藤田文武が語る「公金還流」報道への説明と、自維連立「12本の矢」の読み方

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概要

日本維新の会の共同代表・藤田文武氏が、中田敦彦氏の聞き手で、自民党との連立に至るまでの経緯と連立後の課題を語った対談である。中田氏の関心は、維新が自民党と組んで、維新に期待されてきたことを本当に実現できるのかという点にある。対談では、藤田氏が幹事長として関わった旧文通費改革の交渉、「しんぶん赤旗」が報じた秘書の会社への支出、そして藤田氏が主導して作った連立合意「12本の矢」が順に取り上げられた。藤田氏は、政党の生存戦略をいったん脇に置いてでも政策実現に踏み込むという立場を示した。一方で中田氏は、政治とカネの問題で自民党を延命させたように見えれば維新は大きな代償を払うと、繰り返し指摘した。

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2:26

当選3年で幹事長になった経緯

中田氏はまず藤田氏の経歴を整理した。大阪府出身で筑波大学を卒業し、スポーツマネジメントのベンチャー企業を経て自ら会社を立ち上げ、経営していた。2017年の衆院選に維新公認で出馬して落選し、2019年の衆院補欠選挙で初当選した。中田氏はYouTube大学を始めたのが同じ2019年だったと言い、比較的最近政治家になった人だという印象を述べている。

それから3年後の2021年11月に、藤田氏は維新の幹事長に就任した。藤田氏自身は「それだけ人手不足だった」と笑ったが、背景には同年10月の衆院選がある。維新の議席は11から41へ約4倍に増え、比較第三党に躍り出た。藤田氏はこの伸び幅について、最近言われた国民民主党や参政党の躍進以上に驚かれたと振り返る。中田氏によれば、藤田氏はもともと馬場伸幸氏のかばん持ちから始め、馬場氏が代表に就く際に当時の松井一郎代表の推薦を得て幹事長に就いた。同じ時期に政調会長には音喜多駿氏、総務会長には柳ケ瀬裕文氏が就き、若い世代が党三役に抜擢された。

4:56

旧文通費問題はどう始まったか

藤田氏の幹事長就任と同じ2021年11月に、旧文通費(文書通信交通滞在費、現在の調査研究広報滞在費)が争点になった。きっかけは、この選挙で初当選した維新の1期生議員の問題提起だった。この議員は熊本県の副知事を経て衆院議員になり、前回の衆院選で落選した後、現在は熊本県八代市の市長を務めていると藤田氏は説明した。議員になってすぐ、在職が1日だけでも毎月100万円の非課税の資金が満額支給されたことに疑問を投げかけたのである。

論点は複数あった。非課税であること、使い道が公開されないこと、日割りではないこと、使っても余っても毎月100万円が支給されることだ。藤田氏は、この資金は経費として受け取っているのに、通称「第二の給料」と呼ばれており、遊びに使っても分からない状態だったと述べる。ただし維新は1期生の発言が注目される前から、実際に使った分を領収書付きで党のホームページに自主公開しており、今も続けているという。

日割り支給については数か月で法改正が実現した。しかし領収書の提出、使途の範囲、残額の返納は解決しなかった。結局変わったのは名称で、「調査研究広報滞在費」になった。中田氏が名称変更の意味を尋ねると、藤田氏は「正直どうでもいい」と答えた。官僚機構は名前や法案の文言を重視するので、使える範囲を決め直す議論の中でこの名称になったという。しかし維新にとっての本丸は、政治活動に使ったことを証明するために使途を公開することだった。名前を変えて終わりにしないでほしいというのが当時の思いだったと藤田氏は語る。

9:14

木原誠二氏との交渉と「嘘つき内閣」

話が動きかけたのは問題提起から3年後の2024年である。岸田内閣の時期で、自民党側の窓口は木原誠二氏だった。藤田氏の記憶では、当時の木原氏は幹事長代理で、岸田総理と茂木敏充幹事長の指示を受けた名代として来ていた。維新側は藤田氏と国対委員長の遠藤敬氏が中心となった。自民党側の提案は、旧文通費の公開と残額返納を前に進める代わりに、自民党の別の案件に賛成してほしいというものだった。維新は、文通費の問題に決着をつけない限りどんな交渉のテーブルにもつかないという立場で臨んだ。

