「在野交渉型」は国民の期待に追いつけるか 玉木雄一郎が中田敦彦と振り返る秋の政局と次の戦略

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概要

9月22日の自民党総裁選告示から10月21日の高市総理誕生までの1か月、公明党の連立離脱で生じた空白の中で、国民民主党は「玉木総理」を担ぐ野党共闘と、自民党との連立の両方から取り合われる立場として報じられた。しかし最終的にどちらにも加わらず、その後の世論調査では支持率が下がった。

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この対談で中田敦彦は、玉木雄一郎代表が「これまでと何も変わらない」という姿勢を続ければ次の衆院選は厳しいという問題意識から、自身の分析を本人にぶつけている。玉木代表は、政策ごとに与党と交渉する「在野交渉型」の路線を当面続けると説明しつつ、国民が求めていたスピード感に応えられなかったことは認めた。対談の後半では、日本維新の会の連立参加のリスクと、副首都構想の狙いにも話が及んだ。

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「どっちつかず」と言われ続けた路線

玉木代表によれば、本人は取り合いの渦中にいたという感覚はあまりなかった。国民民主党は以前から、中田が参院選の際に名付けた「在野交渉型」の立ち位置で、「どっちつかず」と批判されながら活動してきたからだ。岸田内閣の時には、自公が圧倒的な過半数を持っていたにもかかわらず本予算に賛成し、ガソリン税の暫定税率に関わるトリガー条項の凍結解除を引き出そうとした。政策ごとに交渉するやり方は今回も変わらない、というのが本人の立場である。

これに対して中田は、本人が打撃を受けていないという姿勢は理解できるとしたうえで、支持率が下がっている事実を指摘した。下降傾向の中で同じ姿勢を続けた場合、自分の望む結果にはならないと考えたという。

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「なぜ連立に入らなかったのか」動画の3つの論点

中田が分析の手がかりにしたのは、玉木代表のYouTube「たまきチャンネル」で最近公開された、連立に入らなかった理由を説明する動画である。中田はその内容を3点に整理し、玉木代表も「基本的に合ってます」と認めた。

1点目は、「タイミングを逃した」「ひよった」という見方に対し、そもそも連立も野党共闘も考えていなかったという説明である。政策ごとに是々非々で提案する方針という原点の確認で、中田はこれを、キャスティングボートを握って注目を集めてきた戦略を今後も維持するという意味に受け取った。

2点目は、自民党に信頼を裏切られた過去である。岸田政権とのトリガー条項凍結解除の約束は十分に守られなかった。石破政権下でも、昨年12月に自公国の三党が、榛葉幹事長も出席して合意書を交わし、ガソリン暫定税率の廃止と「103万円の壁」の引き上げを約束した。しかし控除額を178万円まで引き上げるという目標は実現していない。暫定税率については、総裁選で各候補が自分の政策のように語り始め、実現に近づいてきた。それでも国民の認識では103万円の壁こそが「メインディッシュ」であり、約束が守られていない以上、自民党を信頼して飛び込むには足りなかった、という説明である。

3点目は、こうした状況にあるのは党がまだ小さいからだという訴えだ。衆院27議席、参院25議席の党を大きくし、もう一度立ち上がる力を与えてほしいと呼びかける内容だった。

中田はこの3点を聞いて「震え上がった」と言う。1点目は誰もが理解していて、だからこそ国民民主党に期待が集まっていた。ところが2点目の事実は、1点目の作戦そのものを否定しているように見えてしまう。玉木代表もそれを本質的に理解しているから、3点目の議席拡大に向かっているのではないか、というのが中田の読みである。

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約束を破っても罰則はない:「骨抜き」と「遅延の果ての10%履行」

2点目がなぜ致命的なのか。中田は、政党間の約束不履行に罰則がない点を挙げた。憲法51条は、国会議員が議院で行った演説・討論・表決について院外で責任を問われないと定めている。中田はこれを、契約で議員を操れないようにするための保護と理解している。政党助成法や公職選挙法にも、政党間の合意不履行を罰する条項はない。玉木代表も、政党間の合意は紳士協定にとどまり、最後は選挙で国民に判断してもらうしかないと同意した。

