北欧神話はなぜファンタジーの「元ネタ」になったのか――世界樹、ロキ、そしてラグナロク
中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY「エクストリーム世界史」の北欧神話編で、中田敦彦は北欧神話を「ベスト・オブ中二病神話」と呼ぶ。古事記やギリシャ神話を扱ったあと、視聴者から北欧神話をやってほしいというリクエストが特に多かった。中田は当初、主要な神話はもう扱ったという気持ちで「侮っていた」と打ち明け、調べてみてその考えを改めたと謝る。本動画では、北欧神話がギリシャ神話や日本の神話よりもゲームや漫画の素材にしやすい理由を、成り立ちの歴史、世界観、主要な登場人物、天地創造から世界の滅亡と再生までの筋に沿って説明している。参考文献として杉原梨江子『いちばんわかりやすい北欧神話』(実業之日本社)が挙げられている。
ハリウッドから漫画、ゲームまでの原点
中田はまず、北欧神話を下敷きにした作品として『進撃の巨人』、漫画『ベルセルク』、ハリウッド映画『マイティ・ソー』、オンラインゲーム『ラグナロクオンライン』を挙げる。漫画、アニメ、映画、ゲームの元ネタの多くが北欧神話にあり、それが北欧神話の人気の理由だという。動画全体を通して、中田は神話の要素が現代のどの作品につながっているかを指摘しながら話を進める。とくに『進撃の巨人』との類似には何度も触れている。
キリスト教以前の北方の神話と、ヴァイキングの信仰
歴史面で中田が強調するのは、北欧神話がキリスト教の布教以前の信仰だという点である。キリストが生まれたのは紀元1世紀の初めだが、キリスト教はキリスト本人ではなく弟子たちが広めた。ローマ帝国はいったんキリスト教を弾圧したが抑えきれず、最終的に国教とした。中田によれば、その後に一神教のキリスト教がヨーロッパに広がったことで、多神教であるギリシャ神話やその継承であるローマ神話の世界観は駆逐されていった。北欧神話もこれと同じ文脈にあるという。
北欧神話が広まった地域として、中田はスカンジナビア半島のスウェーデンとノルウェー、半島の南にあるデンマーク、半島の北西にある島アイスランドを挙げる。もともと民間伝承として語られていた物語が大きく盛り上がったのは、8〜10世紀のヴァイキング時代だという。ヴァイキングは戦いと商売を生業とする海の男たちで、いつ船が沈むか、いつ敵に命を奪われるか分からない。中田は、死に瀕し危機に陥るときに人は神に祈り、宗教が強くなると説明する。この時代の物語は書物ではなく口伝えで残された。
片目の策略家オーディンが最高神になった理由
ギリシャ神話の最高神は雷を落とすゼウスである。北欧神話の最高神はオーディンで、中田はゼウスとの違いを「策略家」である点に見る。オーディンは知恵の神でもあり、戦いと策略と狡猾さを備えた「片目の全能神」として描かれる。
中田の説明では、オーディンが最高神にまで押し上げられたのはヴァイキングに崇められたからである。海で戦略と商売に生きるヴァイキングにとって、平和の神よりも、知恵と狡猾さを持つ神のほうが憧れの対象だった。スカンジナビア半島にはさまざまな神々の伝説があったが、その中でオーディンが圧倒的な人気を得たのだという。知の神である一方で破壊的な面も持つ点は、ゼウスとかなり似ていると中田は付け加える。
『エッダ』とサガ――書物になった北欧神話
口伝えの物語が書物になったのは12世紀ごろからで、北欧神話ではそれを『エッダ』と呼ぶ。エッダは2種類ある。原点にあたるのが、神々の物語を詩の形で残した「詩のエッダ」。もう一つの「スノリのエッダ」は、スノリという人物が詩や物語の解説を書いたもので、新しいほうのエッダとされる。中田はこれを、原点となるポエムとその解説本のセットだと言い換えている。このほか、さまざまな物語が「サガ」として残っている。2種類のエッダと複数のサガが北欧神話の原典であり、12世紀ごろに書かれたと見られるそれらは17世紀ごろになってようやく発見された、と中田は説明する。
宇宙樹ユグドラシルが中心にある世界観
神々が争い、事件を起こす点ではギリシャ神話と似ているが、中田が最大の違いとして挙げるのは世界観である。北欧神話の世界は球体のようなものに囲まれ、その真ん中に巨大な木がそびえ立ち、その中にさまざまな者たちが住んでいる。この木が宇宙樹ユグドラシルで、世界樹や生命の樹とも呼ばれる。
世界の中心に巨大な木があるという発想は各地の神話や宗教にあり、中田はキリスト教の世界で知恵の実(りんご)がもがれる生命の樹や、仏教の菩提樹を例に挙げる。ただ北欧神話では、この宇宙樹の存在感がほかの神話や宗教よりはるかに大きく、ストーリーにも中心的に関わってくる。中田はこの点を北欧神話のポイントとしている。
原初の巨人ユミルと、オーディンによる天地創造
世界のはじまりには何もなく、氷と炎だけがあった。氷の世界と炎の世界という二つの対極的なエネルギーが、世界の真ん中の裂け目でぶつかり合う。そこから最初の生命が生まれた。原初の生命であり原初の神でもあるその存在は巨人で、名前をユミルという。中田は、これが『進撃の巨人』の最初の巨人の名前そのものだと指摘する。
ユミルはたくさんの巨人族を生んだ。一方で、氷の中からまた別の生命体が突然生まれ、それが男の形をとって子をなした。その子と巨人族の子孫が結婚して生まれたのが、オーディンとその二人の弟の3兄弟である。この別の生命体については中田も「ここは分かんないです」と言い、神話の「雑」なところとして笑いにしている。
オーディンは原初の存在であるユミルを殺害し、その体を余すことなく使って世界を作った。ドーム状の世界の蓋はユミルの頭蓋骨、大地はユミルの肉でできている。だから万物の父はオーディンであり、最高神になるべくしてなった、と中田は説明する。人間もオーディンたちが作った。宇宙樹などの木を組んで人型にし、魂、命、言葉、視覚、聴覚を与えたところ人間になったという。中田はこれを「メイド・バイ・ウッド」と呼び、ここでも作りの雑さを笑っている。
神族・人間・巨人の住み分けと『進撃の巨人』
こうしてできた世界には、オーディンの一族である神族、ユミルの一族である巨人族、そして人間が住む。中田はこれをタワーマンションにたとえる。宇宙樹の真ん中の小高い場所、つまり最上階のペントハウスに住むのが神族。その麓に住むのが、オーディンが木から作った人間族である。人間族の中からは英雄も生まれ、オーディンに仕える狂戦士「ベルセルク」もいた。漫画『ベルセルク』のタイトルはここから来ていると中田は言う。
神族の住む場所には非常に高い壁があり、その下の人間が住むエリアの周りにも高い柵がある。その外側に巨人族がいる。中田はこれを『進撃の巨人』のウォール・マリア、ウォール・ローゼ、ウォール・シーナの構造に重ね、最も内側にいるのが神族、2枚目の壁の中が人間、その外が巨人だと説明する。巨人族は、ユミルが殺されたときに1組の夫婦を除いてほとんどが殺され、最果てに追いやられた。巨人族は原初の存在であり、オーディンの母親も巨人なのに、その理屈は通じなかった。
ユグドラシルは3本の根を下ろしている。1本は神族の側に、1本は巨人族の町にある泉に、もう1本は大地の真下にある氷の世界の泉に降りている。氷の世界のさらに下には冥界がある。中田はこれを「三点倒立」と表現した。
ギリシャ神話との比較――巨人は駆逐されず、最後に相打ちになる
ここで中田は、自分の感覚による比較だと断ったうえで、ギリシャ神話との対応関係を整理する。最高神と雷神が別々に存在する北欧神話では、オーディンとトールを合わせるとゼウスのような存在になる。祖先にあたるユミルを殺して世界を作るという点では、ユミルはギリシャ神話のウラノスやクロノスに近い。どちらが先というより、似た話がだんだん分派していったと考えるのが近いらしい、と中田は述べている。
両者の大きな違いは結末にある。ギリシャ神話でも、ウラノスから生まれたティターン神族という巨人たちが登場するが、彼らはゼウスにすべて滅ぼされる。中田は『進撃の巨人』になぞらえて、ゼウスが巨人を駆逐する話だと説明する。一方の北欧神話では、巨人族は後の神々に滅ぼされない。最終戦争で神族と巨人族の大リベンジマッチが行われ、相打ちで全てが滅びる。だから巨人族は北欧神話の「裏主役」であり、最終的に巨人が内側の神族へ攻め込んでいく構図も『進撃の巨人』っぽい、と中田は指摘する。
神族対神族――アース神族とヴァン神族
最終戦争の前に、神族同士の争いがあった。オーディンやトールたちの一族はアース神族と呼ばれる。トールはハンマーを持つ最強の雷神で、マイティ・ソーのもとになった神である。
あるとき、アース神族の町に一人の女が現れ、欲望にまみれた情報をまき散らして町の風紀を乱した。神々は女を捕まえて処刑したが、女は生き返った。もう一度処刑しても生き返り、3度ほど生き返ったところで普通の女ではないと気づく。女は別の神の一族、ヴァン神族だった。二つの神族は戦ったが、やりすぎたとして争いをやめ、互いに大事な人材を人質として送り合って和解した。