藤田氏によれば、公開と残額返納という中身はすんなり合意した。問題になったのは、合意文書にスケジュールを明記するかどうかだった。総理の指示で始まった交渉であり、今国会中に仕上げるという前提で進んでいたが、2週間ほどもめた末に、自民党側から期日を外してほしいと求められた。藤田氏は、期日や国会日程を決めるのは国対の側で、木原氏は幹事長室の人だったため、その調整の手間を省いたのだろうと推測する。総理総裁がやると言っており、遠藤氏も言質を取っていたので、維新は期日を書かないまま他の議論に進んだ。

ところが、その国会会期内に結論は出なかった。当時の馬場代表は「嘘つき内閣」と激しく非難した。中田氏はここで「自民党に裏切られた維新」という構図が明らかになったと整理する。

12:52

党勢の後退と幹事長辞任

その4か月後の衆院選で、維新は44議席から38議席に減り、比例票も大きく落とした。2か月後に藤田氏は幹事長を辞任している。藤田氏の説明では、これは選挙結果の責任をとった形ではない。維新では衆院選、参院選、統一地方選のたびに、代表選を行うかどうかを特別党員(現職議員や支部長)の投票で決める。このときは代表選を行うべきだという票が過半数となり、馬場氏が出馬しないと表明した。代表と幹事長はセットのようなものなので、藤田氏も全ての役職を降りたという。

藤田氏は、旧文通費で「騙された」問題が議席減に「相当」影響したと認めた。幹事長時代の最初の2年間は好調だった。参院選で躍進し、統一地方選では約400人だった地方議員を600人にする目標を藤田氏が立て、結果は800人になった。経営者出身の藤田氏は中期経営計画のような数値目標で党内をまとめようとし、全国の支部の活性化や職員の増強といった行動に落とし込んだ。統一地方選の後は、立憲民主党より支持率が高い時期が半年ほど続いたという。

下降の要因として藤田氏は三つを挙げた。万博への批判、斎藤元彦兵庫県知事の問題が維新と重ねて報じられたこと(これにうまく対応できなかったのは自分の実力不足もあると藤田氏は述べた)、そして政治改革の議論で自民党に手を貸しながら騙されたことである。「頼りない」「騙される方が悪い」とも言われたという。中田氏が、騙した側ではなく騙された側の信任が下がるのはいびつではないかと問うと、藤田氏は「政治は結果責任」だと答えた。

17:01

改正歳費法で何が変わったか

藤田氏が「それだったら先にやっといて」と言いたくなるほど、その直後に改革は実現した。維新は選挙を一度くぐった後も交渉を続け、岩谷良平幹事長をはじめとする新執行部が取り組んで、一つ国会を飛ばされた形で2025年8月施行の改正歳費法が成立した。藤田氏は、内容は維新が合意し主張してきた通りのものだと述べる。維新の源流である日本維新の会が誕生した2012年以来、10年以上の悲願だったという。

中田氏の整理によると、改正の内容は次の通りである。1万円を超える支出について使途を記した報告書をネットで3年間公開する。領収書を提出し、請求があれば領収書の内容も公開する。残額は返納する。選挙活動には使えない。

中田氏は、議員個人の資金管理団体への寄付が認められている点が抜け穴ではないかと尋ねた。藤田氏の説明では、この資金は議員個人に支給されるため、それで人を雇うと個人に雇われる形になる。個人に雇われることに不安を感じる人もいるので、後援会組織である資金管理団体にいったん寄付し、社会保険を付けて組織として雇用することが想定された。その場合も、100万円のうち例えば30万円を資金管理団体に移せば、その30万円が人件費などに何に使われたかを同じ枠内で公開することになっており、逃げられない仕組みだという。中田氏はこれで不公平感がかなり軽くなったと受け止めた。藤田氏も、実質的に仮払い方式になったので内容はきちんとしていると評価した。ただし先送りされたことについては「はめられた感はある」と述べている。

