中田敦彦が解説する『伝え方が9割』:NoをYesに変える「3つの手順・5つのツボ・5つの技術」

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概要

中田敦彦は「YouTube大学」で、佐々木圭一の著書『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)を取り上げた。中心にある問いは、同じ学歴や資格を持つ人のあいだで、なぜ結果に差が出るのかである。中田は、この本の答えを「伝え方」だと紹介し、伝え方は才能ではなく、手順に沿えば誰でも再現できる技術だという本の主張を順に解説していく。動画は、考え方の3手順、相手を動かす5つのツボ、強い言葉を作る5つの技術、そして全部を使った「I LOVE YOU」の実演という流れで進む。

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コピーライターの技法を、誰でも使える形で公開した本

中田はまず、この本は書店でよく見かけるベストセラーであり、「9割」という言葉や「伝え方」というテーマから漠然とした印象を受けるかもしれないが、実際には非常に実践的だと評価する。シンプルな方法で結果が大きく変わることが書かれているという。

著者の佐々木圭一はコピーライターで、国内外で賞を受けている。中田は、コピーライターを広告や商品名など、人の心をつかむ短い言葉を作るプロだと説明する。プロである以上、調子の良い時と悪い時の波があっては仕事にならない。安定して良い言葉を作れるからプロなのであり、この本はその技法を惜しまず公開したものだ、というのが中田の紹介である。

ただし中田は、この本がコピーライター向けではない点を強調する。著者自身が「あらゆる人の人生が変わる技術」だと信じていると書いており、それが実際に多くの人に支持されたからベストセラーになったのだと中田は見ている。

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人生の節目は「YESをもらう」作業の連続

なぜ伝え方で人生が変わるのか。本の問題提起として中田が紹介するのは、同じ大学を出て同じ資格を持っていても、就職に受かる人と落ちる人がいるという事実だ。多くの人は学歴や資格が人生を左右すると考えているが、同じ資格でも給与に差があり、同じ学歴でも合否に差が出る。その差を生むのが伝え方だという。面接では必ず「自分の良いところをアピールしてください」と言われる。そこでうまく伝えられれば、同じスペックでも勝つ側に回れる。

本によれば、人生の節目は、自分を伝え、お願いをしてYESをもらわなければならない場面ばかりだ。就職、入社後の契約、デートの誘い、プロポーズと続く。伝え方で何が「9割」変わるのかといえば、NOの答えが9割YESに変わるのだという。

中田はここで、学歴ではプロポーズは成功しないという例を演じてみせる。「私は東大を出ております。つきましては結婚していただきたい」「卒業証書を見てください」「給与明細を見てください」と言っても、相手は馬鹿にされたと感じるだけだ。学歴や資格や収入では人の心は動かないが、伝え方がうまければ動かせる、というのが本の主張だと中田はまとめる。

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情報量の増加と「1日22回のお願い」

本はさらに、伝え方の重要性が今の時代にいっそう増していると説く。かつての情報源は新聞、雑誌、テレビだったが、この10年で人はスマホを持ち、SNSでは毎日大量の意見が流れ、大手メディアだけでなく個人も発信するようになった。中田の紹介によれば、本ではこの間に情報量が530倍になったとされている。

誰もが発信できるということは、普通の言葉や普通の伝え方ではもう届かないということでもある、と中田は続ける。誰でも動画を投稿できるが、多くの人に届く動画はわずかだ。誰でも文章を発信できるが、何万もの「いいね」やリツイートを得られる人は限られる。発信の場が多すぎて、平凡な伝え方では人の目に触れないという。

それなら伝えなければいいのかといえば、そうはいかない。本によれば、人は1日平均22回お願いをしているという。中田は「どこの統計ですか? 分かりませんけども」と出典にはこだわらないものの、振り返れば確かにそうだと共感を示す。仕事で「この件を調べておいて」「書類をもう一度送っていただけますか」「お茶を淹れてもらえますか」と頼み、家庭で「子どもには君から言っておいてくれ」と頼み、店では色違いを出してもらう、他店から取り寄せてもらう、メルカリで値引きを頼む。どれもお願いである。毎日これだけYESを求めているのだから、この技術を鍛えるべきだというのが本の主張である。

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「コミュ障」は才能の問題ではない:著者自身の挫折

中田は、視聴者には「自分はコミュ障だから」と感じる人も多いだろうと話を向ける。最近は「人見知り」と同じくらい気軽に「コミュ障」という言葉が使われる。その背後には、プレゼンや説得や交渉がうまい人は特殊な才能の持ち主で、普通の自分にはできない、という考え方がある。本はこれを否定する。

