研究データ管理の「事例」と「人材」をつなげて探す:RDM人材ネットワークのプロトタイプ
国立情報学研究所 - National Institute of Informatics国立情報学研究所(NII)オープンサイエンス基盤研究センターの長岡千香子氏は、研究データ管理(RDM)の実践事例と、その事例に関わった人材を検索できる仕組みのプロトタイプを紹介した。「研究データ管理人材ネットワーク(仮称)」と呼ばれるもので、昨年度(2025年度)に開発したという。探す対象は、データの専門職やURA、図書館職員など、事例に関わった人材である。直前に登壇した古川氏の話を受けて、長岡氏は実際に何を作ったのかを説明した。この発表はすぐに使えるサービスの紹介ではない。事例や人材をどう見える化していくべきかを議論するための材料として示された。
RDMに関わりうる職種と、その多様さ
長岡氏はまず、RDMにどのような職種が関わっているかを整理した。最初の資料は、昨年まで活動していた国立情報学研究所 研究データ基盤運営委員会のRDM人材育成作業部会の成果である。この部会は研究データ管理の担当者に求められる標準スキルを作成し、その中でRDMを担いうる職種を一覧にしていた。挙げられた職種は14種類ある。長岡氏によれば、そのうち一部はすでに多くの人がよく知っている職種だ。一方で残りの職種は、機関によってはまだ配置されておらず、特に人材不足が指摘されている。
海外の例として、長岡氏はNFDI4Earth Living Handbookに載っているRDM関連職種の一覧も紹介した。データコレクター、データユーザー、データキュレーター、データライブラリアンなど、さまざまな職種がRDMの専門家として位置づけられている。データライブラリアンやデータ保存に関わる情報専門職のほか、データスチュワードも最近は知る人が増えているのではないか、と長岡氏は述べた。
国内大学ではRDM実務担当者が不足している
では、国内の各機関にRDMの専門家は足りているのか。長岡氏は、今年3月に公開した国内大学のオープンサイエンス状況調査の結果を示した。調査結果は二つの観点から整理されている。一つは、メタデータやデータキュレーションといった項目ごとの人材確保状況である。もう一つは、RDMの実務担当者がフルタイム換算(FTE)で何人関与しているかである。長岡氏によれば、実務担当者は1未満という結果が出ており、人材が不足している状況がうかがえる。
これまでの人材育成の取り組みと、新たな課題としての「見える化」
長岡氏によると、今年で5年目になるAIエコ事業では、人材育成の取り組みとして大阪大学とNIIがいくつかの機能を開発してきた。第1部で話題になった学認LMS上でのRDM人材育成教材、教材を再利用してもらうためのデータカタログ、個別最適化などである。
人材不足そのものはこの5年間ずっと検討してきたテーマだ。ただ、これまでの取り組みに加えて人材不足の解消に何をすべきかを考える中で、「見える化」について踏み込んだ検討を始めたのは昨年度からだという。
長岡氏は、見える化すべき対象を二つ挙げた。一つ目は研究データ管理の実践事例である。どのようにRDMを実践したのか、どのような体制を構築したのかといった情報は、これまでも論文などの形で共有されてきた。長岡氏が重視するのは、事例の情報に加えて、どの職種の人がどの業務に貢献したのかを明確にしてまとめることである。二つ目は、RDM専門人材がどのようなスキルや経験を持っているかの見える化だ。この二つを紐付けて、他機関や研究者に向けて、また皆で見える化していくことが鍵になると考え、現在議論しているという。
プロトタイプの構成:「事例」と「人材」の相互リンク
プロトタイプには「事例」と「人材」のページがあり、両者は互いに紐付いている。2025年度は大阪大学と金沢大学が協力し、事例と人材の情報を提供した。
事例ページでは、RDMの実践事例を記事の形でまとめている。画面で示された例は、オープンサイエンスを推進するための支援体制をどう構築したかという事例だった。記事には、誰が何をしてこの事例を作り上げたのかが明記されている。画面右側では職種ごとにタブを切り替えられる。長岡氏は、たとえば図書館職員なら図書館職員の話が気になるだろうと述べた。自分に関係する職種の視点で読めれば、自分は何をすればよいか、他機関の同じ職種は何をしているかという観点で事例を見られる。長岡氏は、こうした見せ方が大事だと考えている。
人材のプロファイルページには、氏名、所属機関、連絡先、自己紹介などが載る。デモ画面では長岡氏自身の情報が使われていた。ページの下部にはデジタルバッジが表示される。デジタルバッジは、個人の能力や経験、スキルを証明するために、最近は大学でもよく発行されているものだ。長岡氏はこれを使って人材の能力を見える化し、さらに学習につなげることを構想している。バッジを見た人が同じことを学んでみたいと思えるような流れである。こうした仕組みがあれば少し前進するのではないか、という考えで開発を進めているという。このほか、事例と人材を検索する画面も用意している。