北欧神話には、ユミルの体から作られた世界が全部で9つある。アース神族の世界、人間の世界、巨人の世界、氷の世界、冥界のほか、ヴァン神族の世界、氷とぶつかっていた炎の世界、光の妖精の世界、闇の妖精の世界である。ただし、ヴァン神族、炎、光の妖精、闇の妖精の世界がどこにあるのかは定かではないという。中田はここでも「雑」と突っ込んでいる。
人質として来たフレイヤと、兄フレイの結婚
和解の人質としてアース神族の町に来たのが、愛の女神フレイヤである。たいへんな美女でセクシー、しかもめちゃくちゃ欲深い。中田は「峰不二子みたいな状態」と表現し、ギリシャ神話のアフロディーテやローマ神話のヴィーナスに近いと見る。後の「神々の日常」の話では、フレイヤはしばしば取引の条件に出されて争奪の的になる。中田は、アフロディーテと結婚させろと迫る輩がやたらと現れたギリシャ神話と同じだと述べる。
フレイヤの兄フレイは、イケメンのプレイボーイで豊穣の神だ。フレイは巨人族の美女に一目惚れし、自分の大事な宝剣を含めて全部あげるから結婚してほしいと、使いの者に求婚させる。娘は「お金じゃない」と断るが、使いの者は「ヴァン神族を敵に回してまともに生きられると思ったら大間違いだ」とひどく脅し、結婚を承諾させる。ところが二人はなんだかんだで幸せになり、政略結婚でも意外と幸せになれるという象徴になったらしい。フレイとその巨人族の妻が仲むつまじくしている姿を描いた金の板が多く残っている、と中田は紹介する。一方で、今なら人権問題になりそうな話だとも付け加えている。
この話には落ちがある。フレイは剣を含む武器をすべて渡してしまったため、最終戦争ラグナロクで全員が出陣するとき武器がなかった。フレイはそこにいた鹿の角を折って出陣し、死に向かう。中田は、戦では結果を残せなかったが愛のために生きた男、いいパパの象徴としても使われると説明し、そのわりには脅していたというツッコミどころもまた神話っぽいと述べる。
トリックスター・ロキと「神々の日常」
中田が北欧神話で一番面白いキャラクターだと考えているのがロキである。ギリシャ神話のトリックスターといえば、ゼウスに翻弄されながらも面白いことを起こすヘルメスだが、ロキはそれ以上にトリッキーな「善悪混合」の神だという。ロキは巨人族の末裔でありながら、アース神族とともに物語によく登場する。神々の日常を描くエピソードはロキを中心にした事件が多く、どれもコミカルだ。「またトラブルか、またロキのせいだ」という扱いだと中田は言う。
一つ目は丸刈り事件である。トールの妻はピカピカの金髪の美人だったが、ある朝起きると丸坊主になっていた。犯人は夜中に髪を刈り込んだロキだった。怒ったトールに腕を掴まれ、今日中に何とかしなければ殺すと迫られたロキは、体の小さな職人集団のところへ行ってカツラを作らせた。このカツラは被ると皮膚と一体化し、元よりも豊かな髪になった。トールも「前より良くなっている」と納得して許した。中田は、現代でも作れない技術だと笑っている。
二つ目は、この職人集団とフレイヤの話だ。フレイヤは職人たちが作ったきらきらした首飾りを見つけて欲しがる。職人たちは金はいらないと言い、一晩ずつ一緒に過ごすことを求めた。フレイヤはしぶしぶ応じて首飾りを手に入れる。中田はこの話を「最低」と評し、口伝の段階でなぜこれを残したのかと首をかしげている。
三つ目は城壁事件で、中田によればこれで巨人族とアース神族の力関係が分かる。鍛冶屋を名乗る男が、神族の町に大きな壁を作ると申し出る。実はこの男は正体を隠した巨人族だった。報酬として男が求めたのは、フレイヤと太陽と月である。神族が頼りにしていたトールは巨人を懲らしめる「出張」に出ていて留守だったため、神々はとりあえず作らせてみることにした。男は特注の馬に資材を運ばせて壁をどんどん積み上げ、やがて巨人族だと分かる。完成が迫り慌てた神々はロキを呼び、完成を阻むよう頼む。ロキは雌馬を仕込んで資材を運ぶ馬を誘惑させ、工事を遅らせた。その間に帰ってきたトールは事情を聞くと、ハンマーで鍛冶屋の頭をかち割った。そして神族は、結局その城壁を使い続けた。
巨人は悪ではなく、かわいそうな存在
この城壁事件を受けて、中田は北欧神話の巨人の描かれ方に注目する。よく見ると巨人は悪ではなく、むしろかわいそうな存在だという。完璧な神とその下の人間がいて巨人を駆逐する、という構図にはならない。神と人間と、神にいじめられている巨人がずっと描かれ続ける。中田はこれを北欧神話の大きなポイントだとしている。
滅亡の予言と、ヴァルハラに集められた英雄たち
神々の日常は、ある予言によって終わりを告げる。最高神オーディンのもとに、神族はまもなく最終戦争によって滅びるという予言が届いた。オーディンは、ユミルを殺して世界を作って以来、ユミルの子孫である巨人族がいつか自分を許さず復讐に来るのではないかとずっと恐れていた。その恐れが予言として現れたのである。
オーディンは強引なやり方で兵士を集める。人間の世界の英雄たちに力を与えていたのはオーディン自身だった。ところがラグナロクが迫ると、その英雄たちの力を自分のものにしたくなった。オーディンは英雄のライバルに力を与えて英雄を殺させ、冥界も司っていたことから、死んだ有能な英雄たちをヴァルハラという御殿に集め、自分の兵士として蘇らせた。蘇った英雄たちは神のために戦う兵士となった。
光の神バルドルの死と、ロキの裏切り
ラグナロクを恐れるオーディンにとって唯一の希望が、正妻フリッグとの間の息子バルドルだった。オーディンには多くの愛人がいたが、フリッグはゼウスの妻ヘラと同じく賢く用心深い女性として描かれる。バルドルは光の神で、慈愛に満ち、聡明で、しかも美しい「完璧超人」だった。眼帯をつけた白髪の老人であるオーディンとの対比を、中田は演技を交えて語っている。
そのバルドルが死ぬという予言が現れた。母フリッグは息子を守るため、地上のあらゆるものにバルドルを傷つけないよう誓わせ、バルドルは何をされても傷つかない体になった。ところがフリッグは、大したことはないと思った一つの木だけを、うっかり誓いの対象から外していた。ずる賢いロキはそれに気づく。そして盲目だったバルドルの弟をけしかけ、その木で作った矢を射させた。石を投げても何をしても平気だったバルドルに、その矢が刺さる。バルドルは倒れて死に、冥界へ行った。
フリッグは冥界にもバルドルを生き返らせるよう頼む。冥界を司るのはヘルで、巨人族であり、しかもロキの子供だった。ヘルは、世界中のすべての神々がバルドルの復活を願うなら復活させる、という条件を出す。ここでもロキが動いた。自分があからさまに反対すれば面倒になると考え、別の女に化けて反対したのである。一人の反対者がいたため、バルドルは復活できなかった。
中田は、丸刈りのいたずらをしていたロキが「ここまでやる?」というところまでやったと驚いてみせる。ロキは捕まるが、これをきっかけにラグナロクが始まる。小競り合いをしていたキャラクターが、最も希望とされた神を殺し、その復活まで阻んで最終戦争を起こした、という流れである。
トールとロキの「五番勝負」
ラグナロクでの本気の戦いの前にも、トールとロキはずっと小競り合いを続けていた。中田はその代表例として「五番勝負」を紹介する。種目は食べ比べ、走り比べ、酒の飲み比べ、猫の持ち上げ、老婆との相撲だ。
食べ比べと走り比べにはトールの弟子が出たが、得体の知れない子供などに負けてしまう。三番勝負からはトール自身が出る。盃を飲み干せば勝ちと言われて飲むが、だいぶ飲んだはずなのにちょっとしか減らず、時間切れで負ける。次は猫を持ち上げる勝負で、片手で済むと思ったのに持ち上がらない。最後は老婆との相撲で、押せば押すほど力を奪われ、土俵際まで追い込まれる。
中田の説明では、ロキは幻を見せる幻術の力も持っており、トールは実はとんでもない相手と戦わされていた。食べ比べの相手は火炎、走り比べの相手は思考だった。思考が一番速いからである。飲んでいた酒は海だった。猫は、ロキの息子で、海に投げ捨てられて育ち世界を取り巻くほどの大蛇になったヨルムンガンドだった。そして老婆は「老い」そのもので、時間がたつほどペースを奪われたのは老いと戦っていたからだ。火、思考、海、大蛇、老いにはトールの力でもかなわなかった。中田はこの話を「哲学的」と評している。
ラグナロク――相打ちと炎の巨人スルト
ラグナロクが始まると、混乱の中でロキも解放され、戦いに加わる。中田によれば、勝つと思われた神族に対して巨人族は非常に強く、主要な神々が次々と相打ちになっていく。ロキの息子である狼フェンリルはオーディンを丸のみにする。ヨルムンガンド、ヘル、フェンリルといったロキの仲間たちが大活躍し、トールも相打ちに持ち込まれる。
最後に世界を焼き尽くしたのが、炎の巨人スルトである。中田はスルトを、ギリシャ神話のプロメテウスのような存在かもしれないと見る。火は人間の文明の象徴であると同時に大災害も起こすので、味方でもあり敵でもある二面性を持つ神として描かれる、という説明だ。氷と炎がぶつかってユミルが生まれたことを考えると、スルトも相当に原初の存在である。炎の世界は神族の世界とも巨人族の世界とも別の場所にあり、スルトはどちらにも出入りせず、遠く離れた場所から歴史を見守ってきた。そのスルトが最後に現れて全てを燃やし尽くし、予言どおり世界は滅びる。
