次期SINETで既存サービスはどう移行するか:SINET提供サービスの継続・変更・停止予定

YouTubeで開く ↗
概要

学術情報基盤オープンフォーラム2026で、国立情報学研究所(NII)SINETチームの窪田佳裕氏が、次期SINETへの切り替えに伴うSINET提供サービスの移行方針を説明した。対象は、加入機関の回線接続にはほとんど影響しない周辺サービスである。窪田氏はサービスを次の3群に分けて説明した。

11分で読めます
  • 従来から提供しているサービス
  • SINET6から始まったサービス
  • 実証実験中のサービス

それぞれについて、次期SINETで提供を続けるか、何が変わるか、いつ切り替えるかを示した。結論として窪田氏は、今回扱ったサービスの「ほぼ9割」が次期SINETでも何らかの形で継続すると述べた。一方で、検討中や未確定の項目もまだ多く残っていると説明した。

従来サービスの全体像:ほぼ継続、ポータルは全面改修

最初の群は、SINET6以前から、または一部はSINET6から提供されてきたサービスで、接続形態に関係なく利用されているものである。具体的には次の6つを挙げた。

  • 時刻情報提供機能(NTPサービス)
  • 分散セカンダリDNS
  • Pingチェックサイト
  • パフォーマンス計測
  • ポータルサイト
  • 高速ファイル転送

窪田氏が示した一覧表では、ほぼすべてが次期SINETでも「提供あり」とされた。例外はポータルサイトで、現行のまま移行するのではなく改修する予定である。

変更の有無で見ると、NTPサービスと分散セカンダリDNSは、ホスト名とIPアドレスの変更を現時点で予定していない。一方、Pingチェックサイトとパフォーマンス計測は、アドレスの付け替えやFQDNの変更が起こる可能性があり、「検討中」とされた。

NTPサービス:ホスト名・IPは変えず、1台ずつ切り替える

NTPサービスは、ホスト名もIPアドレスも変更しない予定である。ただし、現在SINET6にぶら下がっているNTPサーバを次期SINETに接続し直す作業が必要になる。そのため、切り替え時にはサーバの通信断が発生する。

NTPサービスは1系・2系の2台のサーバで提供されている。窪田氏によれば、切り替えは片方ずつ行うため、両系が同時に止まることはない。利用者には、両方のサーバを参照して時刻を受信し続けてほしいと呼びかけた。

分散セカンダリDNS:切り替えに合わせてバージョンアップ

分散セカンダリDNSも、ホスト名とIPアドレスの変更予定はない。このサービスはおおむね3台程度のサーバで1つのサービスを構成しており、NTPと同様にSINET6から次期SINETへ接続を切り替える。

NTPと違うのは、切り替えに合わせてバージョンアップのような作業を実施する予定がある点だ。そのため、サーバごとに数時間程度のダウンが発生する可能性があるという。ただし全台が同時に止まるわけではなく、切り替え中もサービスは継続する形で計画を検討していると説明した。

Pingチェックサイト:サーバ調達の難しさでホスト名・IPが変わる見込み

Pingチェックサイトには2種類のサービスがある。

1つ目は「Ping応答サービス」で、SINETが提供する複数のPing応答サーバのいずれかが応答する仕組みである。これは、E・C・Wと表記された3台で継続して提供する予定とされた。

2つ目の個々のPing応答サーバについては、ホスト名とIPアドレスが変わる予定だという。窪田氏はその背景として、大学でも困っているようにサーバの調達がかなり難しくなっており、SINETでも今後のサーバ調達が差し迫った問題になっていることを挙げた。

どのような形でサーバを調達できるかによって、設置場所やサーバの種類が変わる可能性がある。スライドで各サーバの後ろに記載された地名のような部分も、調達の結果次第で確定するため、現在は「調整中」とされている。詳細は次回のオープンフォーラムまでに整理して案内したいとした。