さらに中田は、自民党には約束を「完全に破った」と言わせない手法があると主張した。それが「骨抜き」、つまり「遅延の果ての10%履行」である。中田はこれを金融のポンジ・スキームにたとえた。高い利回りをうたって資金を集め、最初の数か月だけ配当を払い、その後は「もう少し待ってくれ」と引き延ばす。捜査が入った時に返済の意思を疑われないよう、時々少額を返す。結局、預けた1000万円のほとんどは戻らず、出資者は泣き寝入りになる。年収の壁を123万円までは引き上げた現状は、この「たまに数万円を渡す」行為にあたるという見立てだ。

中田は自民党の約束不履行の歴史として3つの例を示した。1つ目は2012年、安倍氏と当時与党だった民主党の野田氏が議員定数削減を約束して選挙に臨んだ件である。その後の安倍政権で、一票の格差是正のための「10増10減」のように趣旨の異なる調整を除けば、定数は1議席も減っていないと玉木代表も確認した。2つ目は2024年、自民党と維新が旧文通費(議員に毎月100万円支給される非課税の資金)の使途公開で合意した件である。岸田・馬場両党首が合意し、維新は自民党案に賛成したが、ほぼ1年間何も動かず、馬場氏は「自民に手を貸した」と強く批判された。3つ目が、2023年から2025年にかけての国民民主党とのトリガー条項・三党合意である。

いずれも党首レベルの合意書があったのに、履行されなくても法的な制裁はなく、選挙の争点にもあまりならなかった。中田は、このことで国民の期待感が失われたと分析する。キャスティングボートを握って譲歩を求める作戦は時間がかかるうえにリターンが少ないと分かった以上、野党が目指すべきは政権交代しかない、という印象が広がったというのである。

15:03

玉木代表の反論:まだ「見定め」の途中

玉木代表は、このやり取りは自分たちにとってまだ終わっておらず継続中だと答えた。過去の「黒歴史」があるからこそ、履行されていない段階で飛び込むのはまずいと判断した。昨年12月の合意のうち、暫定税率の廃止は年内実現に向けて最終調整の段階にあり、実現すれば評価するつもりだという。年収の壁の引き上げについても、与党入りした維新を加えた4党で具体的な協議を始めようとしており、それが実現すればコミットするとした。

すぐに連立に入らず手間のかかる方法を選んだ理由として、玉木代表は「3回騙されるわけにはいかない」と述べた。同時に、高市総理とは何度もやり取りしており、「最後の望みを託した」という。トップと合意しても、自民党は巨大組織で、過去に約束を履行しなかった議員の多くが今も党内にいる。トップが替わっても組織全体はすぐには変わらない。それでも玉木代表が高市氏に期待するのは、総裁選で5人の候補のほぼ全員が年収の壁の引き上げを訴えたからだ。党首を選ぶ選挙で全員が言った以上、まったく進まないことはないだろうと見ている。在野交渉型を続けるのか、さらに踏み込むのか、その最後の見定めの時期だというのが玉木代表の認識である。

中田はさらに、政権交代しか道がないなら議席の多少の増減に意味はないと指摘した。約束を破られた当時の民主党は100議席以上、維新も30議席以上を持っていた。国民民主党が10〜30議席増やしても、約束不履行に対しては無力だというのである。玉木代表は「おっしゃる通り」と認めつつ、自分はまだ「政権交代するしかない」という結論には至っていないと答えた。高市政権は、岸田・石破政権と違ってガソリンについては実現の目処が立っており、年収の壁でもかなり動いてくれるのではないか、という見立てである。

20:09

「手取りを増やす夏」が約束していたもの

中田が最も懸念したのは、まさにこの玉木代表の認識だった。中田によれば、「手取りを増やす」、とりわけ「手取りを増やす夏」というスローガンは、所得減税をすぐに実現するという意味を持っていた。「夏」という言葉に即効性の約束が込められていたというのである。

