円安163円の原因は「骨太の方針」か 中田敦彦が読み解く、市場が見抜いた「責任ある積極財政」

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概要

シンガポールから帰国した中田敦彦は、帰国後最初の授業のテーマに円安を選んだ。中田はこれまでも円安について何度も授業をしてきたが、それでも国民が怒らないことを問題視している。中田によれば、人々が怒らないのは仕組みが複雑で、何が起きているのか、怒ってよいのかどうかもわからないからだ。この回では、2026年7月21日に1ドル163円に達した円安について、その主因を同日の「骨太の方針」の閣議決定とみる立場から、6月末の原案報道から閣議決定までの経緯を順にたどっていく。

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163円という数字と「慣れ」

話の出発点は、7月21日に1ドルが163円をつけたというニュースだ。中田は、150円台になった当初は誰もが驚いていたのに、いつの間にか慣れてしまったと指摘する。シンガポールの住居にプールがあっても、最初ははしゃいでいたのにやがて泳がなくなる、という自身の体験を引き合いに出し、野菜や米などあらゆるものが高いという状況にも人は慣れてしまうと語った。そのうえで、163円という水準で何が起きているのかを改めて確認したいと述べる。

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円安とは「持っている円の価値が安くなる」こと

中田はまず円安を「円の価値が安くなる」と言い換えて説明する。欲しいものが安くなるのは嬉しいが、自分が持っているものが安くなるのは嫌なものだ。買った家や車が値下がりしたり、買ったばかりのバッグが3割引きで売られていたりすれば腹が立つ。多くの人は普段ドルやユーロではなく円を使い、財布にも円しか入っていない。その円の価値が下がっているのだから、これは持っている家や土地や鞄が値下がりするのと同じで、ピンチだというのが中田の説明だ。

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「良い・悪い」ではなく「誰にとって得か」

一方で、「円安は日本経済にとってプラスだ」と主張するインフルエンサーもいる。中田はこれに対し、円安を良い悪いで論じるのではなく、誰にとって得で誰にとって損かで考えるのが正しいと述べる。

円安で得をするのは、まず輸出をしている大企業だ。海外で販売して現地通貨のドルで代金を受け取り、円に替えるとき、以前は1ドルで110円だったものが163円になるのだから「笑いが止まらない」。もう一つは、海外株などで資産を持ち、その利回りで暮らしている投資家たちだ。彼らは資産を円で持っていないので得をする。

損をするのは「そうじゃない人たち」、つまりほとんどの人だと中田は言う。ここで中田は、輸出大企業で得をするのは「勤めている人」ではなく「持っている人」だと強調する。トヨタに勤めている人は大勢いるが、トヨタを「持っている」のは豊田章男氏であり、ユニクロのカットソーを持っている人は多くても、ユニクロの会社を持っているのは柳井正氏だ。トヨタに乗りユニクロを着ている大多数の人にとっては、円が安くなることは厳しい。

「円安は日本経済にとってプラスだ」と言う人は、得をする側を見ているのだと中田は整理する。そして自分はYouTube大学を柳井氏や豊田氏のために作っているのではなく、500万人を超える登録者の大半を占めるであろう損をする側に向けて話しているのだ、と自らの立場を明確にした。

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高市首相の川崎演説と「外為特会がホクホク」

中田は、この「誰にとって得か」の区別について、高市首相自身も曖昧な言い方をしていたと指摘する。2026年1月31日、川崎での演説で高市首相は「円高がいいか円安がいいかっていうのはわかりません」と述べた。そのうえで、輸出産業にとっては大チャンスだと語り、外為特会(外国為替資金特別会計)が「ホクホク」だという趣旨の発言もしたという。

中田は外為特会を「政府が持っている海外のお金」と説明し、政府も投資家の立場に立てば円安で得をすると解説する。日本経済を強くしたいことを軸にする高市首相だからこそ、そうした意見になるのだと中田は見ている。しかし一般の国民は外為特会を持っていない。