想定される使い方
長岡氏は、利用者ごとに次のような使い方を想定している。
研究者であれば、宇宙科学のように自分の分野に関連するデジタルバッジを持つ支援人材を検索し、助言を求めたり、関連する事例を確認したりできる。ただし、全員が人材に直接連絡すると大変なことになる。そのため、まずは関連する事例情報を参考にしてもらうことを想定している。
これから自機関でRDMを導入しなければならない専門人材の場合は、事例と人材を紐付けて見ることで、誰がどのような体制で進めたのかを把握できる。それを参考に、学内のRDM人材に声をかけたり、人を雇用したりして体制を作っていく使い方が考えられる。また、プロファイルページのデジタルバッジを通じて、自分と近い職種の人を参考にスキルアップしてもらうこともできる。
長岡氏は、このような形で利用できるものを作れないかと考えて現在着手している段階だと述べ、発表を締めくくった。
国立情報学研究所のオープンサイエンス基盤研究センターの長岡と申します。本日は私から10分間で、今古川がお話ししたその昨年度どういったものを作ったのかという点についてお話しさせていただきます。
まず今回お話しさせていただく研究データ管理人材ネットワーク、仮称という風には書いてるんですけれども、どういったものかと言いますと、研究データ管理の事例とその事例に関与した人材、データとかURAの方とか図書館の方とか、そういった方を検索できるようにする仕組みというのを、プロトタイプを昨年度開発しました。本日は、なんでじゃあこんな仕組みが必要なのかっていうところと、事例と人材を検索できるネットワークってどういうものなのか、画面のキャプチャーとかも含めてご説明できればと思います。
私からは、もうすでに今すぐご利用いただけるサービスの説明というよりは、こういう風なものを作って、これを使ってどういう風に事例とか人材っていうのを見える化していくといいのかっていう議論の対話のベースとしてお話しさせていただければと思います。
まずは、仕組み、検索できる仕組みがなぜ必要なのかというところからお話しさせていただきます。まずRDM、どのような職種の人が関わっているのかというところに焦点を当てると、こちら国立情報学研究所研究データ基盤運営委員会RDM人材育成作業部会という、昨年まで活動されていた部会で、研究データ管理の担当者に求められる標準スキルというのも作成していまして、その際に言及されていた、研究データ管理を担いうる可能性のある職種の一覧となっています。14種類の職種が言及されているんですけれども、この中でも青い背景の職種については皆さんお馴染みの、もうすでによくご存知の方も多いかなと思います。一方、この背景オレンジの職種については、まだまだ機関によってはおられなかったりだったりとか、なかなか人材不足って特に言われているような職種になるかなと思います。
じゃあその研究データ管理の専門家っていうのがどういった職種の方がおられるのかというところなんですけれども、こちらNFDI4Earth Living Handbookという国外のハンドブックに書かれているRDM関連の職種の一覧になるんですが、データコレクターとかデータユーザー、データキュレーターとかデータライブラリアンとか、いろんな職種の方が研究データ管理に関するプロフェッショナルとしておられるという状況です。
データライブラリアンとか、データの保存とかの情報専門職とか、あとはデータスチュワードっていうのは結構最近ご存知の方とかも多いんじゃないかなと思います。
じゃあその研究データ管理の専門家っていうのが国内の各機関で十分足りている状況なのかというところについて、こちらが今年の3月に公開させていただいた、国内の大学に対するオープンサイエンスの状況の調査の結果をまとめたものです。こちら左側が、人材の確保状況について、メタデータとかあとはデータキュレーションとか、そういった項目ごとにまとめているものでして、右側、こちらが研究データ管理に関する実務担当者FTEっていう風に、ちょっと下の方に説明書いてるんですけれども、フルタイムで言うと誰が、どれぐらいの人数が関与しているのかっていうところを示したものになります。やっぱり研究データ管理に関する実務担当者っていうのは1未満というようなことが結果として書かれております。
やはりその人材というのが不足しているという状況なんですけれども、今年5年目になるこのAIエコ事業における人材育成の取り組みとして、これまで色々なことはしておりまして、大阪大学様とNIIで色々な開発はしておりまして、先ほど第1部の方でお話しさせていただく学認LMSの上で、研究データ管理の人材を育成するための教材の開発ですとか、あとは教材を再利用していただくためのデータカタログですとか、あとは個別最適化とか、そういった色々な機能の開発は進めております。じゃあこれまでの取り組みに含めて、研究データ管理人材の解消には何を可視化、ここで見える化っていう風に言ってるんですけれども、すると良いのかっていうところを、今ちょうど昨年度から検討を始めている状況です。