中田は、たまきチャンネルの動画に付いたコメントを紹介した。国民民主党と玉木代表には即効性のある突破力を期待していた、しかし「細川内閣のようにはなりたくない」と語っていた玉木代表が政治生命を延ばすことを優先したように見えて落胆した、という趣旨の内容である。中田は、前回の対談で玉木代表が「選挙を政治家の就職活動にしない」と語っていたことにも触れた。そのうえで、玉木代表は少しずつ実現している手応えから在野交渉型にも意味があると考えているが、この1〜2年の熱狂は「じわじわとした結果」を望む風ではなく、「今すぐ変えてほしい」という期待だったと指摘した。

玉木代表はこれを全面的に認め、政策実現が遅れた経緯を説明した。参院選で負けた後も石破氏が粘り、一時は解散まで検討された。その後に総裁選がフルスペックで行われて10月4日までずれ込み、さらに公明党の連立離脱で連立の枠組みをめぐって長引き、国会が開かれたのは10月21日になった。国民民主党が思い描いていたのは、夏に議席を得てすぐ臨時国会を開き、法改正と補正予算を通し、年末調整で還付するという流れだった。与党内の政局で3か月を浪費したことが、スピード感の喪失、ひいては期待の喪失につながったのは事実だと玉木代表は述べた。

中田は、自民党の都合で日程が決まるのは2012年以来毎度のことであり、玉木代表でもそれを突破できなかったという失望が支持率に出ていると重ねた。玉木代表は、見定めの期間をいつまでも続けるつもりはなく、11月の予算編成から12月の臨時国会までにできるかどうかを見ると期限を示した。中田は、見定めているのは国民民主党ではなく国民の側であり、支持率の低下は「待ったけれど叶わなかった」というサインだと応じた。

25:58

「103万円の壁突破内閣」はありえなかったのか

政権交代を目指すなら、単独か野党共闘の連立か。玉木代表は、単独過半数は将来はともかく短期的には難しく、何らかの連立で与党になるのが自分たちのポジショニングだと答えた。中田が、自民党が公明党を骨抜きにできたように、連立の中で最大党でなければ意味がないのではと問うと、玉木代表はそれは中期戦略だとした。現状では自民党と組んでも立憲民主党と組んでもジュニアパートナーにならざるをえず、主導権が限られるのは仕方がない。政策を一つずつ実現して信頼を得ながら党を拡大していくのが従来からの戦略だと説明した。

中田はここで、海外で連立政権が増える中、基本政策の一致は本当に必要なのかと問い直した。例えば立憲・維新などと組み、103万円の壁を突破したら解散する「プロジェクト単位」の内閣もありえたのではないか。国民は玉木代表をそうしたプロジェクトのリーダーとして応援していたのではないか、という問いである。

玉木代表は、基本政策の一致は党の存在意義、アイデンティティであり、それを失ってまで何かをやるのは自己否定になると答えた。根拠に挙げたのは、2009年の民主党政権で1年生議員だった時の体験だ。辺野古基地をめぐる混乱や社民党の政権離脱があり、当時のオバマ政権との日米関係が明らかにぎくしゃくした。特に安全保障、つまり平和安全法制が憲法違反かどうかという根本問題で、閣僚によって答えが違えば予算委員会で「閣内不一致」を突かれ、内閣は持たない。立憲を主体とする内閣で日米関係を担うのは厳しいと判断したという。

玉木代表は、今回の条件提示が立憲が変わるきっかけになればとも考えていた。政局が一段落した後、枝野氏が平和安全法制を合憲だと言い始めたことには驚いたと述べ、変化そのものはいい方向だと評価した。平和安全法制ができた2015年以降、細野氏や長島氏が安全保障の違いから自民党に移り、国民民主党が生まれるなど、この問題は野党の10年の歴史を形づくってきた論点だったからだ。

33:17

連合、そして「連立」とは何か

中田は、支持母体の連合にも触れた。連合は成立の経緯から自民党とも共産党とも相性が悪い。それでも自民党との連立はありうるのか。玉木代表は、2つの約束が守られれば連携の可能性を広げると答えた。

