茂木敏充氏、自民党の再建と「政治とカネ」をどう語ったか:中田敦彦との総裁選対談

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概要

2025年の自民党総裁選に名乗りを上げた茂木敏充氏が、中田敦彦氏との対談に応じた。1年前の総裁選でも同じ番組に出演しており、茂木氏にとっては2回目の出演になる。対談では、物価高対策と成長戦略、連立の枠組み拡大、若手登用、日銀の金融政策、麻生太郎氏との関係、SNS戦略、世襲と参入障壁、政治資金の問題が取り上げられた。中田氏は政策の筋道を確かめる質問を重ね、「国民は自民党の言葉を信頼できなくなっているのではないか」という論点を何度も持ち出した。茂木氏は経済成長で結果を出すことが信頼回復の道だという立場を最後まで崩さなかった。

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「倒産寸前の老舗大企業」での出馬

茂木氏はまず自民党の現状を説明した。昨年の総裁選直後の衆院選で敗れ、続く都議選、参院選でも負けた。結党70年の今年、衆参ともに与党が過半数を割っており、茂木氏はこれを「結党以来最大の危機」と呼ぶ。会社にたとえれば、老舗の大企業の業績が急速に悪化した倒産寸前の状態だという。

中田氏が、倒産寸前の会社の社長になるのは勇気が要るのではないかと尋ねると、茂木氏は、平時なら様々な人が手を挙げるだろうが、危機だからこそ党と政府で積んできた経験をすべて国のために捧げたいと考えて決断したと答えた。国会議員歴は33年で、候補者の中で最も長い。閣僚としては経済産業大臣、経済再生担当大臣(トランプ政権1期目の日米貿易交渉を担当)、外務大臣を務めた。党では選挙対策委員長、政調会長を経て、昨年秋まで3年間幹事長を務めている。中田氏は「役職コンプリート」と評したが、茂木氏は「満を持して」という表現を退け、この状況は誰が総理になっても本当に厳しいと述べた。

現金給付ではなく「生活支援特別地方交付金」

参院選で大きな争点になった物価高対策について、茂木氏は現金給付をしないと表明している。理由として挙げたのは、現金給付が参院選で国民の評価を得られなかったことだ。代わりに打ち出したのが「生活支援特別地方交付金」である。物価高や生活の苦しさは地域ごとに違うため、地方が自由に使える交付金を、これまでより1桁大きい数兆円規模で創設し、速やかに実行するという。

仕組みについては「設計の仕方はある」と前置きしたうえで、一般的な形を説明した。国が各都道府県に交付して基金を作り、市町村が生活支援の事業を申請し、都道府県と相談して交付を受ける。東京都のように財源に余裕がある自治体の扱いは別途考える必要があるとも付け加えた。

使い道の例として茂木氏が挙げたのは三つある。一つ目は、さびれた商店街対策を兼ねて低中所得者にプレミアム付き商品券を配ること。二つ目は、財政難で給食無償化をやりたくてもできない自治体がその足しにすること。三つ目は、市町村が中小企業に発注している印刷や運送などの事業の単価を上げることで、物価高の中で利益が出にくくなっている受注企業を支え、結果的に従業員の給与に回るようにすることだ。地域のニーズを一番知っているのは住民に最も近い自治体だから、自治体の判断に任せるという考え方である。

中田氏は、市町村の裁量が大きいなら、懇意の業者に資金を流したり見返りを求めたりする不正が起きるのではないかと問うた。茂木氏の答えは、使途はすべて公表するので、不正があればきちんと裁かれるというものだ。中央で監視するのは手間がかかるという指摘には、市町村は1700ほどしかないので、一覧で公表すればベストプラクティスも出てくるだろうと応じた。茂木氏自身も「金の延べ棒」を作られては困ると冗談を交え、目的は生活支援と決まっていると強調した。