パフォーマンス計測:切り替え後にしばらく停止

パフォーマンス計測サービスは、現在次の2種類で構成されている。

  • 速度測定用の perfSONAR
  • BGPの経路情報を参照できる Looking Glass

次期SINETでも提供を続ける方針は決まっている。ただしPingチェックサイトと同様に、移行時にサーバが用意されるかどうか、どのような形で提供するかについて、マシンの調整を進めている段階である。

更新の内容が決まれば、切り替えや稼働中サーバのOSアップデートなどを実施する。その関係で、次期SINETへの切り替え後しばらくはサービスを停止し、チューニングが完了し次第再開する考えだという。窪田氏は、切り替え時期に合わせて長時間の停止を想定していると述べ、了承を求めた。

ポータルサイト:メール申請からWeb申請へ全面改修

現在のSINET6ポータルサイトは、加入機関の接続情報などを案内する場になっている。これを全面改修する予定である。

改修の中心は、これまでメールで受け付けていた申請をWeb申請に移すことだ。リリース時期は次期SINETへの切り替え後としている。移行期間中に新しい仕組みを導入すると混乱を招くおそれがあるため、というのが理由である。

新しいポータルには、管理者やサービス利用管理者のIDでログインする。ログイン後は次の内容を確認できるようにしたいという。

  • Web申請の履歴
  • 過去の申請内容
  • 申請の処理状況

あわせて、IDを持たない利用者でもWeb申請できるようにすることを検討している。想定しているのは、加入前の機関の担当者や、加入機関が手配した作業担当者などである。窪田氏自身、IDを使わない申請フォームの是非については議論の余地があると認めたうえで、詳細が固まり次第案内するとした。

高速ファイル転送(MMCFTP):切り替え作業は不要

高速ファイル転送サービスは、長距離の高速ファイル転送を可能にするプロトコル MMCFTP のLinux用実行プログラムを配布するものである。加入機関と覚書を締結したうえで、無償で提供している。

このサービスは、ネットワーク接続やWebサービスとして提供されているわけではない。配布したプログラムを加入機関が自らの拠点で実行する形態である。そのため、次期SINETへの移行に伴う切り替え作業は必要ないと窪田氏は説明した。

従来サービスの移行スケジュール

第1群の予定について、窪田氏は次のようにまとめた。

| サービス | 予定 | |---|---| | NTPサービス、分散セカンダリDNS | 2028年3月頃に切り替え作業を実施し、そのまま継続利用できる形にする | | Pingチェックサイト、パフォーマンス計測 | 詳細は次回オープンフォーラムで案内。切り替え作業と停止予定時間を設けたうえで次期SINETでも提供する | | ポータルサイト | 新ポータルを2028年4月頃から提供できるよう設計中 | | 高速ファイル転送 | そのまま継続提供 |

SINET6から始まったサービス:自動DDoSミティゲーションは2028年1〜3月頃に停止期間

SINET6から始まったサービスも、次期SINETで継続する。このうちデータセンター接続冗長化サービスは次期SINETでアップデートされる予定だが、詳細は栗本センター長が別途説明するため、窪田氏は説明を省略した。

もう1つの自動DDoSミティゲーションサービスは、次のように動作する。

  1. 外部と接続しているSINETルータで、事前に申請されたトラフィックを監視する。
  2. 閾値の条件に基づいてDDoS攻撃を即座に特定する。
  3. 特定した攻撃に対して、モニター、ポリサー、ドロップといった指定のアクションを実行する。
  4. 加入機関の管理者に速やかに通知する。

このサービスも次期SINETで継続する予定である。ただし移行にあたっては、新しい網を作り、次の作業を来年度末に実施する計画だという。

  • ルータのサンプリング設定の切り替え
  • システムの切り替え

ルータの変更などに伴い、2028年1月から3月頃にかけてサービス停止期間が発生する見込みである。ポータルのアクセス先やUIが変わる可能性もある。現在は調達と設計を進めている段階のため、改めて次年度に案内するとした。

