東北大学の研究データレイク「IZUMI」、運用1年の取り組みと今後の課題

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概要

東北大学の中村隆喜氏は、学術情報基盤オープンフォーラム2026のセッション「RDMのためのストレージ基盤の現状と課題」で、同大学の研究データレイク「IZUMI」の事例を報告した。運用開始から約1年でどのような改善を進め、何が課題として残っているのかが報告の中心である。中村氏は産業界と学術界で約30年にわたり情報基盤の研究開発に携わってきた。現在は東北大学の教員として、IZUMIを含む研究データ基盤の企画と運用をリードしている。

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名称の由来と基盤全体での位置づけ

東北大学は、研究データ管理の分野をリードする国立情報学研究所(NII)と連携し、6年以上にわたって研究データ管理に取り組んできた。IZUMIはその中核にあたるシステムである。

中村氏によると、名称には複数の意味が込められている。一つは、大学に蓄積された豊富な研究データから新しい知見を生み出す「知識の泉」になってほしいという願いである。仙台にゆかりのある地名であることも理由に挙げた。さらに、中村氏の所属部局が運用するスーパーコンピューター「AOBA」と名前の響きをそろえる意図もあったという。

研究データ基盤の全体像では、IZUMIが中核に位置づけられている。中村氏は、この基盤によって教員が生産性の高い研究や業務に集中できるようになっていると説明した。

研究データを中心に据えるアーキテクチャー

中村氏のグループは「研究データセントリックアーキテクチャー」を提唱している。スライドでは従来型のアーキテクチャーと並べて示された。中村氏は前日のオープニングのパネルセッションに触れ、そこでも視点は異なるものの似た議論があったと述べた。集中型か分散型か、集中させるならどの程度の割合か、という議論である。これに対して中村氏らの狙いは、研究データを中心に置き、そこへ様々なコンピューティング資源をつなげることにある。

設計方針:アジリティ、ユーザビリティ、インターオペラビリティ

IZUMIの設計方針は3点ある。

一つ目のアジリティは「すぐに利用できること」を意味する。利用申請を不要にしたり、簡易化・自動化したりすることで、利用者がすぐ使い始められるようにしている。

二つ目のユーザビリティは「簡単に利用できること」である。一般にデータレイクといえばS3のオブジェクトストレージを指すが、ITに詳しくない教員にはそれだけでは使いにくい。そこでIZUMIはWebブラウザベースのデータサービスを採用した。中村氏は、同様の仕組みは他大学でも導入が進んでおり、同じセッションの前の登壇者の報告でも触れられていたと述べた。

三つ目のインターオペラビリティについては、当初からGakuNin RDMの外部ストレージとして連携することを狙って設計したという。

運用チームは、立ち上げ当初は中村氏のほか1〜2名ほどの小さな体制だった。その後少しずつ人数が増え、現在はより多くのメンバーで検討を進めている。

運用1年の振り返り

運用開始から約1年が経ったのを機に、中村氏はこれまでの取り組みを5つに分類して振り返った。利用者拡充、アジリティ向上、ユーザビリティ向上、インターオペラビリティ向上、信頼性向上の5つである。利用者拡充の取り組みはスライドに列挙されたが、時間の都合で詳しい説明は省かれた。

アジリティ向上では、容量拡張申請を自動化した。学生が利用するための申請フォームをどこまで簡素にできるかにもこだわって検討したという。ユーザビリティ向上では、FAQやガイドラインをまとめた説明サイトの情報を充実させたことを、力を入れた点として挙げた。

インターオペラビリティ向上では、最初に連携したGakuNin RDMに加え、学内の他システムとの連携やその実験を進めている。対象には「東北大学研究データ管理アプリ」やデジタルアーカイブのシステムが含まれる。信頼性向上については、中村氏自身が「泥臭い話」で未来に向けた話でもないと断ったうえで、安定稼働のために様々な施策を講じていると述べた。

容量拡張申請の自動化

アジリティ向上の具体例として、容量拡張申請の流れが紹介された。利用者はWeb申請で容量を拡張できる。入力項目は徹底的に削り、現在は4項目を入力するだけで申請できる。

自動拡張の境界は10TBに設定されている。10TB以下の申請であれば、翌朝に自動で承認される。10TBを超える申請の場合も、まず10TBまでを自動承認し、残りの分は確認が取れ次第承認する。利用者の作業を少しでも止めないための工夫だという。中村氏によると、この仕組みは自身が直接指示したものではない。前日のセッションで出たキーワードを借りて、自分の意図をチームが「忖度」して作り上げたものだと紹介した。

こうした取り組みの結果、利用は大きく伸びた。中村氏の報告では、特に今年度に入ってから増加が目立ち、約1年でクォータ容量は19倍、累積利用者数は5.2倍になった。

今後の課題

今後の課題も同じ5つの観点で整理された。

利用者拡充では、まず安定財源の確保を挙げた。運用保守やシステム更新に何らかの手当てが必要だが、まだ解決していないという。中村氏は、この点は前の登壇者の指摘とかなり重なると述べた。さらに利用対象を広げるため、機微情報を扱えるよう要件を整理する必要があるとした。

アジリティ向上では、システム連携の面でまだできることが多いという。例として、IZUMIで公開した研究データにDOIを付けたいという要望は多い。現在は図書館がこれを扱っているため、図書館と連携して何らかの自動化ができないか検討したいと述べた。

ユーザビリティ向上では、学外利用者の扱いが課題になっている。IZUMIは基本的に学内利用者向けである。学外者も使えないわけではないが、ユーザー登録されていないため利用できる範囲が限られる。中村氏は、学外者の操作感をできる限り学内ユーザーと同等にしたいとしている。メタデータの自動付与も課題に挙げた。前日から多くの登壇者が言及していた論点であり、中村氏自身も問題意識を持っているという。

インターオペラビリティ向上については、他システムとつながることを狙ってS3インターフェースを採用している。ただ、それで十分かどうかは現時点では具体的な論点に落とし込めておらず、引き続き検討が必要だと述べた。信頼性向上では、前の登壇者の報告とも重なる遠隔バックアップが課題として挙がった。

コンソーシアムとシンポジウムの案内

最後に中村氏は、東北大学が中心となって運営する研究データエコシステムのコンソーシアムを紹介した。学術機関を対象に会員を募集しているという。7月13日には第3回のシンポジウムを予定しており、中村氏の理解では会員でなくても参加できる。