次期SINETのアクセス回線共同調達はどう変わるのか 1G回線とラックを外し、10G・100G・400Gに絞る案

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概要

国立情報学研究所(NII)SINET利用推進室長の笹山浩二氏は、学術情報基盤オープンフォーラム2026で、次期SINETに向けた共同調達の方針を説明した。中心となる問いは、現在のSINET6で行っている共同調達のうち、次期SINETで何を続け、何をやめるかである。笹山氏が示した案では、共同調達をアクセス回線に限定する。回線メニューは10G・100G・400Gの3種類に絞り、1G・40G回線とラックの共同調達は見送る。笹山氏は冒頭で、この資料は方向性を示す現時点の案であり、加入機関からのコメントを受けて変わる可能性があると断っている。

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NIIの共同調達の仕組みと、そのトレードオフ

笹山氏はまず共同調達の考え方を整理した。NIIが必要とするタイミングで、NIIと複数の加入機関がまとまり、統一の仕様書で一括発注する。発注量を増やしてボリュームディスカウントを効かせ、価格を下げることが狙いである。仕様書の策定、入札、契約といった共通業務は、代表としてNIIが一括で行う。

一括で調達する以上、各加入機関の個別事情に合わせたカスタマイズの余地は小さくなる。笹山氏はこれを価格低減とのトレードオフだと位置づけ、参加を検討する機関に確認を求めた。

次期SINETではアクセス回線だけを対象にする

全体方針として笹山氏は、次期SINETではアクセス回線の共同調達のみを実施すると述べた。SINET6で行っているラックの共同調達は実施しない方向である。NIIではクラウド基盤研究開発センターがクラウドサービスの共同調達も別に行っているが、こちらは同日午後の別セッションで扱うとして、今回の説明からは外した。

回線速度ごとの方針は、需要予測と市場動向をもとに次のように整理された。

  • 1G回線:共同調達をやめ、各機関の個別調達へ移行する方向で検討している。市場が成熟し、各機関が地域ごとに最適な事業者を選ぶ方が有利だという認識による。
  • 10G回線:今後も回線数の増加が見込まれ、ボリュームディスカウントによる価格低減が期待できるため、次期SINETでも継続する。
  • 40G回線:現在も共同調達による40Gの契約実績がなく、数も伸びていないため、次期SINETでは実施しない方向で検討している。
  • 100G・400G回線:10Gと同じく今後の増加が見込まれ、価格もまだ高いため、ボリュームディスカウントの効果が期待できる。次期SINETでも継続する。

1G回線を共同調達から外す3つの理由

1G回線の共同調達をやめる判断について、笹山氏は経緯を3点に分けて説明した。

1点目は1G回線の成熟である。市販の一般的な回線サービスとしても価格が下がって安定しているため、まとめて調達してもボリュームディスカウントは期待しにくい、と笹山氏はみている。

2点目は回線事業者側の多様化である。地域ごとにバリエーションのあるサービスが増えている。全国一律の共通仕様という縛りをなくせば、各機関がそれぞれの地域で最適な事業者を選べるメリットがあるという。

3点目は資源配分の最適化である。共同調達のリソースを10Gや100Gに集中させれば効率化できる。一方の1G回線は個別調達に移ることで、各機関の予算やスケジュールに合わせた柔軟な運用が可能になる、と笹山氏は説明した。

契約実績の推移が示すもの

判断の根拠として、笹山氏はこれまでの共同調達の契約実績を示した。共同調達の仕組みはSINET5から始まっている。当時の中心は1G回線だった。その後40G・100Gを追加し、10Gがメインの回線になった。SINET6では400Gも加わって高速化がさらに進んだが、メインは引き続き10Gである。

10G・100G・400Gの契約回線数は順調に伸びている。一方、1G回線はSINET5の頃から数が変わらず頭打ちになっている。笹山氏は、これが次期SINETで1Gの共同調達をやめる判断の要因の一つだと述べた。

ラックの共同調達についても、実績件数がかなり少なく、ボリュームディスカウントが効きにくい状況にある。そのため次期SINETでの実施は見送る方向で検討しているという。

次期アクセス回線共同調達の概要(案)

続いて笹山氏は、次期のアクセス回線共同調達の骨子を案として示した。

調達範囲は、アクセス回線そのものと、それに関わる監視・保守業務である。回線メニューは400G・100G・10Gの3種類に限定し、40Gと1Gは提供を見送る方向である。回線種別は帯域の占有型・保証型の回線となる。

よく出る質問として笹山氏が補足したのは、申込数の制限についてである。1機関1回線といった縛りはない。複数種別の回線を申し込むことも、同じ種別で複数回線を申し込むことも可能であり、各機関の事情に合わせて柔軟に申し込んでほしいという。

保守条件は、24時間365日の監視と障害対応である。保守内容は共通化されているためカスタマイズはできず、ここもトレードオフになると笹山氏は繰り返した。契約期間は次期SINETの運用期間と同じく、2028年度から2033年度末(2034年3月末)までの6年間である。契約期間中は同一条件で利用することが原則となる。

調達範囲と責任分界点

笹山氏は図を使い、共同調達の範囲を具体的に説明した。対象は、光ファイバー、インターフェースモジュールを含む両端の終端装置一式、それに監視・保守業務を加えたものである。