ここで玉木代表は連立の定義を持ち出した。憲法66条では国会に対して連帯して責任を負うのは内閣であり、閣僚を出さない限り、厳密には連立とはいえない。今回の維新の形態は、欧州でいう「コンフィデンス・アンド・サプライ」、つまり不信任案には賛成せず予算には賛成するという協力形態だという。本予算への賛成が連立の条件だとすれば、国民民主党は岸田内閣の時にすでに賛成している、とも付け加えた。

中田は、定義上はそうでも、維新がやっているのは「イメージとしての内閣入り」であり、それが重要だと応じた。連合が自民党との連立を嫌がるのは、自社さ政権で社会党が自衛隊を違憲から合憲へと転換させられ、アイデンティティを折られた歴史があるからではないか。連立の最大のリスクはアイデンティティを折られることであり、国民民主党も自民党の影響力に折られるのではないかと懸念されている、という見立てである。

玉木代表は、社会党のように基本政策が真逆なら「へし折られる」が、安全保障やエネルギー政策ではむしろ自民党に近い国民民主党の場合、リスクは「吸収される」ことだと整理した。扇千景氏の保守党のように、自民党と似ていれば「ならばなぜ別の党なのか」と問われる。これは今後維新が直面する問題でもあるという。ただし党の存続を最優先に考えると判断を誤るとも述べた。連合についても、連合のメンツはあるとしても、産業別に働く一人ひとりの組合員にとっては政策が実現することが最善のはずで、組織の立場が構成員の利益と一致しているか、連合自身も問い直すべきだと「堂々と問いかけている」と語った。

38:33

閣内の維新と閣外の国民民主が組む構想

多党化で過半数を取る党がなく、昨日まで野党だった党が与党になる時代には与野党の垣根が下がっている、と玉木代表は言う。中田が、最大野党として単独で政権交代を目指すより、維新のように閣外協力に入る方が現実的と考えているのかと尋ねると、玉木代表は「短期的にはそう」と認めた。「誰と組むかより何を成し遂げるか」を軸に判断すべきだという。

想定しているのは、維新から首相補佐官の派遣を除いたような形で、主要な法案と予算に賛成する代わりに政策の実現を求める連携である。玉木代表によれば、維新の連立入り後、両党の幹事長と国対委員長がすでに会談した。単独では巨大な自民党の中でなかなか通らないことがある維新と、閣外の国民民主党が組み、「閣外協力政党連絡協議会」のようなものを作って共に自民党に向き合う、という構想を語った。

前例として挙げたのが、政治資金を監視する第三者機関の法律である。政治家は自分に甘くなるため自らルールを作れない。そこで第三者機関の結論を必ず受け入れる仕組みにしようと、当時与党だった公明党と野党の国民民主党が共同で法案を提出し、立憲や自民が乗って成立した。玉木代表は、与野党を超えた柔軟な協力をしなければ、「遅延10%履行」の自民党にはなかなか勝てないと述べた。

42:44

維新が抱えるリスク:政治とカネ

中田が、それでは維新にその座を取られている感じが出ないかと問うと、玉木代表は維新には頑張ってほしいとしたうえで、維新のリスクを2つ挙げた。1つは、12項目の約束が履行されず、結局は政権の延命に手を貸しただけではないかと言われること。もう1つは、自民党出身者が多いため同化してしまうことで、そのリスクは国民民主党以上にあるという。

中田は、維新と自民党の唯一の大きなアイデンティティの差は政治とカネの問題、つまり企業・団体献金の廃止だと指摘した。これに対して玉木代表は、維新側が会社名義で購入されたパーティー券の領収書を社長個人の名義にしてほしいと頼んで回っているらしい、と語った。維新にも玉木代表にも献金している人たちから、そう頼まれたと聞いているという。中田が「個人献金への偽装ではないか」と言うと、玉木代表は「そういう言葉は使えない」とかわしつつ、国民は快く思わないだろうと述べた。

