GakuNin RDMからJAIRO Cloudへ論文と根拠データを送り出す「公開支援機能」

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概要

学術情報基盤オープンフォーラム2026のセッション「研究データ管理からはじめる即時OA」で、国立情報学研究所(NII)オープンサイエンス基盤研究センターの込山悠介氏が、GakuNin RDMに新しく実装した「JAIRO Cloud公開支援機能」を紹介した。大学が論文の即時オープンアクセス(OA)への対応を迫られるなかで、研究データ管理の場であるGakuNin RDMから、論文と根拠データを紐付けたまま機関リポジトリで公開する流れをどう作ったかが発表の中心である。込山氏の立場は、研究者が日常的にデータを管理している場所から公開まで一続きで進められれば、即時OAの運用は楽になるというものだ。

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セッションの位置づけと関心の高さ

冒頭で司会者は、このセッションにはオンラインで約1000人が事前登録し、会場も130席が埋まって立ち見が出ていると紹介した。情報基盤センター、研究推進部門、図書館のいずれからも関心が高いという。

セッションは二部構成である。まずNIIが、データ管理基盤のGakuNin RDMのチームと、林氏率いるJAIRO Cloudのチームが「二人三脚」で開発したシステムを紹介する。続いて、この機能を先行して試した複数の大学の担当者が、学内運用にどう落とし込めるか、図書館の実態に合っているかといった観点から検証結果を発表する。本記事が扱うのは、このうち込山氏による概要説明の部分である。

昨年度版からの出発点

GakuNin RDMとJAIRO Cloudを連携する機能は、昨年度末の3月末の時点で一度リリースされている。このときは、GakuNin RDMの中で設定を行い、JAIRO Cloudへデータを送り出す仕組みだった。

込山氏によれば、開発チームはオープンアクセスをさらに進めたいと考え、専用のユーザーインターフェースを用意し、より簡単な設定で誰でも公開できるようにすることを目標に、その後の約半年間開発を続けてきた。

なぜ今、公開支援が必要なのか

込山氏は背景をあらためて整理した。学術論文の即時OA対応では、論文そのものの公開に加えて、掲載誌や分野の慣習によっては、論文のエビデンスとなる根拠データも整理して公開することが重要になってきている。

JAIRO Cloud側では、これまでは論文だけが登録されてきたが、根拠データも登録できるようになった。ただし、論文と根拠データの紐付けはまだできていなかった。そこで今回の改修で、両者を対応付けて保存できるようにした。さらに、データの所在や公開の可否といった情報も示せるようにした。データ本体を公開できない場合でも、どこが管理しているかをJAIRO Cloudの中で調べられるという使い方ができる。メタデータについても、研究者自身や機関が基盤の中で扱う形に変えてきたという。

一方で、現場には無理なく扱える仕組みがなければ運用が回らないという課題がある。研究者と図書館がやり取りしながら、GakuNin RDMにデータを貯め、そこからリポジトリへ論文とデータを集める作業を、無理のない運用で回す必要がある。込山氏は、人手が足りないといった意見も多く寄せられている状況だと述べた。

JAIRO Cloudのワークスペースがあるのに、なぜRDMから作るのか

JAIRO Cloudにはすでに研究者向けの「ワークスペース」があり、研究者自身が新規アイテムを手早く登録・公開できる。そのため、なぜ改めてGakuNin RDM側にこうした機能を作ったのか、という質問を受けることがあるという。

込山氏は、どちらのサービスも否定的に捉えられないよう配慮したうえで、両者の違いを説明した。JAIRO Cloudのワークスペースは、手元の成果がすでに固まっていて、すぐに公開したい場合に便利である。公開に特化したシンプルで分かりやすいインターフェースを備えており、成果物が固まっていれば、そのまま登録と公開の操作を始められる。

これに対して、研究者はふだんGakuNin RDMでデータを管理しているというのが開発チームの認識である。そこに公開支援機能を付ければ、研究データの管理から公開までを一つの流れで進められ、研究者の負担が大きく減るのではないかと考えた。普段管理しているデータをそのまま公開プロセスへ持っていき、論文と根拠データをGakuNin RDMの中で紐付けてからJAIRO Cloudへ送り出せば、関係性を保ったままメタデータを公開できる。

この過程で、GakuNin RDMにはこれまでなかった申請プロセスも作った。研究室の研究員がボスの承諾を得てから図書館のシステムへ送る、という流れである。込山氏はこれを、あくまでサンプルモデルとしてのユースケースの一つだと位置づけた。開発では、二つのシステムでの二重管理が生じないようにリポジトリへ登録できることに気を配ったという。

込山氏のまとめでは、データの公開自体はGakuNin RDMでもJAIRO Cloudでも可能である。GakuNin RDMを使う利点は、すでに研究データを管理している状態からシームレスに公開へ進めることにある。

利用開始までの手続き

続いて込山氏は、事務職員の参加者が多いことを踏まえて、手続き面を説明した。研究者から「GakuNin RDMにあるデータを公開したい」という問い合わせが情報基盤センター、図書館の窓口、研究推進部門などに来ても、研究者がすぐにデフォルトの状態で公開支援機能を使えるわけではない。

この機能を使うには、所属機関のGakuNin RDM担当者(主に情報基盤センター)に設定を依頼する必要がある。また、JAIRO Cloudを管理している図書館の管理者が、パスワードのような連携用の情報を払い出す。それを情報基盤センターがGakuNin RDM側にあらかじめ設定しておくことで、情報基盤センターが管理するGakuNin RDMと図書館が管理するJAIRO Cloudがシステム連携できるようになる。込山氏は、ここに多少の設定のハードルがあると認めた。JAIRO Cloudのワークスペース側にも同様の手続きがあり、機関リポジトリの管理者への依頼がなければ、研究者がすぐに使えるわけではない。

