学認LMSの現状と今後:共通教材、シングルサインオン、機関限定コースの共有

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概要

国立情報学研究所(NII)の古川雅子氏は、学術情報基盤オープンフォーラム2026で学認LMSの最新アップデートと今後の展開を紹介した。学認LMSは、大学がそれぞれ個別に抱えてきた研修教材とLMS運用の負担を、全国規模でどこまで共有できるかという課題に取り組んでいる。古川氏は、利用機関の拡大状況、サービスの3つの特徴、ラーニングアナリティクスとマイクロコンテンツ教材の機能更新、情報セキュリティ講座と研究データ管理講座の改訂を順に説明した。

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利用機関は157に到達

古川氏によると、学認LMSの利用機関数は2026年6月時点で157に達した。この数字は、先に登壇した藤原先生も触れていた。古川氏は、学認に加入している機関がすべて学認LMSを使える状態まで広げたいとし、学認に加入していながら学認LMSをまだ利用していない大学に利用申請の検討を呼びかけた。

3つの課題への取り組み

古川氏は、学認LMSの特徴を3つの課題への対応として整理した。

1つ目は、全大学が学ぶべき内容について共通の教材がないという課題である。学認LMSは信頼できる協力機関と共同で教材を作り、提供している。具体的には、情報セキュリティ講座と研究データ管理講座にそれぞれ教材作成のタスクフォースのような体制があり、そこで作った教材をNIIが提供する。

2つ目は、IDとパスワードの管理である。eラーニング研修が大学に普及した結果、さまざまなサイトごとにIDとパスワードを管理する状況が生まれている。学認LMSは学認を使っているため、学内で学認を利用していれば、大学のログイン用IDとパスワードでそのまま利用できる。古川氏は、これによってID管理がまとめられる点を2つ目の特徴に挙げた。

3つ目は、国全体で見たときのコストの重複である。各大学にLMSが普及した結果、大学ごとに複数のLMSを管理・運用するコストが重複している。古川氏は、国全体でまとめられる部分、たとえば教材を一括提供できる部分があるのではないかと述べた。そこで浮いたコストを、ラーニングアナリティクス機能や教材のカスタマイズ・共有といった教育支援の高度化に振り向けられないか試している。そのために学認LMSはマルチテナント方式を採用しており、複数の大学が同じLMSにアクセスする。アクセスが集中したときの対応やLMSの保守はNII側が担う。

オプション機能:受講者管理から教材作成まで

学認LMSは、オプション機能として各大学が自校の受講者を管理する機能を提供している。テスト運用中の機能もあり、古川氏は次のものを挙げた。

  • 自機関限定コースの作成と、良いコースができた場合の他機関との共有
  • 受講ログのラーニングアナリティクスによる分析・可視化
  • 学認LMSが提供する教材を自機関限定コース向けに編集して使うマイクロコンテンツ教材作成機能
  • 大学が自ら教材を作れる合成音声ビデオ作成システム

講演時間が残り10分程度だったため、古川氏はこれらの詳細を省略し、配布資料で確認するよう求めた。

ラーニングアナリティクスとマイクロコンテンツ教材の更新

ラーニングアナリティクス機能は、各大学が安全に使えるように設計されている。古川氏は、ある大学が良い分析方法を見つけた場合、他の大学が自校のデータに切り替えて同じ可視化を行えれば、非常に低コストな共有になると考えている。そのため、こうした使い方を試してほしいと述べた。

マイクロコンテンツ教材作成機能は、短い動画を組み合わせて1つのeBookを作る機能である。これまではブック単位でしか指定できなかったが、今回の更新で、ブック内のトピック、つまり個々の動画を単位として指定できるようになった。

情報セキュリティ講座:新コースの開設と旧コースの非表示予定

情報セキュリティ講座では、2026年4月に新しいコースを開設し、今後はこちらを使う形になる。新コースにはコンテンツの追加がある。

先頭に「アーカイブ」と付いた旧コースは提供を終えているが、各大学がログデータなどを取得できるよう猶予期間を設けている。古川氏によると、ほぼ1年後をめどに非表示にする予定である。ログを取得して学内で保存しておきたい大学には、早めに整理するよう求めた。

研究データ管理講座:機関限定コース作成の支援教材

研究データ管理講座については、藤原先生が説明した解析機能に関する教材に加え、自機関限定コースの作成を支援する教材を公開に向けて準備している。古川氏は、各大学に自機関限定コースを作ってもらい、良い教材ができたらそれを共有してもらうことが狙いだと説明した。

この支援教材は、マイクロコンテンツ教材システムの使い方にとどまらない。インストラクショナルデザインのような教材の作り方も扱う。共有を前提にするため、著作権やクリエイティブ・コモンズに関する内容も含める。実際に自機関限定コースを作るワークショップも年内に企画しており、古川氏はユーザーサポートサイトでの告知に注目してほしいと述べた。

あわせて、JPCOARの教材の改訂も昨年度に準備を終えた。改訂箇所がまとまり次第、差し替えの形で公開する予定である。

マイクロコンテンツの意義と今後の課題

古川氏によると、研究データ管理講座の特徴はマイクロコンテンツにある。教材を自由に組み合わせられるため、研究データ管理を支援する人材が、所属部署に必要な内容を選んで学べる。また、時間がない中でも学べるよう短時間の教材にしている。古川氏は、この方針によって、兼務の担当者を抱える各部署がまず体制を作る段階を支援できたのではないかと振り返った。

一方で、古川氏は教材の数がまだ少ないことを認めた。教材を増やすことに加え、学習の最適化やレコメンドにも取り組む必要がある。今後はAIなどを使って何かできないか検討していると述べた。

ロゴに込めた意味

最後に古川氏は、学認LMSのロゴマークの意味を紹介した。この説明はユーザーサポートサイトにも掲載している。ロゴは、羽ばたくイメージや未来への扉のような未来感を表している。さらに、さまざまな大学が交差して利用する場というイメージもある。また、ロゴを立体的にとらえて上から見ると、Lの字が背中合わせになっており、「ラーニング」の意味も込めている。

古川氏は、こうしたイメージは伝わりにくいと認めた。そのうえで、学認LMSを、利用者が一緒に参加し、考え、より良いものにしていく交差点のようなシステムにしたいと述べて講演を締めくくった。