この経験から、12本の矢では期限にこだわった。最初に項目を書き出して自民党に提出した文書に「入れられるものは全部期日を入れる」と但し書きを付け、自民党側も当然だと受け入れたという。

23:35

「しんぶん赤旗」報道と藤田氏の反論

続いて中田氏は、しんぶん赤旗が報じた疑惑を取り上げた。政党交付金と旧文通費を原資として、藤田氏の公設第一秘書が代表を務める会社に合計2000万円規模の支払いがあり、公金を身内に還流しているのではないかという指摘である。藤田氏は「還流」という表現はイメージを悪くするものだとし、取引先に印刷などの実態のある仕事を発注し、相場も妥当だと反論してきた。

番組ではここで補足が入った。藤田氏が取材に来た赤旗日曜版記者の名刺の画像をXに投稿し、報道側との対立が表面化したこと。11月上旬に、維新の大阪府総支部がビラ作成費として政党交付金約100万円を同じ会社に支払っていたと報じられたこと。11月16日号の赤旗日曜版が続報で、5万円以上の売上代金に対して発行された紙の領収書に収入印紙が貼られておらず、印紙税法上の問題があるのではないかと指摘したこと、である。

中田氏は、維新の創設者である橋下徹氏の見解も紹介した。実費以上の利益があればアウトの還流と言えるが、そうでなければ問題ないのではないか。ただし外形的公正性も重要で、さらに説明と調査が必要だろう、という趣旨である。そのうえで中田氏は、公設秘書は国家公務員の扱いであり、兼職の手続きは取っていたのかと確かめた。

藤田氏は兼業届を提出していたと答えた。公設秘書は原則として専業だが、議員が認めて届け出れば報酬を得て他の仕事をしてよいのが法律の定めで、兼業している秘書は多いという。藤田氏自身は兼業を認める方がよいという考えだ。この秘書は「秘書業界でトップ3に入るぐらい」優秀なビジネスマンで、期数の浅い自分が幹事長や共同代表を務めながら事務所を回せているのもそのおかげだと語る。公設秘書の給料は一線級の民間企業と比べれば安く、優秀な人材を雇うには自分でも稼げる道を認めることが選択肢になる、という説明である。中田氏が取引を通じて秘書に利益を回しているのかと尋ねると、藤田氏はそれを明確に否定した。秘書は自分の足で稼いでおり、この取引とは「全く別の話」だという。

28:49

外形的公正性をどう考えるか

違法ではなく手続きも踏んでいる。それでも中田氏は、税金由来の資金が秘書の会社に流れることには「身内に流している感」が残ると指摘した。外注先を変えれば批判は受けない。今後も発注は妥当だと言い続けるのか、それとも外注に切り替えるのか、と立場を問うた。

藤田氏は吉村洋文代表とも相談したと明かし、「李下に冠を正さず」をどこまで徹底するかの問題だと述べた。あらぬことを言われるのは不本意なので、今後は別の業者を使うことも選択肢として取るべきだと考えている、というのが現時点のスタンスだという。

一方で藤田氏は、自分のやり方の方がむしろ透明だという考えも説明した。収支報告書には支払先がそのまま載る。代理店や元請けを間に挟んで同じことをすれば透明性は下がるが、そうしている人は結構いるはずで、実態に合わせて報告する方がクリーンだという。「全部説明できるし、全部公開されてるから言われる」という言葉はこの文脈で出た。入札に議員が横やりを入れるのが問題なのは意思決定を歪めるからだが、政党交付金は議員の判断で広報活動などに使ってよい資金であり、入札をしている議員はおそらく一人もいない。発注した理由はクオリティの高さで、政治資金規正法と公職選挙法をクリアしたビラを短納期で作れる業者は見つけにくいという。

金額については、2000万円は2017年の初挑戦以来の約8年分であり、一度に払ったものではないと説明した。選挙区に全戸配布するビラは1回100万〜150万円かかり、印刷だけで数十万円になる。これを会社が取りまとめるので、9割以上が原価だという。さらに藤田氏は、相場より安く受注させれば、それは現物寄付を受けたことになると指摘した。高すぎても安すぎてもいけないのがこの業界だという。

