ロシア・ウクライナ戦争はなぜ停戦できないのか 中田敦彦が解く「三つの矛盾」

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概要

2022年の全面侵攻から4年が経っても、ロシア・ウクライナ戦争は終わっていない。ニュースでは停戦交渉の話題が繰り返し出てくるのに、なぜ合意に至らないのか。中田敦彦はこの動画で、停戦を阻んでいるのはロシアとウクライナの条件の衝突だけではないと説明する。ウクライナが過去にアメリカなどから受けた裏切りの記憶と、アメリカ国内の事情も絡み合っているというのが中田の見立てだ。

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停戦交渉のニュースは出るのに終わらない

中田はまず、最近の動きを紹介する。9月5日から6日にかけて、アメリカの特使がロシアの首都モスクワとウクライナの首都キーウを訪れた。9月9日にはロシア側から、アメリカが仲介する協議の再開に期待しているという、前向きにも見える発言があった。それでも戦争は終わらない。

中田によれば、4年も経つと戦況の細かな変化ばかりが報じられて情報が錯綜し、そもそもなぜプーチンが攻め込んだのかを多くの人が忘れている。しかし停戦がまとまらない理由は、その最初の動機に深く関わっている。そこで中田は、現在の停戦条件を確認したうえで、発端までさかのぼって説明していく。

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ロシアが求める「追加の領土」とウクライナが求める「安全の確保」

停戦がうまくいかない直接の理由について、中田は双方の条件がかみ合っていないことを挙げる。意外と知られていないのは、ロシアが現在の前線で戦闘を止めようとは言っていない点だという。多くの人は、ロシアが占領している地域とウクライナが守っている地域の境目、つまり今の前線で停戦するのだと想像する。だがロシアは、その先にあるドネツク州の残りの地域を無条件で引き渡すなら停戦すると主張している。

中田が問題視するのは、引き渡しを求められている地域に重要な防衛拠点が含まれていることだ。ロシアにとっては前進を阻んできた目の上のたんこぶにあたる場所で、そこを手に入れたら止めてやるという条件になっている。

一方、ウクライナ側の条件は停戦後の安全の確保、つまり二度と攻めてこないという約束である。ロシアの条件は、このウクライナの条件を正面から脅かす。ドネツク州の残りと防衛拠点を明け渡して停戦し、その後に停戦が破られてロシアが再び攻めてくれば、ウクライナは今より圧倒的に不利な状況から戦うことになる。中田はこれを「盾を渡してくれたら戦いを止めてやる」という条件にたとえ、盾を渡せば次は防御の弱い状態で殴られることになると説明する。

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発端は「ウクライナの西側化」への恐れ

なぜロシアはこれほど厳しい条件を出すのか。中田は、ロシアがもともと「ウクライナの西側化を止めて影響圏に戻したい」と言っていた点に立ち返る。

「西側」「東側」という区分について、中田は第二次世界大戦後の構図から説明する。アメリカ、イギリス、フランスを中心とする資本主義圏が西側で、ソ連や中国の共産主義圏が東側だった。この5カ国は第二次世界大戦の戦勝国で、国際連合の常任理事国でもある。中田は国連を「戦勝国連合」と呼び、敗戦国は日本、ドイツ、イタリアだったと整理する。戦勝5カ国のうち3カ国が資本主義、2カ国が共産主義を選んだ。

共産主義そのものは、ソ連の崩壊や、鄧小平以降の中国で資本主義が解禁されたことで実質的に消えた。中国からはファーウェイやアリババのような企業が生まれ、世界中に商品を売っている。それでも、世界の覇権を争うチーム戦としての陣営対立は残っている、と中田は言う。ロシアが特に恐れているのは西側の軍事同盟であるNATOであり、ウクライナがNATOに近づくことは、ロシアにとって味方が向こうのチームに移ることを意味する。

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広大な国土と北方領土、そして「一つの民族」という思い

ロシアがここまで周辺国にこだわる理由として、中田は国土の大きさを挙げる。ロシアはヨーロッパの隣国であると同時に、北方領土で日本とも接している。どちらから攻められるかわからず、両方から同時に攻められれば困る。だから周辺地域は自分の言うことを聞く国であってほしいのだという。