円安の影響を身近に示す例として、中田はiPhoneを挙げる。新しいiPhoneを毎年買うことは夢物語になり、画面が割れた古い機種を使い続けている、数十万円もして飾っておきたくなるほどだ、と冗談まじりに語った。

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主因は「骨太の方針」の閣議決定

では、この円安の原因は何か。中田は、7月21日に行われた「骨太の方針」の閣議決定が主な原因だと言われていると述べる。多くの人がゴシップニュースを追っている間に、これが閣議決定されていたというわけだ。

中田は、中東情勢の不安による「有事のドル買い」が原因だとする説明もあると紹介している。戦争のような危険が起きると、世界中の人が最も信頼される通貨であるドルを買う。その結果ドル高になり、相対的に円が安くなるという説明だ。

しかし中田は、それでは説明しきれないと反論する。根拠はドル円以外の為替レートだ。ユーロ円や人民元円、シンガポールドル円で円高になっているなら、ドルが強くなっているだけだと言える。だが実際には円が単独で安くなる「円の独歩安」が続いている、と中田は言う。みんなが揺れているなら地震だが、自分だけがふらついているなら酒に酔っているのであって、日本は後者の状態だという例えを使った。独歩安であるなら原因は国内にあり、7月21日の国内で最もインパクトがあった出来事が骨太の方針の閣議決定だった、というのが中田の論理である。

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骨太の方針とは何か

中田によれば、骨太の方針は2001年の小泉内閣から始まり、毎年夏(6〜7月)に発表される経済の大方針だ。予算編成にとって最も重要な文書であり、国民から集めた税金を何に使うかを左右する。家計にたとえると、車を買うかリフォームするかを考えているときに、父親が「ロレックスを10個買う」と言い出したら困るのと同じで、お金の使い道は集団にとって一番大事なのだと中田は説明する。

「骨太」という言葉の由来についても、中田は2001年の財務大臣だった宮澤喜一氏が、枝葉の議論ではなく骨太の議論をして、日本がどこへ向かうかを国民にわかりやすく伝えようと述べたことにあると紹介している。だからこそ、本来は簡単に変わらないマスタープランなのだという。

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6月30日の「原案」報道と三つの火種

中田は、実は「骨太ショック」が起きたのは閣議決定の1か月前、6月30日だと言う。高市政権にとって初めての骨太の方針として政界や投資家が注目するなか、原案とされるものが報道された。その内容に衝撃が走ったという。中田はその問題点を三つにまとめた。

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一つ目:「財政健全化」の文字が消えた

一つ目は、2001年以来毎年必ず入っていた「財政健全化」という言葉がなかったことだ。日本は赤字国債が膨らみ続けており、アベノミクスの12年間には「借金してでも景気を刺激すればトリクルダウンが起きる」と信じたが、それは降ってこなかった、と中田は振り返る。それでも歴代の総理は、財政を健全化しつつ頑張ると言い続けてきた。

中田はこれを、町で一番借金の多い父親にたとえる。毎年正月に「今年こそ節約して借金を返す」と宣言し、実際には返しきれていなくても、家族は「今年こそ頑張ると言っているから」と思える。その父親が今年はその宣言をしなかったのだから、家族はドキッとする。

代わりに打ち出されたのが「債務残高対GDP比」という基準だ。中田はこれを、借金の残高を国が生み出す経済活動の規模と比べた比率だと説明する。これまでの目標はプライマリーバランス(収支)の単年度黒字化、つまり1年間で黒字にするという普通の目標だったが、それが厳しいので、節約して借金を返すのではなく、GDPを増やすことで借金の比率を下げる方向で評価してほしい、という基準の変更だと中田は読み解く。

父親のたとえで言えば、節約生活にはうんざりなので、カツ丼も頼みたいし蛇口もひねりたい、その代わりたくさん働く、と言っているようなものだ。これが積極財政だと中田は言う。その柱が370兆円の官民投資で、国も税金を出し民間大企業からも資金を集め、それを何倍にも膨らませれば借金の大きさが気にならなくなる、という発想だという。