再生――世界樹の中から出てきた人間
すべてが燃え尽きたあと、オーディンもトールも、強かった神々も巨人も全員いなくなった。それでも、オーディンの子供などごくわずかな神々が生き残った。そして燃え尽きた宇宙樹の中で朝露をなめてしのいでいた人間の男女1組が、ラグナロクを生き延びていた。この二人が人間の始祖として、今の我々につながる。中田はこの結末を「すごくないですか?」と繰り返し強調する。
生き残った神々は、かつての神族の栄光を懐かしみながら天へ帰っていった。そのとき、光の神バルドルが復活したらしい。地上は人間が治めることになった。
ギリシャ神話との違い、ロキとエレン、そして曜日の名前
中田は締めくくりに、ギリシャ神話との違いを改めて整理する。ギリシャ神話では神と人間が結婚して子供を産み、そのハーフが英雄となり、英雄の血がだんだんと人間に浸透して今の世界になる。北欧神話では神々と人間は完全に分かれている。神々も巨人族も滅び、最後に人間が木の中から出てきて世界が始まる。
世界樹・宇宙樹の存在、神対神と神対巨人の戦い、ラグナロク、そして善悪混合で、もしかしたら主人公かもしれないロキ。中田は、巨人の味方なのかどうか分からないロキが『進撃の巨人』のエレン・イェーガーにも見えてくると述べ、だからこそさまざまな物語の元になってきたのだと語る。北欧神話にはほかにも多くのエピソードと登場人物があり、影響は今も残っている。その例として中田は、英語の曜日名、Tuesday、Wednesday、Thursdayなどが北欧神話の神々の名前から来ていることを挙げる。我々の中に少しずつ残っている北欧神話の名残をたどり、それが形を変えて現代に影響を与えていることに驚いてみるのもいいのではないか、と中田は動画を結んでいる。
どうも中田です。さあ、今日も早速参りましょう。エクストリーム世界史、北欧神話編。神話最高。さあ、やってまいりました。神話は人気が非常に高いんですね。やっぱり古事記、日本の神話ですよね。あとギリシャ神話、あれも面白かったですよね。
「神話をやってくれ。北欧神話をやってくれ」なんていうリクエストがものすごい多かったんですよ。非常に北欧神話、リクエスト多いんですけど、正直ごめんなさい、僕、侮っておりました。北欧でしょ? ギリシャも日本もやったし、神話のど真ん中やったんだから、北欧でしょ? ごめんなさい。北欧を侮っていてすいませんでした。
なんと、この北欧神話こそが、神話好きの中二病の皆さんに最も愛されている神話、ベスト・オブ・中二病神話と言っても過言じゃないんじゃないでしょうか? というのも、あらゆるゲームやファンタジー、そういったものの元ネタになってるんですね。漫画や映画なんかにもなっております。『進撃の巨人』。まさにこの北欧神話をベースにしてる話なんですね。『ベルセルク』、人気漫画ですね。あれは神話。その上で『マイティ・ソー』、アメリカのハリウッド、神話。全ての原点、北欧神話です。ハリウッドから漫画からアニメから全部。他にもゲームとか、『ラグナロクオンライン』とか、神話。全部が北欧神話なんですよ。
もうみんな大好き。なぜかって? その魅力がここに詰まってるからなんですね。ギリシャ神話や日本の神話よりもゲームや漫画の元ネタにしやすいんですよ。その理由と主要な人物と主要なストーリー、世界観、まとめてガッとこれ紹介したいと思いますから、ついてきていただきたいと思います。
さあ、北欧神話、これ歴史どうなってんのか? ここですね。紀元1世紀頃。これポイントなのは、キリスト教がまだ布教される前ってことですよ。キリストが生まれたのが、この1世紀の始まりですよね。BC、ADですよね。だけどキリストが死んでから、その後キリスト教が普及されるまでタイムラグありましたよね? なんでかって、キリスト教ってキリストが布教したんじゃなくって、弟子が布教して、最初弾圧されて、ローマ帝国に弾圧されたけど、もうこれ弾圧しきれないってなったから、もう爆発して国教化したんですよね、ローマが。
それ以降、ギリシャ神話を駆逐したのもキリスト教でしたよね。いわゆる一神教の中の一神教、あのキリスト教が一気にヨーロッパに広まったことで、多神教であるところのギリシャ神話の世界観や北欧神話の世界観は駆逐されていってしまう。どんどんとその座を明け渡してしまうということなんですね。だからどちらかというと、文脈でいうとギリシャ神話と非常に似ています。ギリシャ神話を継承したのがローマ神話でしたよね。ローマ神話になったけれども、キリスト教に塗り替えられた。
でもその間、この北欧神話、このスカンジナビア半島を中心としたエリアですね。スカンジナビア半島のスウェーデンとノルウェー。その半島ではないんですが、南、デンマーク。あとそのスカンジナビア半島の北西にある島、アイスランド。この辺りで広まっていったのが北欧神話なんです。この神話は、民間伝承的な感じでダーッとお話がありました。それがグッと盛り上がったのが8世紀から10世紀のヴァイキング時代ですよ。
ヴァイキングといえば、あの海賊たちですよね。「うわー」って。そんなヴァイキング、北欧の海賊たちっていうのは、戦いと商売を生業としてるわけですよね。戦って勝つんだ。そして商売で金を儲けるんだ。そんなヴァイキングたちは神を信じるわけですよ。勝利しなきゃいけないんだ。明日知れぬ、この海の男たち。もういつ船が沈むかも分からないし、敵に負けて命を奪われるかも分からない。しかし俺たちは海の男、ヴァイキングだという、こういう状態ですから、神を信じるわけですよ。「助けてくれ」と祈るわけですよ。死に瀕するから神に祈る。危機に陥るから神に祈る。そういう時に強くなるのが宗教でございますね。
そんなヴァイキングの時代には、まだ書物は残ってないんですね。口伝で残されたんですね。口伝えに。だから面白いのが、ギリシャ神話と比べても、もっと戦闘的な神が最高神をやってるってことなんですよ。その最高神の名前。ギリシャ神話の最高神といえばゼウスでしたよね。ゼウス。「雷、雷を落としてやるぜ」という、あの最高神にして雷の神、ゼウス。北欧神話の最高神はなんとオーディン。オーディンというやつなんですね。
このオーディンというのは最高神でありながら、ゼウスとちょっと違うのは、策略家なんですよ。策略家で知恵の神でもあるわけですね。もちろんゼウスも全知全能なんですよ。でももっと戦いと策略と狡猾さ、そういうのを持ってる。なんと片目の全能神っていうのがオーディンなんですね。
このオーディンがなぜここまで人気になり、最高神になったかというと、それもヴァイキングに崇められてたから。つまりヴァイキングってのは、海で戦略と商売のことをやってたので、より知恵と狡猾さを持った神がヒーローだったんですよ。憧れはそっちにあった。だから平和とかそういうことじゃないですね。「知恵と戦略と策略と強さをください、オーディン」。そのスカンジナビア半島の中でいろんな神々の伝説がある中で、圧倒的人気を誇り、最高神まで押し上げられたのが、このオーディンだってことですよね。このオーディン、だから良いっていう、すごい知の神という側面もあれば、破壊的な側面もある。そういうところも、ゼウスとかなり似てるんじゃないでしょうか。そんなオーディンでございます。
そんなオーディンが伝えられた後に、12世紀頃からようやく書物になった。それを『エッダ』と呼ぶんですね。いろんな書物の呼び方ありますけども、この北欧神話ではエッダと呼ぶ。その原点となるのが『詩のエッダ』。詩に残ってるんですね。この『詩のエッダ』。だからいろんな神々のストーリーがポエムになってるわけだ。その原点とも言える。
エッダ、2つありまして、その後に『スノリのエッダ』。このスノリっていうのは人なんですよ。スノリという人が、その詩とかの解説、物語の解説を書いたのが『スノリのエッダ』。こっちは新しい方のエッダと言われてて、要するに原点となるポエムと、それの解説本。その2つがセットとなって2種類のエッダ。これが、いわゆる北欧神話の原点とされてますね。
それ以外にもいろんな物語が残ってる。その物語のことはサガって言うんですね。2種類のエッダと複数のサガによって語られている北欧神話。この12世紀頃から書かれたであろうものが、17世紀ぐらいになってようやく発見されたというお話なんですね。そこに残ってるお話、面白いんですよ。これ何が特徴的か。もちろんいろいろな神々が出てきて、その神々が争ったり、事件を起こしたり、トラブルを起こしたりする。ギリシャ神話と似てますよね。大きく違うのが、まずはその世界観です。
こちらご覧ください。こんな世界だって言うんですよ。どういうこと? 球体のようなものの中に、バカでかい木がそびえ立っており、その中にいろいろな人たちが住んでいると。宇宙樹ユグドラシルという、とんでもなくでかい木がど真ん中にある、球体に囲まれたような世界観。「へー」と。なんかファンタジーでよくありませんか? こういうの。巨大な木がど真ん中にある。
