GakuNin RDMとRDMストレージソリューションカタログ:大学の研究データ管理基盤をどう整えるか

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概要

国立情報学研究所(NII)の下山武司氏は、NIIが提供する研究データ管理基盤「GakuNin RDM」の現状と展望を紹介した。あわせて、大学ICT推進協議会(AXIES)が作成した「RDMストレージソリューションカタログ」も取り上げた。大学が研究データ管理(RDM)の環境を実際に構築する段階に入るなかで、共通基盤とカタログをどう組み合わせて使ってほしいかを示す発表である。

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ポリシー策定から基盤構築の段階へ

下山氏はまず、大学におけるRDMの現状と課題を整理した。オープンサイエンスの潮流や、公的資金による研究のデータ管理への要請を背景に、RDM環境の整備は急務になっている。一方で、多くの大学では取り組みが始まったばかりで、普及はこれからという段階にあるというのが同氏の見方だ。

AXIESではこれまで、ポリシーに関する文書の策定などを進めてきた。下山氏は、今後はこのポリシーのフェーズから、実際に基盤を構築するフェーズへ移っていくと述べた。

ただし、すべての大学がRDMの専門人材を十分に揃えているわけではない。実際には、限られたリソースのなかで情報収集、要件定義、ベンダーとの交渉を進めているのが現実だと下山氏は指摘する。そのうえ、研究者の要望との折り合いもつけなければならず、担当者は苦労している。こうした担当者を大学や研究機関として支えることが重要だというのが、同氏の問題意識である。

RDMストレージソリューションカタログの構成

こうした支援の第一歩として、AXIESは「RDMストレージソリューションカタログ」を作成した。今回が初めての作成である。下山氏は、このカタログが単なる製品説明の寄せ集めではないことを強調し、次の4部構成を紹介した。

  • 第1部:ストレージの基本概念の解説
  • 第2部:各ベンダーから提供を受けた最新の製品・サービスの情報
  • 第3部:先進的な大学の取り組みとして、実践のノウハウを記載した事例3件
  • 第4部:NIIからの情報提供2件

基礎知識から製品情報、活用事例までを1冊にまとめ、RDM向けストレージソリューションを総合的に扱う資料になっているという。

カタログの3つのメリット

下山氏は、このカタログの利点を3点挙げた。

1点目は、共通の評価軸をもとに最新のソリューションを比較し、自機関に適したものを選べることだ。これにより検討段階でのミスマッチを防げるという。2点目は、他大学のストレージ構成や運用の実情を知ることができる点である。3点目は、NIIが提供する情報との整合性を取りながら自機関のストレージを選定できる点で、カタログにはGakuNin RDMの最新情報も含まれている。

共通基盤としてのGakuNin RDMと2種類のストレージ

では大学はどのように環境を構築すればよいのか。下山氏は、RDM環境を大学単独でゼロから作ることは、コスト面からも体制面からも非現実的だと述べる。そのため、共通基盤であるGakuNin RDMをベースとして活用してほしいという。

GakuNin RDMのストレージは、標準ストレージと、機関ストレージ(拡張ストレージ)の組み合わせで構成される。標準ストレージはユーザーごとに100GBである。下山氏は、論文やその根拠データを扱う通常の利用であれば、この容量で十分対応できる範囲だろうとみている。

一方、研究によってはそれ以上の容量が必要になる場合や、大学ごとの事情で独自のストレージを用意したい場合もある。こうした場面でカタログが役に立つと下山氏は説明した。カタログには、ストレージを自機関で調達する方法だけでなく、NIIが昨年から行っているストレージの共同調達のような取り組みについても記載されているので参照してほしいという。

GakuNin RDMの改善と今後の計画

GakuNin RDMの最近の改善として、下山氏は要望の多かったS3互換ストレージのSignature V4への対応を挙げた。これにより、接続できるストレージの自由度が増したと同氏は考えている。

今後については、JAIRO Cloudなどとのデータ連携によって、クローズドなデータからオープンデータへの移行を支援していく計画を示した。また、米国のCenter for Open Scienceとの連携をベースに、セキュリティを強化していくとした。

土台としてはNIIが提供するGakuNin RDMを進化させ、個別の課題はAXIESのカタログのような知見をもとに各機関で解決していってほしい、というのが下山氏の描く役割分担である。これにより、日本のすべての研究者に向けて強固なRDM環境を提供できるようにしたいと述べた。

カタログの継続的な更新と参加の呼びかけ

今後の方針として、下山氏はGakuNin RDMの高度化に加え、今回まとめたストレージカタログも「作って終わり」の文書にせず、変化する事例に応じて継続的に更新していきたいと述べた。

最後に同氏は、カタログをより使えるものにするための協力を呼びかけた。ストレージベンダーには、データ駆動型研究やAIなどに向けたソリューションの情報提供を求めた。大学や研究機関には、「うちはこういうふうにストレージを使っている」「こんな工夫をしている」といった生の事例の共有を求めた。NIIが提供する基盤とコミュニティの知恵を組み合わせて、日本のRDMをともに前に進めたいとして、発表を締めくくった。