11:21

財源としての「税収の上振れ」

財源について茂木氏は、ここ数年、税収が当初見積もりを毎年3兆〜5兆円ほど上回っており、少なくともコロナ後は毎年上振れていると説明した。もともと現金給付に充てる予定だった資金を使い、税外収入も活用するという。

中田氏が、上振れは「取られすぎ」の裏返しではないかと問うと、茂木氏は、物価上昇で消費税収が増えたことと、景気が良く企業の利益が伸びて法人税が増えたことを理由に挙げた。利益は大企業も中小企業も伸びているが、特に大企業が大きく、内部留保は600兆円に達しているという。茂木氏はこの内部留保を成長分野への投資に回すことが経済成長にとって重要だと述べた。

物価高対策のもう一つの柱が公定価格の引き上げである。茂木氏は今週保育園を視察し、人材確保に苦労していると聞いたという。介護士、看護師、保育士の報酬は国が基準を決める公定価格で決まっている。国が民間企業に賃上げを要請しているのだから、国が決められる公定価格を上げないのはおかしい、というのが茂木氏の主張だ。公定価格と地方の発注事業を物価連動型にしていく考えを示した。民間の賃上げは5%程度まで進んだが、物価上昇を上回るところまでは来ていない、という現状認識でも二人は一致した。

15:31

成長戦略:貯蓄から投資へ、即時償却

茂木氏は、賃上げを根本的に進めるには成長戦略で日本経済を一段高いレベルに引き上げる必要があると語った。企業は収益がなければ賃上げできない。そこで出発点として挙げたのが成長分野への投資である。個人金融資産は2200兆円あり、国の予算の約20倍にあたる。その半分ほどが預貯金やタンス預金になっている。これを成長分野への投資に振り向ければ、企業収益が高まって継続的な賃上げが可能になる。所得が上がれば消費が増え、市場が広がり、新しい事業が生まれ、そこにまた投資が入る。茂木氏はこの循環を投資から回し始めたいと説明した。現金を給付しても多くは貯金されてしまうだろう、という見方も添えている。

中田氏は、内部留保が過去最大なら企業はすでに還元できる状態ではないかと疑問を示した。茂木氏は、バブル崩壊や不良債権の経験から守りの経営をしてきた企業の意識を「攻めの経営」に変える必要があると答えた。制度面の策として、設備投資やデジタル化のハード・ソフトを何年にもわたって減価償却するのではなく、即時に一括で償却できるようにすると述べた。

中田氏はさらに根本的な疑問をぶつけた。企業は利益を追求する組織で、労働者に還元するインセンティブはもともと持っていない。再分配は税を通じて国家が担う役割であり、国が企業に賃上げを要請するのは国家の仕事を企業に頼んでいるように聞こえる、という指摘である。茂木氏は、経済に占める公共部門の割合は4分の1程度で民間部門が圧倒的に大きいため、民間で利益が上がれば経営者だけでなく従業員、取引先、株主に還元してほしいと答えた。法人増税と消費減税で同じ効果を得られないかという問いには、社会保障など国がやるべき仕事の財源は確保しなければならないとしたうえで、ガソリンの暫定税率廃止のように実行できる減税はやると述べた。

茂木氏は経済の見通しも示した。現在の名目GDPは約610兆円で、自身の政策を進めれば3年後に670兆円、5年後に700兆円を超えるという。増えた税収は国民ニーズの高い分野に追加的に使う考えだ。

アベノミクスとの違い、内部留保とイノベーション

この考え方はアベノミクスと一貫しているのかと問われ、茂木氏は、当時はデフレだったという違いを挙げた。3本の矢のうち、大胆な金融緩和でデフレ脱却がかなり進み、財政出動も実施した。しかし3本目の「民間投資を喚起する成長戦略」は、経産大臣として自ら担当したものの道半ばだったので、今度はそれをやり遂げたいという。今なら実現できる理由として、内部留保と個人金融資産が膨らんでいることに加え、アベノミクス開始当時はあまり語られなかったAI、半導体、データセンター、グリーン産業といった成長分野がはっきり見えてきたことを挙げた。

