中田敦彦が高市早苗に問う「政治と宗教」「政治とカネ」──総裁選2025対談の記録

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概要

2025年の自民党総裁選の終盤、中田敦彦が候補者の高市早苗を迎えて対談した。中田が掲げた問いは一つで、離れた支持層の信頼を自民党はどう取り戻すのか、というものだ。中田は旧統一教会問題と政治資金問題を「同じ2022年に噴き出した二つの不信」と位置づけ、高市に踏み込んだ対応を繰り返し求めた。高市は自身の関わりや事務所の資金事情を具体的に説明したが、教団の教義を知らなかったことを認める場面もあった。中盤以降は経済政策、消費減税、物価高対策、安全保障へ話が移り、最後に高市が自身の介護経験と政策の関係を語っている。

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中田の見立て──信頼低下の起点は2022年

中田はまず、党員・党友の数が前年の総裁選と比べて約14万人減り、105万人から91万人になったという報道を挙げた。ライトな支持者ではなく、コアな支持層が離れている状況だと中田は見ており、高市も「むっちゃ厳しい」と応じた。

中田によれば、不信の起点は2022年にある。この年、安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに統一教会の問題が次々に表に出た。同じ年の11月には、しんぶん赤旗が政治資金の不記載問題を報じた。2023年に処分と検証が行われ、2024年の衆院選と2025年の参院選で自民党は大敗した。中田はこの流れを踏まえ、政治と宗教、政治とカネについて高市がどう考えるかに党の信頼回復がかかっていると述べ、二つの問題を順に質問した。

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統一教会の教義と保守派の接点への疑問

中田がまず挙げたのは、統一教会と関係が深かったのが旧安倍派の清和会、性質としては保守派の議員だったという点だ。高市は旧安倍派だけに限定はできないと補足した。中田はそのうえで、保守派の考え方と教団の教義は整合しないのではないかと問いかけた。

中田の説明では、教団の経典『原理講論』をめぐって「韓国がアダム国家、日本がエバ国家」という考え方が報じられてきた。日本は戦時中に韓国を支配したことを贖罪する存在だとする教義が、日本から韓国へ献金を集めることを正当化している、と中田は語った。中田は「国民のお金が全部韓国の支部に行っている」とも表現し、日本国民にとって侮蔑的で、愛国者なら許しがたい内容のはずだと主張した。

高市はこの教義を「今初めて」聞いたと答えた。清和会は穏健保守の議員が多いところだとしたうえで、そこに接点があったのは「不思議」で「辻褄が合わない」と述べた。教義を聞いて許しがたいと思わないかという問いには、「私思いますよね」と答えている。

安倍晋三への支持と、町村派を割った経緯

中田は、高市が経済政策や憲法改正、国家観の面で安倍晋三の後継者だと自他ともに認められていると指摘した。そのうえで、高市が派閥を割ってまで安倍を支持した過去に触れた。

高市自身がこの経緯を語っている。当時は町村派に所属していた。その前の総裁選で派閥から誰も立候補できず、西村康稔をいったん無派閥にして出馬させる形になり、町村信孝から推薦人として名前を貸すよう電話を受けた。高市は政策勉強会の世話役として政策を積み上げてきた立場から、派閥の会長が正々堂々と総裁選に出るのが筋ではないかと総会で発言した。すると約1年前に町村から、その発言を受けて来年立候補を決めたと告げられた。しかし高市はすでに安倍のもとへ何度も通い、再挑戦を説得していた。自分の発言との整合性が取れなくなったものの、最終的に安倍を応援し、後で安倍本人にも怒られたという。

9:14

2015年の名称変更をめぐる検証要求

中田は、それほど支持した安倍が2013年に首相公邸で教団幹部と懇談していたという報道を「すごく大きい話」と位置づけた。中田は安倍家と教団周辺の関係を次のように説明した。岸信介の代から勝共連合の発起人に名を連ね、安倍晋太郎も勝共連合のイベントに出ていた。晋太郎が亡くなったのは1991年で、その翌年の1992年に合同結婚式が大きく報じられた。1980年代後半から話題になっていた霊感商法と合わせ、教団は1990年代から2000年代にかけてバッシングを受けて衰退した。

