9年前の構想はどこまで来たか:GakuNin RDMとJAIRO Cloudの連携機能を管理基盤側から検証する

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概要

北見工業大学の升井洋志氏は、NIIのシステム作業部会の主査を務め、この春からは同大学の図書館長も兼ねている。本講演で升井氏は、GakuNin RDMとJAIRO Cloudをつなぐ新しい連携機能を、研究データ管理基盤、つまり情報基盤を管理する側の立場から評価した。同じ部会の高田氏による発表も続く予定で、升井氏は部会からの視点が2つ続くと位置づけている。

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升井氏によれば、今回の依頼は発表の2週間ほど前にNIIから届いた。新しいシステムを使ってレビューし、GakuNin RDMの立場から意見を出してほしいという内容である。升井氏はこれを、約9年前の2017年に受けた依頼とほぼ同じだと感じたという。当時もNIIから、GakuNin RDMを作ったので使ってレビューしてほしいという依頼が2週間ほど前に届き、発表の副題の付け方まで今回と同じだった。講演は、この9年前の振り返りから始まる。

2017年のレビュー:OpenIDで動いていた「GakuNin RDM」

升井氏によると、論文のオープンアクセスは機関リポジトリを中心に、約20年前から各大学で取り組まれてきた。一方で、研究データを管理し、それをオープンアクセスにつなげるという考え方は、2017年当時はまだ広く浸透していなかった。

当時のGakuNin RDMは学認のSPと結びついたサービスがまだ整っておらず、レビューではまずOpenIDでログインして試用するよう指示された。升井氏はこれを、GakuNin RDMと言いながら実際は「OpenID RDM」だったと振り返る。ただ、そのとき見た画面は現在の画面と同じだったといい、逆にそこからどれだけ進歩したかという見方もできると述べた。

当時のレビューで升井氏が挙げた論点の一つがストレージの費用負担である。大学は多くの場合、ストレージを機関で購入して費用を負担し、研究者に使わせている。学認側でもクラウドの利用は認められていたので、例えば大学がクラウドを何テラバイトか契約したとする。しかし実際の使い方は教員によって大きく異なり、大量に使う教員もいれば、まったく使わない教員もいる。大学が一括で支払って自由に使わせる方針ならそれでもよい。そうでない場合に備えて、使用量をポイントなどで記録し、後で研究費や校費から差し引く仕組みがあればよいと升井氏は提案していた。ただしこれは実装が難しかったと付け加えている。

9年前からあった連携の構想

升井氏が強調したのは、2017年の時点ですでにGakuNin RDMとWEKOの連携が視野に入っていたことである。当時のスライドには、GakuNin RDM側でデータ管理機能や研究ノートを担い、WEKO(つまりJAIRO Cloud)側でメタデータを管理してデータ公開機能を持たせ、両者をつなぐという構想が描かれていた。データ管理機能や解析機能を設けるという話もこの頃からあった。

升井氏は、今日の話とほとんど同じことを9年前から言っていたと述べる。そのうえで、この構想がOAの推進や国の方針とも結びついて、ようやく実際に進んできたというのが現在の状況だという見方を示した。

北見工業大学と北海道国立大学機構での取り組み

続いて升井氏は、北見工業大学と、同大学が統合した北海道国立大学機構でのオープンアクセス推進の状況を紹介した。

まず教育職員に、これからの研究データ管理の流れを知ってもらうため、機構のFD講習を行った。升井氏が最も負担が大きいと見ているのはデータマネジメントプランである。DMPを作成してから研究を進めている教員が各大学にどれだけいるかは疑問だが、それをきちんと行う必要があるとFDで伝えた。あわせて、DMPがメタデータにつながり、さらにオープンアクセスにつながっていくことを説明している。

升井氏によれば、必要なのは適切なデータ管理の仕組みと、運用の整理や連携である。仕組みの面では、機構はNextcloudを導入した。北見工業大学はこれまでもNextcloudを「KIT Cloud」という名前で運用してきた。運用の整理と連携の面では、GakuNin RDMとJAIRO Cloudを使うよう呼びかけた。機構はこの研究支援の仕組みを「オリオン」と名付けている。各機関で研究データを管理し、それをGakuNin RDMにつなぐ。GakuNin RDMにつながれば、そこからJAIRO Cloudなどを通じて公開され、さらに検索の対象にもなる。この流れ全体を担うのがオリオンだと学内に説明している。

2PBのストレージと、ほとんど使われなかったクォータ

機構は事業の申請が採択され、機構全体で2PBのストレージを導入した。十分に広大なので、どれだけ使っても大丈夫だろうから積極的に使ってほしいというのが現在の方針だと升井氏は言う。GakuNin RDMとの連携方法についても講習会を繰り返し開いている。北見工業大学の教員は以前からNextcloudを使っていたが、機構内にはNextcloudを使ったことがない教員もいたため、ツールそのものの紹介から始めた。

