日米協調為替介入はなぜ起きたのか:中田敦彦が読むアメリカの思惑と「円安の裏技」

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概要

1ドル163円まで進んだ円安に対し、日米が協調して為替介入した。中田敦彦はこの出来事を「円安が止まった」とは見ていない。今回の介入はむしろ日本の苦境を裏付けるものであり、事態はより深刻な方向に動いているかもしれない、というのが中田の主張だ。動画では、為替介入の仕組み、アメリカが協力した「表と裏」の理由、ベッセント米財務長官の発言の読み方、そして高市政権の財政方針に潜む危うさを順に解説している。

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「円安は止まった」という反応への反論

中田は直前に「止まらない円安」をテーマにした動画を公開し、100万回以上再生された。ところがその直後に為替介入で円が急騰したため、「円安は止まっているではないか」というコメントが寄せられたという。

これに対して中田は、現在の水準は1ドル157円前後でまだ十分に円安だと指摘する。しかも、この動きが一時的なのか続くのか、なぜ日米が共同で動いたのか、そもそも為替介入とは何なのかが分からないまま反応している人が多い、と述べる。

中田が整理した経緯は次の通りだ。7月29日の時点で1ドル163円だった相場が、30日に159円まで動き、31日にはさらに円高が進んだ。4円も一気に動いたことで、片山財務大臣が以前から「断固たる措置」を示唆していた、いわゆる口先介入がついに実行されたのではないかと受け止められた。8月3日に片山財務相が介入を公表し、しかも日本単独ではなく日米協調介入だったことが明らかになった。円は一時155円まで上昇した。中田によれば、日米協調介入は1998年以来28年ぶりで、「オリンピック7回分」に相当するほど珍しい出来事だという。

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為替介入とは何か:メルカリにたとえると

中田はまず為替の仕組みから説明する。固定相場制では国同士がレートを決めていたが、変動相場制では市場が決める。中田はこれをヤフオクやメルカリにたとえる。売り手の希望価格と買い手の希望価格のバランス、つまり需要と供給で値段が決まる。人気のチケットやスニーカーにプレミア価格がつき、余った刺身はタイムセールになるのと同じ原理で、通貨の値段も日々変動している。

為替介入は、その市場に国が割り込むことだ。日本では、財務省が介入を決め、日銀が実行する。たとえば50円で売りたい人と40円で買いたい人が45円で折り合いかけているところに「私は80円で買う」と割り込めば、値段は吊り上がる。中田は自身の音楽ユニット・RADIO FISHのCDがメルカリで100円で売られているのが不服で、自分で買い占めれば値段が上がる、という例で説明した。今回、日本とアメリカは円を買うことで円の値段を引き上げた。

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円安の被害と、円安が進む理由

なぜ円を買い支える必要があるのか。中田は、円安の被害は物価高に集約されると説明する。1ドルを手に入れるのに163円を払わなければならないのは、円の価値が下がっているからだ。そのため新型iPhoneが買いにくくなり、海外旅行にも行きにくくなる。ドルだけでなくユーロやポンドなど他の通貨に対しても円は安くなっている。逆に海外の旅行者からは日本が安く見えるので、オーバーツーリズムが起きる。中田によれば、これらは別々の問題ではなく、すべて「円の価値が下がっている」という1つの問題から生じている。

中田はここで政治への不満も口にしている。物価高対策の減税はなかなか決まらないのに、皇室典範や副首都、議員定数削減といった話は進む。国民がいま求めているのは暮らしの改善だ、と述べた。

円安が進む原因について、中田は金利を挙げる。アベノミクス以来、日本は異次元金融緩和で金利を下げ、お金を借りやすくしてきた。一方、アメリカの金利は高い。すると、日本で安くお金を借り、アメリカで預けて高い利子を得る取引が成り立つ。これがキャリートレードだ。中田は漫画『闇金ウシジマくん』の逆、つまり「利子をほとんど取らない優しい貸し手」から借りて、きちんと利子を払う相手に貸す構図だと表現した。この取引では円を売ってドルを買うので、円の価値が下がっていく。

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日本が金利を上げられない理由

本来、キャリートレードが横行したら金利を上げれば取引の旨みは消える。通貨の番人である日本銀行は、日銀券の価値を守る立場にある。しかし日本は簡単に金利を上げられない、と中田は言う。住宅ローンを変動金利で借りている人の負担が増えるだけでなく、この国で最も多く借金しているのは日本政府だからだ。国債の利払いが重くなるため、金利を上げにくい。