ところが2013年の懇談の2年後、2015年に下村博文が文部科学大臣を務めていた安倍政権下で、「世界平和統一家庭連合」への名称変更が認められた。中田によれば、文科省は1990年代以降、内容が変わらないのに改名して新たな信者を得ようとするのはおかしいとして申請を退けてきた。それが突然認められ、団体の正体が余計に分かりにくくなった。中田はこの変更を大きな転換点と見ており、誰がどのような意思決定をして「名称ロンダリング」と呼べる現象に至ったのかを徹底検証し、国民に公表すれば一定の信頼回復ができると提案した。

高市は、勝共連合という名前には覚えがあると答えた。31歳で初めて選挙に出て落選したとき、勝共連合の関係者とされる人物がライバル候補だったという。

12:07

高市の関わりの説明と「勉強不足」

高市はかつて関連団体の雑誌の取材を受けたことがある。その経緯について、当時著名だった評論家の細川隆一郎から対談に付き合ってほしいと誘われたもので、内容は宗教ではなく国際情勢や外交の話だったと記憶していると説明した。その時点で教団と関係する媒体だとは分からなかったという。

問題が大きくなった後、閣僚として出席した予算委員会で野党が配った資料を見て驚いたとも語った。教団関連の団体や店舗の一覧があり、マッサージ店や美容室、飲食店など、知らずに関わってしまいそうな業種が多岐にわたっていた。高市は奈良の事務所のパソコンを全部検索し、関わりがないことを確認したという。

中田は、問題が表面化して数年経ったのに、勉強家の高市が安倍の銃撃事件の背景にある教団について調べていないことに驚いたと述べた。高市は「勉強不足でしたね」と認めた。党でも資料が配られ、ある程度の検証はしたが、その中身は、関係があるところや別名の勉強会に誘われた場合に気をつけるといった、二度と関係を持たないための「善後策のレベル」だったと説明した。

14:59

なぜ調べなかったのか──政調会長時代と殺害予告

中田は、経済安全保障やエネルギー安全保障、核融合について徹夜を重ねて調べる高市が、最も敬愛していた安倍の死に関わる教団を自分で調べなかったのには原因があるのかと重ねて尋ねた。高市は「ないです」と答え、当時は政調会長を務めており、安倍が亡くなったショックもあって職務に没頭するしかなく「いっぱいいっぱいでした」と述べた。

中田は、令和の日本で政治のトップが銃撃で命を落とすことは二度とあってはならず、原因究明と国民への説明は高市にしかできないのではないかと迫った。これに対し高市は、自身にも殺害予告がしょっちゅう届いていると明かした。差出人の住所も名前もない封筒の多くは殺害予告だという。前年の衆院選では、安倍が撃たれた場所で、隣の選挙区の候補者を応援する街頭演説をした。その場所で高市を銃撃するという予告が朝に出ていたことを、警察庁のサイバーパトロールが夕方になって見つけた。そのころには演説は終わっていたという。高市は、宗教の問題とは関係なく、社会への不満や特定の考え方の政治家への反発から、さまざまな形のテロが起きる時代だと語った。

17:57

再調査をめぐるやりとり

中田は、高市が以前ある番組で教団について再調査は必要ないと表明していたことに触れた。十分にリサーチしたうえでの判断だと思っていたため、教義を知らなかったことに驚いたという。中田は教祖が文鮮明であること、現在のトップが韓鶴子であることを尋ね、高市はいずれも即答できなかった。

中田は、安倍が韓鶴子に敬意を表すメッセージを送ったことが事件の一つの契機になったと指摘した。高市は「何があっても人を殺すってのはいかんです」と強調した。犯人について、親の信仰でお金を使われて苦労した不幸な身の上だったとは思うが、世の中には恵まれず努力の機会もない人がたくさんいる、それでも人を殺してはいけないと述べた。中田も殺人は許されないと同意した。そのうえで中田は、問題は単なる新興宗教の二世問題ではなく、政権が宗教にお墨付きを与えていたことが犯行の理由とされている点にあると主張した。政治と宗教の癒着が救いがたい立場の国民を生むなら、そこに切り込めるのは安倍に誰よりも向き合ってきた高市だけだ、というのが中田の訴えだった。