その根拠として紹介されるのが、著者自身の経歴だ。佐々木はコピーライターを目指していたわけではなく、ぎりぎりで受かった会社で配属されたのがコピーライターの部署だったという。人とのコミュニケーションも苦手で、最初は書いた案がすべてボツになった。上司からは「お前が案を持ってきても私は紙を捨てなきゃいけない。紙の無駄遣いだ」「これを続けたら環境破壊しかしていないことになる」と言われたと本には書かれているという。悔しさからやけ食いをして少し太ったことまで書かれている点を、中田は「どれだけうまくいっていないかが伝わる」と面白がる。

辞めようかと考えていたさなかに、まだやれることがあるのではないかと思い直し、佐々木は人の心をつかむ言葉を調べ始めた。文学、広告、物語など幅広く読み、心に残った言葉をメモして集めた。するとそこに傾向があることに気づいた。中田は、名言集を読むと別々の人の言葉が似ていることがある、アニメの主人公の決め台詞が似ていることがある、と例を添える。感動する言葉の作り方には法則があるのではないか、という仮説を得てから著者の人生は一変し、百発百中ではないにせよ高い確率でヒットを生み出し、国外の賞も受賞するようになった、と中田は本の内容を紹介する。

この経歴を通して本が伝えたいのは、伝え方は才能ではなく技術であり、技術だから鍛えられるということだと中田は言う。

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言葉にも料理と同じく「レシピ」がある

ただし本は、難しい鍛錬を求めるのではなく、もっとシンプルな「レシピ」を用意したと説明している。料理のレシピは、この分量のみりんとこの分量の胡椒を入れ、この野菜をこの時間煮ればこの味になる、という手順であり、素人がその通りにやってもおおむねその味になる。再現できる作り方の手順がレシピだ。言葉も同じで、感動する言葉は作れる。中田は、「ガッツだ、あとはやれ」といった精神論のビジネス書とは違い、「この通り考えて、この通り作れば、これぐらいの味になる」と示している点がこの本の面白さだと述べる。

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考え方の3手順:思いついたまま口にしない

最初に示されるのは、考え方の土台を変える3つの手順である。

第1の手順は、頭に浮かんだお願いをそのまま言葉にしないことだ。人は「喉が渇いたからジュースちょうだい」「お腹空いたから飯行かない?」と、思いついて数秒後には口にしている。だからNOと言われる、と本は指摘する。自分の都合だけを言ってくる人に対しては、誰もが「お前の都合やないかい」と心の中で突っ込んでいる。しかし自分がする側になると、それに気づけない。「思う、言う」という一段階しか訓練されていないからだという。

中田はこの技術の効果を温泉卓球にたとえる。温泉で卓球をする人は、学んだわけではないが何となく打ち合える。しかし卓球部員が構えた瞬間の怖さは、温泉卓球とはまったく違う。技術を持つかどうかで、それほど大きな差がつく。卓球は温泉に行った時だけだが、コミュニケーションは毎日、1日平均22回も行う。その競技の技術を身につけたらどれだけの力になるか想像してほしい、と中田は語る。

第2の手順が最も重要で、相手のメリットを考えることだ。自分の頭にある「やってほしいこと」とは別に、相手の頭の中を想像する。この人は何を好み、何を嫌うのか。それが見えたら、第3の手順として、自分の願いと相手のメリットを一致させ、つなげる。作業としてはシンプルだが、ほとんどの人がやっていない。だからNOと言われてきたのだという。

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自分の願いと相手のメリットをつなぐ:面接とデートの例

中田は、相手のメリットを一度も考えない就職面接の例を演じる。「この会社が大好きなんです」「ずっとこの会社の商品を使ってきました」「入れなかったら食べていけないんです」「病気の親がいるんです」「5年引きこもっていました」「この1社しか受けていません」「去年も受けて落ちました」と、自分の考えを並べるだけでは絶対に受からない。

本来考えるべきなのは、その会社がなぜ面接をし、なぜ新しい社員を採用したいのか、会社の強みと弱みは何か、どんな人材を求めているのかだ。会社が求めるものと自分がやりたい仕事を合わせて提示すれば採用につながる。中田は架空の例として、AIを導入したいのにテクノロジーに詳しい若手がいなくて困っていた会社が、AIに取り組みたい志望者が収益倍増のデータまで持ってきたことを喜ぶ場面を演じる。

