NII-DEERは現場でどう使われ、何が期待されているか:利用館・非利用館の6人が語った実務と課題

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概要

学術情報基盤オープンフォーラム2026のパネルディスカッションでは、国立情報学研究所(NII)が提供する電子リソースのデータ群「NII-DEER」(License-JUSTICE、Title-JUSTICE、Bibdata-Ebook)を取り上げた。テーマは「NII-DEERをめぐる期待と課題」である。司会は、NII-DEER見直しのために設置された検討グループで主査を務める大阪公立大学の中村健氏。登壇者は、APIで図書館システムにデータを取り込んでいる館、APIは使わず画面で参照している館、ほとんど使っていないが期待はしている館の担当者である。

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冒頭、会場から「非利用館とはJUSTICE参加館でもDEERを使っていない館を指すのか、JUSTICE非参加で使えない館を指すのか」という質問が寄せられた。運営側は、JUSTICEに参加しているかどうかは問わず、DEERを実際に使っているかどうかで区別していると答えた。

新潟大学:Bibdata-Ebookを選書と重複確認に使う

新潟大学の瀬高花生里氏は、ふだん冊子体図書の受入や目録を担当している。報告したのはAPI連携ではなく、個人として業務の中でBibdata-Ebookをどう使っているかという事例である。

1つ目は、電子ブックが存在するかとベンダーの確認だ。複数キャンパスでの利用が見込まれる本や、冊子体だと禁帯出になりそうな事典・辞書類は、電子ブックで買った方が使われると判断している。その場合、以前は各ベンダーのサイトやカタログのPDFを1つずつ開いて電子版があるか確かめており、大変だったという。現在はBibdata-Ebookで検索すれば済む。瀬高氏が挙げた利点は、電子版の有無をまとめて確認できることに加え、ベンダーごとにレコードが表示される点である。これで、自館に購入実績のあるベンダーはどこか、複数ある場合はどれが同時アクセス数や学外アクセスの条件で有利かを一度に判断できる。

2つ目はCiNii Booksでの事例である。当時の新潟大学では、買い切りの電子ブックはOPACに、年間購読の電子ブックは電子リソース検索サービスに登録していた。寄贈図書を受け取ったとき、瀬高氏はOPACで重複がないことを確認し、寄贈受入リストを作ろうとした。書誌情報を確かめるためにCiNii Booksで検索したところ、自館が購入しているベンダーのリンクが表示された。クリックすると電子ブックを実際に閲覧でき、年間購読で契約済みだったことが判明した。自館のシステムでは2つの検索が必要なところを、Bibdata-Ebookのデータが表示されているCiNii Booksでは一度で確認できたため、当時は非常に助かったという。なお、現在は運用が変わったので、同じことは起きなくなっている。

期待としては、冊子体の所蔵レコードがない電子資料もCiNii Booksでまとめて探せるようになることと、洋書の充実を挙げた。

筑波大学:リンクリゾルバとLicense-JUSTICEを組み合わせてOPACに利用条件を表示

筑波大学の西彩花氏は電子リソース担当で、電子ジャーナルやデータベースの契約・調達を担っている。報告テーマはLicense-JUSTICEとOPACの連携である。

筑波大学の図書館システムはリコー製のLIMEDIOで、ディスカバリーとリンクリゾルバにはEx LibrisのSummonと360 Linkを使っている。2024年3月から、図書館システムとリンクリゾルバの連携により、OPACに電子ジャーナルと電子ブックが表示されるようになった。OPACでは閲覧可能期間や巻号情報のほか、利用条件も確認でき、本文へのリンクも表示される。

この利用条件の表示に使っているのがLicense-JUSTICEである。一方、Title-JUSTICEとBibdata-Ebookは使っていない。リンクリゾルバ由来のデータをOPACに自動登録する仕組みがあるためだ。電子リソースの所蔵・購読状況や本文リンクは図書館システムでは管理せず、リンクリゾルバから取得してOPACに登録している。

利用条件の登録には2つの経路がある。JUSTICE提案のパッケージ契約に含まれる電子ジャーナルについては、リンクリゾルバのデータに、JUSTICEからAPIで取得した利用条件を結びつけてOPACに表示する。この方式で運用しているパッケージは8つほどある。JUSTICE提案ではない個別タイトルや電子ブックについては、同時アクセス数や利用可能キャンパスが限られているなど特に注意が必要なものに限り、図書館システムのライセンス管理機能に利用条件を登録している。そのため、利用条件が登録されていない電子リソースもある。

