NII-DEERのビジョン:紙と電子を統合した発見環境と管理環境をどう実現するか

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概要

学術情報基盤オープンフォーラム2026で、これからの学術情報システム構築検討委員会委員でシステムワークフロー検討作業部会主査の飯野勝則氏(国立情報学研究所 知識コンテンツ科学研究センター 特任研究員)は「NII-DEERのビジョン」と題して講演した。サブタイトルは「利用者と図書館の課題解決に向けて」である。飯野氏は、NII-DEERがどのような位置づけでシステムとして作られてきたのかを説明した。そのうえで、利用者向けの発見環境と図書館向けの管理環境の両面について、すでに実現している機能と今後目指す機能を示した。

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図書館システムネットワークの中でのNII-DEERの位置づけ

飯野氏はまず、国立情報学研究所(NII)が構築している図書館向けの各種システムを包括的に示した「図書館システムネットワーク」の図を提示した。この図は、紙の資料についてすでにあるものと同様の発見環境と管理環境の基盤を、電子資料についても作っていくという考え方を具体化したものだと捉えられる、と飯野氏は説明した。

「紙と電子の統合的発見環境の実現」は、これからの学術情報システム構築検討委員会が長く目標としてきたものだという。

利用者向け:紙と電子の統合的発見環境のイメージ

では、その統合的発見環境を具体的にどう実現するのか。飯野氏は一つのイメージとして、「小説みたいに楽しく…生命科学講義」という書籍を検索した場合の画面例を示した。

この画面では、検索結果に冊子体の所蔵館と電子ブックの所蔵館がそれぞれタブとして表示される。電子ブックの所蔵館については、各館の実情を踏まえたILLや学外者利用に関する電子ブックのライセンス情報も一括で表示される。飯野氏は、利用者にとって使いやすい電子ブックの検索環境を、紙の資料と同じような画面で実現することがおそらく必要になると述べ、これを目標の一つに据えていると説明した。

図書館向け:統合的管理環境と書誌レコード連携の現状

利用者向けの発見環境に対して、図書館向けには「統合的管理環境」も考えていきたいと飯野氏は述べた。その一例として、図書館システムと電子ブックの書誌レコードの連携がどこまで進んでいるかを紹介した。

示されたのは、NII-DEERの中で電子ブックを扱うサブシステムの画面である。「グローバルヒストリーと帝国」という図書を検索すると、3つのベンダープラットフォームからの書誌が並んで検索できる。現在、この3ベンダーの書誌レコードをそれぞれAPIで選択的にダウンロードできる環境はすでに実現しているという。飯野氏は、図書館システムベンダーの協力を得て各種システムにこうした書誌データを取り込むうえで、活用の余地が大きいシステムになっているのではないかと評価した。

今後は、よりCAT的な連携ができるよう、図書館システムから電子ブックの所蔵登録ができる機能の実装も視野に入れたいとしている。

まだできていないこと:一括ダウンロードと一括所蔵登録

未実現の機能として、飯野氏は書誌レコードの一括ダウンロードと所蔵登録の仕組みを挙げた。これは、OPACに電子ブックの書誌レコードを一括で取り込めるよう、パッケージ単位などで書誌レコードをまとめてダウンロードできる機能である。飯野氏によれば、この機能は講演に先立って紹介されたアンケートでも実現が強く望まれていたものだという。

あわせて、各図書館の希望に応じて、NII-DEERに電子ブックの所蔵とライセンスを一括登録できる機能の実装も目指している。具体的には、Excelファイルを作成してアップロードする方式を想定しており、こうした形で実現できればよいと考えていると飯野氏は述べた。

書店の発注システムとの連携

もう一つの構想が、書店の発注システムとの連携である。書店の発注システムで電子ブックを購入すると、NII-DEERの書誌レコードが図書館システムやOPACにそのままダウンロードされ、同時にNII-DEERへの所蔵登録も行われる。飯野氏は、このような仕組みが実装できれば電子ブックの購入フローは格段に楽になるとし、実現に向けて書店側に働きかけていきたいと語った。

海外電子ブックの書誌レコード収集

現実的な課題として、飯野氏は電子ブックの種類の多さにも触れた。現在、NII-DEERの電子ブック関連サブシステムに入っているのは、ほとんどが日本国内の電子ブックベンダーのプラットフォームのものである。今後は海外の電子ブックの書誌レコード収集も視野に入れたいという。

飯野氏によれば、海外の電子ブックにはILLでの文献複写を許容するものも多い。そのため、書誌レコードをライセンス情報と組み合わせることで活用価値がより高まると考えている。現在2社程度と合意に向けた活動を進めており、いずれこれらの書誌も入ってくるのではないかとの見通しを示した。

段階的・継続的な拡充という将来像

飯野氏は最後に、これらの対応が実現すれば、利用者向けの統合的発見環境と図書館向けの統合的管理環境が段階的かつ継続的に拡充されていくと述べた。そして、これを一つのビジョンとして、NII-DEERの将来像に位置づけられればよいと考えていると締めくくった。