中田氏は、これから政治とカネで自民党に切り込む側には刑事や検察官のようなクリーンさが求められると述べた。「これはいいでしょう」と言うより「これもダメだよね」と言う藤田氏の方が応援したくなるとも語り、自動車のリコール対応にたとえた。中田氏はさらに、藤田氏はロジカルに説明するほど言い訳しているように聞こえてしまうので、大阪弁で「悪いことしてないけど、もうやめますわ」と二言ほどで済ませた方がいいと助言した。藤田氏は毎週の定例会見でおそらく聞かれるので、そうしてみると応じた。藤田氏は、政権与党として切り込む以上、改めるべきは改め、批判を受けない方法に変えるのはその通りだと認めている。中田氏はこの件について、双方の主張は分かるが、レッドカードやイエローカードの案件ではないと受け止めたと述べた。

35:55

12本の矢を「Do」で絞り込む

対談の中心は、藤田氏が主導して作った連立合意「12本の矢」である。12分野48項目に及ぶ。吉村氏と藤田氏が全項目を説明した配信について、中田氏は「冗談を入れながらだから尺が長い」と笑った。一方で、恣意的に重みを付けられるのは嫌だという2人の発言も聞いていたので、独自のルールで分類したと説明した。

分類は次の通りである。期限のないものは「ビジョン」。「検討」「推進」「議論」「目指す」「図る」「法案策定」「制度設計」「協議会設置」などは方向性を示す「プラン」。期間や部署・役職の創設は具体的だが運用はこれからなので「スタート」。「制定」「成立」「実現」「実行」「規制」と言い切っているものが「Do」である。この方法で10項目が残った。藤田氏は「素晴らしい分類」「逆にそれ欲しいぐらい」と応じた。

次に中田氏は期限を見た。番組「ReHacQ」で高橋弘樹氏に「締め切りが早い方が重要なのか」と問われた藤田氏がそうではないと答えたのを見て、ごまかしている口調ではないと感じた。そこで先にDoで絞り、その中で期限の濃淡を見ることにしたという。期限は5段階あった。令和7年中(12月)、令和7年度中(2026年3月)、令和8年の通常国会中(6月)までは約3か月刻みで、その後の令和8年度中は6か月、さらにその先は12か月空く。中田氏は、3か月刻みの範囲が実際のプロジェクトで、それ以降は希望に近いと解釈した。10項目のうち7つがプロジェクトの枠に入るので、これを「自維連立7プロジェクト(G7)」と名付けた。

G7のうち12月期限のガソリン暫定税率の廃止と電気・ガス料金の補助は、1本目の矢の物価高対策にあたる。合意が取れており、ひっくり返る要素はないと中田氏は見る。6月期限の4項目のうち3つは高市首相が就任前から持論として掲げてきた案で、維新案件というより「高市案件」として進むだろうと中田氏は推測した。そうすると、維新にとっての本当の矢は、3月期限の医療制度改革と6月期限の副首都法制定の2本になる。藤田氏は「天才っすね」と応じ、医療制度改革は広く言えば社会保険料を下げる改革であり、副首都構想と合わせて参院選で訴えた2本柱だと認めた。

43:06

議員定数削減の「目指す」と副首都の「させる」

藤田氏は、年内に議員定数を1割削減する項目が抜けていると指摘した。中田氏は、この項目は12月期限だが「成立を目指す」という表現だったので、自分のルールで外したと説明した。目指すとしか書いていないので本気ではないのではないか、野党やマスコミが定数削減で騒いでいる間に副首都と医療制度改革を進める「おとり」ではないか、と一瞬考えたという。

藤田氏はここで裏話を明かした。法案の提出までは維新と自民党の責任でできるが、少数与党で過半数がないため成立は約束できない。だから「あらゆる努力をして成立を目指す」という表現で統一した。ところが副首都については、吉村氏が「目指す」ではなく「させる」にしてくれと強く求めた。自民党側に聞くと了承されたので、ほかとロジックが違うが、そこだけ強めたという。中田氏が「目指す」の付かない「実現」「成立」がほかにもあると指摘すると、藤田氏はそこはあまり意識しておらず、同じ意味のつもりだったと答えた。