ただし運用開始時は、2PBあるにもかかわらず慎重になり、利用者ごとのクォータを控えめに設定した。ところが実際の使用状況を確認すると、ほとんど使われていなかった。そこで今後はクォータを10倍程度に増やし、もっと使ってもらう準備を進めているという。

北見工業大学の従来のKIT Cloudは1人50GBで、当時は大きな容量だったが年々相対的に小さくなった。そのため、新しい環境へ早く移るよう教員に呼びかけている。

フォルダ整理のルールを研究者自身に求める理由

升井氏は、研究データを保存する際のフォルダ構成についても教員に指導している。オープンアクセスにするためのデータはこのフォルダ、プロジェクトのためのデータはこのフォルダ、というように、自分なりのルールを作って保存してほしいという。

ルールは人によって違ってよいと升井氏は考えている。まず年度で区切り、その中をプロジェクトで分ける人もいる。それでは毎年同じフォルダを作り直すことになるとして、プロジェクトを上位に置き、その中を年度で分ける人もいる。どちらでもよいが、論文やデータがフォルダの中で迷子にならないようにしておいてほしいという。最終的にはこれらのデータを連携の仕組みに乗せてオープンアクセスまで持っていく必要があるので、そのときにどのファイルだったか分からなくならないように、というのがその理由である。

新しい連携機能の全体像と認証の問題

ここから升井氏は、実際に今回のシステムを使ったレビューに移った。システムにはまだ正式な名前がなく、「学認連携機能」のような呼び方をしているという。前の講演でも説明されたとおり、これはGakuNin RDM上の機能である。ただ升井氏の目には、別の場所にポータルがあり、それがGakuNin RDMとJAIRO Cloudを橋渡ししているシステムのように見えたという。

橋渡しの部分では当然、認証の連携が必要になる。升井氏が指摘するのは、研究者の認識の偏りである。研究者は学認でログインしてGakuNin RDMを使うので、自分のIDと結びついていることは意識している。しかしJAIRO Cloudの側については、研究者はほとんど知らない。論文を図書館の職員に渡して公開を頼んでいるからである。前の講演の説明では、この連携は管理者が設定することになっているので大丈夫だろうとしつつも、ここを間違いなくつながなければならないと升井氏は述べた。

ワークフローはシステム全体で共通

操作の流れは前の講演でも紹介されていたため、升井氏は要点に絞って説明した。拡張ストレージを追加すると画面の見え方が変わり、プロジェクトを選ぶ際にはNIIのストレージと拡張ストレージの2つが表示される。デモデータを選び、ワークフローを選んで進めていく。

升井氏が議論を通じて知ったのは、このワークフローが連携システム全体で定義されているという点である。教員が自分用のワークフローを作ったり、大学ごとに独自のワークフローを定義したりすることは、現時点ではできないようだという。1つのワークフローを作ればすべての利用者に適用され、3種類作れば、このシステムを使っているすべての大学から3種類とも見え、使える状態になる。升井氏は、大学ごとにローカライズできるようにすべきか、それとも統一したワークフローで運用するのが本来の仕組みなのかは、議論して方針を決める必要があると述べた。

もう一つの指摘は、ワークフローの中身が見えないことである。「ワークフローA」「ワークフローB」と名前だけが並んでいても、選ぶとどのような業務の流れになるのかが分からない。どのような流れで進むのかを図などで示した方がよいと升井氏は考えている。

承認画面:チェック項目の多さと遠い完了ボタン

正しく設定すれば、前の講演での説明どおり問題なく動くと升井氏は評価した。そのうえで、細かい操作面でいくつか気になった点を挙げた。

最終的に承認を受ける段階では、確認すべき項目が数多く並び、一つずつチェックしなければならない。形式上は一つずつ確認するべきだとしても、「すべてOK」のようなボタンがあれば便利である。ただし、そうするとかえって誰もチェックしなくなるという議論もあるので、そこは検討してほしいという。

提出を完了するボタンの位置も問題に挙げた。スライドでは1画面に収まるように見せていたが、実際には途中が省略されており、長くスクロールしてページの一番下まで行かないと完了ボタンが現れない。スクロールさせて内容を読ませ、意識してもらう意図があるならそれでもよいかもしれないが、完了ボタンまでが遠いと升井氏は感じたという。

登録が終わるとメールが届き、手続きの結果が通知される。これによって実際に公開されたことが分かる仕組みになっている。

自分のデータで試したときの不具合

デモデータの次に、升井氏は自分のデータを使って試した。GakuNin RDMから拡張ストレージにデータを置いて進めたところ、そのデータがシステム側に表示されなかった。升井氏は、おそらくストレージの接続設定の問題だろうと推測している。本来表示されるべきなのに表示されないのであれば改修した方がよいが、デモ環境だからそうなっているだけなら大きな問題ではないという。