OPACに表示している項目は、利用可能な利用者の定義、利用できるキャンパスの定義、同時アクセス数、ウォークインユーザーの利用可否などである。ILLの条件は、OPACを主に使う学内利用者には直接関係がないため表示していない。代わりに、ILL受付担当と電子リソース担当の間でExcelで管理・共有している。OPAC画面では利用条件欄にリンクが表示され、クリックすると表形式で条件が現れる。西氏は、実際の画面は「Academic Radiology」などで検索すれば確認できると紹介した。

愛媛大学:一次フィルターとしてのBibdata-Ebook

オンラインで参加した愛媛大学の三浦さゆり氏は図書の整備を担当しており、「あまり使っていない館」の立場から話した。使い方は、学生用図書の発注準備で、Maruzen eBook LibraryやKinoDenに電子版が見つからなかったときにBibdata-Ebookでも探す程度だという。先に講演した主査が触れていたように、紙のISBNでまとめて検索できるようになれば、使う機会はもう少し増えるだろうと述べた。

後半の討論で中村氏が「Bibdata-Ebookで探して見つかった例はあるか」と尋ねると、三浦氏は見つかったことはほとんどないと答えた。ないことを確認する使い方だという。中村氏が「Maruzen、KinoDen、Bibdata-Ebookになければ、電子ブックとしてはほぼ流通していないと判断できるということか」と確かめると、三浦氏は一次フィルターとしてはそのように使っていると応じた。

日本大学歯学部:小規模分館の目録作業とBibdata-Ebookの反映の遅れ

日本大学は学部ごとに図書館があり、堀米拓哉氏は歯学部分館の所属である。比較的小規模な非利用館だが、電子ブックはメディカルオンラインのサブスクリプション、KinoDen、Maruzen eBook Libraryを導入している。

堀米氏はメディカルオンラインの目録作業を紹介した。出版元から提供されたデータを毎月、自館OPACに一括登録している。ただし書誌が薄いため、NACSIS-CATから書誌情報の一部を流用して入力しており、手間のかかる作業になっている。経験者の臨時職員がいるので回っているが、いつまで続けられるかは分からないという。提供データには重要な項目が抜けていることもある。例として示した書誌は第2版なのに、元データには版表示がなかったため手で補った。また、ISBNは思い切って冊子体のISBNに置き換えている。これは自館だけの運用である。理由は重複チェックにある。紀伊國屋書店のツールでISBNを使って自館OPACを一括検索し、冊子体と電子体をまとめて重複確認するため、冊子体のISBNで統一している。

この第2版の書誌は、2026年4月に出版されたにもかかわらず、6月時点でまだBibdata-Ebookに搭載されていなかった。堀米氏は反映が遅いと指摘した。Bibdata-Ebookの一括取り込みはまだ対応しておらず、本学の図書館システムも未対応である。導入できれば、業務の効率化と利用者の発見可能性の向上に直結するはずだと述べた。

期待として堀米氏が挙げたのは、CiNiiの書誌に電子リソースが出てくることで発見可能性が高まることだ。昨年、学生の希望で電子ブックを購入した例がある。それがCiNiiで見つかったものかは確認していない。歯科分野の電子ブックは数が少ないので、見つければだいたい買っている。ところが、学生に非常に人気のある『歯科国試パーフェクトマスター』の電子版を担当者として見落としていた。学生からの希望を受けて、22冊ほどを電子ブックで購入したという。

堀米氏の見方では、エンドユーザーは電子ブックの存在自体は知っていても、個人向け販売と図書館向けの電子ブックが違うことをほとんど認識していない。その違いが知られ、昨年のような希望による購入がもっと起きれば、図書館としても買いやすくなる。電子ブックは目次からのリンクや本文検索があり、タイムパフォーマンスが良いという有用性がすでに認知されつつある。歯学部ではiPadを学習の前提にしているので、相性も良い。堀米氏は、歯科・医学系を含む図書館向け電子ブックが増え、利用要求が増え、予算が増え、利用が増えて学力向上につながるのが理想だと語った。