中田は「国債は国の借金ではなく国民の資産だ」という反論にも触れている。国民が銀行に預けたお金で銀行が国債を買っているので、国民が国家にお金を貸している構図であることは「それはそうだ」と認める。そのうえで、だからこそ国家は利払いを増やしたくなく、金利を上げにくい。その足元を世界に見透かされている、というのが中田の見立てだ。「世界一の借金王国だから金利は上げられない、だからキャリートレードはし放題」と市場に思われている状況に対し、片山財務相がアメリカを連れてきて対抗した、と中田は描く。

片山財務相は「過度な変動、無秩序な動き」に対処したと説明し、追加介入も辞さない姿勢を示した。市場はそれを見て一旦おとなしくしているが、相場は5〜6年前の水準には戻っておらず、まだ様子をうかがわれている段階だと中田は言う。

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介入の限界と「のび太・スネ夫・ジャイアン」

中田は、為替介入には根本的な限界があると強調する。自分の『PERFECT HUMAN』のCDをいくら買い占めても、世間が欲しがっていなければ値段は上がらない。個人の資金より市場全体の売買の総額のほうがはるかに大きいからだ。同じように、日本であれアメリカであれ、一国が市場と無限に戦うことはできない。今回の介入は「アメリカを連れてきたぶん大規模になった焼け石に水」だと中田は表現する。

ここから中田は『ドラえもん』のたとえを使う。市場というスネ夫に、日本というのび太がずっと舐められていた。今回はのび太がジャイアン、つまりアメリカを連れてきたので、スネ夫がひとまず様子を見ている。では、ジャイアンにはのび太を助けて何の得があるのか。中田は、この点が分かれば先行きが見えると言う。

三村財務官は今回の介入を「日米通貨同盟の完成形」と表現した。中田は、日米同盟は安全保障の話として聞いていたが「通貨同盟」は初耳だと述べ、のび太が「ジャイアンとはマブダチだ」と言っているようなものだと評する。一方で、その前日にはトランプ大統領が「日本が助けを求めていた」と発言していた。中田はこれを、のび太が親友だと言った直後にジャイアンが「のび太に助けを求められてさ」と言ってしまう恥ずかしい構図にたとえた。ディール外交で知られ、利益がなければ動かないトランプ氏が、何の見返りもなく日本を助けるとは考えにくい。裏で何があったのか、というのが中田の問題提起だ。

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単独介入はすでに「2カ月で元の木阿弥」だった

中田は、アメリカを連れてきたこと自体が日本の苦境を示していると言う。単独で市場を黙らせられるなら、後で何を言われるか分からない相手に頼る必要はない。

その根拠として中田が挙げるのは、直近の単独介入だ。日本は4月末から5月上旬にかけて、今回とほぼ同じ規模の約11兆円を投じて単独で介入した。いったん円高に振れたものの、1カ月後の6月には元の円安水準に戻り、7月にはさらに進んで163円に達した。11兆円の介入が元の木阿弥になるまで、わずか2カ月しかかからなかったことになる。

同じ規模の介入を再び単独で行えば、「また2カ月で戻るだけだ」と笑われる。だからアメリカを呼んだ。中田はこれを「背水の陣」と呼び、日本の信用と為替介入の効果はかなり厳しい状況にあると見ている。

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アメリカが動いた「表」の理由

中田は、アメリカが動いた理由を「表」と「裏」に分けて説明する。

表の理由の1つ目は、世界のリーダーとしての役割だ。28年前の1998年はアジア通貨危機の時期だった。中国の躍進は2010年代のことで、当時のアジアのスターはまだ日本だった。しかし日本はバブル崩壊後で、不良債権に苦しんでいた。中田は『半沢直樹』の貸し剥がしの描写を例に、この時期の日本はすでに世界第2の経済大国として致命傷を負っていたと説明する。日本単独ではアジア通貨危機を救えないと判断したアメリカが、混乱の世界への波及を恐れて協調介入した。今回も、日本発の通貨危機や金融危機が世界に広がれば迷惑なので防いでおく、という動機はあり得る。のび太の家が燃えれば隣の家に、ひいては自分の家にも火の粉が飛ぶ、というたとえだ。