中田氏は、内部留保が多いのは日本を支えてきた製造業などの旧来企業で、それがどう成長産業に向かうのか想像しにくいと指摘した。茂木氏は、日本を代表する大企業も新規事業やスタートアップとの連携を進めていると答え、経済の新陳代謝が必要だと述べた。日米の比較として、日本の時価総額上位10社はこの20年ほとんど顔ぶれが変わらないが、アメリカではApple、テスラ、Amazonなど、20年前には聞かなかった企業がトップ10のうち6社を占めているという。

中田氏は、アメリカの新興企業は旧来の大企業の新規事業から伸びたわけではないと反論し、「イノベーションのジレンマ」を持ち出した。ガソリン車で優位に立つ大企業がEVや自動運転に大胆に投資できなかったように、大きいからこそ新規事業に踏み出せないことが日本の問題ではないかという指摘だ。茂木氏は、それはスタートアップが参入して事業を伸ばす好機でもあると答えた。スピンアウトの例としてNTTからドコモが生まれたことを挙げ、資金が投資信託経由で新事業に流れる道もあると述べた。巨額の資金が必要な分野については、RapidusやTSMCに国が出資していること、脱炭素(GX)では今後10年で150兆円の投資を目指し、国が脱炭素移行債で20兆円を調達して呼び水にし、民間から130兆円を引き出す手法を取っていることを説明した。

28:06

還元しない企業はどうなるのか

中田氏は、経済が成長しても内部留保がさらに積み上がるだけで、企業が還元しない未来を恐れていると述べた。茂木氏は、今の時代は還元しなければいい人材が集まらないと答えた。終身雇用は戦後に生まれた制度で戦前にはなく、アメリカでは転職が当たり前だという。国はハローワークを通じてデジタルやAIのスキルを身につける講座を730ほど用意しており、補助金で受講料も安く抑えている。

中田氏は、技術者がアメリカや中国に流れているのは、まさに分配が起きていない結果ではないかと切り返した。茂木氏はその側面を認めつつ、放置すれば優秀な人材が海外に出てしまうので、企業は存続のためにも賃上げせざるを得ないと述べた。収益を労働者に還元させるルールを国が作るのかという問いには、最低賃金の引き上げや公定価格の物価連動、規制の見直しを挙げつつ、「還元するルールはない」と認めた。賃上げはもはや常識になっており、賃上げしない会社からは人が出ていく社会が生まれつつある、というのが茂木氏の見方である。

31:34

消費税減税をしない理由と「信頼」の問題

参院選で多くの党が訴えた消費税減税について、茂木氏は完全に否定するわけではないとしたうえで、法律や税制を通し、レジなどのシステムを改修すれば1年以上かかると説明した。物価高は今起きている問題であり、食料品の税率を8%から0%にしても即効性がないという。中田氏が交付金と消費減税を組み合わせれば「最強」ではないかと尋ねると、茂木氏は、減税が実現する頃には物価上昇を上回る賃上げが定着していればよいと述べた。確実にそうなるとは言えないが、おそらくそうなると考えているという。ただし連立協議の中でどうするか考える必要があるとも付け加えた。

茂木氏は具体的な数字で比較してみせた。成長戦略によって実質成長率は毎年1.5%程度、物価上昇を加えた名目賃金は年3.5%程度上がり、3年で1割上がると見込む。平均所得460万円なら50万円以上の増加になる。これに対し、食料品の消費税をゼロにした場合の減税額は4人家族で年約6万5000円、3年間でも20万円に届かない。所得が50万円増え、しかも子どもの世代に借金を先送りしない道とどちらがよいか、という判断だと茂木氏は語った。