玉木代表は、政治にカネがかかるのは事実だから徹底的に透明化すべきだという立場だ。問題視するのは、自民党が政党だけでなく何千もある地方支部でも献金を受け取れるようにした点である。上場企業にたとえれば、連結決算の対象となる本社や主要拠点に高度な開示義務を課し、そこだけが受け取れるようにすべきだという。今は支店が世界に1万あって、どこが何を受け取っているか本社が把握できない状態で、地方支部の多くは事実上、地方議員個人のものになっている。受け手を絞る公明党と国民民主党の共同案を自民党が拒んだことが、公明党の連立離脱につながった。その代わりに、受け手規制すら求めない維新が入ったというのが玉木代表の見方だ。

維新は最後の段階で、企業・団体献金の問題を議員定数削減にすり替えた、と玉木代表は言う。定数削減には反対しないが、削減で浮く税金は30数億円程度にすぎない。減らした議員が不透明な献金を受け取り続ければ改革は進まない。医師会などから献金を受けたままで、維新が掲げる医療制度改革が本当にできるのかという疑問も示した。中田は、社会保障改革が「遅延の果ての10%履行」に終わっても連立を抜けられなければ、維新はかつての公明党のようにアイデンティティを失い、政権の「延命装置」になると述べた。

玉木代表は、国民民主党が維新に代わってそのポジションに立つことを目指しているわけではないとした。2つの約束のうち1つは選挙を経てほぼ履行される見通しになった。残る所得税の控除額引き上げも、物価や最低賃金が上がり続ける中で実現したい。築けた信頼関係の大きさに応じて踏み込む度合いを決める、と説明した。相手は「日本最大のポンジ・スキーム政党」だから一つずつ確認する、と冗談めかして付け加えている。

53:56

自民党の三戦法「骨抜き・すげ替え・丸パクリ」

中田は、自民党の主力戦法として「骨抜き」に加え、「すげ替え」と「丸パクリ」を挙げた。骨抜きは、野党の人気政策を協議しながら10%ほど履行して約束違反の追及を避けつつ、野党から先に賛成を取り付ける手法である。すげ替えは、政権交代の機運が高まった時に総裁選で顔を替えて「疑似政権交代」を演出し、ガス抜きをする手法だ。同時に、それまでとまったく違う政策を打ち出すことが可能になる。そこで出てくるのが丸パクリで、野党の人気政策を部分的に、あるいは9割ほど取り入れ、野党の存在意義を薄める。

中田によれば、高市政権は積極財政を国民民主党から、外国人政策を参政党から取り込み、維新は連立に入れたうえで副首都構想や社会保障改革まで「グランドメニュー」に載せた。そうなると、野党は「それを最初に言い出したのは自分たちだ」としか主張できなくなる。これに、現在勝っている政党に有利な選挙制度と、議席の多い党に多く配分される政党交付金が加わり、自民党の基盤は揺らがない状況になっていると中田は分析した。実際、高市氏の経済政策が自党と最も重なると玉木代表が言う一方で、維新の藤田氏や参政党の神谷氏も同じことを言っている。中田は、それは「重なっている」のではなく「重ねている」のではないかと述べた。玉木代表は「孫子の兵法に書いたらいい」と笑った。

56:37

スター性とコピー力、新しい「ハンバーグ」

問題点を並べた後、中田は玉木代表の長所として「スター性」を挙げた。野球選手でもオールスター投票で票を集める人、歌手でもライブの客席を埋める人がいるように、政治家にも実務能力とは別に人気を集める力がある。明るさや懐の深さで、多少のつまずきも「玉木さんが好きだから応援したい」と許されてしまうというのである。中田が謙遜を求めても玉木代表が「次が聞きたい」と続きを促し、中田が「脇が甘すぎる」と突っ込む場面もあった。

中田の提言の核心は、国民民主党はワンイシュー政党ではないが、「103万円の壁」や「手取りを増やす」のように争点を1つ明確にするコピー力が抜群だという点にある。スター性とコピー力が最大の武器である一方、「手取りを増やす」の即効性に疑問が持たれた今、コピー力は落ちている。ワントップの党で玉木代表をすげ替えることは現実的ではない。だから新しいコピーで刷新すべきだ、というのである。