中田氏はこれを受けて、議員定数削減もマストだったと理解し、赤(12月)の定数削減、黄(3月)の医療制度改革、緑(6月)の副首都法制定が維新にとっての「3本の矢」だと整理し直した。

46:05

副首都構想:特別区の要件と住民投票の順序

副首都法では、副首都の条件として特別区の設置を求める案がある。中田氏はこれを大阪都構想を内に入れた「トロイの木馬」と呼び、維新の最大の発明だと評した。そのうえで、まず大阪を副首都に認定し、その後に都構想の住民投票をもう一度行う流れになるのではないかと予想した。

藤田氏はこれを二点で修正した。一つは、特別区設置を条件にすることは党のプロジェクトチーム素案に明記したものだが、党内にも議論があることだ。権限はないものの、松井氏は外で「ずるいんちゃうか」と抑制的な意見を述べているという。大阪の議員や住民が大阪の発展のために都構想を考え、その先に副首都を考えるのは当然だ。しかし国会議員の目線では、目的は東京一極集中の是正と首都機能の分散、複数の経済圏づくりにある。候補を挙げれば大阪が1番に来るだろうが、それを整理したうえで制定すべきだという。もう一つは順序で、仮に特別区設置が条件になるなら、住民投票が先になる。住民投票で要件を満たし、副首都に申し込み、可否を判断してもらう流れだという。

藤田氏は、条件を付けることにはメリットもデメリットもあると説明した。今は維新が市長と知事の両方を握っているので二重行政でもめないが、制度上はもめる仕組みのままである。副首都という大きな計画が来れば広域の成長戦略を組めなくなるので、特別区にした方がいいのは決まっている。一方で、府議会のベテラン議員が本会議で、条件にした場合に住民投票で負ければ、本気で副首都を目指すなら勝つまでやり続けなければならなくなると質問しており、藤田氏もその通りだと思ったという。どちらが正解ということはなく、自民党と冷静に詰める議論だというのが藤田氏の立場である。

48:50

吉村代表との温度差と、それぞれの原点

中田氏は、副首都をめぐって藤田氏と吉村氏の温度に差があると感じたと述べた。ReHacQで藤田氏が「吉村さんが大変思い入れのある副首都構想」と紹介したことを、「お袋の大好きないちご大福」という言い方にたとえた。自分の思い入れが一番強いときにはそういう言い方はしない、という指摘である。福岡や名古屋、仙台ではだめなのかという視点を含んでいるのが新鮮だったともいう。

藤田氏は、副首都の決め方には二つのパターンがあると説明した。国が調査して計画的に指定する方式と、自治体が手を挙げる方式である。どちらがよいかは価値観の問題だが、吉村氏は、自ら手を挙げて要件を満たす努力をしなければ、認定後に広域都市をどう発展させるかを自分事として考えられないという発想で後者を推しており、藤田氏もそれに賛同している。中田氏が五輪招致のようなものかと問うと、藤田氏はそうだと答え、要件の設計や指定の仕方に影響するので制度設計は冷静に行うべきだと述べた。

藤田氏によれば、副首都構想を参院選の二大テーマに引き上げたのは吉村氏の強い意思だった。今年1月に初めて会った頃はあまり前面に出しておらず、3か月前の参院選では2番目の主張になっていた。中田氏は演説動画を見て、大阪では強く訴えているが他地域では控えめで、含めていない項目もあると感じたと語り、藤田氏は「むちゃくちゃ鋭い」と応じた。

藤田氏は、2人で飲みながら政治家としての原点を語り合ったことがあるという。吉村氏は橋下氏と松井氏の大阪改革に感化されて大阪市議になり、都構想や統治機構改革のために国会議員として送り込まれ、市長、知事として戻った。原点は大阪改革にある。藤田氏も大阪改革に感化されていたが、より強く共鳴したのは、維新政治塾の頃、石原慎太郎氏のグループと組んで2012年に国政に進出した際の「維新八策」だった。日本全体をどう変えるかというビジョンが書かれており、今の12本の矢にあたるものかもしれないという。藤田氏の副首都構想は、国政課題としての地方分散型の経済圏づくりが出発点だ。中田氏は、ベンチャー経営のマインドで、ローカル政党だった維新を全国に広げてきた藤田氏の関心は安全保障など国と海外の問題に向いているのだろうと述べ、藤田氏も同意した。