中田氏はここで核心だと考える点を示した。賃上げが確実なら前者がよいに決まっているが、国民は政府が賃上げを要請する様子を何年も見てきた。いま失われているのは、自民党の「賃上げをする」という言葉への信頼感ではないか、という指摘である。茂木氏は、安倍政権の頃は労働組合が求めるような賃上げを政府が要請し、3%でも厳しいと言われたが、今は5%を実現していると答えた。物価高への対策を取りながら、物価を上回る賃上げで結果を出すという考えを繰り返した。

36:11

連立の枠組み拡大:なぜ維新と国民民主なのか

賃上げを進めるには政権を安定させる必要がある、と茂木氏は主張する。その具体策は、個別に野党と連携している現状を脱し、連立の枠組みを「拡大」することだ。25年続く自公連立は維持する。そのうえで、参院選は3年先で、衆院選の時期も分からず、選挙をしても自公で過半数を取れる保証はないため、枠組みを広げるという。ただしむやみに広げるのではなく、外交・安全保障、エネルギー政策、憲法という基本政策が一致する政党と組む。その観点から日本維新の会と国民民主党の名前を挙げた。立憲民主党とは喧嘩をしたいわけではなく協力はしてほしいが、連立は難しいという。

お笑い芸人出身の中田氏は、コンビがうまくいかないときに相方を替えるか、トリオにするかという比喩で問いかけた。茂木氏は、芸人なら一人でも事業を広げられるが、政治は議席の定数が決まっており、公明党抜きで別の野党と組むのは数が足りないと説明した。数の問題だけでなく、長年一緒に政権を運営してきた信頼関係もあるという。自民党と公明党の基本理念が違うのではないかという指摘には、違いはあるがマネージできる範囲だと答えた。新たな連立相手とも要求をすり合わせ、優先順位を決めていく。ヨーロッパ大陸の国々はほぼ連立政権で、長い歴史があるとも述べた。

中田氏は、国民は少数与党が野党と協議しながら進める現状を、むしろ好ましく受け止めているのではないかと問題提起した。茂木氏は、消費税は0%がいい、テストはないほうがいいと誰もが思う一方で、社会保障はしっかりやってほしいとも思っていると例を挙げた。国民のニーズには矛盾する部分がある。個別の政策ごとに野党の要求を飲んで切り抜けるやり方は、国民から見れば「これでよかった」と映るかもしれないが、続けていけば国家経営が厳しくなるという。また、連立は自民党の「一強」ではなく、複数の党の最大公約数を生み出して前に進むものだと説明した。

44:46

参政党はなぜ候補に挙がらないのか

中田氏は、話題の参政党の名前が出てこない理由も尋ねた。茂木氏は、参政党や日本保守党など新しい政党は「日本人ファースト」のようなキャッチフレーズは掲げているが、憲法、エネルギー、外交・安全保障についての考えがはっきりしないと答えた。さらに参政党は参院では議席を得たものの衆院にはほとんど議席がなく、組んでも衆参で安定した過半数にはならないという。仮に基本政策が一致したとしても、参政党だけでは「足りない」というより「安定しない」と述べた。

茂木氏は基本政策を重視する理由も語った。「経済で失敗すると政権が倒れる。外交で失敗すると国が傾く」というのが持論で、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。AIの時代には電力を圧倒的に使うため、原発も含めたCO2を出さない電源を多く確保する必要がある。憲法は国の形そのものだという。

維新と国民民主の違いを問われると、詳しく話を聞いたわけではないとしつつ、政策の優先順位が違うのではないかと答えた。維新については副首都構想や社会保障改革、社会保険料の引き下げを挙げた。社会保険料の引き下げは減税ではなく、医療の効率化の結果として実現するものだと説明している。例として、薬局では高い湿布薬などのOTC類似薬が、処方箋をもらえば3割負担や1割負担で安く手に入る仕組みに触れた。ただし、そうした効率化で生まれる財源は限られるとも述べた。