玉木代表は、この1か月を経て党内でたどり着いた論点もまさにそこだと明かし、「頭がすごくクリアになった」と語った。中田はこれを料理にたとえた。103万円の壁が「ハンバーグ」で、ガソリン暫定税率は「人参のグラッセ」である。客がハンバーグを待っているのに「グラッセがもうすぐ届きます」と言われている状態だという。玉木代表が「そんなにお待たせしません」と答えると、中田は「ポンジ・スキームの窓口の人みたいになっている」「窓口が騙されないでください」と返した。玉木代表は近く4党協議を始めると述べたが、中田は「協議を始める」という言葉は信用できないと応じた。

約束が守られなかった場合、野党に切れるカードはあるのか。中田のこの問いに、玉木代表は「次の戦いに挑むしかない」と答えた。手取りを増やす政策は実現するまで訴え続けつつ、新しい主力政策を用意して選挙に臨むという。高市政権の支持率が高いことから、衆院選はそう遠くないとも見ている。年内に実現しなかったり、また中途半端な遅延戦術に終わったりすれば、その戦略自体を見切る時が来るかもしれない、とも述べた。

1:02:27

なぜガソリンは動き、年収の壁は動かないのか

中田が両者の違いを尋ねると、玉木代表は2つの理由を挙げた。1つは、2021年10月から早めに言い始めていたこと。もう1つは、その半年後にロシアがウクライナに侵攻して原油価格が上がり、他の野党にも「仲間」が増えたことである。参院選の後にさらに大きく進んだという。

一方、年収の壁は所得税の問題で何千万人にも影響し、関心は非常に高い。影響が大きいからこそ、財源が減るとして財務省を中心に旧政権が反対してきた、と玉木代表は説明した。

中田は、各党の政策は社会保険料の引き下げ(維新)、即効性のある給付(石破氏)と入り口は違っても、結局は減税の手法の差であり、次の主力も減税なのかと問いかけた。玉木代表は、多くの人が消費税減税に向かう中で、働く人の最大の負担である所得税の控除額というやや「マニアック」な論点を選んだことが差別化になったと振り返った。所得税は基本的に現役世代しか払っておらず、忘れられていた論点だったという。着想の元は、米国の標準控除(スタンダード・ディダクション)を、法改正なしにIRSがインフレに合わせて自動的に引き上げる制度だった。今も各国の制度を研究していくつか思いついているが、ここで言えば「先行丸パクリ」されると笑い、衆院選まで温存することになった。

1:09:00

維新はなぜ連立を急いだのか、「12本の矢」の中身

中田は、連立は入る時と出る時の2度しか切れないカードなのに、維新は入る時を急いだのではないかと指摘した。玉木代表は、維新はもともと小泉氏が総裁になる前提で、その陣営とほぼ毎日打ち合わせを重ねていたと聞いていると述べた。相手が替わっただけで、そのまま入りやすかったのだろうという見方だ。背景には支持率の低下や地方議員を含む離党者の相次ぐ党勢衰退があり、連立入りは起死回生策であり、大阪の生き残り戦略でもあったと玉木代表は推測する。吸収されて消滅するリスクより、衰退で滅びるリスクの方が高いと判断したのだろう、という中田の整理にも同意した。

いわゆる「12本の矢」について、玉木代表は「目指す」「協議機関を設置する」「検討する」という3つの言葉でほぼ彩られていると指摘した。明確に実行が決まっているのは、ガソリン暫定税率の廃止とガス・電気代の補助金くらいである。社会保障改革の部分は政府の改革工程表にある内容そのままで、維新が言わなくても進む方向のものだという。中田は、最初からの絶対条件は社会保障改革と副首都構想で、議員定数削減は後から加わったものだと整理した。玉木代表は、本命は副首都構想だと見る。

社会保障について玉木代表は、保険料を年間6万円下げ、医療費を4兆円削るという目標は、高齢化で伸びを抑えるだけでも大変な中では「正直無理だと思う」と述べた。全国の病院の7割が赤字で、高市氏はむしろ支援しようとしている。診療報酬を上げれば保険料に跳ね返るため、主張と合意文書の間に矛盾があり、年末の予算編成ですぐに問われるという。議員定数削減も、臨時国会でやるとしながら文書上は「目指す」になっていると指摘した。