2つ目は、アメリカの輸出の回復だ。円安で国民はiPhoneが買いにくくなる一方、トヨタのような輸出企業は過去最高益を上げている。逆にアメリカの自動車産業は苦しい。中田は、アメリカ車は大きく燃費も悪く、お金があればドイツ車やこだわりの国産車を選ぶ人が多いと述べる。トランプ氏はラストベルトの人々に製造業の復活を訴えて当選しているので、少し円高に振らせて実績を作りたいという面もあるだろう、と中田は見る。

ただし中田は、この2つだけならジャイアンはずいぶん「いい人」になってしまうと言う。わざわざ為替介入までする理由として、本命は「裏」にあるという。

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「裏」の理由:米国債を売らせたくない

中田によれば、ここが今回の核心だ。日本は介入を何度もできるわけではない。円で円は買えないので、介入には外貨準備、つまり日本が持つドルなど円以外の資産を使う。中田はこれを「弾数に限りのあるリボルバー」にたとえる。1発11兆円として、弾数は10〜20発と言われているが、為替水準によって評価額が変わるため正確には分からない、とも断っている。

重要なのはその内訳だと中田は言う。外貨準備のうち、すぐ使える現金・預金は20%にも満たず、70%以上は証券で、その大部分はアメリカ国債だ。つまり介入を続ければ、日本は米国債を売って円を買うことになる。国家規模で何兆円もの米国債が一気に売られれば、米国債の価格は下がり、米国の長期金利は上がる。アメリカが新たに国債を発行するときの金利も上げなければならなくなる。アメリカにとって、これは避けたい事態だ。

そこで出てきたのが「FIMAレポファシリティ」だと中田は説明する。米国債を担保としてアメリカに預ければ、アメリカからお金を借りられる仕組みで、片山財務相も、この仕組みによって弾数についてはもう少しやりようがあると述べたという。中田はこれを、ジャイアンが「俺のCDを売るな、俺に預けたら金を貸してやる。もちろん利子は取るけどな」と言っているようなものだと表現した。

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なぜアメリカはユーロで円を買ったのか

もう1つの手がかりとして中田が挙げるのは、介入の方法だ。30日は日本単独、31日は日米協調で介入した。アメリカも円を買ったが、ドルではなくユーロで買ったと報じられている。

中田の解釈はこうだ。ドルを売って円を買えば、アメリカがドル安・円高に誘導しているというメッセージになる。しかし今のアメリカはインフレで物価が上がっており、物価上昇をさらに加速させるドル安は避けたい。日本は助けたいがアメリカの物価は上げたくない。その苦肉の策がユーロ売りだった、という。

さらに中田は規模に注目する。アメリカの介入は約1兆円規模と言われており、日本の11兆円に対して「11対1」になる。三村財務官は「日米通貨同盟の完成形」と喜んでいるが、会計を見れば割り勘とは言えない。中田の解釈では、アメリカは資金ではなく「信用」を貸しただけだ。米国債を売りまくりそうな日本を「金は貸してやる」で止め、ユーロをわずかに売ることで「日米協調介入」と言わせ、恩を売った。中田はこの読み筋が、トランプ氏のイメージと一致すると述べている。

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ベッセント長官の発言:「時間稼ぎに過ぎない」

では日本はこれからどうなるのか。中田は、その答えは8月3日の発表の翌日、8月4日のベッセント米財務長官の発言にあると言う。中田の紹介によれば、ベッセント長官は介入はあくまで時間稼ぎで根本的な解決にはならない、円安の是正には「政策とファンダメンタルズ」が必要だと述べた。

中田は、ファンダメンタルズとは給料や借金のような経済の基礎体力、いわば国の履歴書だと説明する。借金まみれのうえ、さらに大盤振る舞いをしようとしている日本の基礎を何とかしなければならない、という含意だと読む。政策については、ベッセント長官が「植田総裁が最善を尽くしてくれるだろう」と述べた点に注目する。植田総裁が担うのは金融政策、つまり金利だ。中田はこれを「金利を上げろ」という要求だと解釈し、「暖房をガンガンにしながら氷をくださいと言っても埒が明かない、暖房を下げろ」というたとえで説明した。

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高市政権にとっての厳しさ

中田によれば、金利引き上げは高市政権にとって非常に厳しい要求だ。高市政権は「日本を強く豊かに」「Japan is back」を掲げ、370兆円規模の官民投資で経済成長を目指している。金利が上がれば、その成長路線の足を引っ張る。