若手の大胆な登用と「結果」の測り方

茂木氏が掲げる「若手の大胆な登用でベストチームを作る」という方針について、前提はまず分裂して見える党を一つにまとめることだと説明した。自民党の強みは人数の多さだけでなく、専門性と特徴を持った人材の幅にあるという。将来の政権を担える若手には、重要な役職で経験を積ませ、いつでもバトンタッチできるようにしたい。小泉進次郎氏と小林鷹之氏の名前を挙げたのは、今回の候補5人のうち若手の2人だからで、ほかにも優れた若手は大勢いると述べた。

経産大臣や外務大臣にも若手を起用するのかと問われ、茂木氏は「はい」と答えた。外交で失敗すれば国が傾くと言ったばかりで大丈夫なのかという指摘には、外交は基本的に首脳が行うもので、トランプ大統領と会うのも外務大臣ではなく総理だと説明した。「若手」の範囲としては、当選1回で1年しか経っていない議員は早すぎるが、3期や4期でも十分務まる人はいるという。茂木氏自身、初入閣は3期目だった。閣僚の平均年齢は現在60代だが、少なくとも10歳ほど若返らせ、40代の起用もあり得ると述べた。重視するのは、これまでの常識にとらわれない発想と改革マインド、そして実行力だという。

結果の目標について、茂木氏は数字で測れるものと測れないものがあると述べた。成長率や賃上げは数字で出るが、外交での日本の存在感を指標にするのは難しい。中田氏は、自民党は株価や内部留保といった経済の数値目標は達成してきたが、生活実感が厳しいことが逆風になっていると指摘し、生活実感を測る指標を求めた。茂木氏は名目賃金を挙げ、年3.5%の上昇、3年で1割増を達成すれば結果を出したと言えると答えた。物価上昇率はおおむね2%を想定しており、現在は2%を少し超える程度だという。

物価上昇の原因と日銀の金融政策

物価上昇の主な原因について、茂木氏は輸入品の値上がりを挙げた。石油や天然ガスは国内で採れず、国内で作っていない製品や部品、肥料も輸入している。肥料が高くなれば農産物や畜産物の価格も上がる。単価上昇の理由としては、為替レートの影響と、ウクライナ危機による食料・エネルギーの供給問題を挙げた。

中田氏は、ウクライナ危機もコロナも世界共通の問題であり、日本が特に苦しんでいるのは円安が原因ではないかと問うた。茂木氏は、望ましいレートは輸出業者と輸入業者で逆になると答え、過度な円安も円高もよくない、適切な水準で安定していることが経営の見通しを立てるうえで望ましいと述べた。1ドル110円前後から150円前後の水準に移って安定し、輸出企業には好都合でも家計には厳しいのではないかという指摘に対しては、家計の稼ぎ手が輸出関連の事業で働いていればマイナスではないと答えた。儲かっている会社は賃上げしているという。アメリカでは外食のランチが日本円で3000円かかることを例に、日本のほうがまだ安いとも述べた。

中田氏は、アメリカの物価上昇は好景気によるデマンドプル型で、日本は円安を起点とするコストプッシュ型であり、性質が違うと指摘した。茂木氏はこの区別を認め、望ましいのはデマンドプル型の2%程度の物価上昇だと述べた。軽度のスタグフレーションのような現状に対して経済成長で刺激する治療法は合っているのかという問いには、合っていると答えた。詳しく説明すると経済学の授業1時間分になると言いつつ、「15秒で」と求められると、家計を豊かにする賃上げで消費が増え、市場が拡大する循環を回すことだと要約した。

金融政策は日銀が担い、為替は基本的に市場に委ねたうえで、過度な円安には財務省が為替介入を行うと整理した。これまでの異次元の金融緩和はデフレ脱却という目的をほぼ達しつつあり、日本は正常な状態に戻していく過程にあるという。金利を上げていくことになるが、景気動向を見ながら慎重に進める必要がある。一方で茂木氏は、アメリカのFRBが0.25%の利下げを行い、年内にあと2回は下げるだろうと見通しを述べた。そうなれば日米の金利差が縮まり、円高ドル安の方向に向かうという見立てである。