この宇宙樹は他にも世界樹とか生命の樹なんていうふうに呼ばれたりして、そういう世界の真ん中に巨大な木が生えてるっていうのは、各国いろんなところの神話にあるんですよ。例えばキリスト教の世界で言っても、あの知恵の実、リンゴをもぎ取るのはその生命の樹なわけですよね。その上でブッダ、仏教でも菩提樹っていうものがあって、そこを中心として世界が表現されてるわけですね。菩提樹とか生命の樹とかありますけども、ここで描かれてるのはユグドラシル、宇宙樹で、他の神話や宗教よりも、この宇宙樹の存在感がめちゃくちゃすごいんです。木を中心としてるって、ここがポイントですね。
ストーリーにもなんと関わってきます。ここでこれからざーっと述べるストーリーの中の中心的な存在にも、この宇宙樹はなっていくと。キーポイントになっていくわけですよね。じゃあ、ここ自体はどうやって作られたの? そこですよね。まず世界は何もないところから、こういうふうに作りました、みたいなところから始まる。
これどうなったか? まずは世界には何もなかった。氷と炎があった。2つの対極するエネルギーがあるんですね。氷のエネルギーと炎のエネルギーがあるわけですね。氷の世界と炎の世界があった。それが世界の大きな真ん中に裂け目がありまして、その裂け目でぶつかり合うんですね。氷のエネルギーと炎のエネルギーが。そうしていくうちに、1つの生命が生まれた。原初の生命にして原初の神にして、それは巨人だった。原初の巨神ユミルの誕生である。
出た、ユミル。それ『進撃の巨人』の最初の巨人の名前。そう、ユミル来ました。元ネタシリーズでございます。『進撃の巨人』で使われたユミルは、なんと北欧神話そのままだったんですね。それが最初の巨人なんですよ。最初の生命ですよね。ふわっと生まれるわけですよ。ユミル、巨人が生まれるわけですよ。その後に、そのユミルの体を元に、この世界が生まれるんです。
どういうこと? そのユミルがいろんな巨人族を生むんですよ。巨人族を生むんですね。これもなんか進撃っぽいですよね。巨人族をたくさん生むんですが、その一方、氷の中からいきなり、ある生命体が生まれまして、それが男の形を取り、子供を生み、その巨人族とは別に生まれた生命体の子供と、巨人族の子孫が結婚して生まれたのがオーディンなんです。巨人族と謎の、ここは分かんないです。なんか生まれたんですよ。氷の中から急に。そこ雑っていう。生まれて、それで生まれたのがオーディンとその弟と弟、3兄弟生まれたわけですね。
オーディン、これが主役になってくるわけですよ。このオーディンが何したかって言うと、その最初の最初であるところのユミル、このユミルをなんと殺害します。残虐っていう。ユミルを殺害して、そのユミルの体を元に、その体を余すことなく使って作ったのが、この世界なんです。なんとこのドームの蓋は、ユミルの頭蓋骨でできてる。ユミルの肉が、この大地ですね。だから眉毛も何もかも、全部使って世界を作った。
どういう状態? って、その前はどこにいるの、あなたたち? っていうことなんですけども、これは、このユミルが体をバラバラにされて、オーディンによって作られたの。だから万物の父はオーディンなんですよ。最高神になるべくしてなってるんですね。それで作られた世界観、こちら。「へえー」と。
だから神の一族、これオーディンの一族、神の一族なんです。その前のユミルの一族が巨人の一族なんです。この世界は巨人族と神の一族、神族、あと人間もいるんですよ。どう作ったか? オーディンたちが、この宇宙樹とかあるでしょ? 宇宙樹とかもあるんですけど、それも木を組んで人型にして、魂と命と言葉と視覚と聴覚を与えたみたいな。したら人になった。雑。人間、木っていう。人間は木です。木からできてんですよ。メイド・バイ・ウッドという。それが人間。
どう住んでるのかというと、見てください。宇宙樹のど真ん中に高ーくそびえ立ってる小高いところがあります。小高いところに、ど真ん中の上に住んでんのが、だから最上階のペントハウスですね。タワーマンション最上階のペントハウスに住んでるのは誰ですか? それが神族、神の一族ですね。これはオーディンたちですね。そのタワマンの下、麓ですね。麓に住んでるのが人間族。オーディンによって木を組まれて作られた人間族ですね、元々は。
その人間族の中から英雄とかも生まれてきます。その英雄、オーディンに仕える狂戦士としてベルセルクってのがいたんですね。来ました、ベルセルク。漫画ですね。これもこの中のキーワードだったわけですね。オーディンに仕える狂戦士。狂ったように戦うという戦士、ベルセルクというのがいましたね。
そして人間。この神族の住んでるところって、めっちゃ高い壁あるんですよ。進撃っぽくない? その上で、その下に2層目の人間が住んでるの、周りには高い柵があるんですよ。2層のエリアになってて、その外にいるのが巨人族なんです。進撃っぽい。進撃っぽい。すごいですね。でも高低差はあるんですね。だからウォール・マリア、ウォール・ローゼ、ウォール・シーナか。だからウォール・シーナの中にいるのは神族ですよね。その外、2枚目、ローゼの中にいるのが人間。その外、巨人と。
巨人の扱い。そうなんですよ。なんと原初の巨人ユミル、これを殺害した時に、1組の巨人の夫婦を除いてほとんどが殺害されたんですね。そして最果てまで追いやられました。このオーディンたち神族によって。巨人族なのに、原初なのに、オーディンの母親は巨人なのに。もうそんな理屈通じません。最果てまで追いやられて、ここにいるんです。
この宇宙樹ユグドラシルは、この神族の方にも1本根が下りてて、もう1本は巨人族の方の町の中にある泉に根が下りてて、もう一方は、この大地の真下、氷のエリアと氷の世界と、その下に冥界があるんですけども、氷の世界にある泉。だから三点倒立ですね。三点倒立になるとおかしいですけども、その3点で泉に根を下ろしてるっていう世界観らしいですよ。
だから住環境としては、言ったらそのタワマンの最上階に神たちがいて、その麓のエリアに人間たちがいて、だいぶとこの小さい、ちょっと心もないですね、島のところに、端っこの島の方に巨人がいると、そういう世界観なわけですね。なので神族、人間族、巨人族というふうなものが出来上がったわけですね。
さあ、そこから神族対神族の争いがあります。何それ? ここなんですよね、実は。ここアース神族というふうに言ってるのは、オーディンやトールたちは「我々こそが神だ」っていうことで、「神です」っていうことでやってたわけですよね。これトールってのは、なんと最強の雷神なんですよ。ハンマー持ってるんですよ。あれ、ハンマー持ってる雷神? 見たことある。そう、マイティ・ソー。ちょっとなんか、その「ソー」で挟んじゃいましたけども、マイティ・ソーなんですよ。「こいつだったの?」。だからトールってのはソーになるわけですよね。でもここ面白いのは、最高神と雷神、別なんですよ、北欧神話では。これオーディン+トールがゼウスみたいなもんでしょ。「そうなんだ」。
思ったらユミルのことバラバラにして世界を作る。祖先なのに。で言うと、ユミルってギリシャ神話で言うと、例えばウラノスとかクロノスに近くない? っていうこともなんとなく考えられるね。これどっちが先というよりも、たぶんそういうお話がだんだんと分派してったっていう考え方が近いらしいんですよね。
さあ、今回、ごめんなさい、遅れましたけども、参考図書がこちら。『いちばんわかりやすい北欧神話』と。これもう挿絵も非常に可愛くて、これ面白いです。これ読みやすいです。ぜひこれ読んでいただきたい。
そんな中、このウラノス、クロノス、ゼウスっての、これ僕の感覚です。ギリシャ神話でYouTubeやったので、今回ちょっと自分の中で比較したくて。「似たキャラいるよね」と。実はウラノス、クロノスでもティターン神族って言って、実はこのウラノス、生んだ子供、巨人なんですよね。実はそう。ギリシャ神話でも巨人たち出てきてたよね。でもそいつらが全部ゼウスに滅ぼされたんだよね。ここが大きいストーリーだった。
ところがここが違うんですよ。これ先んじて言っちゃうけど、巨人族がティターン神族として、いわゆる原初の神ウラノス、クロノス、だからゼウスの祖先ですね、によって作られたんですけど、ゼウスが全部駆逐しちゃうんですよ。「駆逐してやる。巨人ども駆逐してやる」っていうことですね。もう立体機動装置でゼウスがスパン、スパン、スパン、スパン、スパン、やっちゃうわけですよ。
ところがこの北欧神話は違うんです。北欧神話は、なんと巨人族が後の神によって滅ぼされたのではなく、なんと最終戦争で神族対巨人族の大リベンジマッチが行われて、なんと相打ちで全てが滅びるっていう、そういう世界観なんですよ。だからその大きな結末が全然違うんですね。だからどっちかっていうと巨人がかなりメインというか、そんなにっていう裏主役なんですよね、巨人族が。この辺りもすごく進撃っぽくないですか? そうなんですよね。巨人が最終的に、この内側にいる神族たちの方に攻めていくわけですよ。すごい話です。じゃあ、その間まで何があったか?