本に載っている例として紹介されるのがデートの誘い方だ。いきなり「デートしたいです」と言うのは子どもと同じで、「うるさいな」と思われるだけだ。相手がイタリアン好きだという情報があるなら、「びっくりするぐらいうまいパスタの店を最近見つけたんですけど」「イタリアンお好きでしたっけ?」と切り出し、店の話をしたうえで「一緒に行きます?」と誘う。自分にとってはデートであり、相手にとっては美味しいパスタを食べに行く機会になる。そこで会話が盛り上がれば、付き合うチャンスも増えるかもしれない。電車の中でいきなり「デートしてください」と言うのとは、引き出せる答えがまったく違うという。

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相手を動かす5つのツボ(1)好きなことに寄せる、嫌いなことを避けさせる

手順のうち、特に大事なのは2と3、つまり相手のことを考え、願いと一致させる部分だ。そのためのツボがあるという。本では7つ紹介されているが、中田は7つでは負担が大きいと考え、似ている項目を統合して5つにまとめたと断っている。

1つ目のツボは、相手の好きなことを考え、そこに寄せる方法だ。速さが売りのファストフード店で、手違いのために客を4分待たせなければならない場面を考える。「4分お待ちください」とだけ言えば、「いつも早いのになぜ待たされるんだ」と反発される。そこで「出来たてをご用意しておりますので、4分ほどお待ちいただけますか」と言えば、作り置きではなく出来たてが食べられるという特別感が生まれ、客は喜んで待つ、と中田は説明する。

飛行機の降機の例もある。前の席の人は早く降りられるが後ろの人は待たなければならない時、「後方の方はお待ちください」と言われると苛立つ。それを「後方座席の方は少々お時間がかかりますので、ごゆっくりお支度ください」と言い換えると、待たされているのではなく、ゆっくり支度できる立場だと受け取れる。中田は、慌てて荷物を取り違える前方の乗客と、ゆったり構える後方の自分という対比を演じ、メリットを提示するだけで印象が一変することを示す。

2つ目のツボはその逆で、相手が嫌うものを示して避けさせる方法だ。「芝生に入らないでください」と書いても、罰則があるのかと気にせず入ってしまう人はいる。しかし「農薬の匂いがつきますので芝生には入らないでください」と書けば、わざわざ農薬の匂いをつけたい人はいないので、避けるようになる。

中田が「面白い」と強調するのは、「痴漢に注意」という張り紙について佐々木が「あまり伝え方がうまくない」と指摘している点だ。これは痴漢される側への注意であり、本当に必要なのは痴漢をする側に「ここではやりたくない」と思わせることだ。そこで「近隣の住民の皆様の見回りにより痴漢を逮捕することができました。ありがとうございます」と書けば、痴漢をしようとする者は「このエリアは厳しい」「実績がある」と考えて避けるだろう、という。放置自転車に悩む場所で「ここは自転車を自由にお捨てください」と書くと、停めたら捨てたものと思われて持っていかれるかもしれないと考え、駐輪されなくなるという例も挙げられる。「自転車を置くな」「痴漢に注意」と気持ちをそのまま伝えるだけでは効果が薄い、というのがコピーライターの見方だと中田は紹介する。

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5つのツボ(2)決断ではなく比較させる

3つ目のツボは、決断ではなく比較をさせることだ。本によれば、人は決断する時に大きな精神的負荷を感じる。「デートしてください」「打ち合わせしてください」と言われると、面倒だと感じ、断るのも面倒で、OKした後で嫌になったらどうしようとも考える。YESかNOかの判断は体力を使う。

そこでYES or NOをA or Bに変える。「打ち合わせの候補日は、この日とこの日ではどちらがご都合よろしいですか」と聞かれれば、NOの選択肢がぼやけ、YESの中で具体的な選択肢を与えられるので、気が楽になり選びやすい。しかも自然にYESの方向を向いている。商品の場合も、「買ってください」では買うか買わないかの判断になるが、「こちらとこちらではどちらがお好きですか」と聞けば、選んだ時点で購入に近づく。

中田はアパレル店員の接客を例に、「今日はアウターをお探しですか、Tシャツですか」「ゆったりめとタイトめならどちらがいいですか」「黒い濃い色味と鮮やかな色味ならどちらが」と比較を重ね、「試着してみます?」へ進む流れを演じる。いきなり「先ほどから拝見していました。意を決して言います。買ってくれませんか」と言う店員はいない。まず相手が何をしに来たのか、何を探しているのかを考え、その中で比較させるのが基本の流れであり、プロは必ずやっていると中田は言う。