中田はここに「外れたらどうするのか」と疑問を投げる。家族のお年玉まで集めて競馬場に行く父親にたとえたうえで、競馬と同じほど当たらないと言っているわけではないと断りつつ、これまでもクールジャパン戦略や各種の機構が作られてきたが、大儲けしていれば今こんな目に遭っていないはずだと述べた。国の投資は必ず当たるわけではなく、不確定な要素があるのに、プラスの方向で評価してほしいと基準を変えてきた、というのが中田の受け止めである。

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二つ目:日銀への圧力と読める文言

二つ目は、「強い経済のためには適切な金融政策運営が必要」という文言だ。中田は、金融政策は政府ではなく日銀の仕事で、政府が担うのは財政政策だと説明する。

金融政策とは金利の上げ下げのことだ。アベノミクス以降、金利はゼロ金利やマイナス金利と言われるほど低く抑えられてきた。お金を借りやすいほうが経済は回るからだが、弊害もある。円で貸しても利子がつかないなら、円をドルに替えてドルで運用したほうが儲かる。これがキャリートレードで、低金利は国内を刺激するには良くても、ドルやユーロと比べられる対外的な場面では円を弱くする。

中田によれば、アベノミクスの異次元金融緩和は本来、一気に刺激してから引き締める期限付きの政策だったが、うまくいかずにずるずると続き、後に引けなくなった。日銀の植田総裁は最近少しずつ金利を上げているが、景気を良くしたい高市首相からは上げるたびに睨まれている、と中田は見ている。

なぜ政府と日銀は独立しているのか。中田の説明では、両者は対立しやすいからだ。政治家は選挙で選ばれるため、減税や財政出動など国民に人気のあることを言いたくなる。一方、選挙で選ばれていない日銀の仕事は円の価値を守ることで、「通貨の番人」と呼ばれる。中田は独立が失われた例として第二次世界大戦を挙げ、政府が戦費のために日銀に大量の円を刷らせた結果、戦後に円の価値が暴落するハイパーインフレが起きたと説明した。朝100円だったパンが昼に1000円、夜に1万円になるような状態を防ぐ最後の番人が中央銀行だという。

ただし日銀の立場は弱く、政府のほうが任命権などの権力を持つため、植田総裁は言葉を選んでいるように見えると中田は言う。その日銀に対して政府側から「適切な金融政策運営が必要」と言うことは、父親が母親に「タンスにお金を貯め込まずに適切に小遣いをくれ」と言うようなもので、強い圧力として市場に読まれた。中田は、発言する側の意図ではなく、受け取る側の反応が問題だと強調する。借金を返す気をなくしたうえで、日銀に金利を上げさせず、財政出動で景気を良くしようとしているのではないか。そう読まれたからこそ、市場は円安が止まらないと判断し、円を売ったほうが儲かると考えた、というのが中田の解釈だ。

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三つ目:財源なき歳出拡大

三つ目は、財源の裏付けのない歳出拡大である。370兆円の官民投資に加え、中田は最近、特定のゲーム会社にいくら出すという報道があり、本当にその会社で大丈夫なのかという議論があったことにも触れた。国が親しい相手にお金を配っているだけならどうしよう、と思ってしまうからこそ、大盤振る舞いは厳しく見られるべきだと述べる。

さらに消費減税もある。中田の説明では、食料品の消費税8%を1%にし、残る1%分も給付金で実質ゼロにするという内容だ。耳障りは良いが、どこかに歪みが来ているはずだと中田は言う。父親が競馬に持っていくお金が、実は子どもたちの学費なのではないか。一般市民が苦しむことと引き換えに株価を上げたり投資家を儲けさせたりしているのではないか。中田は、海外の投資家たちがそうした構図を見抜いた結果が円安だと述べ、国民はもっと怒ってもよいのではないかと訴えた。