神族対神族がある。どういうこと? このアース神族、いましたね。なんとアース神族の町の周りの壁、これを作ったのは実は巨人族なんです。なんでなんでしょう? この話も後に話したいと思うんですけれども、そのアース神族の町の中で、非常に一度風紀が乱れたことがあったんですね。とある女が現れて、いろんな欲望にまみれた情報をたくさんまき散らして、町がものすごい風紀が乱れたんですね。「これどうなってんだ」と。「なんだあの女は」と。「この神の町で何をみだらな、あれを振る舞いとるんや」っていうことで、捕まえて処刑してしまうんですね。「処刑するぞ」って。「ギャー」なんてやるんですね。
そして「処刑終わりました」なんつって。「いやもう大変な女でしたね」なんて言ってたら、「生き返りました」と。「生き返った? どういうことでしょう」とか言って、もう1回処刑するんですね。したら「もう1回生き返りました」とか言って、3度ほど生き返って、「あれ?」って。「普通の女じゃないんじゃない?」ってなって、実はそいつが別種の神族だったことが分かったんです。こいつも神。なんとアース神族ならぬヴァン神族という、他の神の一族がいたっていう。これどういう状態? もう分かりません。どういう状態? 神対神って、ゴッド対ゴッド。他にもいたのか、能力者たちが、って言って、神の一族がいるんです。
それで戦うんですね。ところがこれは「もういい、争わない。やりすぎた」と。それでちょっと人質を交換して、大事な人材を向こうに送り、あっちにも送りして、それで和解、手打ちとなるという、そういう争いがまず描かれます。
これ場所で言うと、アース神族がいるの、このてっぺん、タワマン。人間が麓、巨人側が端っこ。下に氷の世界と冥界がある。他にも、なんと9つの世界があるって言うんですよ。他にもというか、全体で9つ。ユミルの体から作られた9つの世界。他は、そのヴァン神族のエリアと、氷とぶつかってた炎のエリア。他に妖精のエリアですね。光の妖精と闇の妖精のエリアがある。合計で9個なんですけども、このヴァン神族、炎、光、闇の妖精のエリアについては、どこにあるかは定かじゃないんですって。
だからもう分かりません。エリアが雑。そこは雑。だけど、この階層的なスノードーム的な、そういう世界観だよという中で、ヴァン神族っていうもののエリアもあるんだよと。「言って! どこか言って!」って感じなんですけどね。「どこのタワマンですか?」って感じなんですけども。アース神族と和解しました。
人質としてアース神族の町に来たのが、フレイヤという愛の女神なんですよ。ものすごいセクシーなんですね。すごい美女です。すごい美女で、めちゃめちゃ欲深いっていう、もう峰不二子みたいな状態です。エロくて美人で欲深いという、峰不二子登場という状態ですね。なので非常にギリシャ神話で言うところのアフロディーテとか、ローマ神話で言うところのヴィーナスですかね。この美と愛の女神、この感じですよね。アフロディーテに近いんじゃないかな、なんていう感じですよね、このフレイヤ。
これは後の神々の日常編でめちゃめちゃキーマンになってきます。なんかって言ったら、争われます。「フレイヤをよこせ」っていう、もうその、なんかの条件に出されます。もうフレイヤとしてはたまったもんじゃないんですけどね。これもアフロディーテとかもそうでしたよね。「アフロディーテと結婚させてくんなきゃどうだ」とかっていう、もうむちゃくちゃな輩がやたらと現れるっていうのはギリシャ神話でしたけども、やっぱり現れます。神々の日常では、そういう美女を巡って、もうすったもんだってのは現れます。
そんなフレイヤとか、フレイヤの兄ちゃんのフレイってのもいるんですけどね。フレイもイケメンのプレイボーイなんですね。イケメンのプレイボーイで、そのフレイは豊穣、豊作の神なんですね。イケメンで豊作の神なんです。フレイは、すったもんだで言うと、巨人族の美女いるんですよ。巨人族にも美女がいるんですよ。それに一目惚れしちゃって、もう自分の中のすごい大事な武器、宝剣があるんですけど、それを「もうあげるから結婚してください」って、ちょっとかぐや姫的なことやっちゃいます。
「もう武器全部あげますから結婚してください」って、使いの者をやるんですね、フレイが。フレイヤの兄ちゃんですよ。イケメンのプレイボーイなんですけども、「もう全部あげますから」って。「頼むよ、お前」とか言って、使いの者にやらすんですね。使いの者、「分かりましたよー」とか言って、その巨人族の娘に、「いや、フレイさんが言ってるんですよ。ヴァン神族ですよ」とか言って。「いや、嫌ですよ」みたいな。「お金じゃないんですよ」とか言って、巨人族のその娘が、美女が、「お金じゃないですから」とか。巨人族、生き残って子孫を増やして、外に住んでるわけですね。美女いるんですよ。「嫌です、嫌です。フレイさんと結婚しません」。
その後、べらぼうに脅します。「ヴァン神族を敵に回して、まともに生きられると思ったら大間違いですよ」と。「脅しですか?」「脅しです」とか言って、むちゃくちゃ脅すんですね。それで無理やり結婚するって。「そんなこと言われたら、もう結婚します」とか言って。「もう嫌だな、この人」って言うんだけど、なんだかんだで幸せになりましたっていう。政略結婚で結婚しても意外と幸せになれるっていう、謎の象徴になったらしいですね。
その金の板なんかになっちゃってね、ゴールドボードになっちゃってね。このフレイと巨人族の妻が、もう仲睦まじくしてるのかな。結構いっぱい残って、「最初は結婚したくなかったけど意外と幸せ」っていう。なんだろうね、今やったら人権問題なんじゃないかっていうふうな、そういうものに使われてるお話がありますね。
ところがオチがありましてね。このフレイは全部の武器をもう渡しちゃうんですよ。いろんな財産を渡すんですけど、その中間で使いの者に、その剣とかも渡しちゃうんで、持ってないんですよ、武器。どうなるかって、これ最終戦争ラグナロク。「ラグナロクだー」って言って、「全員出陣だー」っていう時に、フレイ、武器がないんですね。「ああー」とか言って、武器がなくて、そこにいた鹿の角を折って出陣するっていう。死に向かうっていうね、最終的には。だからもう「武器持っとけよ」っていう。「全部渡すなよ」って。
でも愛情のために生きた男っていう、フレイっていうのはいるわけですよね。だから戦では結果は残せなかったけれども、「いいパパだったんじゃないの?」っていう象徴にも使われたりすると。「の割には脅してましたよね?」なんていうツッコミどころもあるっていうのが神話っぽいですよね。そんなフレイという兄ちゃんを持つフレイヤですね。そんな登場人物います。
ここで登場してないのはこれですよ。ロキ。来ましたね。言ったらユミルが原初の神としてウラノス、クロノス、似てるよね。オーディンとトール。オーディンは最高神で頭がいい、策略家。ヴァイキングが好きそうだな。なるほど。トールはハンマー持ったマイティ・ソーですよね。雷にして最強の神。分かりました。フレイヤ、峰不二子ちゃんで、エロい感じですよね。愛の女神ですよ。欲深いですよ、なんてありますね。
ロキ、これがトリックスターなんですよ。これがいわゆる北欧神話の一番面白いキャラクターだと私思ってるんですけども、ギリシャ神話でトリックスターといえばヘルメスっていう、言ったらゼウスに翻弄されながらも、いろいろと面白いことを起こすみたいなやつがいましたよね。だけどこのロキはもっとトリッキーなんですよ。なんと善悪混合の神として、なんとこれ、ロキ、巨人族の末裔なんですよ。巨人族なんですよ。にしても、かなりこのアース神族と一緒に話に出てくるんです。
この神々の日常編ではロキを中心として、いろんな事件が起きるんです。でもそれは非常にコミカルなんです。だからそういうコミカルなやつなんだっていう。「またなんかトラブルあった。またロキのせいだ。ロキ連れてこい」みたいな感じなんですよね。例えばいろんな事件があるんですけど、この丸刈り事件から行きましょうか。丸刈り事件、くだらないですよね。
トール、最強の雷神ですよ。「最強の雷神トールだー」っていう。このトールの奥さん、美人なんですよ。金髪で。「ファー、トール」なんつって。もう本当に最強の雷神の嫁ですっていう。金髪がピッカピカなんですね。ある朝起きるんですね。「ファー」。その奥さんが起きたら、鏡見てびっくりするんですね。「なんで丸坊主になってるの?」。丸坊主になってるっていう。あの最強の雷神トールの奥さん、ある朝起きたら丸坊主っていう、ヒロイン丸坊主事件ってありましてね。
それやったの誰だーって言ったら、ロキなんですね。夜中に刈り込んじゃったっていう謎のいたずらをロキがして、それに対してトールは怒るんですね。「てめえ、この野郎。やってくれたな、ロキ。どうなってんだ、この野郎。ぶっ殺すぞ!」って。バンって腕掴まれたら、「ああ、痛い、痛たたた」って。もう力が強いです。一番強いから。「痛たたたた、折れるから、折れるから」って。「分かったよ、トール。分かったから、なんとかするから。すげえの用意すっから」とかって。「すげえのじゃねえ、バカ野郎。なんとかしろ。今日中になんとかしろ。じゃないとぶっ殺すぞ」って言われて、「分かった」って。