中田は北方領土が返ってこない理由もここにあると説明する。北方領土を日本に返し、そこに米軍基地を置かれることをロシアは恐れている。周辺を影響圏で固めたいという発想は、北方領土にもウクライナにも共通している、というのが中田の説明だ。

加えて、軍事的な恐怖だけでなく思い入れもある。ヨーロッパの長い歴史の中で、ロシアとウクライナは非常に近い民族で構成されてきた。プーチンは歴史的に両国は一つの民族だったと主張している。中田はロシア側の心情を、同胞なのになぜヨーロッパの側へ行くのか、怖いし悲しい、と言い表している。

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2014年:親ロシア政権の失脚とクリミア占領

中田は、この争いが2022年ではなく、その8年前の2014年に始まっていたことを強調する。この年、ウクライナでは親ロシア政権が失脚した。ウクライナにはロシアと仲良くしようという派閥と、EUなどヨーロッパに近づこうという派閥がある。中田はこれを日本にたとえ、日米同盟を重視する人もいれば、中国や韓国などアジアとの関係を重視する人もいると説明する。現在の日本は親米政権だが、田中角栄の時代のように中国に近づこうとすると政治的な争いに巻き込まれる印象がある、とも述べている。

さらに中田は、前回の動画で扱ったイラン戦争との類似を指摘する。イランにはもともとアメリカが後押しする親米の軍事政権があったが、革命によって反米政権に変わり、その結果アメリカやイスラエルと対立することになった。ウクライナでは逆に、親ロシア政権が反ロシア政権に入れ替わり、EUへの接近がはっきりした。その瞬間にロシアは動き、クリミア半島を電撃的に占領して併合した。中田は、これは隣国を西側に奪われ、NATOの拠点を作られることへの恐怖から始まったと説明する。

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クリミアの成功体験と2022年の誤算

中田の見方では、クリミアの電撃占領が成功したことが2022年の全面侵攻につながった。プーチンは政治的にも外交的にも思い通りに事を運べた。ロシア国内には、クリミアやウクライナはもともとロシアのものだったと考える人もいて、クリミア併合は人気があった。中田は、どこまでを一つの国と見るかは時代観や歴史観によって変わると述べ、中国が台湾を「一つの中国」と主張する例や、朝鮮半島がもとは一つの国だったという見方を挙げる。

また中田は、世界史では戦争に勝った大統領は国民に人気が出やすいと話す。後世から見れば痛みを伴う出来事でも、当時の国民にとっては景気が良くなったり国土が広がったりした時代として記憶されるからだという。こうした背景から、中田は「言い方悪いですけど、味を占めた」と表現し、もう一度電撃的に取ってしまえばいいと考えたのが2022年だったと説明する。

中田によれば、ロシアは4年も続く戦争を想定していたわけではなかった。首都キーウへの電撃作戦は、数日から1〜2週間で終わる「クリミアの再来」になるはずだった。ところがこの作戦は失敗し、プーチンは目標を東部・南部の獲得に切り替えた。

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プーチンがドネツク州にこだわる理由

ここで中田は、冒頭の停戦条件の謎に答えを出す。ドネツク州を獲得しないまま終われば、4年間何をしていたのかということになる。キーウを取ると言って取れなかったことをごまかすために東部・南部の獲得を掲げた以上、それを達成して終われば「有言実行の男」として面目を保てる。だからプーチンはドネツク州にこだわっている、というのが中田の解釈である。

中田はトランプ大統領の苦境も引き合いに出す。トランプは国内が大変な時期に、アメリカのために経済を良くすると言いながら戦争にお金を使っていると批判されている。戦争は電撃的に終わらせて成果を得れば人気が上がるが、長引けばベトナム戦争のように反戦・厭戦ムードが高まり、指導者の人気は地に落ちる。プーチンもまた、4年を費やして宣言したものをほとんど得られていないため、成果なしでは引けない立場にある、と中田は見ている。

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ウクライナとヨーロッパの「パリ宣言」

ではウクライナは怯えているだけなのか。中田は、ウクライナにも独自の考えがあると続ける。ウクライナはもともとNATO加盟を望んでいた。しかし今ウクライナを加盟させれば、ロシアとNATOの全面対決になりかねない。NATOもアメリカもヨーロッパも、火に油を注ぐことは避けたいため、そこには踏み込めない。