青山学院大学:ERMSに取り込み、選んだ項目だけを公開する

青山学院大学の阿部秋穂氏は、青山キャンパスでシステムとILLを含む参考業務を担当している。やっていることは筑波大学とほぼ同じだという。連携しているのはLicense-JUSTICEのみで、ライセンス情報をERMSに取り込み、その一部を加工してOPACで利用者向けに公開している。

図書館システムは富士通Japanの「iLiswave-J」である。ライセンス取り込み画面では、左側にLicense-JUSTICEのライセンス情報が表示され、それを右側に取り込んだうえで、項目ごとに表示するかしないかを選べる。表示すると設定したものがOPACに出る。青山学院大学ではOPAC内に契約データベースのA-Zリストのような一覧を公開しており、そこにもライセンス情報が表示される。個々の書誌にもライセンス情報がひもづいて表示されるよう、システムに実装してもらっている。

課題も挙げた。館内スタッフは取り込んだデータをそのまま活用できるが、学内利用者向けにはそのまま出せない。本学独自の用語で運用している部分があるため、DEERから取り込んだデータを自館の用語に置き換える必要がある。また、見せたくない項目もある。例えばウォークインユーザーの利用可否だ。阿部氏によれば、キャンパスが交通の便の良い場所にあるため、これを出すと図書館で対応しきれないほど人が来てしまう懸念がある。そのため、取得した情報をそのまま出さず、職員が手間をかけて選んで公開している。さらに、JUSTICE契約のデータベースは全体の中で割合が多くない。こうした理由から、連携のメリットは現状では限定的だというのが阿部氏の所感だった。

それでも期待は大きいという。青山学院大学が以前から目指しているのは、利用者が紙と電子を意識せずに望む資料にたどり着ける環境である。阿部氏が描く流れはこうだ。ERMSに電子資料の契約情報を登録すれば、それが利用者向けの公開までシームレスにつながる。図書館側でデータを修正したうえで、見せたい部分だけを公開できる。現在は連携していない書誌情報も連携し、電子資料のきちんとした書誌をOPACの詳細検索に取り込めるようになる。そうなれば目指す環境にかなり近づくと阿部氏は考えている。

背景には、電子資料の数や提供形態が多様化していることがある。紙から電子へのシフトは進めているが、一部の電子ブックや電子ジャーナルは思ったほど使われていない。学内には、ディスカバリー、Publication Finder、OPAC、富士通の協力で導入した「AI探索」、さらに各契約データベースの検索窓と、大量の検索窓がある。しかも、それぞれに届かない資料がある。そのため、統合的な窓口ができれば非常にありがたいという。阿部氏は、学内者からのILL申込資料のうち約3割が、すでに学内で契約・所蔵しているか、NDLなどで閲覧できるものだと紹介した。申込前に学内に契約や所蔵がないか確認するよう案内しているにもかかわらず、この状況である。利用者が契約中の電子資料に効率よくたどり着ける環境を作ることは、サービスの面でも運用コストを下げる面でも重要だと阿部氏は述べた。

「がんばれ図書館システムベンダー」:業務画面の見やすさという課題

司会の中村氏自身も事例を報告した。中村氏の整理では、DEERのデータはAPIで図書館システムに取り込まれ、まず図書館員が業務画面で見る。次にOPACやディスカバリーなどの利用者向けサービスを通じて利用者に届く。瀬高氏のような直接参照もあるが、基本はシステムを介して使うイメージで設計されている。そのため、見やすい画面を提供できるかどうかが大きな鍵だという。中村氏の大学でも導入を検討したが、画面がどうしても見にくいという問題があったと述べた。

見やすさは、業務画面を使う図書館担当者と、利用サービス画面を使う図書館利用者の2方向で考える必要がある。中村氏は、許可を得たうえで富士通のiLiswaveのERMS画面を示した。ERMS画面は情報量が非常に多く、縦にスクロールすると膨大な量になり、しかも全項目が埋まるわけではない。そこで、モニターに収まる1画面に情報を集め、フォントも冊子体の業務画面と同じものにすれば分かりやすいのではないかと考え、画面を作ってみたという。