体の小さい職人集団がいるんですね。その職人集団のところにロキが行って、「ちょっと作ってくんねえか?」って言って、カツラを作ってもらうって話があるんですよ。そのカツラがすごくて、すごい技術なんですよ。ピッカピカの金髪で、「トール、持ってきたよ」って言って。「おい、カツラじゃねえか、バカ野郎。こんなもんでお前、なんとかなると思うなよ、お前」って言ったら、「これただのカツラじゃねえんだよ。これただのカツラじゃねえんだよ。トール、待ってくれよ。奥さん、ごめんな。昨日の夜なんか、うってきて、丸刈りにしちゃったんだよ」とかって。「何してんの、あんた!」とかって。「これ被ってくれ!」「カツラじゃない」とか。
バーンってカツラをばっと被ったら、カツラが肌と一体化して、ビョーン、一体化して、「嘘ー!? そういうやつ?」って言って、元よりもすごい豊かな髪になったっていう。どういうテクノロジーなのか分かんないですけども。だから職人集団が作ったのが、もう現代ですら作れない、皮膚と一体化するカツラっていう。「ギュンって一体化したんだけど。一体化してるんだけど、トール見て」って。「おお、前よりも良くなってんじゃねえか。しょうがねえ。許してやらあ」という謎のエピソード。
このちっちゃい職人すごいでしょ。でもこいつら欲深いんですよ。もうしょうもないエピソードばっかりです、ここは。ここだけなぜかしょうもないんですけど、アフロディーテことフレイヤが歩いてたら、「うん?」ってパッて見たら、すごいピッカピカの宝石見つけるんですね。「何その首飾り? 私にぴったりじゃない。私それつけたら、もう鬼に金棒じゃない?」って。そしたらそれが、その職人集団が作ったやつなんですね。「何ですか、それ? ちょっとちょうだい」とか言って。
「嫌です」「嫌ですじゃない。これフレイヤよ、私よ」って。「お金払うから」「お金いりません。お金いりません。お金いりません」「じゃあどうしたらくれるの?」「うーん、一晩なんとかなりませんか?」っていう最低の話があるんですね。「一晩なんとかなりませんか」っていうのを、この何人かの職人たちが言うんですね。「私もそう思ってます」「僕もそうです」「僕もでーす」とか言って。「何あんたたち、何なのそれは? あんたたち最低よ、本当に。しょうがないわねー」って言って、その職人と一晩ずつ過ごして首飾りを手に入れるってだけの話あります。
それなんでこれ残した? この時点でいらなかったんじゃないの? その口伝の時から、なんでこれ残したんだろうね? っていう。それで全員、職人たちが満足して、「ありがとうございました」って言って、その宝石を渡すというお話も残ってるっていうね。そういう、だから職人集団たちと女神フレイヤと、悪いことしちゃういたずら者のロキと、力自慢のトールとか、そういう世界ですね。そういう世界です。
他にも城壁事件がありますね。城壁事件。これがだから、その最初の城壁作った。これが要するに巨人族とアース神族の力関係が分かるんですよね。巨人族が1人、鍛冶屋として、「壁を作ります」って言ってきて、「僕、雇ってください」。巨人族が来るんですね。「壁作ります」と。「壁?」なんて。でも巨人族だっていうことを隠して、「鍛冶屋です。壁を作りますんで、攻められたくないでしょ?」って。そのタワマンの最上階のそこにも、ものすごいでかい壁作りませんか?
「壁? 確かに必要だけども、お高いんじゃないの? そんなでかい壁、すぐ作れんの?」なんて。「作れますよ。でも相当な作業にはなりますから、報酬は結構弾んでもらえますか?」「報酬ね。何欲しいんだよ」「フレイヤさんを」。また、ってね。全部の報酬フレイヤっていう。「フレイヤさんください。あと太陽と月」って、ものすごい要求。太陽と月とフレイヤ。「お前、何もかも持ってく気やないか、この野郎。本当に作れんだろうな」。
その時に一番頼りにしてたトール。オーディンが最高神なんですけども、会長みたいな状態ですね。トールが社長みたいな状態ですよね。「トールさんに聞いてみないと分かんねえな」とか。トールがちょうど出張してたんですね。「トールさん、今いないよ」と。「しょうがねえな」とか言って。トールはよく巨人族のところに、巨人を懲らしめに行ったりするんですね。巨人に暴行振るったりするんですよ。「この野郎。最強のトール来たぞ、この野郎」とか。「締めてやんぞ、この野郎」とか言って、巨人のところに行っては、巨人締めて帰ってくるってやってんですね。「出張中だよ」とか言って。
「じゃあもうしょうがねえな。もう本当にできんだろうな? 太陽と月と、あとフレイヤ。とりあえず作ってみろ」って言っちゃうんですね。するとそいつが巨人族で、壁をガンガンガンガン積んでいくんですよね。特注の馬とかで、ものすごい資材運ばせて、「おい、あいつすげえな。なんだあいつ」みたいな。そこら辺でだんだんと巨人族だってのが分かるわけですよ。その巨人族が壁をガンガン作って完成させようとするわけですね。そこで「うわ、アカン、アカン、アカン」ってなって。「これちょっとフレイヤにもまだ話つけてない。どうする?」ってなった時に、「おい、ロキ」。ロキ呼ばれるんですね。「なんすか?」。
この時だったらロキの距離なんだろうね。その立ち位置、分かんないですよね。ものすごいアース神族のエピソードに出てくるんだけど、巨人族なんですよ、ロキは。これもすごい不思議。「おい、ロキ、頼むよ。お前さ、あの壁できたら、もうフレイヤと太陽と月渡さなきゃいけない。これ何もなくなるぞ、こっちな。なんとかして、あの壁の完成阻め!」とか言って、ロキが「分かりましたよー」とか言って。
ロキが、その壁を作ってる鍛冶屋の巨人の馬、その馬をたぶらかすんですね。ロキがメス馬を仕込んで、その資材を運んでる馬を機能させなくする。その鍛冶屋、馬が運んでくると思ったら、メス馬が誘惑して、そのメス馬の方行っちゃう。「ああ、資材が! くっそー、進まないじゃねえかよ」とか言って、ロキが足止めしてるんですね。
ロキが足止めしている間にトールが帰ってくるんですね。「トールが帰ってきたよ」。「おい、どうなってんだよ、おい、これ」とか言って。「いや、トール、これさ、こうこういう理由でさ、もう全部壁ができちゃうと、フレイヤと太陽と月持ってかれちゃうんで、どうする?」とか言って。「うるせえな、この野郎」とか言って、トールがその鉄槌、ハンマーで、その鍛冶屋のド頭をかち割って、「これでいいだろ!」っていうお話があるっていうね。そのド頭かち割る。壁作ってくれたやつのド頭。乱暴。乱暴、ド頭かち割るなよ。城壁、結局「城壁使えるね」なんつって、使っちゃってんのね。
だからここ面白いのが、北欧神話において神と巨人が描かれるんですけど、不思議なのが巨人が悪ではないんですよ。よくよく見てると、どうも巨人がかわいそうなんですよ。これが面白いところ。絶対にこの巨人っていうものを駆逐して、完璧な神とその下にいる人間じゃないです。神と人間と、その神にいじめられてる巨人っていうのがずっと出てくるんですね。これがすごくポイントなんですね。
そしてそんな日常が、ある日終わりを告げる。それ何か? これがオーディンですね。最高神オーディンのところに予言がいろいろ来るわけですよ。「オーディンさん、予言が」「予言、なんだ」。最高神ですね。「なんだ。我々神一族が、神族が、間もなく滅びるという。滅びるかー」。予言が来るんですよ。神話にはやっぱ欠かせないの、この予言ですよね。神族がもうすぐ滅びるだろうと予言が来るんですね。
それに恐れおののいたオーディンは、なんとか攻めてくる敵と戦わなきゃ。最終戦争によって神は滅びる。特に巨人族が来る。オーディンはずっと怯えてたんですね。自分がユミルを殺して世界を作ってからというもの、そのユミルの子孫たち、巨人族たちがいつか自分のことを許さずに復讐してくるんじゃないかというのがずーっと怖くて、「巨人族がいつか来るかもしれない」という思いに苛まれてた。そんな中、「やはり神の神族は滅びます。巨人族がやってくる」。「うわあ」となって、そこから集めるんですよ、兵士たちを。
どういうふうに集めたか。かなり強引に集めます。人間世界にも英雄たちってのがいたんですね。この英雄たちにも力を与えてたのは、このオーディンだったんですよ。人間の世界にもオーディンが、「お前に力をやろう。お前に力をやろう」って言って、英雄たちがいろいろ活躍してたんですね。ところが、その英雄たちの力が今度は自分の力として欲しくなるわけです。ラグナロクが迫ってる。人間の英雄たちの力をもらわないとっていうことで、その英雄たちを無理やり、他のライバルに力を与えて殺して、有能な人材を全員、殺した後に、冥界のことも司ってたので、その死んだ英雄たちを、このヴァルハラという御殿に集めて、自分たちの兵士として蘇らせるっていう、すごいやり方ですよね?