1:13:42

副首都構想の中に入った大阪都構想

副首都構想の日程について、玉木代表は、2027年4月の統一地方選挙に府知事選・市長選・府議選・市議選と住民投票をすべてぶつけ、「維新祭り」にする狙いだと読む。玉木代表自身は副首都構想に賛成だが、維新の法案では、特別区を持つ自治体しか副首都に申請できない。現在特別区があるのは東京23区だけなので、大阪は都構想を実現しなければ申請できない。そうなるように「わざと要件を作ってある」と玉木代表は言う。

中田はこれを「トロイの木馬」「マトリョーシカ」と呼んだ。都構想は大阪で2度否決されており、3度目を出す正当性が見当たらないからこそ、副首都という国政マターに包んで出し直しているのではないか、という見立てである。玉木代表も、維新は昨年の衆院選では都構想を国政のマニフェストに掲げず、参院選から掲げ始めたと補足した。中田はさらに、吉村知事の任期内に決着をつけるために連立入りを急いだのではないかと推測した。万博の成功と連立入りの功績を掲げて出直し府知事選で民意を得て、その勢いで統一地方選に臨むシナリオもありうると述べている。玉木代表は、党勢拡大のために緻密に設計された戦略だと評した。

作戦の穴について、玉木代表は、なぜ副首都に特別区が必要なのかを法制局的に詰めれば理由はないと指摘した。バックアップ機能が目的なら、政令指定都市でもよいはずだ。都構想は市をなくして府を大きくする発想だが、横浜市などには逆に、市を大きくして県を介さず国と直接つながる方が効率的だという考えがある。二重行政の解消には両方のアプローチがありうるのに、特別区を持つ都道府県しか申請できない仕組みは、横浜・川崎・名古屋などの大都市からは反対が大きいだろうという。人口や機能で要件を定めれば都構想は不要になり、大阪市が申請することもできるが、それは維新が最も望まないことだと中田は述べた。

玉木代表は、府知事も市長も議会も維新が押さえている今なら、連携でなんでもできるのではないかとも疑問を呈した。中田によれば、維新側の説明は、どちらかを失えば元に戻るから構造として直したいというものだ。玉木代表は、例えば水道の一元化は香川県では実現したのに、大阪ではやらないと指摘した。大阪市の水道料金が上がる可能性があるからではないか、と推測している。

1:22:23

失言対策は「午前中、ジャケット」

終盤、中田は、吉村氏も玉木代表も好きな立場から、最近の「二枚舌」発言で両者の関係がぎくしゃくしていることに触れた。玉木代表によれば、発言は週1回のライブ配信でのものだった。野田氏とは安全保障で合わないと感じた一方、藤田氏とは日本の政治を変えなければという話で意気投合し、藤田氏自身も会見後に「非常にいい話ができた」と語っていた。その直後の展開に落胆したため出た言葉で、「言葉は過ぎた」と認めた。

中田は、発信力の強いワントップは舌禍に巻き込まれやすいとして、自身の経験から助言した。夜にリラックスした服装で配信すると事故が起きやすい。スーツでなくてもジャケットを1枚羽織り、午前中に配信すれば事故らないという。ナポレオンの「人は着ている服のようになる」という言葉も引き、夜は配信者も視聴者も気が大きくなり、疲れもあると説明した。玉木代表は当日は帰宅後の格好のまま配信しており、疲れていたかもしれないと認めた。

締めくくりに玉木代表は、高市政権も維新もまだ盤石とはいえず、政局は始まったばかりだと述べた。今は自分たちにとっても日本の政治にとっても転換点であり、従来の発想では乗り切れないので柔軟に構えるという。そして、この日最も胸に刻んだこととして、スピード感のある対応を求める有権者にスピード感を持って応えなければならない、という点を挙げた。年内の4党協議で年収の壁が動くのか、そして衆院選までに「手取りを増やす」に続く新しい主力政策を打ち出せるのか。この2点が未解決の課題として残された。