License-JUSTICEのデータを取り込むと、画面中央に内容が表示される。先の報告でも出たように、データはそのまま使えない。例えば、ウォークインユーザーは実際には可でも自館では不可にしている場合がある。電子資料のILLを一切受け付けていないなら不可にする。データ上はOKでも、自館としてはプリントでの出力にしたい場合もある。この画面では、こうした文言を変えたうえで公開の可否を決められる。中村氏はこの仕組みを優れていると評価した。一方で、52項目を縦スクロールで見るのはつらいという声が出た。OPACに出る部分は画面下部の小さな横長のフィールドで、顔を近づけないと見えないという問題もあった。

中村氏は、情報量や情報の質よりも見やすさを、特に日本の図書館システムメーカーにお願いしたいと述べた。日本語表示に合った、日本向けの見やすい画面が必要だという。多くの大学図書館には海外ベンダーがERMSの営業に来る。その画面を見るとみな使ってみたいと言うが、自館の既存システムにもERMSはあると伝えると「見にくいから」と使ってもらえない。中村氏は海外システムを実際に使ってはいないと断ったうえで、ナレッジベースとの相性や日本語との相性も関係しているのではないかと推測した。

中村氏の大学でもLicense-JUSTICEの情報を全く使っていないわけではない。ある電子リソース一覧の画面に「他大学向けILL可否」の欄を設け、License-JUSTICEやJUSTICEの提案書を見て手入力している。ILL担当から、他大学からの電子ジャーナルのILLに回答するためにぜひ入れてほしいと要望されたからで、実際に受付時にこの欄を見て提供できるか判断している。中村氏は、License-JUSTICEのデータは業務上必要だと考えている。

一方、富士通のシステムに入れると備考欄に情報が集中する。中村氏の大学はキャンパスが多く、大学統合でさらに分散しており、キャンパス契約を複雑に組み合わせている。そのためキャンパス情報が非常に重要で、そこにライセンス情報やILLの情報まで加えると文字ばかりで読めなくなる。改行もできず、フォントで強調することもできない。青山学院大学程度の情報量なら問題ないのではないか、と中村氏は述べた。OPACでは電子ブックから冊子体への案内も出せ、比較的シームレスな流れは作れる。しかし、License-JUSTICEのデータを図書館システムに取り込んで展開するより、もともとナレッジベースにあるデータを流す方がきれいに表示される。データの流れと見やすさがかみ合っていないのが現状だという。

利用者の反応は見えにくい:API化で担当者は楽になったが

テーマトークでは、担当者の思いや周囲・利用者の反応、データ活用への期待を各登壇者が語った。

瀬高氏は、ワーキングでの議論を通じて、同じ館内の職員がBibdata-Ebookをどう使っているのか全く分からないと気づいたという。自分は便利に使っているが、ほかの職員は知らないかもしれないし、もっと便利な使い方をしているかもしれない。館内での使われ方をもっと知りたいと述べた。

西氏は、2024年3月にライセンス表示を始めてから利用者の反応はあまりないと報告した。ただし前向きに捉えれば、特に不便なく使えているとも言える。内部では、ILL担当から「このタイトルはILLできるか」と聞かれることがある。License-JUSTICEにはそうした情報も含まれているが、対象の出版社は今のところ限られている。運用開始時の検討でExcel管理にしたが、今後NII側で提供できる出版社が広がれば活用の幅も広がるだろうと述べた。中村氏が、License-JUSTICEのデータを全部出しているわけではないのかと確認すると、西氏は、JUSTICE契約をしている主要なパッケージは基本的に出していて、それが8つだと答えた。それ以外はExcelで管理している。中村氏は自館も同様で、全部出しているわけではないと応じた。

阿部氏も、周囲や利用者の反応は正直あまりないと語った。OPACへのライセンス情報の表示はLicense-JUSTICEとの連携以前から行っていた。連携によって変わったのは、これまで出版社・代理店にヒアリングして確認していた情報がAPIで取れるようになった点で、しかも対象はJUSTICE契約のものだけである。利用者向けの見た目は何も変わっていない。担当者レベルでは非常に楽になった実感があるが、周りには伝わりにくい。

ただ、1点変化があったという。最近、他館から青山学院大学に来るILLで、電子資料を対象とするものが以前より増えている。青山学院大学ではILLをすべて委託業者が担当している。従来は委託スタッフが専任職員に確認を頼み、職員が出版社に問い合わせるかJUSTICEのウェブサイトでライセンスを調べて伝えていた。現在は、スタッフ自身がERMSの情報を見てILL対応の可否を判断できる。限られた範囲ではあるが、業務効率化につながり、良い反応を得ているという。今後については、電子ブックの情報を利用者に届けたいと述べた。現在ナレッジベースから書誌をOPACに取り込んでいるが、担当者が苦戦している。契約情報の登録から書誌データの登録までの流れがスムーズになれば、館内的にはかなり大きなインパクトがあると阿部氏は期待を示した。

