次期SINETへの移行で、データセンタ接続冗長化サービスはどう変わるか

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概要

国立情報学研究所 学術ネットワーク研究開発センター長の栗本崇氏は、学術情報基盤オープンフォーラム2026で、加入機関向けに「データセンタ接続冗長化サービス」の移行方針を説明した。論点は二つある。一つは、SINET6から次期SINETへ移行するときに、現在のアクト・スタンバイ型の冗長構成をどう引き継ぐか。もう一つは、移行が落ち着いた後に提供を予定しているアクト・アクト型の「ルータ冗長化サービス」である。栗本氏は、移行時に機関側の設定変更は不要にできる見込みだとし、アクト・アクト型への切り替えは希望する機関から順に受け付けるという方針を示した。

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現行のデータセンタ接続冗長化サービスの仕組み

栗本氏はまず、このサービスの中身を説明した。研究機関は2本のアクセス回線を用意する。1本目は、SINETのデータセンター(スライドでは「SINET DC1」)に設置されたルーターに直接つなぐ。2本目も同じDC1に引き込むが、接続先はルーターではなく「回線多重装置」と呼ぶ別の装置である。この回線は回線多重装置から別ルートで、もう一つのデータセンター(DC2)にあるルーターへ届く。

この構成なら、DC1のルーターが障害で通信できなくなっても、DC2のルーターは動いているので、2本目の回線を使って通信を続けられる。栗本氏は、2本目を「バックアップ回線」と呼ぶ理由として、サービスがアクト・スタンバイ構成で提供されている点を挙げた。平常時はDC1側のアクセス回線だけに通信を流し、DC2側の回線は休んでいる。アクセス回線の切断やルーターの故障が起きたときに、バックアップ回線が「目を覚まして」DC2のルーター経由で通信を引き継ぐ。

SINET6におけるL2VPNの内部構成

続いて栗本氏は、同じ構成を上から見下ろした図で、SINET6の内部の動きを説明した。大学などの拠点(キャンパスX)に置かれたL2スイッチなどのネットワーク機器から、アクト系とスタンバイ系の2本のアクセス回線を最寄りのデータセンターまで引く。アクト系はそのデータセンターのルーターAに接続し、スタンバイ系は回線多重装置に接続する。

SINET6の中では、ルーターAでVPN機能を動かす。スタンバイ系のアクセス回線は別拠点のルーターBまで延ばされ、ルーターBでもVPN機能を動かす。さらに、接続先のキャンパスY側にある第3拠点のルーターCでもVPN機能を動かす。この3台を連携させて仮想的なL2スイッチを作り、キャンパスXとキャンパスYをつなぐ。栗本氏によれば、これがアクト・スタンバイの回線を使ったL2VPNサービスの現在の利用形態である。

次期SINETでの構成:最寄りデータセンターにルーター2台

次期SINETへL2VPNサービスを移行するときの構成についても説明があった。次期SINETはSINET6とは別に新しく構築し、各機関のアクセス回線をSINET6から次期SINETへ順次、物理的に切り替えていく。

新しい構成では、最寄りのデータセンターにルーターを2台設置する計画だという。アクト回線は一方のルーター(スライドでは「ルーターA1」)につなぎ、スタンバイ回線は回線多重装置ではなく、同じデータセンターにあるもう一方のルーター「A2」につなぎ替える。ルーターA1とA2にはそれぞれSINET6のときと同じようにVPN機能を作り、キャンパスY側のルーターCのVPN機能と合わせて三角形(トライアングル)を構成する。その中に仮想的なL2スイッチを作ることで、次期SINETでもこれまでと同じ形でL2VPNを利用できるようにする計画だ。

機関側の設定変更は不要になる見込み

移行にあたって機関側の設定を変える必要があるかについて、栗本氏は変更不要にできると考えていると述べた。SINET6での現在の設定条件を次期SINETにもコピーして使い、アクト・スタンバイの利用形態のまま物理的に接続を切り替える。そうすれば、機関側は設定を変えずにこれまでと同じ形で利用を続けられる、というのが栗本氏の見通しである。発言は「させていただければ」から「させていただけるかな」と言い直しており、確定ではなく見込みとして語られている。

次期SINET開始後のアクト・アクト型ルータ冗長化サービス

ここまでが移行時の話で、栗本氏はその後の拡張として、アクト・アクト型のVPNを使える「ルータ冗長化サービス」を予定していると説明した。提供開始は2028年度の第3四半期を予定している。次期SINETの運用が始まり、状況が落ち着いた時期を見計らって提供を始めるという。

LAG回線利用者の移行の扱い

栗本氏は、現在の利用形態を「LAG回線」と「データセンタ接続冗長化サービス」の二つに分けて、それぞれの移行経路を説明した。

LAG回線は、データセンターにある同じルーターに2本のアクセス回線をつなぎ、LAGとして束ねて使う形態である。次期SINETでの構成図では同じ拠点にルーターが2台あるが、LAGの利用者は2本とも同じルーターにつないだまま移行してもらう。つまり次期SINETへの移行時点では、LAG回線はLAG回線のまま引き継ぐ。移行の時期として、栗本氏は2028年1月から3月の期間に触れている。

データセンタ接続冗長化サービスの利用者は、アクト・スタンバイの2本の回線をルーターA1とA2にそれぞれつなぎ替えて移行する。ルーターは2台に分かれるが、利用形態はアクト・スタンバイのままである。

アクト・アクト型への移行は希望者から順に

2028年度第3四半期頃にアクト・アクト型の準備が整った後は、希望する機関から順にルータ冗長化サービス(アクト・アクト型)への移行を受け付ける。栗本氏は例として、LAG回線の利用者のうち、接続するルーターを分けたいという要望がある機関を挙げた。LAG回線の利用者もアクト・スタンバイ型の利用者も、この段階でアクト・アクト型に移行できる。

一方で、アクト・アクト型への移行は必須ではない。現行のLAGサービスやアクト・スタンバイ型をそのまま使い続けることも可能だと栗本氏は明言した。

アクト・アクト型で何が変わるか

アクト・アクト型のサービスについて、栗本氏は先の構成と比べて説明した。2本の回線を常時両方とも通信に使い、ユーザー側からは2つの回線に負荷分散して送信でき、ネットワーク側からも同様に2つの回線に負荷分散して通信できる。障害時はどちらか一方に寄せる「片寄せ」になる。平常時はより多くの帯域を使え、障害時は片寄せで通信を続けられる、という使い方ができると栗本氏は考えている。

栗本氏は提供時期が2028年度第3四半期頃と遅くなることを詫びたうえで、次期SINETへの移行後に要望を出してアクト・アクト型に切り替えることも検討してほしいと加入機関に呼びかけ、説明を終えた。