あくまでSINETに接続するためのアクセス回線が対象であり、拠点間通信の回線は調達できない。また、共同調達以外に、各機関が個別に回線を調達してSINETに接続する方式も現行と同様に用意されている。次期SINETでも各種パターンでアクセスできるので、共同調達と比べて最適なものを選んでほしいと笹山氏は述べた。

どの方式でも、SINETと加入機関の責任分界点は、データセンターにあるSINET設備側のパッチパネルである。共同調達のアクセス回線は、パッチパネルまでの接続ケーブルとインターフェースモジュールまでを範囲とする。加入機関側では、終端装置を置く設置スペース、電源、そこにつなぐためのコネクターやケーブルを別途用意する必要がある。

調達手続きにおける3者の関係

手続きは、加入機関、NII、回線提供事業者の3者で進む。調達主体はNII(情報・システム研究機構)で、アクセス回線の共同調達を一括して行う。入札公告の前に、NIIと参加する複数の加入機関との間で協定書を締結する。笹山氏はこれを重要な契約だと強調した。

この協定書で取り交わした内容をもとに、NIIが責任を持って調達と契約を行う。契約が完了し、2028年度から実際にアクセス回線を使い始めた後は、費用の請求と支払いを落札事業者と各加入機関が個別に行う。NIIは経由しない。

参加を検討する際の注意事項

笹山氏は、これまでの説明と重なる部分も含めて、参加時の注意事項を5点にまとめた。

1点目は、調達スケジュールや契約条件の変更ができないことである。NIIの統一スケジュールに合わせられない場合は、参加を見送ってほしいという。契約満了まで同一条件での利用が原則となる。さらに政府調達案件なので、手続きには数か月から半年程度かかる。2028年4月にサービスを始めるには、加入機関の判断時期が早めになる。

2点目は、協定書締結後の取りやめや、契約期間中の中途解約ができないことである。途中で解約すると、解約時点から契約期間の残りに相当する違約金を支払う必要がある。協定書を締結した後に気が変わって回線を使わないことにした場合も、アクセス回線の利用開始前であっても違約金が発生する。笹山氏はこの点を事前に確認するよう求めた。

3点目は、調達する回線はSINETにアクセスするための回線であり、拠点間通信の回線は調達できないことである。

4点目は、参加単位が法人であることである。大学単体でSINETに加入することはできるが、協定書や調達契約など共同調達への参加は法人単位になる。

5点目は、アクセス回線共同調達はSINETのサービスではないことである。笹山氏によると、これもよく質問が出る点だという。共同調達の回線は、加入機関が個別に調達したアクセス回線と仕様上何も変わらない。SINETサービスとして特別な対応をするわけではない。

今後のスケジュールと参加フロー

最後に笹山氏は、調達スケジュールと参加の流れを説明した。今回の6月のオープンフォーラムでは、方向性としての案を示した段階である。今後数か月かけて、想定される回線事業者と、回線の提供方法や技術事項の調整を議論する。加入機関からの質問、コメント、要望も随時受け付けて意見を集約する。

次のマイルストーンは12月の説明会である。ここで各機関に参加可能性の検討に着手してもらう。年度末から年度明けにかけて検討結果を踏まえ、協定書を締結し、それに基づいて入札、調達、構築、サービス提供へと進む。来年度以降の詳細なスケジュールと内容は、年末の説明会で確定版を示すとして、今回は説明を省いた。

参加フローは4段階で示された。

第1段階は、今年の年末から年始にかけて行う参加可能性のアンケートである。接続場所や回線速度などを尋ねる。笹山氏は、ボリュームディスカウントを前提とする以上、調達規模の把握が非常に重要だと説明した。アンケートは各回線の実施可能性を確認するための基礎データになる。共同調達に参加する可能性が少しでもあれば必ず回答してほしいと、繰り返し協力を求めた。

第2段階は、年度末から来年度初めにかけての参加検討である。来年度初めには次期SINETのノードの場所が決まる予定である。NIIはそれとアンケート回答をもとに、共同調達の可能性がある各回線について全体の想定額を算出する。アンケートに回答した機関には、機関ごとの想定額を個別に案内する。各機関はこれを、個別に調達する場合の見積もりと比べ、仕様条件なども含めて総合的に検討し、参加の可否を判断する。

第3段階は、参加を決めた機関とNIIとの協定書締結である。笹山氏は何度も言及することを詫びつつ、この協定書の重要性を改めて強調した。協定書は共同調達契約への参加の根拠であり、利用開始前の段階から、事業者からの請求の根拠にもなる。締結後は都合による不参加は認められず、違約金や解約金が発生する。

第4段階は利用開始である。来年度に一般競争入札を経てNIIが落札事業者とまとめて契約し、各機関と調整して物理的な回線工事などを行う。2028年4月、次期SINETの開始と同期して、各機関は共同調達の回線の利用を始める。費用の請求と支払いは、各機関が事業者との間でNIIを経由せずに行う。

アクセス回線共同調達についての問い合わせは、SINET利用推進室が受け付ける。今回の全体説明では扱えない、個別の見積もりに関わるような相談も気軽に寄せてほしいと笹山氏は呼びかけた。