高市は「とっても厳しいご指摘」と受け止めた。名称変更については、当時の下村元大臣が自分は関与していない、指示していないと否定していたと記憶しており、中田の言うような経緯ではないのかもしれないと述べた。一方で、頻繁に名前を変えて正体が分からなくなることや、統一教会以外にも高額な物を売る宗教団体があることは問題だと語った。消費者庁を中心に相談窓口などの一定の対応は取られたとし、今後は消費者保護の観点から規制をさらに厳しくすることが考えられると答えた。

21:51

献金者の非公開──公開基準とプライバシー

政治とカネについて、中田は政治資金に関する「三つの非公開」を挙げた。一つ目は献金者の非公開である。年間5万円以下の寄付や、1回20万円以下のパーティー券購入では、氏名を報告書に記載しなくてよい。番組はここで補足解説を挟み、この制度を悪用した例として西松建設事件を紹介した。ダミー団体と社員名義で企業資金を分散し、約6500万円が虚偽処理だったと報じられた事件だ。

高市は、公開基準を引き下げる方向で議論が進んでいることを前提に、別の問題を指摘した。少額でも名前と住所が公開されると、たとえば父親が妻と大学生の息子を連れて行こうと3枚買えば公開対象になり得る。そうなると「お金がある家」と見なされ、実際に支援者のもとへ詐欺のような電話がかかってきたり、怪しい人物が訪ねてきたりしたという苦情があったと語った。

中田は、他に問題が起きていなければプライバシー保護は理由になるが、西松建設のような事件がある以上はトレードオフだと応じた。高市は、誰かの指示や名義借りによる購入はもともと違法だと述べた。そのうえで、政治資金に関わるものはすべて口座振り込みにすれば後から全部チェックできるとし、「口座取引に徹底する」ことを考えていると語った。中田はこれを評価した。

パーティーをやめた事務所の懐事情

高市の事務所は3年以上政治資金パーティーを開いていない。今後も個人としても党支部としても一生開かないと秘書と申し合わせたという。現在は個人献金を支部への寄付として受け、「カツカツ」でやっていると述べた。

秘書は11人で、うち公設は3人、私設が8人いる。長く勤める人が多く、毎年ベースアップで少しずつ昇給している。しかし社会保険料の負担が大きく、小規模事業者として「人件費で死にそう」になっていると高市は語った。そこに16市町村を回る秘書のガソリン代、事務所家賃、パソコンやコピー機のリース料がかかるという。

経費の非公開──旧文通費、立法事務費、党の金庫

二つ目の非公開として、中田は経費を挙げた。番組の補足解説は次のように説明している。議員報酬は月約130万円で、ボーナスを含めると年収はおよそ2000万円になる。これとは別に、非課税の調査研究広報滞在費(旧文通費)が年1200万円ある。2025年から領収書の提出が義務化されたが、自動公開はなく罰則もない。立法事務費は年780万円で、会派を通じて配られ、公開義務はない。番組は、手取り換算で合計6000万円規模に相当すると説明した。

これに対し高市は、立法事務費は会派に支給されるもので「1円ももらえません」と述べた。中田は「問題発言」と驚き、所属議員の人数で計算されて振り込まれる以上、その議員の活動に充てられていると思っていたと応じた。高市は「ぶっちゃけて」と前置きし、歳費からの天引きを説明した。党本部に月10万円、奈良県連にいくら、秘書会費にいくら、さらにリニア早期開業や鳥獣害対策など所属する議員連盟の月会費が差し引かれる。多くの議連に入る先輩議員では手取りが毎月20万円台、高市も議連を整理して30万円台まで戻したところだという。旧文通費も郵便物や宅配便ですぐ消える。前年の総裁選で「足りていない」と話したら猛バッシングを受けたとも語った。