同時にヨーロッパは、アメリカは頼りにならないのではないかと考え始めている、と中田は言う。トランプは自分が大統領になればすぐに戦争を止めると言っていたが、ロシア・ウクライナ戦争もイランとの戦争も止められていない。中田は、世界一の経済大国・軍事大国であっても、よその戦争を止めることは最も複雑で莫大なコストがかかると指摘する。

そこで2026年1月に出されたのが、ウクライナに関する「パリ宣言」である。中田はこれを、NATOには入らないが自分たちには自分たちの考えがあるという宣言だと説明する。ウクライナ軍と、イギリスとフランスを中心とするヨーロッパの多国籍部隊が連携し、アメリカが武器や資金で後ろ盾になる。NATOではない形にすれば、ロシアを逆なでしないだろうという狙いだ。

中田によれば、現時点で実現しているのは訓練や武器提供といった段階までである。この枠組みの肝は停戦後に発動する点にあり、停戦したらイギリスとフランスの部隊を配置してウクライナを守ってもらうという仕組みになっている。ところがロシアは、NATOでなくてもこれは受け入れられないと主張している。本質的にアメリカ、イギリス、フランスと対立する構図が嫌なのだから、NATOではないという理屈は通じない。中田はこの状況を、手を替え品を替えてじゃんけんを出し続けても、ずっとあいこが続いている状態にたとえている。

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ウクライナがアメリカに求める「法的拘束力のある保障」

中田は、ウクライナがアメリカに何を求めているかを見ると、アメリカの置かれた状況が見えてくると話す。ゼレンスキーが求めているのは、アメリカ議会の承認を含む法的拘束力のある安全保障である。守ってやるという口約束ではなく、こういう状況になれば米軍が確実にこう動くというルールを議会で取り付けてほしい、ということだ。

口約束をこれほど嫌う理由として、中田は1994年のブダペスト覚書を挙げる。2014年のクリミア占領より20年前、アメリカ、イギリス、ロシアの3カ国が主導して、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに核兵器の放棄を求めた。当時この3カ国は核兵器を保有しており、ウクライナはかなりの量を持っていた。核拡散防止条約に調印し、核は常任理事国など一部の国に任せてほしい、という要請である。

核を手放せば自国の安全保障はどうなるのか。その問いに対して、米英ロの3カ国が安全を保障すると約束した。中田によれば、当時の米英ロといえば最強のトップ3であり、ウクライナはその保証を信じて核を放棄した。ところが20年後、守ると約束した3カ国のうちの1国が攻めてきた。中田はこれを、高い塀を壊せば警察が守ると言われて塀をなくしたら、その警察や警備会社が盗みに入ってきたようなものだとたとえる。だからウクライナは二度と口約束を信用せず、法的拘束力のある保障を求めている。

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アメリカが簡単に応じられない事情と「三つの矛盾」

しかし、アメリカがこの要求にすぐ応じるのは難しい、と中田は言う。アメリカはイラン・イスラエル戦争にも関わっており、中田の言葉では二つの戦争に同時に当事者として関わっている。トランプはもともと、アメリカは国外にお金を使いすぎているので手を引き、国内に注力すると主張してきた。高い関税、アメリカ・ファースト、メイク・アメリカ・グレート・アゲインを掲げていた。ところが実際には、かつての大統領たちのように「世界の警察」の役割を担わされつつある。

もしウクライナに法的拘束力のある保障を約束すれば、なぜアメリカの軍事費をロシア・ウクライナに使うのか、言っていたことと違う、イラン・イスラエルも終わっていない、インフレはどうするのか、という批判は避けられない。それでもゼレンスキーはブダペスト覚書を忘れていないので、アメリカであっても口約束では信用しない。

中田はここで論点を三つにまとめる。ロシアとウクライナの主張が真っ向から矛盾していること。ウクライナとアメリカの間に、過去に約束を反故にされたという不信があること。そしてトランプのこれまでの主張と、今求められている行動が矛盾していること。この三角形がかみ合わないために、4年間停戦が前に進む様子がなかった、と中田は説明する。

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2008年のブカレスト首脳会議

中田はさらにもう一つの歴史的な事実を加える。2014年の政変より前の2008年、NATOはブカレスト首脳会議で、ウクライナやジョージアを将来的にNATOに加盟させる方針を決めていた。ロシアから見れば、NATOが受け入れの形を整え、ウクライナでは政権が交代し、加盟が着々と進んでいるように映った。だから止めに入った、という流れでもあったという。