そこで、ローカルのファイルを直接指定する方法も試した。この連携機能はGakuNin RDMの一部なので、ローカルで指定したファイルはGakuNin RDM側に「逆流」して表示される。ローカルファイルを読み込んで公開の手続きをすると、そのファイルはNIIのストレージに現れる。升井氏は、この挙動を利用者がきちんと理解しておく必要があると述べた。実際に起こるかどうかは分からないとしつつ、GakuNin RDM側に同じファイルを置いた状態でローカルから読み込むと、逆流によって上書きされる可能性もあるので注意した方がよいという。また、ファイル名の末尾に用途の分からない括弧が付く現象もあり、仕様なのかどうかが気になったと述べた。

メニューの文言は研究者向けか

細かい点として、升井氏はメニューの文言にも触れた。「作業中データ」「タスク」「データ登録」といった名称は研究者向けになっていない、つまり図書館側の言葉になっているという。「〇〇登録」ではない別の言い方にした方がよいと升井氏は提案した。

管理者の視点1:JAIRO Cloud以外の機関リポジトリにも対応を

ここからは、システム管理の視点からの提案である。このシステムは一見すると独立したシステムに見える。升井氏は、その上に3者を統括するサービス、つまり機関ごとに「うちの機関リポジトリはこれ」「研究データ管理にはGakuNin RDMを使っている」といった情報を管理するマスターサーバーのようなものがあるとよいと考えている。

背景として升井氏が挙げたのは、機関リポジトリにJAIRO Cloudを使っていない大学の存在である。このセッションはJAIRO Cloudとの連携がテーマなので、参加者はJAIRO Cloudを使い、GakuNin RDMから流すことを前提にしている。しかし大規模な大学の多くは、機関リポジトリにJAIRO Cloudを使っていないだろうと升井氏は見ている。そうした大学もGakuNin RDMでデータを管理している。機関リポジトリはこれ、研究データ管理はこれ、それをこのブリッジでつなぎ、そのフローはNIIが提供したものを全員で使う、という形があれば、より多くの大学に広まるのではないかという。APIをどう書くかなどの問題はあるだろうとしつつ、升井氏はこの方向を提案した。

管理者の視点2:機関を移動したときのIDの問題

次の論点は、GakuNin RDM側の問題かもしれないと断ったうえで挙げられた。データや論文は学認のIdPが発行するIDに結びついているため、研究者が機関を移動してIDが変わると、それらは他人のデータや論文として扱われてしまう。升井氏は、この点はすでに検討が進んでいると思うとしたうえで、確実に解決してほしいと述べた。

具体例として升井氏が挙げたのは、ある大学から別の大学へ移る時期に書いた論文である。投稿は前の大学で行い、出版は移動後になった場合、どちらの機関リポジトリで公開するかという問題が生じる。機関をまたぐとIdPが変わるので、おそらくどちらかのGakuNin RDMにはアクセスできなくなっている。こうした状況にも対応してほしいという。

管理者の視点3:信頼できる論文一覧

升井氏は、OA化された論文の一覧があるとよいとも述べた。研究者本人が発行した論文はこれ、そのうちOA化されたのはこれ、と分かるような一覧である。こうした用途にはresearchmapが使われることが多いが、researchmapは自己申告制である。そのため、研究者として信頼できる論文リストをどこかに作っておく必要があると升井氏は考えている。

DOIを必ず付ける分野なら、DOIのサイトを見れば論文はすべて見つかるだろう。しかし分野によってはDOIを付けないこともある。何をもって信頼できる論文リストとするかについて、研究業績の提出を義務づけている大学はそれを使えばよいが、ほかにもいろいろな可能性があると升井氏は述べ、明確な答えは示さなかった。

管理者の視点4:一括設定、二重保存、一時保存の扱い

最後に升井氏は、管理者側から見た細かい要望をまとめて挙げた。

一つ目は機関管理者による一括の連携設定である。Nextcloudとの接続などを研究者が一人ずつ設定していては普及が進まないので、管理者がまとめて設定できないかという。

二つ目はデータの二重保存である。JAIRO CloudとGakuNin RDMの両方に同じ研究データを置くと、容量が2倍になる。例えば1TBの研究データを公開すると、両方で合わせて2TBを使うことになる。升井氏は、これを何らかの形で重複させずに済ませられないかと問いかけた。

三つ目は一時保存の扱いである。公開の手続きを一時保存しても、その案件は「処理待ちタスク」に表示されない。処理待ちタスクには「公開する」を押した後の案件しか表示されないため、ここも直してほしいという。

そして、前述したJAIRO Cloud以外のリポジトリへの対応を改めて挙げ、升井氏は管理者側からの視点を締めくくった。