非参加館・予算の限られた館から見たILL情報

堀米氏は、日本大学歯学部はJUSTICEに参加していないと前置きした。そのうえで、自分は小規模館を代表して来ていると考えていると述べた。電子資料のILLは一般的ではなく、まだ全然認知されていない感覚が強いという。自館も、電子リソースを持つ館に複写を依頼することはあるが、おっかなびっくりで行っている。多くの館は電子というだけでILLを受け付けないだろうし、自館も基本的にはそうだ。ただし、依頼が来ればライセンスを見て、問題なければ提供している。他館に依頼するときに相手のライセンス情報が見えるのはありがたい。その反面、自館は公開していないという引け目がある。堀米氏は、こうしたことをワーキングに入って初めて知ったと述べ、JUSTICEに参加していなくてもライセンス情報を公開する努力をしたいと語った。

三浦氏は、予算の都合で図書館システムのオプション契約が難しいと説明した。システム連携以外のところでメリットが見えれば使いたいという。電子リソースの総合目録としてILLの可否が分かるようになれば、サービス面でも使いやすくなる。ただし、日本の電子ブックはILLに対応していないものが多いため、労力に見合うのかという疑問も示した。

ライセンス情報をどこに、どこまで見せるか

中村氏は、ほかの館でもライセンス情報を出しているかを尋ねた。新潟大学の瀬高氏は、自身の担当は図書で、ジャーナル系は別の担当だと断ったうえで答えた。新潟大学ではタイトル単位では出しておらず、図書館ホームページに電子ジャーナルや電子ブックのサービスごとのページを作り、そこでまとめて出しているという。

コメンテーターの近畿大学中央図書館の担当者は、License-JUSTICEのAPI連携を利用していると報告した。同館は2026年4月から新たにディスカバリーサービスの提供を始めた。今後はLicense-JUSTICEから取得した利用条件をディスカバリー上に表示できるよう、構築を進めている。現在のOPACでは表示できていない条件、例えば各電子ジャーナルを利用できるユーザー(学生・教職員など)やウォークインの可否、学認などの認証方法、同時アクセス数をディスカバリーに表示できる点に、大きなメリットと期待を感じているという。どの項目を利用者に見せるかは検討中で、この日の議論を持ち帰って検討を進めると述べた。

中村氏は登壇者に、OPAC以外のインターフェースにもデータを流すことを考えているかを尋ねた。阿部氏は特に考えていないと答えた。学外向けにはあまりライセンスを出したくないという。そもそも「私は使えるのか」という問い合わせが多く、不用意にいろいろな場所に出すのは怖いというのが理由である。中村氏はこれに同意し、利用者がライセンスを図書館の意図どおりに読むとは限らないと述べた。「使えると書いてあるのに、なぜうちではだめなのか」といったことも起こりうるため、出し方と同時に利用者のリテラシーの問題もあると指摘した。

ILL見直しの議論とアンケート結果

ILLの論点について、中村氏はILLシステムの見直しに関わるコメンテーターの磯本氏に意見を求めた。磯本氏によれば、具体的な議論にはまだ進んでいない。ただ、1月に今後のILLに関するアンケートを実施し、その速報版を会場にポスターとして掲示している。今後のILLシステムに求める機能や、追加してほしい情報を選ぶ設問では、電子ブック・電子ジャーナルのILL可否がかなり上位に来た。選択肢があるにもかかわらず、自由記述でも「電子ブックが使えるのかどうか知りたい」と熱意を込めて書いた回答が多かったという。磯本氏は、電子ブック・電子ジャーナルのILL可否が分かることは、今まさに求められている機能ではないかと述べた。

一方で、三浦氏も触れたように、日本の大手電子ブックはILLに対応していないという現状がある。データを整備できても、すべて「不可」では意味が薄い。磯本氏は、海外の電子ブックでILLが可能になり、その有用性が分かれば日本のベンダーも動くのではないかと述べ、夢のような話かもしれないと付け加えた。それでも、電子資料のILLへの需要は非常に大きいと言えるという。

