京都大学の研究データ管理基盤:収集・保存・共有を支えるストレージサービスの現状

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概要

学術情報基盤オープンフォーラム2026のセッション「RDMのためのストレージ基盤の現状と課題」で、京都大学情報環境機構の渥美紀寿氏が京都大学の事例を報告した。研究データを管理・公開・再利用する流れを大学としてどう支えるかについて、これまで整えてきたサービス群とその使い分けを説明した。あわせて、基盤は揃いつつあるものの研究ライフサイクル全体の支援としてはまだ「中途半端」だという現状認識も示した。

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報告者とデータ運用支援基盤センターの位置づけ

渥美氏は情報環境機構データ運用支援基盤センターのセンター長を務める。研究上の専門はソフトウェア工学で、高信頼なソフトウェアを効率よく開発する方法を研究している。約10年前に京都大学へ着任した当初は、全学のITサービスの企画や試行サービスの展開を担当していた。その後、研究支援に関わるようになった。

データ運用支援基盤センターは2024年1月に新設された。情報環境機構がもともと担ってきた役割は「IT基盤センター」が引き継ぎ、研究データ管理など研究データに関する業務は新設のデータ運用支援基盤センターが受け持つ体制になっている。制度面では、京都大学は研究公正、オープンアクセス、研究データの管理・公開に関する取り組みを順次進めてきたという。

目指す姿:研究ライフサイクルの中で循環するデータ

センターが何をするのかについて、渥美氏は理事が概算要求の際に描いた図を示して説明した。研究のライフサイクルで生まれるデータをきちんと管理し、公開して再利用できるようにする。その流れは一巡して終わるものではない。成果がまた再利用されることで、循環が広がっていくイメージだという。

この支援はシステムの提供だけでなく、人的なサポートも含めて進める方針である。担い手もデータ運用支援基盤センター単独ではなく、学術情報メディアセンター、附属図書館、総合研究推進本部がそれぞれ連携して活動を支える体制になっている。

これまで展開してきたサービスの変遷

京都大学はデータ管理に関わるサービスを段階的に展開してきた。最も早いのはオープンアクセス関連で、2006年に機関リポジトリ「京都大学学術情報リポジトリKURENAI(紅)」を公開している。

その後、研究データの管理手段として、ownCloud(のちにNextcloudへ移行)を使ったサービスを試行した。研究公正への対応では、研究データを10年保存するためのβ版システムを立ち上げた。これはZIPで固めたファイルを登録できるだけの単純な仕組みだったという。後継の正式サービスとして、Oracle WebCenter Contentと光ディスクを使った10年保存用システムを提供してきた。

GakuNin RDMには実証実験の段階から参加しており、現在は少なくとも学生を含む全教職員が利用できるようになっている。また、AWSのS3を使ったオブジェクトストレージも利用してきた。オンプレミスのストレージ基盤を調達できたことから、AWSの利用は2026年8月に終了する予定だと渥美氏は述べた。そこで使っていたものは、基本的にオンプレミス基盤のサービスへ切り替わる。

2つのストレージサービスと想定する使い方

オンプレミスのストレージ基盤の上では、2つのサービスを提供している。Nextcloudを使った「RDMドライブ」と、S3互換APIを備えた「RDMオブジェクトストレージサービス」である。

想定する利用環境も両者で異なる。RDMドライブはブラウザから使えるほか、クライアントアプリで同期して使うこともできる。オブジェクトストレージはS3のAPIを使えるため、プログラムからの利用や他システムとの連携に向く。どちらもGakuNin RDMの拡張ストレージとして設定できるようになっており、ユーザーが自分で設定して使う形を想定している。

エッジコンピューティング基盤:実験環境とストレージをつなぐ中継役

京都大学はストレージとは別に、コンテナ基盤であるエッジコンピューティング基盤を導入している。計算環境や実験環境からストレージ環境へデータを中継する役割を担うサービスを提供するための基盤である。

構成はマルチテナントで、テナント間のネットワークが分離されているため、コンテナ環境を安全に利用できるという。現時点では全国共同利用の枠組みでのサービス展開には至っていない。渥美氏は遅くとも来年度ぐらいには全国利用の枠組みで展開できるよう準備を進めていると述べた。

KURENAIによる研究データ公開と連携の課題

KURENAIは2006年から主に論文を公開する基盤として運用してきた。現在は研究データも公開できるようになっている。研究者は論文のエビデンスデータに限らず、さまざまな研究データを公開できる。

ただし、ストレージからKURENAIへの公開は、現状では手動でアップロードする手順になっている。この連携をもう少し効率化したいと考えているという。

残された課題:データ管理を研究活動に自然に組み込む

渥美氏は、基盤が揃ってきて少しずつサービスを提供できるようになった一方で、研究ライフサイクルの各段階を支援するという観点では現段階はまだ中途半端だと評価した。

最終的に目指しているのは、研究活動の中で研究データの管理や整理が自然に行われる仕組みである。必要なメタデータが自動的に付与され、データが研究成果ときちんと結びつく。この部分をある程度自動化できる仕組みを目標に、現在も試行錯誤を続けているとして報告を締めくくった。