を受けているという。ただし星野は「今のところ」と繰り返し断っており、最終的な評価とはしていない。

在来線特急の弱さと、大阪延伸の見通し

堀江はサンダーバードに「いい思い出がない」と話した。雨や風、雪に弱く、琵琶湖の横で鹿をはねて1時間遅れたことがあり、少なくとも2回は足止めされたという。だから早く新幹線を通してほしいと思っている。

星野は、通すなら大阪まで通さなければ意味がないと応じた。ただ大阪までの全線開業はかなり先で、20年後くらいになると見ている。星野は、自分たちが観光の仕事をしている間には開通しないだろうと話した。堀江は、米原で東海道新幹線に接続する案なら用地の確保も難しくなく安く済むと考えていた。しかし関西からの観光客にとっては、米原でも乗り換えの煩わしさは残る。星野のこの指摘を受けて、堀江も米原ルートの問題点に納得した様子だった。

星野は、サンダーバードより頻繁に止まる例として、新宿と松本を結ぶ特急あずさを挙げた。堀江は止まった経験がないというが、星野は「よく止まる」と言う。新幹線は高架で人が入り込まず、踏切もなく、鹿も入ってこない。在来線を走る特急はさまざまなトラブルを抱えやすく、あずさもサンダーバードと同じ状態だ、というのが星野の見方である。

西九州新幹線と「車両基地」の圧力

星野がもう一つ面白い例として挙げたのが、どこにもつながっていない約60kmの西九州新幹線だ。堀江は、佐賀県知事が整備に反対している路線だと補足した。堀江は、佐賀県に新設される武雄アジア大学に関わる話を持ち込まれており、「油断すると学長にさせられそう」と笑った。星野は、学長になったら早く新幹線を通してくれと言ってほしいと返した。

星野によると、未開業区間の問題は、整備費用をJR、国、県がどう分担するかで合意ができていないことだ。それでも先に一部区間を作ってしまう手法を、星野は面白いと評価した。九州新幹線では、先に新八代から鹿児島中央までを開業させてこの方式が成功した。ポイントは車両基地を作ったことだと星野は考えている。西九州新幹線も大村湾のあたりに車両基地を作った。それが全線をつなぐ方向への圧力になっているというのが星野の読みで、状況は相当動いてきていると述べた。堀江が「僕より詳しい」と言うと、星野は新幹線が大好きなのだと答えた。

堀江も新幹線好きを公言し、東海道新幹線に個室ができるのを楽しみにしているという。乗り始めたころにはすでに個室がなくなっていた。人にじろじろ見られるので、個室のほうがいいそうだ。

空港と新幹線がつながっていない国

堀江が次に挙げた要望は、北九州空港への新幹線の乗り入れだ。北九州でスタートアップ関連のアンバサダーを務め、事業も多く手がけているという。星野は、空港と新幹線が直結している場所は日本に一つもないと指摘した。スイスでは国際空港と主要な鉄道がつながり、すぐに移動できる。国内移動で新幹線がこれほど重要なのに、ここは日本の課題だと星野は述べた。

堀江は、同じ運輸省の管轄だったのに、旧国鉄の人たちがなぜあれほど仲が悪く頑なのかと疑問を口にした。例として、JR東海の葛西敬之氏の名前を挙げた。堀江は、葛西氏の主張には正しい面もあったと認める。新幹線を中国に輸出すれば技術を盗まれると反対していたのは、堀江によれば葛西氏であり、実際に輸出を主導したのはJR東日本と川崎重工だった。今では中国の製品のようになってしまった、というのが堀江の見方である。一方で、そうではない面もたくさんあるとして、堀江は静岡空港の例に移った。

静岡空港の真下を走る東海道新幹線

静岡空港の地下には東海道新幹線が走っているが、駅はない。堀江は、隣の駅とのダイヤの問題などを理由に拒まれていると話し、駅を作ればいいと主張した。星野も、新幹線の線路と空港が物理的に重なっているのはここだけであり、駅ができれば劇的に変わると述べた。

堀江は、静岡空港は富士山が見えるのでインバウンドに非常に人気があり、新幹線がつながれば1時間以内に東京へ行けると続けた。星野はさらに、羽田と成田の容量がかなり限界に近づいており、それがインバウンドの増加を抑える理由の一つになっていると指摘した。静岡空港がつながれば、その受け皿として生きてくるという見方である。堀江は、今建設中の羽田アクセス線ではなく、羽田に新幹線を迂回させればいいとずっと思っていたとも話した。