中田氏はさらに、吉村氏には副首都構想をやり遂げれば成否にかかわらず辞めそうな雰囲気がある、橋下氏や松井氏の伝統を意識しているのではないか、と直感を述べた。藤田氏は、よく言われるが本人からそう聞いたことはなく、辞められては困ると答えた。

56:59

バッドエンド1:連立の組み換えと選挙制度

中田氏は二つのバッドエンドを想定して示した。一つ目は、特別区要件が骨抜きにされて遅れるうちに解散総選挙があり、自民党が10〜15議席増やしただけで連立の組み換えが可能になり、たとえば自民・国民民主の連立に移って維新の目標が頓挫するというシナリオである。藤田氏は「ありえるでしょうね」と認めた。

藤田氏はそのうえで選挙協力の難しさを語った。自公連立は政策面ではあまり合っておらず、今回の連立合意書のうち半分ほどは公明党がいたら書けなかったと藤田氏は見る。公明党はブレーキ役、維新はアクセル役であり、その相性に期待が集まって支持率が上がったのだろうという。一方、自公の相性がよかったのは選挙で、26年かけて住み分けが整備され、小選挙区は自民、比例は公明というパッケージは「100点」だった。自民党を選挙で支えてきたのは間違いなく公明党であり、計算できる票を失うことを怖がる議員が多いという。大阪では競合しても堂々と戦えると藤田氏は言い切るが、他地域では候補がぶつかるところがあり、何回か選挙をくぐらないとベストマッチにはならない。自公のように選挙区を全部調整する方式がよいのかどうかもまだ分からない。松井氏は「戦ったらええねん」と単純に考えているという。

ここで中選挙区制の議論が出た。1選挙区から3人程度が当選するなら連立与党同士がぶつからずに済み、調整が楽になる。藤田氏によれば、公明党も中選挙区制がよいと考えており、立憲民主党や国民民主党でも議論が多い。全政党が「3番手までには入れる」と思っているという。中選挙区制では比例代表はなくなる。藤田氏は、小選挙区制では党のラベルだけで勝負でき、議員がサラリーマン化すると述べた。過半数の支持を狙う小選挙区と違い、3人区なら20%ほどの熱狂的な支持で当選できるので、多様な政策を打ち出しやすくなるという。ただし藤田氏は、不確定要素が多すぎて、はっきり言ってどうなるか分からないとも述べた。

1:03:17

バッドエンド2:同化による維新ブランドの消失

中田氏は、藤田氏が自民党との基本政策の相性を前向きに捉え、長期の連立を見据えているように見えると述べたうえで、二つ目のバッドエンドを示した。基本政策が似た政党同士の連立の最大の危険は「同化」だという。安全保障やエネルギー政策、国家観、皇室観で高市氏と維新の相性がよいとすれば、自民党との違いとして一般に見えるのは「身を切る改革」とお金への厳しさになる。ところが企業・団体献金について、自民党は党是と言ってよいほど守りが固い。そこが進まないまま連立が続けば、公明党が「平和と福祉の党」を掲げながら安保法制に賛成し、妥協した党と見られるようになった26年と同じことが起きる。維新ブランドが消え、ほぼ自民党になってしまうのではないか、という問いである。

藤田氏は「ありえるバッドエンド」と認めつつ、それは維新という政党の生存戦略の話であり、自分は「それでええかな」と思っていると答えた。生存戦略を考えていたら連立協議はしていなかったはずだという。政策実現と口では誰もが言うが、本当にそれで突き進んだらどうか、というのが自分と吉村氏が最も通じ合っている点だと語った。外交・安全保障、インテリジェンス、統治機構など、30〜40年議論されても進まなかったことが多くある。10年、20年安定して何も成し遂げないより、2〜3年で片付けて未来に残せたと言われる方がよい。そのとき党勢が強かろうが弱かろうが、見てくれる人は見てくれると割り切った方がいいのではないか。これが交渉に臨む前に2人で共有した考えだという。ただし、これだけやった維新は素晴らしいとなるかどうかは分からないとも付け加えた。