中田は官民投資そのものにも注意を促す。「官が呼び水になって民が集まる」という説明を真に受けてはいけない、と言う。例として挙げるのが半導体のラピダスで、資本構成のほとんどが官で、民はわずかだと述べる。民間が乗らないのは、クールジャパン機構が投資を外したことを知っているからで、国が「ここに投資しろ」と言って儲かった前例がないからだ、と中田は見る。クールジャパン機構が失敗したのに誰も怒らず、まだ官民投資を信じている国民は素晴らしい、と皮肉を込めて語った。そのうえで、国民の不満を抑えるために消費減税が用意されている、とも述べる。

中田によれば、植田総裁は世界から金利を上げろと言われ、苦い顔で少しずつ利上げを進めているが、そのたびに高市氏に睨まれている。高市氏は金利を上げたくない。官民投資で経済成長を見せたいのに、景気を冷やすことはしたくないからだ。

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債務残高対GDP比という「ゲーム」の2つのクリア方法

中田がさらに注目するのは、骨太の方針で財政の指標を変えようとしている点だ。単年度の税収で支出をどれだけ賄えたかを見るプライマリーバランスではなく、債務残高対GDP比、つまり「借金対売上」の比率で見てほしいと言い出した。中田はこれを、節約して借金を減らすより売上を伸ばせばよいことにしてほしい、という話だと受け止める。

このゲームには2つのクリア方法がある、と中田は言う。1つはグッドエンドで、官民投資によって日本からNVIDIAやOpenAI、Anthropicのような企業が生まれ、GDPが大きく伸びること。もう1つはインフレだ。物価が上がれば名目GDPは自動的に膨らむ。100円で売れていたものが150円で売れれば、企業努力がなくても売上は増える。同時に、円の価値が薄まれば円建ての借金も実質的に薄まる。円で貯めている人には厳しいが、円で借りている人には有利になる。物価高で国民が苦しむほどこのゲームはクリアに近づく「裏技」がある、と中田は表現した。

ただし中田は、政府がこれを狙っていると断言すれば誹謗中傷になるとして、そこまでは言わないと明言している。可能性として存在するので、国民は注意して見てほしい、という立場だ。そのうえで、もしそれを狙う人がいれば「円安上等」と言うだろうし、円安で潤う輸出大企業や政府に気に入られたい人はそう言うだろう、とも述べた。

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市場が突きつける「NO」と通貨の歴史

最後に中田は構図を整理する。高市政権の支持率は下がってきてはいるものの、まだ50%を超えており、石破氏や岸田氏に頼れなかった国民は高市氏に期待している。一方で、そのやり方にNOを突きつけているのが市場だ、と中田は言う。

中田は通貨の歴史にも触れる。日本では和同開珎までさかのぼるとして、大仏を作らせるために国が価値を保証した通貨を与え、税として納めさせることでその通貨を使わせた、と説明する。中田によれば、国家が人々に働いてもらうために発明したのが通貨であり、税金はその通貨を強制的に使わせる権力だ。しかし困窮した国が通貨を刷りすぎると価値が下がり、人々はその通貨を持たなくなる。混ぜ物で薄められた金貨が出回った時代には、人々は確かな金貨を溜め込んだ。中田はローマ帝国にも言及し、こうした「通貨発行益の罠」が古今東西多くの国を潰してきたと述べる。通貨が劇的に安くなって栄えた国は歴史上ない、というのが中田の見解だ。そして、いま人々がNISAで株を買おうとしているのは円を信用していない表れだという。

市場は「過度な変動」や「無秩序な動き」をしているのではなく、素直に動いている。今の値段は政策とファンダメンタルズに見合った妥当なものだとベッセント長官も言っている。中田はそう解釈し、市場とアメリカが政権に警告を出していると述べる。

46:01

結論:見極めて次の選挙に活かす

中田は、高市氏が頑張ろうとしているときに水を差すなと感じる人も、そうだったのかと受け止める人も、両方いるだろうと認める。そのうえで、これが中田の言う「最悪のデスゲーム」なのか、それとも日本躍進への最後の鍵なのかを国民自身が見極め、次の選挙で判断材料にしてほしいと呼びかけて解説を締めくくった。用語が難しいからこそ煙に巻かれやすい、というのが中田の問題意識だ。最後には自らのチャンネル登録の呼びかけを「トランプ味」と自嘲しつつ、人の行動には正義だけでなく必ず思惑が潜んでいる、と付け加えている。