政党助成金について高市は、国会議員1人あたり4000万円分ほどが税金から出ているが、個人がそれをもらったことはないと述べた。中田は、自民党全体で約100億円になる議席配分の資金だと確認し、党に入ったお金の使い道が見えないことが、国民の「議員は贅沢している」という認識との溝を生んでいると指摘した。

高市は前年から、党の幹事長室に金庫があり、幹事長が十数億円を好きに使えることはおかしいと訴えてきたと語った。原資は党員が払う党費4000円のうち党本部に入る1000円や、政党助成金などだという。会計の専門家を入れ、政調会、広報本部、職員の給与と社会保険料、建物維持費などの予算をきちんと立てて透明化する。残った分は、議員がパーティーを開かずに活動できるよう公平に配分する。それが前年からの主張だったと高市は説明した。

中田は、旧文通費の領収書を情報公開請求なしでネットにリアルタイムで公開し、AIで妥当性をチェックすれば透明性が高まると提案した。高市は、党でやろうと思えばできると答えた。ただしそれは総理ではなく総裁の仕事であり、幹事長に検討を指示することはできると述べた。

租税特別措置の非公開と「癒着」への懸念

三つ目の非公開として、中田は租税特別措置による税優遇を挙げた。中田の説明では、租特の主な柱は技術開発と賃上げで、全体の半分を占める。優遇を受ける企業の65%が、企業数で0.2%の大企業だという。どの企業にいくら優遇しているかが見えないため、政策効果も検証できないとされる。中田は、献金者の非公開と組み合わさると、企業が政治資金を渡し、その見返りに分かりにくい形で税優遇を受ける構図が「可能なルール」になっていると問題提起した。

高市は、それこそ「一番やっちゃいかん」ことだと認めつつ、パーティーとの関係は否定した。公共事業などのメリットを受けている企業は一覧できるサイトがあり、事務所の会計責任者が注意深く確認しているという。特定企業に有利な国会質問をしただけでも逮捕されかねないため、高市の事務所は個人献金をした人からの要望は受けないと説明した。年会費は1000円からだが、1000円払った人の相談は受けず、払っていない人の相談には乗るという矛盾が起きるほど気をつけているという。大学入試や公務員試験の口利きのような依頼は、もちろん断っている。

中田は、実際に悪いことをしているかどうか以上に、「曇りガラス」があること自体が自民党への不信を招いていると返した。ルールを変えられるのは立法府、とりわけ最大与党の自民党だけであり、次の総裁を目指す高市にこそメスを入れてほしいと求めた。高市は「もっと早くメールしてくれればよかったのに」と応じた。今年の通常国会で政治資金規正法を改正したばかりだが、再改正はまだできるとも述べた。

アベノミクスの総括とサッチャー評価

中田は、こうした不透明さとアベノミクスの帰結を結びつけて論じた。企業の内部留保は過去最大で株価も上がったのに、国民は米が買えなくなっている。アベノミクスの元になったレーガノミクス、そして高市が敬愛するサッチャーは、法人を優遇して国際競争力を高めたが格差を広げたと評価されている。トリクルダウンが起きなかったことは歴史の結論ではないか、10年の反省なしにはアベノミクスと「サナエノミクス」の違いが見えない、と中田は迫った。

高市は、当時のイギリスは行き過ぎた労働組合国家で生産性が低く、サッチャーは反対を押し切って働くほど得をする制度に改革したと説明した。そのうえで、小さな政府や緊縮財政の時代ではもうなく、社会課題を解決するために官民で積極投資する時代だと述べた。自分がやりたいのはサッチャリズムでもレーガノミクスでも、アベノミクスの丸コピーでもないという。食料安全保障や健康医療など、リスクを解決する技術を日本は持っているのに、製品化・サービス化が遅い。国が呼び水的に投資し戦略を立てれば民間資金は集まる、と高市は主張し、核融合の例を挙げた。高市が戦略を発表した直後、スタートアップへの投資が約5億円から100億円に増えたという。輸出で稼ぎ、その利益を福祉と教育に回したいとも語った。