中田氏が、安全保障などを優先する藤田氏と都構想を優先する吉村氏の両方の願いが叶うのかと問うと、藤田氏は優先順位は「全部」だと答えた。連立政権では個別の法案ごとに与党協議が要るので、議員定数削減の1点だけで約束して後は話さないという形では必ずもめる。12領域で幅広く価値観を合わせ、すべてを同時に進めている。国家経営としては一つの領域だけでなく全体を一体的に伸ばすべきだ、と藤田氏は経営者の目線で説明した。中田氏はこれを、アルバムの全曲を推すアーティストにたとえた。

1:10:02

企業・団体献金はなぜ「高市総裁任期中」なのか

中田氏が最後に聞きたかったのは、企業・団体献金の項目だけが「高市総裁任期中」という他にない期限になっている理由だった。藤田氏は、ここが一番のボトルネックになると分かったうえで交渉を始めたと説明した。正式な交渉開始から1週間で、まとめるかどうかの結論を出さなければならなかった。自民党の議員数は維新の約10倍で、総理に権限はあっても独裁的に進めるわけにはいかない。その中で維新の主張する廃止を短期間で自民党に飲ませるのは不可能だった。そこで現状と共有できた課題認識を書き、反対する自民党議員と約束するのではなく高市総理と約束するという形で、この期限になったという。

中田氏はまだ納得できないと率直に述べた。藤田氏の優先順位は安全保障やインテリジェンスの方が高いように見えるので、この項目には期待しにくいという。

藤田氏は、橋下氏が番組で示した整理を紹介した。企業・団体献金をめぐる立場は三つある。公開を強めたい自民党、完全廃止の維新、その中間で受け手を絞る規制強化の公明党と国民民主党である。目的は、特定のところから特定の人へ多額の献金が流れて政治の意思決定が歪むのを防ぐことで、手段としては廃止が最も厳しく、規制強化、公開の順になる。橋下氏は規制強化でもよいという立場だった。しかし維新は、橋下氏と松井氏が結党時から献金を受け取らないと内規で定め、実践してきたことをアイデンティティとしており、今のところ廃止を降りる選択肢はないと藤田氏は述べた。ただ、創業者の橋下氏でもそう考えるのかという発見があり、党内の平場にも同様の意見はあるという。

藤田氏は、公明・国民案にも抜け道があると指摘した。受け手を政党本部と都道府県支部の計48に絞っても、本部で受けて他に配れば透明性が下がるだけになる。また、労働組合などが政治団体を作り、そこから寄付する形は対象外になる。国民民主党には労働組合を中心とする政治団体から億単位の資金を受けている人もいるという。中田氏はこれを「間接フリーキック」と表現した。藤田氏は、医師会など各種業界団体も同様の政治団体を持っていると付け加えた。

そこで藤田氏が提案しているのは、受け手の規制に加えて金額の上限を厳しくすることだ。個人献金の上限は年150万円だが、企業・団体献金は1500万〜2000万円程度だという。これを年150万円にそろえれば、廃止に近い効果があり、広く薄く浄財を集めるという趣旨にもかなう。さらに、公明党や共産党は聖教新聞や赤旗といった事業収益が大きいので、そうした資金源も含めて一律に厳しくすべきだとも主張しているという。公明党と国民民主党は嫌がり、上限規制は「絶対受け入れない」と藤田氏は見る。一方で自民党に話すと、公明・国民案は自民党だけがダメージを受ける案だと熱弁し、全政党が痛み分けでクリーンになるなら「そっちの方が全然いい」という反応だったという。廃止と公開が平行線のままでは30〜40年何も解決しない可能性もある。今は廃止を降りないが、そうした議論を含めて協議する枠組みを作ることを合意文書に書いた、と藤田氏は説明した。