中田はここで、だからといって戦争を始めたことを容認しているわけではないと念を押している。そのうえで、これらの歴史的な出来事が積み重なり、停戦できない今の状況を作り出していると述べる。

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膠着の間にも積み上がる被害

中田は、膠着とは何も進んでいない状態ではなく、被害を生み続けている状態だと強調する。2025年時点の推計では、ロシアはGDPの約7.5%を軍事費に充てている。ウクライナに至ってはGDPの約40%を使っているという。中田は、戦争に巻き込まれた国は、戦勝国になっても経済的に大きな打撃を受け、敗戦国ならなおさらボロボロになると述べる。そして日本国民が覚えておくべきこととして、戦争は始めたら簡単には終われないこと、国家は権力者の都合で戦争を始めること、国民が嫌だと言っても始まってからでは遅いことを挙げる。

民間人の被害も示された。2026年7月の1カ月だけで、ウクライナ国内では死者437人、負傷者2610人が出たという。中田は、軍人ではなく民間人が狙われていること、超長距離ドローンが生活、物資補給、移動のラインにまで打撃を加えていることを挙げ、ルール無用の争いに突入していると表現する。

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ウクライナで急成長するドローン産業

ウクライナはその資金の多くをドローンの生産に注いでおり、ドローン産業が急成長していると言われる、と中田は紹介する。FPVドローンはカメラ付きで操作でき、ピンポイントで目標に誘導したり、ロックオンすれば自動で向かったりする。中田によれば、2025年には年間300万機のFPVドローンが国内で生産され、2026年6月の段階ではドローンの95%が国産になっている。

急成長の理由について中田は、実際に使う戦場があるからだと説明する。作って使い、現場から改良の要望が来て、開発し、また作って使う。作ってから本番で試すような開発とはスピードがまったく違う。ただし中田は、これが良いことなのか悪いことなのかはわからないとも述べる。戦争は技術や産業を刺激するが、ドローンが急速に進化するほど戦争の過酷さも加速していく。膠着していても戦争は進み続け、人命は失われ続けている、というのが中田の指摘である。

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ロシア国内:支持率76%と言論統制、任期は2036年まで

ロシア側について、中田はプーチンの支持率が76%に達していると紹介する。ただし、国民が皆プーチンを支持しているわけではないという。2025年9月までに、戦争に反対したという理由で少なくとも1299人が裁判にかけられている。どのインターネットやスマートフォンを使うべきか、どの情報を見てはいけないかまで指示され、発言すれば裁判所に呼ばれる。そういう国が戦争をしているとき、国民にはもう止める力がない、と中田は言う。

さらに中田は、2020年の憲法改正にも触れる。現在の任期は1期6年で2期までだが、プーチンは憲法改正で任期をいったんリセットした。中田の説明では、現在は5期目の2年目で、今の法律の下でも2036年、つまり10年後まで務められる。法律も言論も思いのままにできる状態なら、10年後にもう一度リセットするのも難しくないだろう、と中田は見ている。プーチンは現在73歳で、もし100歳まで生きれば、この体制が27年間変わらない可能性もあるという。

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大国が戦争を始めたとき、誰が止められるのか

最後に中田は、世界史の戦争から学ぶべきだと私たちは思ってきたが、現代では戦勝国であり国連常任理事国でもある超大国が大きな戦争をしている、と問題を提起する。アメリカ・イスラエル・イラン戦争も、ロシア・ウクライナ戦争もそうだ。平和を維持する仕組みを作ろうとしていた大国が自ら戦争を始めれば、世界の誰も止められない。権力者が暴走すれば、国民にも民主政治にも止める手段はない、と中田は述べる。

中田はこれを日本の問題にもつなげる。中国と台湾、ロシア、北朝鮮など、日本も周辺の情勢に巻き込まれかねない状況にあり、防衛費を上げようという空気が広がっている。それに反対すると「日本のことを思っていないのか」と言われ、外国人ではなく自国民に対して「反日」という言葉が使われるようになった。「新しい戦前」という言葉まで出てきており、中田はそれを怖いと語る。どこで間違え、どうすれば戦争を終えられるのか。中田は、そうした問いを持って国際ニュースを見続け、日本やその周辺で同じことが起きないよう政治と権力を見守っていく必要があると結んでいる。