中村氏はこれを受けて、反応がないからといって使われていないわけではないと述べた。ライセンス情報はもともと使っていたデータであり、ILLチームも注目している。ないと不便なので、出し続けなければならない。手で調べるのは大変なので、システム的に出せるのが一番よい。ワーキングの中でも、反応はないが実際には使われていると考えられるのは、ライセンス情報のうち特にILLの部分ではないかと議論したという。

認知度の低さと、海外電子ブックへの拡大

ユーザーグループ作業部会の主査を務める足立氏は、Discordで運営しているユーザーグループの状況を報告した。8つのチャンネルが動いているが、電子リソースに関するやり取りはあまり活発ではない。開会時に小山委員長が述べたとおり、DEERをはじめとする認知度がまだ低いため、このフォーラムをきっかけに認知が高まり、Discord上の議論も盛んになってほしいと述べた。

中村氏は、講演でスライドに海外電子ブックの書誌レコード収集が挙げられていた飯野氏に、Bibdata-Ebookに海外のデータも入り始めているのかを尋ねた。飯野氏によれば、Bibdata-Ebookには現在国内のものしか入っていない。ただし海外の大手学術出版社と交渉しており、近いうちに何かできるところまで来ているという。中村氏が、三浦氏のように国内の各プラットフォームとBibdata-Ebookを確認する使い方に海外分が加われば、発見可能性が高まるかもしれないと述べると、飯野氏は、海外の電子ブックも研究で使われる例は多く、その一助になればと応じた。

有料化の質問と、見直しの背景

会場からスライド経由で「NII-DEERは有料化するのか」という質問が寄せられた。NII側の担当者は、小山委員長の報告資料のうちワーキンググループ設置の経緯を示して答えた。利用が伸び悩む一方で、年間それなりの運用費がかかっている。そこでNIIだけでなく利用機関とともに、どのように使われているのか、どのような可能性があるのかをフラットに議論する場を設けた。有料化するかしないかより手前の段階の議論をしており、この日はその共有の場だった。そのため、現時点では明確な回答はできないという。

司会とコメンテーターのまとめ:見えにくい置き換え、電子ブックへの期待、ILLの問い

中村氏は1時間の議論から2点を挙げた。1つは、License-JUSTICEは、もともと別の手段で流通していた情報を置き換える形で使われているため、かえって効果が見えにくくなっているのではないかという点である。置き換えによって多くの業務が楽になる展開になれば、今後は利用が伸びていくのではないかと述べた。もう1つは電子ブックへの期待で、海外の電子ブック情報が入り、簡単に探せるようになれば大きいという。一方で、周囲の反応はまだよく見えない。中村氏は、ワーキングで1年かけてこの情報の使い方を議論していくと述べた。

飯野氏は、期待がある一方で、費用対効果という大きな問題を抱えているとし、その点を踏まえて今後の展開を考えたいと締めくくった。

小山委員長は、議論とアンケート結果から3つのことに気づいたと述べた。1つ目は、License-JUSTICEもTitle-JUSTICEも、すべての電子資料のメタデータを収録しているわけではないことである。メタデータの範囲をどこまで広げれば、図書館員や利用者の環境が良くなるのかを改めて確認したという。2つ目は、阿部氏の話にあったように、License-JUSTICEに載っている出版社の条件と、図書館がその条件どおりに運用するかどうかは別の話だという点である。実務での使われ方について改めて気づきを得たという。

3つ目は、国内の電子ブックのILL可否が大きな話題になっていることである。小山委員長の認識では、国内の和書は紙と電子の両方で出版されるのが一般的だ。そうであれば、電子へのILL需要は紙のILLでは代替できないのか、なぜ電子を選ぶのかという問いが立つ。逆に、多くの図書館が収集方針に「オンラインファースト」を取り入れ、それが大多数になれば、全国の集合的なコレクションとしての紙の資料は少なくなり、電子へのILLも考えなければならなくなる。小山委員長は、この実態をどう捉えるかを改めて考えたいと述べ、議論を終えた。

閉会にあたり運営側は、NII-DEERを存続させるかどうかも含め、サービスの今後の可能性や期待について、スライドやDiscordで広く意見や要望を寄せてほしいと呼びかけた。