金沢大学はDMPを起点に即時OAをどう支えているか:JAIRO Cloud公開支援機能の試用と評価

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概要

金沢大学学術メディア創成センターの高田良宏氏は、GakuNin RDMの運用や調整に実務の立場で携わってきた。本発表では、JAIRO Cloudの新しい公開支援機能を試用し、金沢大学での学内運用を想定したときの有効性と課題を整理している。

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高田氏は個々の画面の使いやすさよりも、全体の流れを重視して評価した。DMP(データマネジメントプラン)の作成からGakuNin RDMでのデータ管理、成果の公開、即時OA(オープンアクセス)までを、一貫して正しく支援できる機能になっているかという観点である。評価の軸として挙げたのは次の4点で、高田氏は特に信頼性の確保を最も重要だとした。

  • DMP作成から公開・OAまでが一貫した運用になっているか
  • 研究者と担当部局の負担軽減につながるか
  • 研究者と担当部局のコミュニケーションを円滑にするツールになっているか
  • 信頼性を確保できるか

発表は、金沢大学が進めてきた研究データ管理と即時OAの取り組みを紹介したうえで、この観点から公開支援機能を検討する構成だった。

地方中規模大学が即時OAを続けるための前提

金沢大学の規模は、学生が1万人余り、教員が1,200名余り、Web of Scienceに掲載される論文が年間1,300〜1,400本程度である。高田氏はこれを地方の中規模大学と位置づけた。この規模の研究活動に対して即時OAを持続的に実現するには、研究者に任せきりにせず、システムと組織による支援が欠かせないと述べ、その視点で以降の話を進めた。

20年のリポジトリ運用と、GakuNin RDM以前からの研究データ管理

金沢大学の機関リポジトリは2006年に運用を始め、2026年で20年になる。研究データ管理については、GakuNin RDMが動き出すより前の2012年から取り組んでいる。2020年からはGakuNin RDMの基盤を使い始め、2021年にはオープンサイエンスの文脈での整備も進めた。

オープンアクセス・オープンサイエンスの推進にあたっては、外部の予算事業に採択されたことを受けて、制度、組織、基盤の3つの面から整備を進めてきた。本発表で中心に扱ったのは基盤の整備である。研究データの管理計画であるDMPから、論文とその根拠データを含む研究成果の公開までを一気通貫で支援する基盤が必要だと考え、大学独自に2つのシステムを開発した。1つはDMP作成から公開までを支援する「オープンサイエンスシステム(OSS)」、もう1つは即時OAを支援する「プレクラ」である。

組織を「ワンストップの窓口」に集約する

高田氏は、一気通貫のシステムを動かすには組織の側もバラバラでは困ると述べた。そこで金沢大学は、研究基盤統括本部の下に研究データマネジメント統括部門を設け、窓口を1つに集約した。

実際に支援を担うのは、研究推進部、図書館、情報基盤センターなど、それぞれの専門部局である。ただし研究者からは、システムも窓口も1つに見えるように体制を組んでいる。研究者がどこに問い合わせればよいか分からない状況は大きな負担になる。一方、担当者は必要な場面でだけ支援すればよい。高田氏はこの体制によって双方の負担が軽くなると説明し、双方向のコミュニケーションもこのシステム上で行えるようにしたと述べた。

DMPを「更新され続けるメタデータ」として扱うOSS

OSSは「DMPドリブン」とも言える設計になっている。研究者は研究の最初にDMPを登録する。研究を始め、進め、最終的に論文や根拠データを公開するまでの各段階で、そのDMPを修正しながら活用する。最終的には、研究開始時に作成したDMPを公開用のメタデータに引き継ぐことを目指している。

高田氏は、DMPを単なる研究計画書として扱うのではなく、研究期間を通じて更新されるメタデータとして位置づけていると強調した。研究開始前から成果公開までDMPを発展させ、次の研究へつなげる循環をつくろうとしている。DMPは資金配分機関の様式に限らず作成でき、外部資金によらない研究も選べる。発表ではAMEDの例も示されたが、時間の都合で説明は省かれた。

OSSの画面には、左上から「研究開始前」「データ管理」「論文発表後」「データ公開」と、研究のライフサイクルに沿った手続きが並ぶ。高田氏によれば、画面を見るだけで研究を進めるうえで何をすればよいかがおおよそ分かり、研究者は各段階に応じた届け出ができる。

GakuNin RDMの利用も、データ公開も、DMP修正を経た申請で行う

具体例として、研究データをGakuNin RDMに保管したい場合の流れが紹介された。金沢大学では、研究者が各自の判断でGakuNin RDMを使い始めるのではなく、申請制にしている。研究者は最初に作ったDMPのメタデータを「GakuNin RDMを使う」という内容に修正して申請し、承認されるとGakuNin RDMが使えるようになる。これにより、大学として研究の状況をきちんと把握できる。OSSの画面では、その研究がいまどの段階にあるか、たとえばデータ保管の段階にあることが一目で分かる。

研究データを機関リポジトリで公開する場合も同じ考え方をとる。金沢大学では、データの公開は学内の委員会の審査を経て行う。研究者はDMPを修正して公開申請を出し、委員会が認めると機関リポジトリで公開される。

研究データの実体はJAIRO Cloudとは別のストレージに置く

高田氏は補足として、研究データそのものはJAIRO Cloudには登録せず、「金沢大学オープンデータ」という別のストレージに保管していると説明した。研究者がOSSから申請すると、データはまずオープンデータに保存される。委員会が審査して許可すれば、機関リポジトリにメタデータが登録される。却下された場合は、その時点で削除される。