アベノミクスについて高市は、デフレ脱却のための金融緩和は成功したと評価した。一方、財政出動はその前の政権で決まった単年度のプライマリーバランス目標に阻まれたと述べた。単年度で収支を均衡させる国はG7に他にないとし、10年単位でバランスさせればよいという考えを示した。また、賃上げ促進税制は赤字の中小企業には役に立たないと指摘した。企業の現預金への課税については、人件費に回さないなら課税も含め選択肢から外していないとしつつ、先行き不安が大きく、賃上げも徐々に進んでいる状況だと説明した。

50:18

消費減税は「党内でボコボコに潰された」

中田が、総裁選前に高市が掲げていた消費減税について尋ねると、高市は「党の中でボコボコに潰されました」と答えた。逆進性が高く、最新のCPIでも燃料費より食料品の値上がりが大きい。今の物価上昇は賃上げを伴う緩やかなインフレではなく、コストプッシュだと高市は見ている。所得減税は給与所得者にしか効かず年金生活者や低所得者に恩恵がないため、全員に公平なのは食料品の消費税だと考えたという。

しかし党の税制調査会で一般議員が自由に意見を言える場は1日しかなかった。高市はトイレも我慢して最後まで座り、早めに手を挙げて発言したが、結論は幹部に「引き取られ」、会は二度と開かれなかった。参院選の公約からも消費減税は落ち、2万円の給付に変わったという。

中田は「諦めないでください」と何度も迫った。高市は、党内は真っ二つで自分は少数派として負けたと説明した。今回の総裁任期は石破総裁の残り2年しかなく、合意形成にはレジのシステム改修より時間がかかるため、臨時国会でも来年の国会でもできないことを掲げるのは無責任だという。総裁が党内に指示してできなかったら「それほどみっともない話はない」とも述べた。中田は「選択肢として排除しない」という言い方を「政治家っぽい言い回し」と評し、できないことなのか選択肢なのか整合性が取れないと指摘した。高市は、即効性のあるものと何年かで必ずできるものを分けて言わなければならないと説明した。そのうえで、反対派の根拠は財源論だとし、税収は上振れしており、2年で税率を上げずに税収が増える状態をつくれば、次の総裁選で消費税をもう一度言えると語った。

57:16

年内にやること──ガソリン、交付金、医療・介護

国民に身近な対策として、高市は総理になった場合の手順を説明した。臨時国会を早めに召集し、すぐ補正予算を組む。ガソリンと軽油については、暫定税率の廃止は税制改正を経て翌年からになるため、残っている基金8000億円を使い、現在10円の補助金を15円、20円と段階的に引き上げる。急に下げると買い控えが起きるためだという。軽油が下がればタクシーやバス、地方の軽トラックなども助かると高市は述べた。

地方への交付金には「推奨メニュー」をつける。地方自治法があるため国が使途を押しつけることはできないが、前年に闇バイト事件などを受けて防犯カメラを推奨メニューに入れたところ、各地で導入が進んだという。中田が「監視するんですね」と問うと、高市は「監視じゃなくてお勧め」と返した。赤字で賃上げ税制を使えない中小企業には、自治体の補助金で賃上げ分を支援する案も示した。

医療と介護についても高市は、病院の7割が大赤字で福祉施設の倒産も相次いでいると述べた。診療報酬の改定は今年の年末、介護報酬は2027年で、そこまでもたない。まず補正予算の補助金で支え、その後法改正で報酬を引き上げるという。高市は、年内にできることは全部やり切り、総理になったその日のうちに各省へ危機管理投資のマスタープランを年内に作るよう指示し、翌年から始めると語った。

1:01:20

給付付き税額控除の狙い

中長期の柱として高市が「どうしてもやりたい」と語ったのが給付付き税額控除だ。全世帯の平均所得を100とすると、60を下回れば生活保護の対象になる。その少し上、80前後の層が一番しんどく、若い世帯も多いと高市は説明した。社会保険料は累進性がなく定額に近いため、中低所得者には逆進的になる。そこで所得税を引き下げ、引ききれない分を給付する仕組みでちょうどいい塩梅にしたいという。高市はこの制度の実現に3年かかると話している。