実証実験中の3サービス

SINET6では現在、実証実験として次の3つのサービスを提供している。

  • モバイルSINET
  • VPNゲートウェイ
  • グローバルFileSender

VPNゲートウェイは、前回のオープンフォーラムでは「ADVPN」として紹介されていたもので、サービス名が変わった。

次期SINETでの扱いはそれぞれ異なる。

| サービス | 次期SINETでの扱い | |---|---| | モバイルSINET | 継続予定。ただし実験のまま続けるかどうかは未定 | | VPNゲートウェイ | 正式サービス化の予定 | | グローバルFileSender | NIIが提供している「NII FileSender」と統合して提供を続ける方向 |

いずれも、サービス名や提供形態に変更があり得るとして「あり(検討中)」と記載されている。

モバイルSINET:2027年末まではトライアル継続、その後は未定

モバイルSINETは、通信キャリアが提供するモバイル網とSINETのL2VPNを接続するサービスである。これにより、研究機関や商用クラウドなどと閉域網として接続できる。

SINET6期間中のトライアルは、実証実験の申込書を2026年末まで受け付けている。関心のある機関には、SINET事務局への申込書の送付を呼びかけた。トライアルサービス自体は、少なくともSINET6期間中、つまり2027年末までは継続する。

次期SINETでの提供形態は検討中である。新しい形態にするのか、現行の形態で続けるのか、それ以外の選択肢もあるのかも含めて、続報を待ってほしいとした。

VPNゲートウェイ:2027年3月でトライアル終了、2028年度に正式サービス

VPNゲートウェイは、複数組織にまたがる研究プロジェクトがL2VPNなどで構築した閉じたネットワークに、インターネット側から接続するための仕組みである。想定する利用場面は次のとおり。

  • L2VPNへの接続が難しい拠点
  • 共同研究先
  • リモートワーク環境

L2VPNに直接つながっていない利用者が、ゲートウェイを経由してVPNにアクセスする形になる。

スケジュールは次のとおりである。

| 時期 | 内容 | |---|---| | 2026年9月まで | トライアルの受付(講演時点で残り約3か月) | | 2027年3月 | トライアルサービスをいったん終了 | | 2027年 | トライアルを止め、正式サービスに向けて準備 | | 2028年度(次期SINET開始時) | 申し込みの受付を開始 | | 2028年度中 | 正式サービスとして提供開始 |

グローバルFileSender:NII FileSenderとの統合を協議中

グローバルFileSenderは、NIIの高速ファイル転送(MMCFTP)とオープンソースのFileSenderを組み合わせたサービスである。

仕組みは次のとおりだ。サーバを地理的に分散して設置し、送信者も受信者も最寄りのサーバにアクセスしてアップロードやダウンロードを行う。サーバ間はMMCFTPで転送することで、全体としてのアップロード・ダウンロードを速くする。

現在は2つの方向で協議を進めている。1つは、FileSenderのオプションとしてグローバルFileSenderの高速転送機能を組み込めないか、FileSender側と話をすること。もう1つは、NII FileSenderの事務局との統合に向けた議論である。本格運用の開始時期や拠点の配置はまだ議論中で、講演時点では案内できず、確定し次第知らせるとした。

まとめ:大半は継続、詳細は秋の説明会と次回オープンフォーラムで

窪田氏は発表を締めくくるにあたり、今回説明したサービスは「ほぼ9割」が次期SINETでも何らかの形で提供を続けると改めて述べた。

一方で、次の点など、検討中・未確定の事項はまだ多い。

  • Ping応答サーバのホスト名・設置場所
  • パフォーマンス計測の停止期間
  • ポータルでのID不要申請の扱い
  • 自動DDoSミティゲーションのポータル仕様
  • モバイルSINETの次期形態
  • グローバルFileSenderの本格運用時期

各サービスの切り替え方法や提供開始時期は、今年の秋頃に予定されている説明会と来年度のオープンフォーラムで引き続き案内するとした。まだ利用していないが関心のあるサービスについては、スライド末尾の問い合わせ先一覧か、各ページに記載したURLを確認するよう案内して講演を終えた。