1:08:12

自民党離れの原因と「キングメーカー」麻生太郎

中田氏は、自民党離れの本当の原因をどう分析しているのかを尋ねた。茂木氏は二つを挙げた。一つは、自民党に任せればしっかりやってくれるという「頼もしさ」が薄れ、特に保守層が離れたこと。もう一つは若者の支持の急落である。以前の自民党は20代・30代の支持が高く、40代・50代で下がり、60代以上で再び上がる傾向だったが、若い世代の支持がガクンと下がったという。茂木氏は、103万円の壁や手取り増を訴えた国民民主党が若者の支持を得ていると分析した。かつて自民党は、茂木氏自身が大臣時代に進めた幼児教育・保育の無償化のように、他党に先んじて若者世代に訴える政策を打ってきたが、それが止まってしまったという。

中田氏は話題を「キングメーカー」に移した。ニュースを見るたびに、自民党では「キング」の上に「メーカー」がいて、凛々しい表情の麻生太郎氏が映る。若者が意見を言える場所なのかと気圧される、という指摘だ。茂木氏は、安倍政権の時にも麻生氏はいて、当時から変わっていないと答えた。いま起きているのは、立憲民主党も含めた既存政党全体が既存の政治と見なされ、新しいものが求められている現象だという。将棋の道具でも新しいものが出れば手に取りたくなるのと同じだとたとえた。加えて価値観の多様化があり、国民民主党は参院で10議席に満たなかったのが30近くまで増えた。それでも自民党はまだ100議席あるとし、今後は多党化の時代が続くだろうと述べた。

キングメーカーの起源を問われ、茂木氏は「三角大福中」と呼ばれた派閥政治の頃が最盛期だったと答えた。中田氏が、派閥解消の流れの中で麻生派だけが残っている存在感を強調すると、茂木氏は麻生氏との関係を語った。安倍内閣では答弁席も議場の席も隣同士で、岸田政権では麻生副総裁と茂木幹事長として昨年秋まで共に働き、信頼関係があるという。前回の総裁選でなぜ茂木氏を推さなかったのかと迫られても、いろいろな意味で協力してもらったと述べ、「それはないじゃないか」とはまったく思わなかったと答えた。選挙は「勝ったらみんなのおかげ、負けたら自分のせい」だという。今回の支援についても、まず党員の支持がないと始まらない、票の半分は党員票だと強調した。

麻生氏との面会で「頑張れよ」と言われたという報道について、中田氏はそれだけのはずがないともう少し明かすよう求めた。茂木氏は、政策も含めて話はしているが、個人の関係なので一部の切り取りになると述べるにとどめた。焦燥感はまったく感じず、話していていつも楽しいという。党の危機を変えなければならないという思いは共有していると述べた。菅義偉氏とも時々会っており、テレビカメラがついてくるのがたまたま麻生氏のところだけだという。「詣でる」という表現は違うとし、先輩には敬意を払って自分から伺うものだと説明した。また、政権の中枢を外れたこの1年は、SNSに取り組んだり、若手議員や若手経営者と食事をしたり、視察に行ったりできた貴重な時間だったとも振り返った。

「圧倒的に弱い」党のSNS発信と総裁選の見せ方

自民党のSNSについて、茂木氏は「随分」ではなく「圧倒的に」弱いと認めた。党としての発信は従来型から変わっておらず、当たり前のことしか言っていない。「自民党はこの1年でこれをやりました」と羅列されても誰も見たくない、というのが茂木氏の見方だ。自身については、エッジを狙うのではなく色々試していると話した。TikTokでは自信作があまり再生されない一方、大したことのないクイズ動画が100万回再生されたりするという。中田氏は、岸田文雄氏が「今日のふみお」でいじられていることや、高市早苗氏のYouTubeにも触れ、YouTubeをやっていそうな若手より年長の議員が力を入れているちぐはぐさを指摘した。茂木氏は、SNSを活用する議員の割合はまだ少ないだろうと述べた。