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5つのツボ(3)承認と共同

4つ目のツボは承認だ。「いいね」「素晴らしい」「ありがとう」を相手に伝える。人は誰しも認められたいし、感謝されたい。承認してからお願いすると、人は断りにくくなるという。

中田は、上司が部下に企画書を頼む場面で対比を演じる。「君、企画書書いといて」では「なぜ俺なんだ」と反発される。そうではなく、「最近の仕事ぶりは素晴らしい」「前回の企画書を上層部がとても気に入って、今それで進んでいる」「新しいプロジェクトでもみんなが君の名前を挙げる」「社長も君を気に入っている」「急いで書いてくれと言われている。いつならできる?」と伝える。すると部下は、自分が求められている、部署のエースだと感じて引き受ける。思ったことをそのまま口にすると、往々にして人を傷つけるのだと中田は述べる。

5つ目のツボは共同、つまりチーム化だ。子どもや生徒に「前回の点数が悪かっただろう、勉強しなさい」と言うより、「鎌倉時代って面白いらしい、お父さんも興味があるから一緒に勉強しない?」と誘うほうがいい。グラウンドのゴミも「拾っておいて」より「一緒に拾いに行こう」のほうが動きやすい。自分もやるから一緒にやらないかと言われて断れば、断った側が悪者になってしまう、と中田は寸劇で示す。

中田は、5つのツボのどれにも資格や特別な勉強が要らず、今日から使えると強調する。この人は何が好きか、何が嫌いか、比較なら聞いてくれるか、いつもの頑張りを認めたうえで頼もう、皆で頼もう、と考えるだけで人生は変わる。手帳にメモしておき、1日22回のお願いのたびに見直して、今回は「好き」作戦、今回は「承認」作戦と使い分けたり組み合わせたりすれば生活が大きく変わる、というのが本の主張だと紹介する。

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強い言葉を作る5つの技術(1)サプライズとギャップ

ツボの位置が分かったら、次はどう押すか、つまり力のある言葉の作り方である。本はそのための5つの技術を示している。

1つ目はサプライズだ。メールで感嘆符をつけるかどうかで印象が変わるように、言葉の前後に何かを加えるだけで言葉が際立つ。JR東海のキャンペーンを例に、中田は「京都に行け」「京都に行きましょう」「京都に行こう」と並べ、最後に「そうだ 京都、行こう。」を示す。「そうだ」がつくだけで、修学旅行以来行っていない、いつかまた清水寺や金閣寺を見たいと思っていた、ちょうど有休が取れた、という受け手の気持ちに寄り添う言葉になる。本によれば、これが強いのはサプライズワードを使っているからだという。

中田はここに自分で思いついた例を加える。小林製薬のCMの「あっ小林製薬」、伊藤園の「お〜いお茶」、そして「アンパンマン」ではなく「それいけ!アンパンマン」というタイトルだ。呼びかけなどの言葉を頭につけるだけで、ぐっと引きつけられると中田は言う。

2つ目はギャップで、「AではなくBだ」という構文である。例は『踊る大捜査線』の「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」だ。「事件は現場で起きている」だけでは「それで?」となる普通のセリフだが、否定を加えることで、現場を知らないキャリア官僚に指図されず自分の裁量で動くという刑事の気概が伝わる、と中田は解説する。

オバマ元大統領の勝利演説でもこの構文が使われていたという。熱狂する支持者を前に「これは私の勝利ではない」と言うと会場がざわめき、続けて「あなた方の勝利だ」と言うことで、支持者は自分たちの意見が通る政治家が選ばれたのだと感じ、熱狂が生まれる。いきなり「みんなの勝ちだね」と言っても「そうだね」で終わるが、「not A」があることで引きつけられる、と中田は説明する。

作り方は、まず言いたいBを決め、その逆を作ってつなげることだ。「みんなの勝利」が言いたいなら、ポイントは「みんな」で、その逆は「私」だから「私の勝利ではない。あなた方の勝利だ」になる。「現場」が言いたいなら、その逆は「会議室」だから「会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」になる。

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強い言葉を作る5つの技術(2)体の反応、リピート、クライマックス

3つ目の技術は、体の反応を率直に言うことだ。映画のCMで観客が「最高でした」と語る場面を例に、「最高の映画でした」とだけ言うのではなく「もう喉がカラカラ。最高の映画でした」と言えば、叫んだのだろう、飲み物を飲む暇もなかったのだろうと伝わる。「お腹すいた」も「もう何も考えられない。お腹すいた」と言えば切実さが増す。聞き手も人間なので体の反応には共感しやすい。体の反応をイメージさせてから言いたいことを言うと「そんなに?」と思わせられる、という技術である。