別にした理由として、高田氏は2つを挙げた。1つは容量の問題で、研究データや根拠データをすべてJAIRO Cloudに登録すると、すぐにいっぱいになってしまう。もう1つは手続きの問題で、公開の前に論文との関係や学内で公開してよいかを委員会で審査する必要があるため、いきなり機関リポジトリに登録することはできない。

オープンデータの詳細は時間の都合で省略され、資料の参照が促された。特徴として紹介されたのは、研究者が自分でこれまでに登録したデータの一覧を把握できる点である。高田氏は、公開してJAIRO Cloudに載せてしまうと、自分が公開したものを後から検索するのも難しくなるため、この点を工夫したと述べた。

OA対応を担う「プレクラ」

OSSと同時に作られたプレクラは、主に即時OA向けの機関リポジトリ登録支援システムである。機能は大きく2つある。1つはOA義務化への対応として、論文と根拠データの公開を支援する機能。もう1つはワンストップ支援の一部として、研究者がOSSでDMPを作ってデータを管理し、そのメタデータをプレクラに送り、確認を経て機関リポジトリに登録する機能である。

高田氏は設計方針として、研究者の負担を増やさないこと、図書館の業務も増やさないことを挙げた。とりわけ大事なのは、研究者が自分の申請の状況をきちんと把握できることだという。

研究者向けの画面では、researchmapやOSSなど複数の情報源から取り込んだ論文を登録できる。研究者自身が登録申請を行え、各論文がいまどの状況にあるか、これまでに何を登録したかも一覧で分かる。

研究データの登録はさらに自動化が進んでいる。OSSからメタデータをプレクラに送り、必要なフォーマットのチェックやJPCOARスキーマへの適合確認を行ってから機関リポジトリに登録する。高田氏は、項目をきちんと入れないとIRDBに収集されないといった事情にも触れ、こうしたチェックを事前に済ませる仕組みにしていると説明した。

論文については、OSSとの本格的な連携はまだできていない。ただ、OSSからメタデータをダウンロードする仕組みはすでにあり、データと同じように半自動で登録できるよう準備を進めているという。

今後の展望

OSSとプレクラの連携について、高田氏は次の方向性を示した。論文情報もOSSから自動で取り込めるようにし、論文と研究データの両方で研究開始から公開までの一気通貫を目指す。あわせて、メタデータ補完の自動化や、論文と根拠データのリンクの強化も進める。最後の展望として、国立情報学研究所(NII)のサービスとの連携を前提に、どう進めるべきかを検討しているとした。

JAIRO Cloud公開支援機能を試用しての評価

高田氏は発表の2週間ほど前から公開支援機能をテストした。個別の細かい機能については別途報告済みであり、発表では、DMP作成から公開までを通した全体としての評価を示した。

DMPとの連携と一貫性について。 高田氏は、今回の機能を含めてUIは非常に優れていると評価した。そのうえで、公開の段階で改めてメタデータを入力するなど、機能が比較的独立しているように見えると指摘した。研究の初期段階からDMPを活用し、前後の工程と連携した機能になることが望ましいという。

教員の負担軽減について。 高田氏は「厳しいかもしれない」と前置きしたうえで、OAに関する負担軽減は限定的ではないかと述べた。図書館員が関与する部分がまだ多いからである。先行の発表では、研究者側で一括チェックしてしまえばよいという意見も出ていた。これに対して高田氏は、研究者は本当に公開してよいかを確認しないまま送ってしまうだろうと見る。その結果、図書館の仕事が増えるので、研究者と担当者がやり取りできる仕組みが必要ではないかと考えている。

研究者と担当部局の連携について。 ここで高田氏は金沢大学との比較を示した。金沢大学は、大学がデータ管理を支援するという方針のもと、OSSによる一気通貫型の仕組みとワンストップ窓口を設け、状況を把握しながら運用している。一方、GakuNin RDMやJAIRO Cloudの支援機能は研究者が主体となって進める設計である。高田氏はこれを将来的には必ず必要なものだとしつつ、担当部局と研究者をつなぐ機能が欠けていると考える。そうでなければ、結果的に担当部局の負担が増えるのではないかという懸念を示した。

信頼性の確保について。 高田氏はこの点がより難しいと述べた。公開の妥当性と信頼性を担保するには、公開してよいかの判断、機密性への配慮、メタデータの誤りや項目の補完など、多くの課題がある。金沢大学ではOSSとプレクラでこれらをきちんとサポートしている。そのうえで高田氏は、公開内容とメタデータの品質を継続的に担保することが課題になるとし、機関による支援プロセスが重要ではないかと述べた。

評価できる点も気になる点も多くあった。ただ、気になる点は先の発表者がすでに詳しく話していたため、自身の発表では5項目程度にまとめたと断っている。

JAIRO Cloud支援機能への期待と「機関による支援を組み込んだ基盤」

最後に高田氏は、公開支援機能への期待を次のようにまとめた。まず、DMPを起点とした管理と連携につながること。次に、研究者と担当部局の双方の負担を減らすため、コミュニケーションを組み込んだワークフローを実現すること。さらに、メタデータ管理を高度化すること。具体的には、代理入力の場面でのOAアシスト機能のような支援や、今後のAI活用を例に挙げ、もう少し支援が必要だとした。

結びとして高田氏は、「機関による支援を組み込んだ持続可能な即時OAの基盤へ」という方向性を示した。図書館員はもう増えないという話もある。しかし高田氏は、支援の仕組みを一度きちんと実装すれば、その部分の負担はAIの活用によって減らせるのではないかと考えている。今後に大いに期待できるとし、引き続き評価していきたいと述べて発表を終えた。