人間の英雄たちを、自分たちの兵士としてバンバン蘇らせて、「来るべきラグナロクに備えよ」「はっ」。その復活した人間英雄たちが「神のために!」となるわけですね。「ラグナロクが怖い、ラグナロクが怖い」ってなってるわけですね、オーディンが。「なんだ、ラグナロク」ってなってる間、ただ唯一、希望の光があったんですね。
それがオーディンと正妻フリッグ、女神がいるんですね。フリッグっていうのは正妻なんですね。ものすごいね、このオーディンも愛人はたくさんいたんですけど、フリッグってのは、やっぱりこのゼウスの妻
ヘラと同じように賢くて、用心深いんですね。その正妻との間にいる息子、それがバルドル。これが光の神って言って、もう完璧だったんですよ。オーディンの期待を一身に背負いながら、こいつがいれば間違いないという。しかも、ものすごく優しいんですよ。光の神だけあって、慈愛に満ちているし、ものすごく聡明で、しかも美しいんですね。もう完璧超人バルドル。
オーディンは強いんですけど、眼帯もつけて、しかももう老人なんですよ。こういうオーディンっていうね。帽子を目深に被って、白髪がこうなってね。全能の神オーディン。息子バルドル、光の神です。美しいんですよ。ファー、ファッサー、髪、風ファー、そよ風ファー。期待込めてます、母の期待を。
そのバルドルが、なんと死ぬっていう予言が現れたんです。「やめて!」。フリッグ、母親が「やめてよ。バルドルよ。一番の期待の長男が、なんでこんな目に遭わなきゃいけないの? バルドルちゃん。バルドルちゃん死ぬなんて、あたし許せない。全部の手を使ってでも、あなた守るからね。バルドル、あなたのこの美しい顔を守るからね」ってやって、祈りを捧げるんですね、このフリッグが。
母の一心の祈りですね。この完璧超人の最高の息子、光の神バルドルを絶対に守るんやって言って、バルドルは何をされても無敵っていう願いをかけるんですよ。それ、どういう雑な願い? 何でも大丈夫って。地球上のあらゆるものに、バルドルの体には傷一つつけられないっていうのを祈るんですね。だから石をぶつけても、石ではバルドル、バーン、効きません。もう防石ですね。防弾加工、テフロン加工も、防弾のキシリトールみたいな。全部、何やっても大丈夫っていう。母の祈り一心で、最強になったわけですよ。
それを見てたロキがいるんですね。「何かやってるな、おい。何やっても無敵ってなんだそれ? 光の神で、元々顔もかっこよくて、その上で何やっても無敵って、本当かな?」って言って。このバルドルの弟、この弟が盲目なんですね。その弟をけしかけて、「弟よ、お前さ、バルドルにこれちょっとやってみろよ」って言って。
バルドルのいろんなものを封じていた。バルドルにはもう何も効かないよって封じてたんですけど、一つだけ、このフリッグが願い忘れてた木があるんですよ。この木、別に大したことないって思って、そこに入れてなかったんですね。うっかりね。その木の、フリッグの呪文で対象になってないっていう素材を集めたんですね、ロキが。ロキは頭がいいんですよ。ロキはとにかくずる賢いんですね。
「あの条件、一回聞くと、あたかも全部の素材がバルドルに効かないように聞こえるよな。でもこの木だよ。この木は願いの中に含まれてねえんだよ。おもしれえ」。弟をけしかけて、「おい、バルドルの弟、兄ちゃん無敵なんだってよ。ちょっとこれを矢で射ってみろよ」って言って。石投げても何やっても、実験しても効かなかったバルドルが、「大丈夫だよ」なんてやってたんですけど、そこでなんでもない木の矢がボンって刺さるんですね。「あれ? 母さん? 母さん」。ドン、こう倒れるわけですよ。
うわあ、フリッグが「やっちゃった! 一個リストに書いてなかったの?」。それ、ちょうどロキがドンって。「ああ、嫌よ、嫌よ」って言って、バルドルが冥界に行くんですね。冥界にもお願いかけるんですよ、フリッグが。「ちょっと!」、ドンドンドン。「冥界さん!」、ダンダンダン。「冥界の神! ちょっとお願い、バルドルに対してもう一回猶予くれない?」。母の力えぐいです。フリッグが「バルドル、生き返してちょうだい」なんて言うんですけど、ここの冥界の担当をしてるのが、冥界の神ヘル。これが巨人族なんですよ。しかもロキの子供なんですね。ロキの子供ヘル。
このヘルが条件を出すんですね。「では、それだけ言うのであれば、世界中の全ての神々が、そのバルドルの復活を願うのであれば復活させましょう」。つまり、全員が賛成したら復活ありですって言うんですね。その時にまたロキが動くんですね。「全員がか。でも俺があからさまに反対すると、色々めんどくせえだろうな。フリッグだから」って言って、違う女に化けて、「反対です」ってやって。「ああ、残念。一人反対者がいました。バルドル復活なし」って言って、バルドルが復活できなかったんですね。
うわあ、だからロキのせいなんですよ。さっきまで丸刈りにしてたっていうような、あのロキが完全に「ここまでやる?」っていうところまでやります。そしてロキは逮捕されるんですけど、ガーン、捕まるんですけど。「お前やってくれたな、この野郎。やっていいこと悪いことがあるだろ。お前、バルドルをやるってどういうことだよ。しかも復活、どういうことだよ」。
ラグナロクだ。始まるんですね。最終戦争のきっかけを作ったのは結局ロキだったんですよ。だってそんなことある? あれだけ小競り合いしてたキャラクターが、ついに最も希望とされてた光の神を殺して、復活まで阻止してラグナロクを起こすんですよ。「ラグナロクだよ」って、最終戦争が始まるんですね。神族対巨人族の戦いが始まるんです。バーン、バーン。神族が勝つと思うでしょ? これが巨人族がむちゃくちゃ強いんですよ。どんどん主要な神たちが相打ちしていくんですね。
これが面白い。このロキ対トール、最終的にはこのラグナロクで本気の戦いをやるんですけど、それまでもずっと小競り合いはしてたんですね。最強の雷神トールと、要するに「丸刈りにもしたぜ」っていうロキですよね。このロキとトールは、ラグナロクの前にも五番勝負っていうのをやってるんですよ。それ、ものすごくトールとロキっぽいんですけど、これ何かと言うと、トールとロキで五番勝負。食べ比べ、走り比べ、酒飲み比べ、猫持ち上げられますか、老婆との相撲っていう、むちゃくちゃなバラエティ五番勝負があって。
まずは「食べ比べ」とか言って、食べ比べバトル、走り比べバトル。走り比べバトルまでは、トールの弟子が出ます。トールの弟子と言えど強いんですよ。でも、わけのわからない子供に負けちゃうんですね。「なんだ、一番勝負、二番勝負、なんか煙に巻かれたような感じ。なんだ、なんで負けたんだ? わからん。ロキ、何やってんだこいつ。よし、俺が出る」って。三番勝負の酒飲み比べから出ていくんですね。
酒の飲み比べっていうか、飲む対決ですね。「ロキ、おい、三番勝負、俺が出るぞ」。「ああ、トール。お前を待ってたんだよ。この杯を飲み干したら、あんたの勝ち。それだけ」。「よし、やってみよう。酒を俺が飲めないと思ってんのか、この野郎。俺は最強の雷神トールだ!」って酒を飲むんですね。ガンって飲むんですね。ぐわあ、飲むんですけど、飲みきれないんですね。「だいぶ飲んだぞ。なんでちょっとしか減ってねえんだ? っていうか、減ってないように見える」というような感じで。「酒を飲みきれませんでした。時間終了。残念、トールさん負け」。