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トラス・ショックという先例と「責任ある積極財政」

ではなぜ、これまでこの政権の姿勢は見破られず、高い支持率を保っていたのか。中田は、保険をかけた言葉選びをしていたからだと言い、その背景に2022年のイギリスの「トラス・ショック」を挙げる。

中田の説明では、イギリスで大人気の女性首相が選ばれ、議席の大多数を得たうえで大幅減税を打ち出した。財源を問われると、パーティーを開けばみんなが元気になって働いて稼いでくれる、という趣旨の答えだった。これに対して市場、つまり世界中で通貨や国債を売り買いする人々が「この人は深く考えていない、財源がない」と判断し、ポンドと英国債が同時に売られた。通貨と国債のダブル安によって、トラス首相は45日間で退陣した。

これを知っていた高市首相が使ったのが「責任ある積極財政」という言葉だと中田は言う。高市首相は総裁選のころから積極財政を掲げていたため、そのままでは最初から市場に怪しまれていた。そこで「責任ある」をつけた。中田はこれを「節度ある競馬活動」にたとえる。節度があるなら楽しめばよく、批判する理由はない。怖いのは節度を失うことだけだ。

その「責任ある」の部分が疑われ始めたのが、先述の1月31日の川崎演説だったと中田は指摘する。円安と円高のどちらが良いかは主体やタイミングによって違う。アベノミクスの頃は円高でデフレだったから積極財政が求められたが、今は大幅な円安になっている。それなら是正してほしいのに、「わからない」と言ったうえで、輸出産業や外為特会の側の意見を強く選んでいる、と中田は受け止めた。そうしたなかで、責任の中身を確かめる場として注目されたのが骨太の方針の原案だったという。

32:13

原案報道後の市場の反応と2度の修正

中田は、原案報道後の動きを日付を追って説明した。翌7月1日には1ドル162円84銭まで円安が進み、その5日後には国債の長期金利が2.830%に上がった。中田はこれを「数十年ぶり」の水準だと述べている。

ここで中田は、国債の金利が上がる意味を解説する。国債は利子をつけて返す約束でお金を借りる仕組みだ。信用できる親友ならジュース代に利子は求めないが、ちゃらんぽらんな相手なら高い利子を求めたくなる。銀行にも友人にも借りられない人が行き着くのが、『闇金ウシジマくん』に描かれるような法外な利子の世界だ。つまり信用と利子は反比例する。国債の金利が上がるということは、日本がお金を借りるときに世界から高い利子を求められている、すなわち日本の信用が下がっているということだ、と中田は説明した。

事態の重大さを受けて、政府は7月7日に原案の修正を発表した。中田は、変わらないはずのマスタープランである「骨太」を曲げるのだから、重大なことが起きている証拠だと言う。追加されたのは「安定的な物価上昇を実現しながら」という文言で、ハイパーインフレにはさせない、ギャンブルには行くが破産はしない、という意味だと中田は読む。

しかし市場は信じなかった。翌日の長期金利は2.870%に上がり、9日には2.9%に達した。そこで7月10日、再修正が行われる。今度は「金融政策の具体的手法は日本銀行に委ねる」という趣旨の文言だ。中田は、これは法律で決まっている当たり前のことであり、わざわざ改めて書くのは、日銀への圧力を疑われていると政府自身がわかっているからだと指摘した。

37:04

片山財務大臣のGPIF発言

さらに片山財務大臣が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国債の買い支えもありうると示唆した。中田はGPIFを、国民から集めた年金を運用し、その利益を還元する年金基金であり、世界最大の機関投資家とも言われる存在だと説明する。

本来GPIFは国民の利益を最大化するために使われるべきだが、国債の金利が上がりすぎないように国債を買うということは、人気のない商品の値崩れを防ぐためにみんなのお金を使うことだ、と中田は言う。みんなでカンパして人気スイーツの「もっちゅりん」を買ってきてほしかったのに、仲の良い潰れそうな和菓子屋のおはぎを買ってきたようなものだというたとえを用いた。