利用開始までの流れは次の3段階で示された。

  1. 情報基盤センター等での利用設定
  2. 両システムの担当者が連携しながら行う連携設定
  3. 利用開始。研究者はGakuNin RDMのプロジェクトでアドオンを有効化しておくと、公開支援機能を使える

研究者から依頼があった場合は情報基盤センターに問い合わせてもらい、図書館に連絡が来た場合は情報基盤センターにも連絡してもらう必要がある。込山氏は、こうした部門間の連携を進めながら即時OAを定着させていきたいと述べた。

昨年度の議論から整理した4つの課題

新しいユーザーインターフェースを設計する際、開発チームは昨年度のオープンフォーラムのパネルセッションで有識者から出た指摘を取り込み、課題1〜4として整理した。

寄せられた意見は次のようなものだった。作業全体の工程、つまり公開までのフローが分かりづらい。メタデータの入力項目が非常に多く負担が大きい。二つのシステムをまたぐ操作が必要で、もっと簡単にならないか。機関の担当者を支援するユーザーインターフェースが不足している。込山氏は、これらの課題に応える形で開発を進めたと説明した。

登場する役割と全体のフロー

この機能に登場する役割は3つある。論文とデータの公開を申請する研究者・プロジェクトメンバー、それを承認するプロジェクト内の責任者、そしてJAIRO Cloud側で確認する図書館である。責任者として想定しているのは主に研究室を主宰する教授で、研究室のメンバーが教授の承認を得て図書館に提出するというシンプルなモデルを、今回のサンプルケースとして最初に実装した。

込山氏は、大学によっては学部長の許可が必要だったり、分野によっては学会の承諾が必要だったりと、今後バリエーションが増える可能性を認めた。そのうえで、今回は最も単純なケースを提示したと説明した。利用者はこの公開支援システムに入れば、自分のロールに応じた作業ができるよう設計されている。

全体の流れは色分けして示された。まず研究者が論文の書誌情報と研究データのメタデータを入力してボスに送る。ボスが承認すると、内容がJAIRO Cloudへ送られる。JAIRO Cloudにもワークフローがあるため、公開前に図書館がチェックし、リポジトリで公開する。

実際の画面:ウィザード形式の入力

実際の画面は、これまでのGakuNin RDMとは少し違う、新しくシンプルなUIとして用意された。最初の画面では、新規登録、作業中データの編集再開、登録済みデータの参照を選べる。

次に、GakuNin RDMのプロジェクトと、ワークフローとしての登録先JAIRO Cloudを選ぶ。通常、一つの機関にJAIRO Cloudは一つだという理解のもとで、登録先は1件になっている。

その後、論文、データの順に入力していく。査読付き論文などですでにDOIが発行されているもの、つまり出版直前や既発表の論文であれば、DOIを入力すると書誌情報が自動で入る。DOIのない論文は、この画面で書誌情報を手入力できる。続いて資金配分機関などの情報を入れ、入力漏れがないかを確認する。研究者の作業はここまでである。

承認からJAIRO Cloudでの公開まで

研究者が承認を依頼すると、責任者はタスク管理の画面で承認操作を行う。承認するとJAIRO Cloudへ送られ、JAIRO Cloud側で図書館が確認するための承認・公開のプロセスが立ち上がる。

図書館の担当者は、通常の管理者用の認証でログインしてワークフローを開く。そこにGakuNin RDMから送られて登録されたアイテムが表示されるので、内容をチェックして承認すれば公開に進む。公開が完了すると、論文と根拠データが紐付いた形でリポジトリに公開される。

機関担当者の運用支援として、公開支援機能の中でタスクの状態やステータスがある程度管理されている。承認者は、いま何件の申請が来ているか、各タスクがどの状態にあるかを一覧で確認できる。登録の通知、進捗確認、インデックスの割り当て、権限と役割の分かりやすさといった点も、UIで対応してきたという。

課題へのビフォー・アフター

まとめとして込山氏は、昨年度の課題に対する改善をビフォー・アフターの形で示した。

作業全体が分かりづらいという課題には、順番に入力して次のステップへ進む「ウィザード」形式の画面で応えた。全体の流れと、いま何の作業をしているかが分かりやすくなった。バリデーションも付いており、一つ前のページに戻って作業を再開することもできる。

メタデータ入力の負担については、自動補完を追加した。論文や根拠データはDOIから、機関情報は外部の情報源から補完する。研究者IDを持つデータベースから研究者情報の一部を補完する機能も新たに加えた。込山氏は、これで入力負担が少し減っているのではないかと述べた。

二つのシステムをまたぐ操作については、管理者が初回に一度設定すれば、一般ユーザーはその後、先ほどの簡易な画面でフローを繰り返し使える。込山氏は、利用者がシステムの違いをあまり意識せずにデータを公開し、即時OAに持っていけるのではないかと考えている。機関管理者向けの支援機能も整備した。

今後の展望

込山氏は成果を次のように整理した。利用者はウィザードで迷わずに登録できるようになった。どのタスクを進めているかを明確に確認できるようになった。システム間の移動をあまり意識せずにデータ登録まで進められ、それぞれの役割に応じて適切なシステムで作業できるようになった。

今後の取り組みとしては、入力項目を簡素化するテンプレートや、分野別のメタデータ支援を挙げた。込山氏は、これらを通じて即時OA対応を大学の実務として定着させるために協力していきたいと述べ、発表を締めくくった。承認フローの学内ごとのバリエーションや、実際の運用との適合性については、続く大学からの発表で検討されることになる。