「じゃあ、次の勝負。もう後がないですよ。あとは四番目の勝負、猫を持ち上げられますかっていう勝負」。「ふざけんじゃねえよ。俺トールだぞ。俺、ハンマーで巨人のドタマかち割って、祈ったら雷落とすトールだぞ。猫持ち上げられますかって、なんだこの野郎」。「持ち上げられるんですか、トールさん。猫持ち上げられるんですか? 持ち上げてから言ってくださいよ。時間内にね。はい、スタート」。「ふざけんじゃねえ。こんな片手だ。うっ、なんだこれ。ちょっと待って。これ猫か? おい、なんだこの猫」。
「酔っ払っちゃったんじゃないですか、トールさん。さっき酒をガンガン飲んでいたから、猫が持ち上げられない。そういうことなんじゃないんですか? 猫が持ち上げられないのが最強の雷神だなんて、これとんでもないことになってますよ。トールさん、頑張って、頑張って。はい、残念。猫持ち上げられず、トールさん残念。最後はお相撲勝負です」。
「相撲だ。相撲ならやってやるよ。誰だ、相手は?」。「このおばあちゃんです」。「おばあちゃん、ふざけるなよ。おばあちゃんと俺? 最強の雷神だぞ。巨人のドタマをかち……」。「まあまあ、いいじゃないですか。さっき猫を持ち上げられなかったんだから。もはや列は猫、雷神、そしておばあちゃんかもしれませんよ。さあ、やってみてください」。「てめえ、ふざけんじゃねえぞ。相撲対決、やってやろうじゃねえか、この野郎。ババア、いってやる」。ガン。「ババアが強い。ババアが、なぜかわからないが、押せば押すほどに俺の力が奪われていくようだ。どういうことだ? なんでばあちゃんに? 俺は土俵際まで追い込まれて、ばあちゃん……」。そういうことですね。やられるんですね。
実はこれ、種明かしをすると、ロキというのは幻術、幻を見せるっていう力も持ってるっていう設定なんですよ。なので全部、このトールはものすごい相手と戦わされてた。何と戦ってた? 食べ比べの相手は、実は火だった。火炎。走り比べの相手、これは思考だった。考え、思考。考えるほうが早いでしょ。思考が一番早いでしょ。ピューン、早いね。酒比べの相手は海だった。どういうこと? 飲んでたのは実は海だった。どういう幻術? っていうね。
その上で猫を持ち上げて、猫のはずが、ロキの息子でもある大蛇ヨルムンガンドっていうのがいまして、それが海に投げ捨てられて育てられたので、世界中を取り巻くほどのでかい蛇になったっていう大蛇がいるんですよ。猫かと思ったら蛇だったっていうね。老婆の相撲、老婆は何だったか? これは老いそのものだった。老いそのもの。だから時間がかかればかかるほど、どんどんこっちのペースが奪われていくっていうのは、老いと戦わされた。哲学的ですね。火、思考、海、蛇、老いには、このトールの力では敵わなかった。そういうお話があるね。
だからロキは、とにかく考えるんですよ。考えに考えて、そしてバルドルを追い詰め、ラグナロクを起こし、ラグナロクになると、もうてんやわんやになるんで、ロキも解放されるんですね。そして戦いに挑む。そしてそのロキの息子、狼フェンリル。この狼のフェンリルが、なんとオーディンを丸飲みしてしまったりとか。ロキの仲間たちが大活躍するんですね。「こいつら、そんな力あったの?」。トールも、そのヨルムンガンドとか、ヘルとかフェンリルとか、全員で協力して、全部相打ちに持っていかれるんですよ。神族がバーッと倒れて、「やられた」。
最後の最後に、その世界を焼き尽くしたのが、炎の巨人スルトっていうんですね。これ、ギリシャ神話で言うところのプロメテウスみたいな感じですかね。ギリシャ神話でもプロメテウス、火の神、火ってやっぱり特別な扱いされてたんですよね。ちょっと味方でもあるけども敵でもあるみたいな。火って人間の文明の象徴でもありますよね。でも火によってものすごい災害が起きたりもする。だから火っていうのは、すごく二面性のある神として描かれるんですけども、この炎の巨人スルト、まさにそうなんですね。
この炎の巨人スルトというのは、最初の最初に氷と炎があってユミルが生まれた。だからスルトっていうのも、相当原初の神なんですよ。でも見てください。炎のエリアって別にあるでしょ。だから巨人族のエリアにも神族のエリアにも出入りせず、どこか遠く離れたところにいたのが炎の巨人なんです。歴史をずっと見守ってきたのは炎の巨人だったんですよ。その炎の巨人が最後に現れて、全部を燃やし尽くして終わるんです。
全員が相打ちで、ギャー。やっぱり巨人が、やっぱり予言の通りに相打ち。最高神も最強の雷神も、ロキとロキの子孫に、うわあ、となった後に、炎の巨人が現れて、全部を燃やし尽くして世界が滅びる。うわあ、終わるんですね。
そして再生編です。何もかもが燃えきって、それまでの主要な神、オーディンもトールも全員いなくなるんですね。強かった神が全員いなくなる。そして強かった巨人も全員いなくなる。そんな中、オーディンの子供とか、ほんの少しの神々が生き残ってるんですよ。ほんの少しの神。そして、そんな燃えきった後の宇宙樹の中で、朝露を舐めてたのが人間の生き残りだったんです。その一組の男女が人間の始祖として我々を作ったのであるっていうお話なんですよ。すごくないですか?
生き残る。そのラグナロクを生き残り、世界樹の中で朝露を舐めてしのいで、最後に出てきたのが僕たちの始まりだっていう、そういうお話なんですよ。すごくないですか? そして神々の生き残りは、その世界、かつて栄えた神族の栄光を懐かしみながら天に帰っていく。その時復活したのが、あの光の神バルドルだったらしいんですね。バルドルが復活して、そしてこの地上は人間が治めていくことになりました。ふわって天に消えていく。ふわあ。「懐かしかったね、神々が栄えてた時代」。ファー。
出てきた一組の男女、これが僕たちの始まりの物語っていう北欧神話なんですよ。独特ですよね。これ面白いと思いませんか? ギリシャ神話と大きく違うのが、神々と人間が一緒に結婚して子供を産んだ、神と人間のハーフが英雄でしたよね。そして英雄がだんだんと人間に浸透していって、今の世界になっていく。そういう感じでしたよね。だけど完全に分かれてるんですよ、神々と人間は。そして神々は滅びるんです。巨人族も滅びるんです。そして人間が最後に木の中から出てきて始まる。それが北欧神話。面白くないですか?
この世界樹、宇宙樹の話とか、神対神、もしくは神対巨人でラグナロク。そしてこの善悪混交の、もしかしたら主人公かもしれないっていう、このロキ。なんだかエレンにも見えてきますよね? エレン・イェーガーみたいじゃないですか? 巨人の味方なの? それとも、みたいな。そういういろんなお話の元になるだけある。北欧神話は面白いですよ。他にもたくさんエピソードと登場人物が残ってきますし、いろんな影響を与えてます。
例えばチューズデーとかウェンズデーとかサーズデー、ありますよね。曜日の名前。あれも全部、北欧神話の神々の名前から来てるね。我々の中に少しずつ残っている北欧神話のその名残。それを辿って、人類って面白いなって思いながら、またそれが違う形で現代にも影響を与えてるっていうことに驚愕してみるのも、いいんじゃないでしょうか。ではまた。
記事公開 · 更新