対策として茂木氏は組織改革を挙げた。現在の広報本部長は党七役には入っているが党四役ではない。これを四役と同格に格上げし、名称も見直したうえで、30代・40代の感覚を持つ人を本部長に据え、外部の力も借りるという案だ。対面の対話は大事だが、特に若い世代に届くにはSNSが有効だと述べた。

中田氏は、先の参院選で自民党から立候補して落選した弟の経験として、党がいまだにFAXや紙を多く使っていると聞いて衝撃を受けたと話した。茂木氏は、今は書類をなくしてノートパソコンでやるようにしており、紙は圧倒的に減っていると答えた。中田氏はさらに、総裁選の紙による投票、特に決選投票で同じ光景が数十分続き、ネット中継で見ていると疲れてしまうと訴え、295票程度なら電子化できないかと提案した。茂木氏は、国会でもできていない部分があり、政治全体のデジタル化が必要だと述べた。時間が長いことは認め、予選から決勝へと盛り上がっていく世界陸上とは逆だと応じたが、どう面白くするかについて即答はしなかった。

世襲と参入障壁、国会議員のお金

中田氏は政界への新規参入の難しさを取り上げた。600万円の供託金、都内だけで1万4000カ所あるポスター掲示場など、お金と組織がなければ立候補すら難しい。公職選挙法も何が違反になるか分かりにくい。だから自民党には世襲議員が多いという印象がある、という問題提起だ。茂木氏は、かつての「地盤・看板・カバン」から変わってきた面もあると述べ、チームみらいの安野貴博氏がそれほどお金をかけずに選挙を戦ったことを例に挙げた。中田氏は、安野氏ほどの人でなければ風穴は開けられず、その安野氏自身もお金と組織がないと厳しいと言っていると返した。自民党は人材が豊富でも種類は少なく、茂木氏や小林氏のようなエリートか世襲の議員ばかりに見えるという。茂木氏は自分は「田舎の分校」出身だと答えた。

中田氏は、チームみらいが開発中の政治資金を可視化するソフト「みらい まる見え政治資金」の導入についても尋ねた。茂木氏は仕組みを知らないとしつつ、政治資金の透明化は進めるべきで、悪いことではないと答えた。

続いて中田氏は、調査研究広報滞在費(月100万円)、政治団体を子に相続税なしで引き継げる仕組み、議席を持つ政党に多く配分される政党助成金などを挙げ、すでに議席を持つ人に有利なルールが2世・3世を生んでいるのではないかと指摘した。茂木氏は、調査研究広報滞在費は公開することにしたと述べた。イギリスには親と同じ選挙区から出られない制度があると紹介し、自民党も公募を行い、自身の幹事長時代には女性限定の公募も実施したと説明した。ただ、理想にはまだ遠く、1万メートルのうち1000メートルも進んでいない状態だと認めた。自身の息子については、建築の大学院に通っていて建築家を目指しており、継がせるつもりはないと語った。息子には政治家は「絶対コスパ悪いよ」と言っているという。

番組はここで補足解説を挟んだ。番組の説明によれば、国会議員の課税対象の報酬は年約2000万円で、そのほかに非課税の経費として調査研究広報滞在費が年1200万円(2025年から領収書提出が義務化されたが自動公開はなく、範囲も曖昧で罰則もない)、立法事務費が年780万円(会派を通じて配られ、公開義務はない)ある。番組はこれらを合わせ、手取り換算で議員1人あたり年6000万円規模になると試算し、透明化ルールが不十分なことが政治不信を強めていると解説した。