中田によれば、これには前例がある。第二次世界大戦直後のイギリスで、戦争で借金まみれになり、債務残高対GDP比が200%に達していた。中田は、戦費を使いすぎたことでイギリスは基軸通貨の地位を失い、アメリカの時代になったと説明し、そこまで追い詰められた国がやったことを日本がやる可能性に言及したのは大事件だと述べた。この発言を受けて、1ドルは162円台から161円台へ少し戻したという。

39:49

閣議決定の延期と、最終案への「NO」

政府はこの段階では「あくまで原案であり、正式な閣議決定を待ってほしい」という姿勢だった。閣議決定は7月14日の予定だったが、1週間ずれ込んで21日になった。中田は、発表しても円安と長期金利の上昇が止まらなければトラス・ショックに一直線になるため、揉めに揉めたのだろうと推測している。

最終決定された案には、日銀に手法を委ねる文言や安定的な物価上昇の文言は加えられていた。しかし中田によれば、「財政健全化」の文字はなくなったままで、財源なき歳出拡大も維持されていた。その結果が冒頭の1ドル163円台だ、と中田は言う。2度の修正を経て最終決定したマスタープランが、市場からNOを突きつけられたというのが中田の見立てである。

ただし中田は、為替にはさまざまな要因があり、必ずこうなるとは言えないとも留保している。そのうえで、円安が止まっていないという事実、閣議決定がこれほど揉めた事実、その結果出したものがこうした反応を生んでいる事実がある、と整理した。

42:05

「最後の野党」としての市場と弱い野党

中田は市場を「最後の野党」と呼ぶ。トラス首相は国民に人気があり議席も取っていたので、野党は弱く蹴散らせた。お金をばらまけば国民は黙り、議席が足りなければ野党も黙る。だから大胆に発表できたが、最後に彼女を追い詰めたのは市場だった。市場は思い入れや愛着ではなく、その主体に未来があるか、自分が儲けられるかで売り買いするため、国民とは違う原理で動いている、と中田は説明する。

翻って日本では野党が弱すぎると中田は言う。自民党が過半数割れしていた時期には、与党と野党の間で条件を突きつけてキャスティングボートを握る「ゆ党」の戦略が花盛りだった。しかし高市首相が選挙で過半数を圧勝で得たことで、そうした話は聞かなくなり、ゆ党は条件を一つ飲んでもらう形で取り込まれていった、というのが中田の見方だ。

そして最後に、煙に巻かれる国民がいると中田は言う。「円安と円高のどちらが良いかわからない」という総理の言葉をそのまま信じている人が多いが、iPhoneが買えないのになぜ円安が良いのか。無理してハワイに行ったら朝食が4000円で、パンケーキ1枚に4000円も払った、ぼったくりではなく普通の店で、驚いていたのは日本人だけだった、という旅行者の話を例に挙げた。それを聞いてハッピーだと思うなら黙っていればいいが、また海外旅行に行きたい、iPhoneを買いたいと思う人には考えるべきことがある、と中田は訴える。

中田自身の立場と留保

中田は締めくくりに、自分とは別の考え方もあると認めている。日本経済が元気になれば本当に元気になるかもしれないし、積極財政がうまくいった場合の話もすべきだという意見もあるだろう、と述べた。それでも、自分の見るところ事態はこちらの方向に進んでいるからこそ、損をする側の視点を伝えておく必要があると考えている、というのが中田の立場だ。

中田は自身を、政治家でもなく、どの政党にも事務所にも所属していない「天涯孤独の明日知れぬYouTuber」と位置づけ、何の立場もメリットもないからこそ言えることがあると述べた。そして今後も日本で授業を続け、「日本人が再びiPhoneを買える日まで」働いていくと語って授業を終えた。