交渉の可視化と「統治能力」

中田氏は、公明党の議員から「与党の内側でバチバチやっていた」と聞いたことがあるという。それが外に伝わらなかったのは、当時は政治の発信力が今ほどなかったからではないかと述べた。藤田氏は、交渉開始時に、維新が求める項目を並べた3ページほどの文書をすぐ公開したと明かした。自民党内には嫌がる人もいたという。そうすれば何が話し合われているかが見え、最初の要求と最終的な合意の差も比べられる。中田氏は、連立の内側での交渉や挫折、妥協も含めて発信し続ければ、同化のリスクを軽くできるかもしれないと応じた。

藤田氏は、民主党政権の時に国民が感じたのは「統治能力は自民党にしかない」ということだったと述べた。自民党には統治能力と細かいオペレーション能力があるが、しがらみが多く、公明党との関係で言いたいことも言えない「大企業病」に陥っていた、というのが藤田氏の問題意識である。維新は国会での統治はこれからだが、先を見た思い切った分かりやすい政策を進めるアクセル役になれる。この組み合わせが日本のためになると思われるかどうかに連立の成否がかかっている、と藤田氏は語った。

中田氏は、自民党にしか統治能力がないという気づきは「絶望的」だと言い、藤田氏も同意した。中田氏は、藤田氏が若くして幹事長を務め、失敗も重ねながら共同代表になったように、さまざまな党が政権に挑戦することに期待すべきだと述べた。

世襲と「カバン」の問題

中田氏は世襲にも違和感があると述べた。政治資金団体に資金を預ければほぼ無税で引き継げることが、地盤・看板・カバンのうち「カバン」の継承を可能にしているという指摘である。親と同じ選挙区からの立候補を規制する国もあると聞くとして、維新の取り組みを尋ねた。藤田氏は、維新は政治団体の名義を親族が継承することを内規で禁止していると答えた。同じ選挙区から出られないようにする案は一つのやり方としてありうるが、党内でもコンセンサスになっておらず、国会の議論でもまだ中心にはなっていないという。

中田氏は、華々しい経歴の人か2世・3世が多い自民党が長く統治してきたからこそ、他の党には統治経験がないという非対称な状況が生まれていると述べた。そのうえで、裏金問題で有権者が自民党に「お灸を据え」て議席を減らし、公明党の斉藤氏が「最後通牒」として連立を離れたところに維新が飛び込んだ経緯を振り返った。

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連立離脱というカードを何に使うか

中田氏は、政治とカネの問題で公明党がダメージ覚悟で突きつけ、有権者が議席減という形で示したものに対して、維新が免罪符を与えて自民党を延命させたように見えれば、他の政策が前に進んでも維新は大きなものを問われると述べた。藤田氏は「おっしゃる通り」と認めた。旧文通費のように積年の課題を一つずつ片付けてきたが、残る大きな山は議員定数と企業・団体献金の二つだという。議員定数は年内にやることで決着し、あとは各党との合意形成の段階まで来た。企業・団体献金は時間がかかるが諦めない。それが維新のアキレス腱になることは自民党側も分かっている、と藤田氏は述べた。

中田氏は、「嘘つき内閣」の件で議席を減らしたのは、自民党の金の問題を追及すべき局面で手を貸したように見えたからだと念を押した。そのうえで個人的意見として、維新の最大のカードである連立離脱は、副首都や議員定数ではなく、政治とカネの問題にこそ使うべきではないかと提案した。使うべき時に使わなかったり、別のことに使ったりすれば幻滅されるだろう、という指摘である。

藤田氏は、高市総裁本人や周辺の幹部と昼夜やり取りし、協議の中で信頼関係が深まったと語った。人間なので、この人は信用できると思えたから飛び込んだのだという。自民党全体を信用しているわけではない。自分は騙された当事者なので「覚えとけよ」と思っている。だが高市氏と、周辺で動いていたごく少数の幹部への信用は最大限まで高まった。だから「高市総裁任期中」と書かざるを得なかった、というのが本音だと藤田氏は述べた。

対談の最後に中田氏は、また進捗を聞かせてほしい、「藤田さん、それ多分騙されてますよ」と言うべき時が来ると思うと伝えた。藤田氏は、騙されそうな時は言ってもらった方がいいと応じた。企業・団体献金をめぐる約束が高市総裁の任期中に果たされるのかどうかは、この時点では答えの出ていない問いとして残された。