茂木氏は、大企業の役員やベンチャー経営者と比べれば議員の収入は圧倒的に低いと反論した。事務所を借りて秘書を雇い、支援者を回っても、商品を売るわけではないので収入にはならないという。政党助成金は選挙には使えず、党の日常の運営費などに充てていると説明した。1人あたりで配分されるので、職員の多い自民党が大きいから得だというわけではないとも述べた。中田氏は、優秀な人が官僚や政治家になりたがるよう印象を良くすべきだと提案した。茂木氏は、官僚のなり手は財務省に限らず減っていると答え、官僚も政治家も「ボコボコにされている」と述べた。

不記載問題と政治資金パーティー

中田氏は、真っ当なことをしているのにイメージが悪いのなら分かるが、不記載問題があったうえでイメージが悪いのは話が違うと迫った。茂木氏は、ああいうことはあってはならず、二度と起こさないようにすると述べた。そのうえで、不記載は自民党全体や党組織が行ったものではなく、一部の派閥の問題であり、自身のグループは収入も支出もすべて記載していて家宅捜索も受けていないと説明した。

政治資金パーティーそのものが国民に受け入れられているのかという問いには、政治活動には資金が必要で、パーティーやセミナーは資金調達の一手段であり、海外にもあると答えた。アメリカではスーパーPACを通じて1人の政治家に毎日1億円ずつ寄付するようなことも起こるという。中田氏は、問題はパーティーの有無ではなく、一定額以下なら購入者を記載しなくてよいルールのもとで、企業が小分けにしてパーティー券を買い、グレーな関係を作ってきたことだと指摘した。

番組は再び補足解説を入れ、政治資金規正法では年間5万円以下の寄付や1回20万円以下のパーティー券購入について氏名の記載が不要とされてきたと説明した。悪用例として西松建設事件を挙げ、ダミーの政治団体を使って企業資金を社員名義に分散し、実質的な企業献金を隠していた事件で、約6500万円が虚偽処理だったと報じられたと紹介した。番組は、匿名の禁止や報告義務の強化といった抜本改革が不可欠だとの見解を示した。

茂木氏は、イギリスでは公開基準が日本円で60万円以上であり、日本は5万円になったと述べ、イギリスのほうが見えにくいと説明した。中田氏は「隣の家の窓のほうが大きく開いているから、うちには泥棒が入らない」というのと同じで、問題は窓がどれだけ開いているかではなく開いていること自体だと返した。茂木氏は、イギリスがやっているから良いと言っているわけではないと答え、政治改革に終わりはなく、これが自民党の「負の遺産」であることは確かだと認めた。そのうえで、結果を出すことで「この党に任せていい」と思える新しい自民党を作りたいと述べた。

中田氏は、ミスを指摘されているのに成果を伸ばすと言うのは、浮気を責められた夫が「給料を上げる」と言っているように聞こえると指摘した。茂木氏は、マイナス部分はなくさなければならないが、悪いことはしないが良いこともせず経済も良くできない、というのも違うと応じた。再発防止策としては、秘書がやったことでも監督責任で政治家が罪に問われる仕組みを作り、透明性を高めたと説明した。5万円の「窓」については、パーティーは献金ではなく事業であり、献金はすでに1万円以上が公開対象だと述べた。中田氏がイベントの体裁を取った献金ではないかという指摘こそが問題だと返すと、茂木氏は「おっしゃってる意味分かります」と応じた。さらに茂木氏は、他党を責めるつもりはないとしつつ、労働組合の活動はまったく表に出ないブラックボックスだと指摘し、政党の資金も含めて各所で改善が必要だと述べた。

「チャレンジャーのつもりで」

最後に、世間で「2強」と言われる中でどう巻き返すのかを問われ、茂木氏はチャレンジャーのつもりで頑張ると答えた。候補者はライバルではなく、それぞれが政策を訴えて共感を得て、最後はワンチームになることが重要だという。前回の対談では総理にならなくてもまた出演すると約束していたが、今回はその言葉がない。それは総理になるつもりだからかと中田氏が尋ねると、茂木氏は「それはやってみないとわからない」と答え、対談を締めくくった。