4つ目はリピートだ。本によれば、ヒットソングのほとんどは歌詞に繰り返しがあるという。中田は童謡「チューリップ」の「さいたさいた」を挙げ、子どもの頃から繰り返しの歌に耳慣れていると述べる。さらに槇原敬之「どんなときも。」、AKB48「会いたかった」、ゴールデンボンバー「女々しくて」、自身のグループの「PERFECT HUMAN」の「Na-ka-ta」の連呼を挙げ、「女々しくて辛いよ」だけでは伝わらず、三度繰り返すから気持ちいいのだと話す。2度言うだけで伝わり方が変わるという。

5つ目はクライマックス話法だ。「これだけは覚えておいてほしいことなのですが」「ここが最も重要な点なのですが」「ここだけの話なのですが」と前置きして、ここが一番大事だと印を付ける。中田は、YouTube大学でもよく使っているかもしれないと述べる。

中田は、強い言葉はやみくもに作るものではなく、昔からある基本の法則に沿って作られてきたのだとまとめる。3つの手順を踏み、ツボを押さえ、そのツボを強い言葉で押す。これが本の伝えたいことのすべてだという。

44:16

実践:全部の技術を使った「I LOVE YOU」

最後に中田は「勝手に実践」として、5つのツボ(好き、嫌い、比較、承認、共同)と5つの技術(サプライズ、ギャップ、体の反応、リピート、クライマックス)をすべて使った告白の流れを作ってみせる。ビフォーは、会議の後の給湯室の前でいきなり「〇〇さん、デートしてください! 大好きです!」と言うやり方である。

アフターではまず承認から入る。「いつも助けてくれてありがとう。俺の分の企画書まで君が書くことになって申し訳ない。でも君のおかげで仕事がすごくしやすい」。次に共同として「その企画書、一緒に考えさせてくれないかな」と申し出る。続いて嫌いなものを示し、「1人で抱え込んだらストレスになるよ。仕事を押し付けられて会社に来なくなった人もいたし、ストレスは肌荒れや鬱など体の不調に出るらしいから心配だよ」と伝える。そこから好きなものへ移り、「そうだ、気晴らしに好きなものでも食べに行こうよ。奢るよ。イタリアン好きだったよね?」と誘い、最後に比較として「驚くほどうまいパスタの店と、釜焼きの本格ナポリピッツァの店、どっちが好き?」と尋ねる。中田は相手の心の動きも演じる。感謝され、一緒に考えてくれると言われ、1人で抱えることへの不安も和らぎ、大好きなイタリアンを二択で示されて、気づけば「どっちにしようかな」と考えている、という流れだ。

パスタを食べた帰り道が「告白ブロック」である。まず体の反応として「正直、今日パスタの味がしなかったんだよね。〇〇さんと2人で食事してるとドキドキしちゃって」と言う。相手は、あんなに美味しいと言っていたのになぜ、と驚くが、何かに気を取られていると味がしなくなる経験には共感できる。次にギャップとして「俺はパスタが食いたかったんじゃない。君と話がしたかったんだ」と伝える。さらにクライマックス話法で、別れ道の手前で「これだけは伝えておきたいことがあるんだ」と切り出し、サプライズの「そうだ」に続けて、リピートで「君のことが好きなんだ。大好きなんだ」と言う。中田は、給湯室の前で連呼したビフォーの相手が「怖い、TPOがおかしい」と感じるのに対し、アフターでは「ドキドキした、嬉しかった」となると対比し、YESを引き出せる人とNOしかもらえない人の違いの一例として示した。

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慣れれば無意識に使えるようになる

毎回これをやるのは大変だと思うかもしれないが、佐々木は料理と同じだと言っている、と中田は紹介する。最初はレシピを見ながら「みりんは小さじ1杯」「ここは弱火」と確認して作るが、だんだん慣れ、やがて無意識にできるようになる。伝え方も、実践を続けるうちに10の手法を組み合わせ、ギャップからクライマックス、クライマックスからサプライズ、サプライズからリピートへと自然に使えるようになり、その時人生が変わる、というのが本の結論だという。

中田はコピーライターのやり方を学べたことを面白かったと振り返り、最後に自らギャップの構文を使って動画を締めくくった。「俺はこの本の話がしたかったんじゃない。これを見てくれた皆さんの人生が少しでもいいものになればと思ったんだ」。