1:02:40

防衛費と国債、ドローン、海底ケーブル

安全保障について、中田は防衛費を国債で賄うという高市の主張を尋ねた。高市によれば、建設国債は道路や橋など将来の世代にも役立つものに使える。以前は海上保安庁の分だけ、最近は海上自衛隊の分だけが建設国債の対象になっており、高市はこれを「わけわかんない」と評した。安倍は、防衛費は消耗費ではなく祖国を次の世代に残すための費用だとして、国債でやるべきだと言っていたという。他に使える財源があったにもかかわらず、そう主張していたと高市は語った。

使い道として高市が最も重視するのは研究開発で、次が無人機、とくにドローンだという。ロシア・ウクライナ戦争や中国の群れによるドローンを例に挙げ、日本は遅れていると述べた。日本のドローンは5kg以上の物を積めず、飛行時間は最近ようやく90分程度で、離島への対応には足りない。能登半島地震の際、高市はすぐドローンを飛ばすべきだと主張した。だが国交大臣が取材ヘリや自衛隊機との接触の危険を理由に数日間飛行を禁止した。そもそも冬に必要な水や灯油のような重い物は運べなかったという。

高市が新たに取り組みたいとしたのが、衛星と海底ケーブルの同時防御だ。沖縄の透明な海ではケーブルが上から丸見えで、陸揚げ地点を覆う砂が波で流されて剥き出しになっている。ケーブルの位置は船の接触事故を防ぐ善意から海図で公開されている。防衛省は、悪意ある切断が起きても衛星通信でカバーできると説明するが、戦争を考える相手なら両方を同時に破壊し、自衛隊は動けなくなると高市は懸念を示した。

高市は防衛産業の経済効果も強調した。電子レンジのマイクロ波、ナポレオンの遠征から生まれた缶詰、地雷除去装置の会社が開発した掃除ロボットを例に挙げた。F-2戦闘機の開発からは、骨折治療用のチタンボルト、ETC、車載用衝突防止装置、物流タグが生まれたという。研究開発の段階でさまざまな分野の稼ぎにつながり、その利益を子育てや福祉に回す、というのが高市の考えだ。

1:08:28

介護経験から生まれたゴミ出し支援

終盤で高市は、自身の生活経験と政策の関係を語った。両親を看病・介護して見送り、相続手続きもした。父親の通帳は山ほど出てきたが、残高はどれも千数百円で、合計1万円余りだった。金庫を開けると、地元企業を応援しようと買った無配の会社の株などしか残っていなかったという。

親は当初、他人を家に入れたくない、若い人に裸を見られるのは嫌だと介護サービスを一切拒んだ。高市は弟と交代で奈良と東京を行き来し、最終便で帰って親の世話をし、始発で東京へ戻る生活を続けた。国会議員を辞めようと思い詰めた時期もあったという。やがて親は、年配のヘルパーならと受け入れた。年の近い人のほうが恥ずかしさが少ないことに高市はそのとき気づいた。

家事支援サービスにはゴミ出しが含まれていなかった。実家のある自治体は分別が厳しく、高市は曜日ごとのゴミを近所の人に預けて上京していた。親の死後に全国を調べると、高齢者世帯や障害者のいる世帯のゴミを分別なしで週1回回収するサービスを行っている自治体は約20%で、残りは財源がないためできていなかった。総務大臣だった高市は「ゴミ出し支援特別交付税」の制度をつくり、各地でサービスが始まったという。転んでもただでは起きずにルールをつくる、という自身の目線を高市は「私のちょっといいところ」と表現した。

対談を終えて

対談の感想を聞かれた高市は、「最初の話がきついきつい」と笑い、自身の勉強不足もあって、旧統一教会の問題がここまで複雑だとは理解していなかったと述べた。中田は、きつい話から入ったことを詫びた。中田が求めた教団問題の再検証と政治資金の透明化について、高市が示したのは、消費者保護の観点からの規制強化の検討、政治資金の口座取引の徹底、党の金庫の予算化と透明化を幹事長に検討させることだった。2015年の名称変更の経緯を検証するかどうか、消費減税を再び掲げられるだけの成長と税収を2年の任期で実現できるかどうかは、対談の中では答えの出ない問いとして残った。