リニアは観光のためにならない、と星野は考える

堀江が、リニアができれば多少は柔軟性が出るかもしれないと言うと、星野は自身の経験を語った。以前、政府の観光関連の委員会に参加していたとき、リニアを作るかどうかの議論があった。星野の意見は、観光客から見れば新幹線はもう十分速く、それ以上の速さを求める市場のニーズはあまりない、というものだった。新幹線への要望があるとすれば価格を下げてほしいということで、それが当時の委員会のおおよそのコンセンサスだったという。リニアは速くなるが、運賃は高くなる。だから観光の観点では、あの区間はリニアでないほうがいいと星野は考えている。

加えて、リニアも当面は名古屋止まりになる。向こう20年余りは名古屋で乗り換えが必要になり、北陸新幹線と同じ問題が起きると星野は見ている。

では、どこにリニアを通すべきだったか。星野の答えは、関西国際空港と大阪、京都を結ぶ路線だ。星野は関空を日本で一番すごい空港と評価する。長い滑走路が2本並び、同時に発着できる。ただアクセスに問題がある。関空と大阪市内、京都がリニアで結ばれれば大きく変わり、観光だけでなくビジネスの面でもプラスになると星野は述べた。

政治家は利用者の目線で見ていない

堀江は、政治家はそういう目線で交通を見ないと話した。広島市に行くたびに、広島空港の遠さに強くいら立つという(よく行く尾道や福山ならそれほどでもない)。IT企業の経営者だったころは政治家に働きかけなかった。しかしロケットや予防医療の事業を始めてからは政治家と頻繁に会うようになり、彼らに情報をインプットすることが大事だと感じたという。

堀江の印象では、政治家は陳情を受けることに慣れすぎていて、自分からはあまり勉強していない。こうした問題の存在にそもそも気づいていないのではないか。だからこちらから積極的にロビー活動をしなければならない、と堀江は考えるようになった。

北海道新幹線は新千歳・札幌・倶知安でよかった

堀江は、スキーだけでなく、グリーンシーズンにもアドベンチャーレースやキノコ狩りなどでニセコによく行く。そのたびに遠いと感じるという。だから北海道新幹線は、新千歳空港から札幌、倶知安までを結べば十分だったと主張した。新青森から函館方面の区間は要らない、無駄以外の何物でもない、とまで言う。堀江の推測では、青函トンネルを新幹線規格で作ってしまったので、使わないともったいないという発想から来ている。

ところが皮肉なことに、トラック運転手不足の問題で貨物の需要が大きく増え、JR貨物の業績も良くなった。その結果、新幹線との共用で青函トンネルを通りにくくなるのは困るという話になり、速度の問題も出ていると堀江は言う。最近は貨物新幹線も登場しており、東北新幹線に乗ったときに実際に見たそうだ。東北から鮮魚などの食料品を運んでいるらしいという。

堀江が「新千歳から倶知安まで新幹線ができたら最高じゃないですか」と言うと、星野は、自分はトマムという大きなリゾートを経営していると返した。今は「トマムはニセコよりアクセスがいい」ことが売りなので、新幹線が最高かどうかは自分でよく考えなければいけない、と冗談交じりに答え、会場の笑いを誘った。

北九州空港は福岡の補完になる

堀江は、北九州空港への接続は単線でいいと考えている。新幹線に乗るのはどうせ15分ほどだからだ。星野も、空港と新幹線が同じ駅、同じターミナルでつながることは日本にとって非常に大事なテーマだと応じた。堀江は、フランスではTGVがシャルル・ド・ゴール空港に接続しており、シャンパーニュで知られるランスの駅にも近いと例を挙げた。星野は、大規模な整備でなくても、静岡空港のように接続できるし、北九州にもちょっと寄る形にできるだろうと述べた。

星野によれば、北九州空港の意味は福岡空港の補完にある。福岡空港は都心へのアクセスが良すぎて夜間の発着ができない。そのため、到着が間に合わない便が他の空港に向かったり東京に引き返したりすることが起きている。そのバックアップとして北九州空港があると便利だという。さらに北九州空港は、今大きく伸びている関門海峡の観光エリア、つまり下関や門司にも近い。

堀江が北九州の最大の問題はホテルがないことだと言うと、星野は同業他社の悪口は言いにくいと笑いながらも、否定はしなかった。堀江は北九州によく行くのに、なかなかホテルができないと嘆き、自分が北九州の野球チームを買収したことにも触れた。

最後の提案:湖から飛ぶ水上機

対談の終わりに、星野は新しいことに次々取り組む堀江に一つ提案をした。湖の多い国では湖から飛行機が飛べる。日本にも湖はかなりあり、そこからプロペラ機が自由に飛べるようになれば便利になるはずだ、という。堀江は、実は戦前の日本にはそうした水上飛行場があり、当時は水上飛行場のほうが多かったと応じた。星野はさらに、日本の観光で最大のボトルネックになるのは確実に何かについて語りかけていたが、公開された映像はそこで途切れている。