元々その人材不足っていうのはこの5年間ずっと検討は進めていたんですけれども、特にこの見える化というのは昨年度、深い検討を始めておりまして、1つ目は研究データ管理実践事例というのが、可視化、見える化っていうのがまず大事じゃないかと。どのように研究データ管理を実践したのか、あとは体制とか構築とか、実践事例とかっていうのを情報としてまとめて共有する。これについては元々論文とか色々な形でもうすでにされていると思うんですけれども、事例に関する情報だけじゃなくって、誰、どの職種の方が何に、どの業務に貢献したのかっていうのを明確にしたようにして、どういう実践事例っていうのをまとめていく。もう1つっていうのが、研究データ管理の専門人材っていうのがどんなスキル、どんな経験っていうのを保有しているのかっていうことを見える化していくっていうことが大事じゃないかな、というようなことを今議論しております。
この1の事例と2の人材っていうのを紐付けて、他の機関だったり研究者に対して見える化していく、みんなで見える化していくっていうことを1つキーとして考えております。
じゃあ次に、それってどういうものを作ったかと言いますと、こちらが研究データ管理人材ネットワーク、プロトタイプのキャプチャーの画面になります。事例と人材という風なページがあって、事例と人材っていうのはそれぞれ紐づくというような形で構成しております。2025年度、昨年度は大阪大学様と金沢大学様にご協力いただいて、事例と人材の情報の提供をしていただいております。
こちらが事例の画面なんですけれども、先ほどお話したように研究データ管理の実践事例、こちらで言うとオープンサイエンスを推進するための支援チームっていうのをどうやって構築したのかっていうのを、人材っていうのと、誰が何をしてこの事例を作っていったのかっていうのを明確に、記事のような形でまとめております。その上で、その記事の中に、この画面右側なんですけれども、職種別にタブを切り替えて、例えば図書館の方が見た時には図書館の方のお話がやっぱり気になるだろうなと思いますので、そういった自分が興味のある、特に関係している職種別っていう風に閲覧できるとか、そういう風に見ていけると、自分がじゃあ何をしたらいいかなって、他のところは何をしてるんだろうっていうような視点でも見られるっていうような形で見える化していくっていうのが大事じゃないかなと思います。
もう1つ、こちらプロファイルページですね。プロファイルページについては、今すいません、使わせていただいておりますが、[笑い] 個人情報、所属する機関、連絡先、自己紹介とか、そういった情報と、下の方にデジタルバッジって言って、最近よく大学の方で発行されていると思うんですけれども、その人の能力とか経験とかスキルとか、そういったものを証明するために発行されるデジタルバッジというものがありまして、こちらを使ってその属性、その人の能力とかを見せていく、見える化していく。それを経由してまた学習につなげていく、同じようなこと学んでみたいなとか、そういう風につなげていけないかなというようなイメージで、こういうものがあると少し進むのかなというところで今開発しております。こちらが事例と人材を検索するような画面も準備しているという状況です。
この研究データ管理人材ネットワークっていうものなんですけれども、研究者の場合ですと、例えば自分の領域と関係する宇宙科学とか、その自分の領域と関連するデジタルバッジを保有するその支援人材だったり、そういったいろんな方を検索して、その人材に何かアドバイスをいただいたり、関連する事例っていうのを確認する。もうみんなが連絡しちゃうと大変なことになっちゃいますので、まずはその関連する事例、事例情報っていうので参考にしていただくですとか。研究データ管理専門人材の方が、例えば今から自分の機関で導入しなきゃいけないっていう方が見た場合は、研究データ管理事例と、誰がどういう風にして、どういう体制でやったのかな、この事例っていうのを人材っていうのと紐付けて見ていただく。それを真似するために、じゃ、学内のRDM人材に声かけして、もしくは雇用したりとか、そういう風に体制を作っていく。そのプロファイルページにその人のプロファイルのデジタルバッジとかが載ってるので、それを通じて自分の近い職種の人を参考にしてちょっとスキルアップしていただくとか、そういう風な形でご利用いただけるものっていうのを作っていけないかなというところで、今着手しているというような状況でございます。私からの話は以上となります。
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